034 舞委員長 誘拐される
中間テストが終わった日、夕食後暇だからアカと散歩に出かけた。
参道を降りていくと、委員長が少し前を歩いていく。
僕らの後ろから車が近づいてくる。僕らには気が付かない。委員長の少し前まで行って、止まった。
ドアがいっぱいに開いて男が飛び出して来て、委員長に当身を食らわせて上から布袋を被せて中の男に渡して車に飛び乗って、走り去った。
急発進しないから誰も気づかないぞ。手慣れた犯行だ。
「さてどうやって助けようか。ドラちゃんとドラニちゃんは龍愛と夕練という遊びに行っているし」
「走る?」
「マリアさんとリンを呼ぼう。女性だから女性に助けてもらった方がいいだろう。リンに乗って来て貰えばいい」
呼びました。
「友だちが誘拐されたのだけど手伝ってくれる?場所は観察ちゃんが誘導してくれる」
「分かりました」
忍者服狐面のマリアさんを乗せてリンが走って行く。リンは大きい黒猫タイプだけど黒い旋風だな。すぐ見えなくなる。
僕らも行こう。
「バトルホースは目立つだろうな。誰を呼ぼうか」
「ブランコがいいんじゃない」
「そうだね」
すぐ来てくれた。大きい白い狼タイプのブランコ。忍者服、狐面のジェナとチルドレンを乗せた熱帯号と雪原号付きだけど。
「おとたん。面白そう」
「派手にやったら駄目だよ。他の星だからね」
「わかったー」
熱帯号と雪原号が走り出す。やれやれ大丈夫かな。
「ブランコ、行くよ」
ブランコが僕とアカを乗せてみんなを追う。
車は山の上の公園に向かっていると観察ちゃん。
ブランコはまっすぐ宙を駆けて公園を見下ろす山肌に降りた。
おお、暴走族が集合している。
ほどなくして委員長を乗せた車が到着した。リンは気配を殺して公園の脇の暗闇に潜んだ。熱帯号と雪原号も到着して闇の中。公園を包囲する。僕もアカも狐面をかぶった。
どうせろくな事を言わないだろうから、委員長の周りにバリアを張っておく。音も聞こえない。
車から男たちが降りて来た。
委員長の入った袋を下ろして、かぶせてあった袋を取り除いた。
「今日の女です。今日は武蔵西南学園の委員長、才媛です」
「おおよくやった。それじゃ俺が一番。あとはくじ引きな」
暴走族のリーダーがズボンを脱いでパンツも脱ぐ。まだ委員長は気絶している。
「俺が二番だ。俺の女だ」
手に包帯を巻いた鬼頭くんがいた。片手で一生懸命ベルトをいじっている。
それじゃ確定したところで、「ブランコ」
「ウォーン」
「なんだ」
暴走族のリーダーが周りを見回す。
すぐマリアさんが委員長を確保して闇の中へ。
「ムジンボーケン、ムジンボーケン、ショウコインメツ」
暗闇の中から呪文を唱える声がして、ジェナたち狐面忍者服のムジンボーケン隊が棒を振り回して突っ込む。たちまちバイクと車が切り刻まれる。
熱帯号と雪原号は暗闇に待機だ。ムジンボーケン隊が男たちを殴りつけて、公園の中央に纏める。
さてどうしようかねえ。ブランコに乗って公園の照明が照らす中に進む。
「こんばんは。みなさん」
「だれだテメーは」
「名乗るほどのものではないですが、狐仮面というのはどうでしょうか」
「ふざけるな」
「みなさんはだいぶ婦女暴行歴がありますね。よく警察に捕まらなかったですね」
「うるせえ。とろい警察なんかに捕まってたまるか。鬼頭の親父もいたし。それに俺たちに暴行されたなんて言えないだろう。写真も動画も撮ってある」
「そうですか。この国の法律は甘いからみなさんは刑を終えたらすぐ同じことをするのでしょうね」
「ふん。当たり前だ」
まずはすべての映像、画像を消した。ネット上のも丁寧に消した。
「だいぶ酷いことをしていますね。何人か悲観して亡くなっていますよ。報いを受けてもらいましょう」
「おとたん、消す?」
「ただ消したのでは楽です。苦しんでもらいましょう。ではみなさん。筒腐らしということで。ああ、この場にいない人も同罪ですよ。仲間はずれはいけません。それと被害者の事は話したらいけませんよ。筒腐らしが喜びます」
麓からウーウーというサイレンが聞こえる。
「そろそろお迎えが来たようです。逃げ出すと捕えるのが面倒でしょうね。首まで埋めるといいのですが、掘り出すのも大変でしょう。真っ裸がいいかもしれませんね」
ムジンボーケン隊が棒を振る。たちまち暴走族と鬼頭の服が細切れになる。
「うわっ、何をする」
真っ裸な暴走族グループと鬼頭の出来上がりである。
「ばーか、ばーか」とアーダが言っている。
「みんなごくろうさん。うちに帰ってね」
一人一人いい子、いい子してやる。勿論過剰戦力になるから参加しなかった熱帯号も雪原号もいい子いい子だ。
ジェナたちはアーダを連れて転移で戻って行った。
委員長はアカがマリアさんから預かった。
「さて引き上げよう」
「おい、待て。筒腐らしとはなんだ」
前を押さえた暴走族のリーダーに聞かれた。
「自然とわかりますよ。ではさようなら」
マリアさんとリンが転移して行く。
アカがぐったりした舞さんを抱いて参道へ転移。
元の場所に立たせてポンと手を叩く。
アカが声をかける。
「舞さん、どこに行くんですか?」
「あ、え。コンビニ」
「私たちは散歩。今帰るところ」
「なんだか疲れた。戻ろう」
「乗って行きます?」
ブランコが尻尾を振っている。
「まあ。大きな犬」
舞さんは犬好きらしい。首に抱きついている。
「本当に乗れそう」
それから舞さんは飼っていた犬の思い出話などをしてくれた。横道まで来た。
「それじゃあ、また明日」
「家まで送って行きますよ」
舞さんの家は横道に入ってすぐだった。
「横道に入ってすぐなんですね。毎日でも送ってきますよ」
「噂に」
「大丈夫です。アカと一緒にきますから」
確かに腕を組んでいる二人に送ってもらっても噂にはならないと思った。
「それじゃあ、今度こそ、また明日」
ブランコとアカと神社に戻る。
「ただいま」
「お帰りなさい」
先に帰っていたマリアさんが迎えてくれる。ブランコは少し小さくなって家の中に入った。
食堂に行くとリンがお茶を淹れてくれる。
ブランコは小さくなって僕らの足元で尻尾を振っている。
ドラちゃん、ドラニちゃん。龍愛、黒龍、黄龍も戻って来た。
黒龍、黄龍はブランコにペロペロされて目を細めて尻尾を振っている。
その夜は、マリアさんとブランコが追加になって就寝。マリアさんとブランコは朝になってから帰って行った。




