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地球に異形出現 幼女神あわてる  作者: SUGISHITA Shinya


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020 奥多摩における異形による人間捕食事件 (上)

 山の中の一軒家の現場に病院の救急車で乗りつけた宗形医師。


 血は流れているが遺体はない。クマがどこかに引き摺り出したかと警察が地面を調べるが引きずった後もない。外に血もない。犬小屋、鶏小屋の周りに血があったが、調べるまでもなく、犬と鶏の血と思われた。警察が採取したので一応検査はするのだろう。


 発見者と思われるハイカーの老夫婦が事情を聞かれていた。ずいぶん気丈だと思った。顔色も良いし、態度も普通だ。それに姿勢が良い。並の人ではないだろうと宗形。


 山の奥から警官が宗形を呼びにきた。こちらは顔色が悪い。

「先生、来てください」

「わかったわ」


 暗くなるだろうから懐中電灯を持って警官について行く。

 道のない山の中を30分ほど歩いた。

 木が薙ぎ倒され少し開けたところに出た。


 見たことのない生物の死体があった。三頭分だ。一頭は雷に打たれたのだろう。それも特大の雷が直接落ちたようだ。大部分が黒焦げになっている。二頭は争ったような様子がある。一頭の腹が裂けている。


「クマではないわね。見たことはない。裂けた腹の中に服が見える。人体の一部も見える。まだよく消化はされていない。この死体をどうするか。どう公表するか、上層部に指示を仰いだ方がいい」


 宗形医師はメスを取り出した。生物の死体を切り開こうとした。切れなかった。


「メスでは切れないわ。これは本当に未知の生物、地球の生き物ではない気がする。警官。メスでは切れない、地球外生物の可能性があると報告しておきなさい」


「そんなこと」

「ぐずぐず言わない。いいわ。こっちでなんとかする。電波を拾えるところまで行くので現場を離れる」


 スマホを睨みながら10分ほど登ったら電波が入った。アンテナ一本だ。すぐ帝都大学法医学の教授のスマホに電話をした。


「もしもし、秡川タタリ(祟)教授。宗形。電波が悪いから、最初に聞いて」

「奥多摩で、メスで切れない地球外生物と思われる3頭の死体を発見、腹中に服を着た人体らしいものを確認。私を拉致したのは五日市警察署。至急警察上層部に連絡、対応をお願いする」

