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003 シン、山城稲荷神社で地球の神に会う

 どこだ、ここは。

 鳥居が見える。鳥居の先は階段になっていて、下に街が見える。階段下から鳥居まで標高差は100メートルくらいあるか。後ろを振り向くと狐の像があり社殿がある。今いるところは稲荷神社の境内だ。


 アカを見ると制服を着た高校生だ。すらっとして、身長は180を少し超えている。相変わらずの美少女だ。赤い髪は短い。小顔で、色白、目はぱっちりと大きく、二重瞼、鼻筋は通っているがとんがってはいない。口は小さい。唇は厚くない。体は細身だが出るところは出ている。ややボーイッシュな美女だ。目立つぞ。今までこの年齢になったことはないから新鮮だ。


「シンも高校生」

 僕も同じ高校の高校生という設定だ。アカと並んで僕の方が背が高いから身長は180超えだ。


 ドラちゃんとドラニちゃんは小学生の姉妹に見える。


 小さい社務所の脇を通って神社の横手に出るとそこが神主さんの住居となっている。


「とりあえず家に行こう」


 住居は2階建。かなり大きい。屋敷といってもいい。程よく古びている。ポケットに入っていた鍵で玄関の引き戸を開けようとしたら中から開けてくれた。


 老夫婦がお辞儀をしている。

「いらっしゃいませ。私はここの神主をしています。こちらは老妻です。どうぞ中にお入りください」


「僕たちのことは」

「稲荷様よりお告げがありました。どうぞお役目の間、山城稲荷神社を自宅と思ってお過ごしください」

 神を信仰する数少ない者か。


「中に入りましょう」

「そうだね。ドラちゃん、ドラニちゃんこっち」

 神主の老夫婦に応接間に案内される。


 応接間に入って座卓の周りの座布団に座ると、ドラニちゃん程度の年齢の少女が転移して来た。


「あたしがこの星の神よ」

「稲荷様じゃ?」

「人が色々わかりやすいように解釈しているのよ。元は私一人よ」


 神主さんは慌てて座布団から降りて平伏した。


「そうかい。こんにちは。神さん」

「あれ、尊崇の念がないわね」

「一応僕とアカは神なので」


「本当だ。神だ。世界樹が神を送ってくれたんだ。良かった」

 神主さん夫婦は頭が畳を突き破りそうだ。


「何か頼み事があるそうですね」

「そうなの。人や動物を襲う変なのが増えて来て調べてみたら60年くらい前に空から降って来た石になにかくっついてきたとわかったの。退治して欲しいの。後はお願いなの」


 こいつ逃げるつもりだな。逃すか。しっかり腕を掴む。ドラちゃんとドラニちゃんが。僕がやるとセクハラ、ロリコンだと叫ばれても困る。


「あれ、逃げられない。おかしいな」

 やっぱり逃げようとしたのか。


「ちっちゃい神様、あなたはシンの眷属より力がないわ。いまのままでは神考課で甲乙丙丁戊の5段階評価の一番下の戊になってしまうわ」

「戊?」


「そう、戊」

「ひゃぁ、やだー」


「わかってると思うけど、戊になったら神籍簿から除籍よ。神の存在を消される。神の素に戻され、神の素プール行きよ」

「ふえーん」


「泣いたってダメです。戊になれば溶かされて、神の素になる。神格も何も保持できない。神の素プール行きよ」

 大事だからアカは二度言った。


「うわーん。お姉ちゃんがいじめる。お兄ちゃん、助けて~」

「ダメです」

 アカが厳しい。


「助かる道は一つ」

「何?」

 泣き止んだ。


「今度の退治にあなたも付き合うのよ。そうすれば下から二番目の丁くらいになるわ。そしたら怒られるだろうけど、溶かされはしないわね」

「やだー、できないー」

「やらなければ溶かされる」


「お父さんに言いつけてやるから」

「どうぞ」


「お父さん、お父さん、世界樹の神がいじめる」

 テレビの電源が入って、神様がこちらを見ている。


「お父さん、この世界樹がいじめる」

「シン、アカ、ドラちゃん、ドラニちゃん、観察ちゃん、娘をよろしく頼む。思う存分鍛えてくれ。わしも娘を溶かしたくはない」


「お父さんーー」

「頑張れ。今が正念場だ」

「ふえーん」


「世界樹の子ども達よ。娘の転移の能力は封印した。重ね重ねよろしく頼む」

「承知しました。お心に沿うよう、鍛えます」


「うむ。そうだ。鍛える依頼料だな。転移を拡張して星渡ができるようにしておく」

 テレビの電源が消えた。


「お父さーん」

 小さい神様がテレビのスイッチを入れてワイドショーを放映しているテレビにしがみついてお父さんを呼んでいる。シュールだ。


「ということで稲本さん、同居する神様が増えました」

 神主さん夫婦が恐る恐る頭を上げる。


「ふえーん。稲本、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいじめる」

 ゴン。

 アカが鉄拳制裁をした。

 稲本さんはびっくりしている。


「ダメです。人に頼る神はいません。戊です」

「うえーん」


 稲本さんを安心させてやろう。

「これでも神ですから大丈夫です。頑丈ですから」


 わかっているかもしれないが、一応紹介をしておこう。

「こちらでの名告りは、僕は、樹乃神、じゅのしんといいます。こちらは樹乃朱、あか。子供は、樹乃龍姫 りゅうき、樹乃龍華 りゅうか です。小動物は観察ちゃん。よろしくお願いします」


