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036 捕えた男たち 治療不能の病気?と判明する

 暴走族が転がっているトイレの前では警官が見張りをしていた。


 「どうした?」

 悪いやつに見つかった。某大手新聞社の記者である。出世街道を外れて地方に飛ばされた遊軍記者だ。

 ぐいっとトイレのドアを体で押した。


「おっと、つまずいてしまった」

 わざとらしいのである。


「おい丸出しだぞ。随分いるじゃないか。どうしたんだ。先っぽがドス黒いぞ」

 諦めた警察官。情報は与えないが、追い出しもしない。


 記者は持ち歩いているカメラを構えたが、警官が阻止した。

「腰縄付きで陰部丸出しの写真では、使えないだろう。人権で叩かれるぞ」

「それもそうだな」

 と言いながら一枚撮った。


「それでどうしてこうなった」

「上に聞いてくれ。俺では答えられない」

「わかった。これはうつるのか」

「わかれば苦労しない」

 思わず腰が引けた記者。

「わかった。またな」


 すぐ警察署に行って取材依頼をした。

 返事がなかなか来ない。

「署長はどうしたんだ」

「もうここにはいない」

「副署長はどこだ」

「ここにはいない」

「どこにいる」

「答えられない」

「そうか」


 煮え切らない答えにピンと来た記者。あちこちに電話をかけ始めた。そして署長以下署の幹部が地元の団体の懇親会に呼ばれて宴会をしているのを突き止めた。


 『怪奇、数十人のあそこの先が腐る、署長以下幹部は接待宴会で指示せず』。そういう記事を書いて県庁の側にある支局に送った。


 支局長は、また奴はこんなくだらない記事を書く。そろそろなんとかスポへ行ったほうがいいんじゃないか。そう思ったが、署長ら幹部が接待宴会という部分を縮めて埋め草記事にした。


 ワクワクの遊軍記者。明日の朝刊の一面か、まあ、一面にはならないか。地方面のぶちぬきの記事だろう。


 朝、新聞を開く。一面には、ない。まあそうかもしれない。地方面にも、ない。下の方のいかにも埋め草記事とわかる記事になっているのを発見した。


 くそ。野郎、俺の出世を邪魔したな。同期が支局長なのであった。遊軍に決まった仕事はない。自由である。朝から酒を飲んでしまったのであった。酒を飲まず継続取材をしていれば事態が中央まで巻き込んで深く進展していくことに気がついたろう。


帝都大学武蔵西南総合病院

 手術室を確保した診療科長、患者の鬼頭の同意を得て、駆けつけた家族の同意も得て切った。


 十分余裕を持って切ったので長さは半分ほどになってしまった。残った先から取った組織を病理に出した結果は正常組織であった。

 結果をみて、これで良いとなって処置を始めたら、少し先が黒くなってきた。


「おい、おかしい。もう一度病理に出せ。急げ」

 病理の結果を待っている間に、みるみるどす黒くなってきた。切る前と同じくらい黒くなった。どう見ても腐っている。


 待ちきれない診療科長は病理医に電話をした。同級生である。話しやすい。

「おい。どうだ」

「最初と同じだ」

「腐っているのか」

「ああ。腐っている」


「おれは十分余裕をもって切った。だから正常なはずだが」

「はずだがどうした」

「みるみる黒くなって来た」


「壊疽か」

「足といえば足だし、腐っているからそうとも言えるが、切って正常な部分だけにしても腐ってくる。異常に早い。最初と同じくらいに腐ったら止まった」


「完全に止まったのか」

「わからない。ゆっくりじわじわ腐って行くような気がする」


「呪いだろう。お前は昔から非科学的なことは相手にしなかったが、おれのばあちゃんが巫女をやっている。料金はいらない。みてもらうか。お前は関係しなくていい。知り合いが見舞いに来たという形にしてくれればいい」

「ううん」


 後ろから声がする。

「先輩、カテーテルが入りません」


「どうして」

「入れようとするとボロボロ崩れます」

「トイレに転がっている奴らに尿は出たか聞いて来い」


「おい、聞こえたか」

「ああ」


「婆さんを派遣してくれ。お前がついて白衣でも着させて回診を装ってみてもらってくれ」

「わかった。明日だ」

「頼む」


「先輩。族が尿は出ていると言っていました。排尿の時に激痛がすると言っています」

「そうか。様子見だ。どうしたわけか出血は止まった。短くなっただけで手術前と変わらん。オペは終了だ。ゾクとは何だ」


「先輩、知らないんですか。こいつら有名な暴走族ですよ。まあ、あそこが腐るってのは天罰じゃないですか」

「何?暴走族か?」


「そう。色々悪い噂があって」

「悪い噂とは何だ?」

「まさに今腐っているところを使って悪いことをしていると言う噂です」


「なぜ捕まらない」

「田舎警察ですから。それに写真とか動画とかとっているらしいですよ」


「何でお前が知っている」

「私、ライダーですから。仮面はつけませんけど。仲間内の噂です」


「転がっている奴は全員暴走族か?」

「だから警官が連れてきたんです。一人武蔵西南学園元理事長の倅が混じっていますが。ちょんぎられて半分になった男です」


「そうか。わかった。参考になった」

「そうでしょう、そうでしょう。ディナー一回」


「俺の娘と行ってこい。お前同級生だろう」

「はーい」


 娘の分を入れてディナー二人分になってしまった荒木田診療科長であった。


 族と聞いて考え込んでしまった診療科長。明日は巫女に付き合うかと思ってしまった。俺としたことがと思うが、天罰を認めればすんなり説明できる。悩むのであった。


 その後救急外来に7人同じ症状の男が運ばれて来た。合計30人である。


 手術した鬼頭という男以外は治療不能として警察や家族に押し戻した。

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