「わかった。おれはタカシ(崇)だ」

「聞こえない」


「くそ。宗形め。この頃出来たという異形等対策室に連絡するか」


 さて祓川に押しつけたから生物の死体のところに戻るか。あれ、道がわからない。もともと道はなかったけど。


 小さい動物がこちらを向いている。少し歩いてまた向き直る。

「案内してくれるの?」

 そうだとばかり少し歩く。さっきの倍くらい先に行って振り返る。案内してくれそうだ。


「生物の死体のところまでお願い」

 今度は振り向かず先に行く。木にも登らず先に行くから確実に案内してくれているのだろう。


 宗形は元に戻れた。小さい動物がバイバイした。多分。


 警官に敬礼された。

「本官は只今より宗形医師の指揮下に入ります」

「そう。連絡が来た?」

「はい。警察無線で指示がありました」


「生物が死んでいるこの現場を保存しておきなさい。部外者立ち入り禁止。無視して入ってくるものは撃ってしまえ」

「撃つのでありますか?」

「撃つ。拳銃は飾り物ではない。撃つのは今。今回は何があっても警察組織あげて隠蔽するから大丈夫。撃たなければお前は殉死だ。私は帰るからよろしく」


 顔色が悪くなった警官。

「一軒家の現場に行きます」

 逃げて行った。


 宗形が病院に戻ろうと救急車に乗ったところにスマホが鳴った。秡川だ。うるさいから電源を落とした。


 こちらは荒木田家。

「お母さん、ただいま」

「おかえり。円は」

「お姉ちゃんは一応教員をやっているから、職員室に行った。担任じゃないからもうすぐ帰ってくるんじゃない」


「ただいま」

「ほら、帰ってきた」


「奥多摩の一軒家でクマに住人が襲われたって。テレビでニュースをやっているよ。円と舞が行った近くじゃない?」


 ニュース映像はヘリで撮影した山の中の一軒家を映している。

「お母さん。行ったところは川だから映っていない」


 円は黙って映像を見ている。

 画面には、ヘルメットを被ったアナウンサーが登場した。


「今、警察と消防で山狩をしています。どこにクマがいるかわからないので私たちもここから先には入れません。一軒家の状況は分かりません」

 と言っている。


 報道各社のカメラが並んでいる。上はヘリコプターが飛んでいるがそろそろ暗くなる。


「あ、今一軒家の事件現場の第一発見者の情報が入りました。ハイキング中の老夫婦のようです」

「発見者の情報はありますか」

「はい。ええと外人のようです。特に不審な点はないので帰国の途についたそうです」


「舞、どう思う?」

「どうって?」


「外人で帰国の途だって」

「それが」

「鈍い。警察にとって話されたくない現場なのよ」


 円のスマホが鳴る。帝都大学武蔵西南総合病院からだ。

「お父さんからだ」

 電話に出る。


「何?」

「何とは何よ」

「あ、薫」


「ちょっとナイショの話があって、ここを使っているのよ」

「そこって、お父さんの部屋?」

「そう。今は円のお父さんは頭に血が昇って榊原さんのところに押しかけてファイトの時間だから使っている。鍵は開けっぱなしだったから侵入した」


「それで自分のスマホはどうしたの?」

「うるさい電話がかかってくるので電源を落とした。今日は奥多摩で何かあった?」


「あったかどうかはわからないけど、不穏な気配があった。それと雷が2回落ちた。1回目は山の中、2回目はすぐ近く。危ないとなってすぐ帰った」


「親切な雷ね。あれからすぐ道路は閉鎖になった。そのままいたら帰れなくなった。他に何かあった?」


「ドラゴンシスターズが外人の美人さんに連れられて来た。とてつもなく強かった」


「強かったって何したの?」

「木刀と棒の模擬試合」


「また木刀を持って行ったの。嫁の貰い手がなくなるよ」

「うるさいわね。そっちはどうよ。バイクでぶっ飛ばしているから誰も近づかないという噂よ」


「そういう不毛な話はやめよう。それで外人でしょう。一軒家の惨状を発見したのも外人。その美人さんはどうしたの?」

「バーベキューの途中でドラゴンシスターズと出た」


「どこへ」

「そんなこと知らないわよ。道路に駆け上がった」


「あんなとこ流しのタクシーはいない」

「マラソンして帰ったとか」


「ふん。ドラゴンシスターズは何年生よ」

「小学5年と3年」

「マラソンが出来るわけないじゃない」

「軽々出来そうだけど」


「へえ。そっちも面白そうね。まあいいわ。他には」

「落雷があってすぐ帰っちゃったからなあ。そうそう外人さんはドラゴンシスターズの家族だってさ。それと龍姫ちゃんのあだ名はドラちゃんだって」


「おい、宗形。お前何をしている」

「鍵が空いていたから不用心につき留守番。そして電話」

「どこと電話している。このごろ経費削減で外線使用はうるさいんだぞ」

「出てみる?」


「お父さん。また榊原さんと遊んでいるの?」

「いや、その、打ち合わせ」

「ではでは。お父さん頑張って」

 宗形に逃げられたお父さんである。


 翌早朝、日の出ととともにクマの捜索を開始しクマを発見し猟友会が射殺したとの発表があり、うす暗い森の中でクマの死体が横たわっている写真が公表された。


 午前のワイドショーはクマの話で大賑わいであったが、昼頃与党と野党第一党の国会議員の不倫疑惑が某週刊誌のネット版に出て、情報が次から次へとあちこちから出て来て、午後のワイドショーは国会議員同士の不倫疑惑一色になってクマの話は忘れ去られた。

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