 アカが小さい神に聞いた。

「名前はあるの?」

「ないよー。うえーん」


「じゃあ、とりあえず名前をつけておこう。阿須神子あすかみこでどうだ?」

「お姉ちゃんの方が格好がいいよー。うえーん」


「それじゃ龍愛 りゅうあ でどうだ」

「苗字が格好悪いよー。うえーん」


「面倒だ。樹乃龍愛はどうか」

「いいよー。ヒック、ヒック」

 泣き止んで体が光った。ううむ。


「これじゃ親戚だな」

「いいんじゃない」


「龍愛、あそぼ」

 ドラちゃんがさそった。

「うん。ヒック」

 ドラちゃんとドラニちゃん、龍愛で外に遊びに行った。やれやれ。


「随分幼い神ね」

「ああ、上級神の娘だから迂闊にものも言えないと思ってだれも話しかけなかったのだろうな。それから何もしなかったからどんどん退行していったんだろう。多分話しかけたのは世界樹だけなんだろうな」


「溶かされないように鍛えてやらなくちゃね。親戚のような名前になっちゃたから尚更」


 稲本さんの奥さんがお茶を淹れて来てくれた。

「来週から学校ですね」


「そうなの」

「そうです」

 アカが仰っています。


「ドラちゃん、ドラニちゃんもそうなの?」

「そうです。小中高一貫校だから一緒に登校です。学校の名前は武蔵西南学園、ここは武蔵西南市です」


「龍愛は?」

「龍愛はドラニちゃんと同学年。小学校3年生、ドラちゃんは5年生」


「僕らは?」

「高校3年生」


「全て龍愛のお父さんが調整しておいてくれた」

「龍愛には出来そうにないものな。助けを呼べただけで上等か」


 外からアウアウという声が聞こえてくる。

「あれ、お狐さんみたいだ」


 玄関の引き戸が開いて、お狐さんが泣きながら走って来て飛びついて来た。

「アウアウアウ」


「どうした。大丈夫だよ」

『神様が遠くに行っちゃって、神様のいる場所がわからなくなっちゃった。一生懸命探してもわからなくなっちゃった。そしたらさっき急に神様のいる場所がわかるようになって転移したら社に出た。神様、神様、置いてかないで』

「そうか。そうか。ごめんね。頼まれて違う星に来たんだよ」


 お狐さんは僕の服をしっかり握って抱きついている。そうか、転移拡張機能星渡は、転移ができる全員に及んでいたのか。ありがたいね。


「もう大丈夫だからね。いつもの通り夜は一緒にいようね」

『うん』


 稲本さんが目を見張っている。

「お狐様」

 またまた平伏してしまった。


「どうぞお座りください。この子はね、僕の星のイヅル国の神様なんだ。お狐さんと呼ばれている。夜とか来ると思うけどよろしく」


「ほら、稲本さんだよ」

 お狐さんは僕の服を掴んで胸に顔を埋めて「アウ」。


 目の前の空間がゆらゆら揺れる。

「おとたん、勝手にこっちに来た」


 ジェナとチルドレンが熱帯号と雪原号に分乗して転移して来た。アーダも一緒に転移して来た。

 稲本さん夫妻は牙の生えている熱帯号と雪原号をみて気絶してしまった。


 マリアさん、ステファニーさん、オリメさん、アヤメさん、ブランコ、エスポーサ、ティランママ、ティランサン、リン、エチゼンヤ夫妻が転移して来た。


「まあ大変」

 ブランコとリンが稲本さん夫妻を夫妻の部屋に運んで行った。


「熱帯号と雪原号は2階の空いている部屋で人化してきて」

『はい、わかりました』

 すぐ人化して2階から降りて来た。


「他の星に来たことはないから、みんな来たくてやって来た。ちょっと熱帯号と雪原号の格好は刺激が強すぎたようだわね」

 エリザベスさんが代表して事情を説明してくれた。


 そうだね。他の星に転移できるとなったら来てみたいよね。明日は日曜だから下の街を観光してその後は事態がはっきりするまで僕らの星に戻っていてもらおう。


 しばらくしたら稲本さん夫妻が復活して二階から降りて来た。


「先程はすみませんでした」

 アイスマンとジュビアが稲本さんに謝る。


 アカが稲本さんに教えてやる。

「あの牙の生えていた2頭がこのアイスマンとジュビアです」

「そうですか。見たことがなかったものですから驚きました」


「今来ているのは僕の娘と眷属です。他の星を見たことがないので見学に来ました。明日一日見学して帰ります」

「はい。わかりました。2階は空いていますのでどの部屋をお使いになっていただいても構いません」


「かなり広いお宅ですね」

「広くなかったのですが、気がついたら広くなっていました」

 上級神の仕業か。僕らの宿を用意してくれたということだろう。


 人数が多くなったので、リンが稲本さんの奥さんを手伝って夕食を作った。


 食事はおいしかったよ。龍愛はドラニちゃんの隣に座って大人しくしていた。食事に感激していた。食事を食べたことがないらしい。


 龍愛は夜はジェナ達と枕投げをして遊んでいた。家は何気に頑丈な作りになっているらしい。ジェナやチルドレンが襖や障子にぶつかってもびくともしない。

 そのうち龍愛はジェナ達と寝てしまった。

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