161 タイソーの日常 (1)
投稿ミスがありました。ごめんなさい。
取り敢えず一編投稿しておきます。
次回は来週金曜日。
ロンドン、ゆったりした時間が流れる午後の官庁街。
紅茶を淹れるタイソー。タイソーが淹れた紅茶は秘書にも評判がいい。
いつかもこうやって人数分淹れて、秘書に配ってさて飲もうと思ったら黄龍がテーブルの上に現れたのだった。そういつも現れたのではたまったものではない。
カップを持って口をつけようとしたら卓上の電話が鳴った。
「内務大臣からです」
「いないと言え」
「もう在室と言ってしまいました」
ありがたい秘書だ。電話を取る。
「はい」
「すぐ来い」
「今忙しいのですが」
「どうせお茶の時間だろう。またヘリに乗りたいか?」
「いいえ。すぐ参ります」
あきらめてカップを置いて立ち上がった。
内務大臣室に顔を出したタイソー。
「お呼びでしょうか」
「おめでとう。スコットランドの北部のハイランド地方に旅行だ」
「へ?」
「奥さんを連れて行ってもいいぞ。ネス湖観光だ。バカンスはするだろうが、ちょっとした慰安旅行もいいものだ」
「いいんですか」
「いいぞ。出張扱いだ。もっとも旅費は一人分だが」
「・・・・・・」
「俺が室長をやっていた未確認生物対策室を改組して看板をIGYO対策室に架け替え、今は室長がミッチェル トムソンだ」
「ええ、そうですが」
内務大臣をはじめとするお偉いさんは未確認生物がIGYOと判明して皆逃げたとタイソー。
「お前は室長のミッチェル トムソンと友達だな」
「はあ、まあ、知り合いというか」
「そうか。良い友達を持ったな」
「ああ、ええ」
「IGYO対策室の友達を手伝って来い。ネス湖の調査だ」
「私のこちらの仕事は?」
「大丈夫だ。部下が有能なのはわかっている。すぐこの足でIGYO対策室に行け」
「なんで私なのでしょうか。IGYO対策室の仕事では?」
「対策室も人手が足りなくてな。トムソンからのご指名だ。良い友達を持ったな。友達といえばスコットランドにも友達がいたな。ハント伯爵といったな」
「ああ、ええ」
「スコットランドと縁があるな。お前にうってつけの仕事だ」
「それでネス湖になんの用があるのでしょうか」
「それはトムソンに聞け」
「はあ」
「早く行け」
「わかりました」
ちっとも分かりたくないタイソーであった。
しょうがないからIGYO対策室に足を運ぶ。
室長の部屋はこっちか。部屋をノックする。
「どうぞ」
「よく来てくれました」
「なんですか用とは」
「ネス湖に出るらしいのです」
「ネッシーか?」
「ネッシーだかIGYOだか今のところわかりません。ただ湖を大きな生き物が泳いでいるという目撃談がここ数ヶ月の間に複数あります」
「それで私に見に行けと」
「英国の役人でIGYOに対応できるのはタイソーさんしかいませんから。ちゃんと出張旅費は出します」
「内務大臣には何て言った?」
「タイソーさんはスコットランドに友達がいて中央官庁一あの辺に詳しい、調査に適任だと言いました」
「スコットランド大臣には」
「IGYO関係はIGYO対策室に一任されています」
「ネス湖は35、6キロあるぞ。だいぶ細長い。深さは200メートル強だ」
「ボートで一周するとか」
「襲われたらどうするんだ」
「そしたら討伐してください。こちらからリューア様に依頼した事にします。神社から討伐代が入るでしょう」
よく知ってやがる。
「ご心配なく、出張費は払いますから。大臣が奥さんを同伴させれば行くだろうと言ってましたよ」
「お気楽だな。何があるかわからないんだぞ」
「話してないのですか」
「話せるか。あれは口から先に生まれてきたようなものだ。うだつの上がらない官僚から出世したとあちこちに吹聴する」
「それは困りますね」
「大臣は何もわかっていない」
「そうでしょうね。IGYO対策室にするときにお偉いさんは一斉に逃げましたから」
「それで資料は」
「はい、これです。どうぞお持ちください」
「用意がいいな」
「私の仕事が減りますから」
呟くトムソン。
「何て言った」
「何も。で、いつから行っていただけるのでしょうか」
「これから仕事の調整をして家に返って奥さんのご機嫌を伺って早くて明後日だな」
「季節も良し、奥さんを連れて鉄道なんてどうですか。はい二人分の切符」
「いいのか」
「はい。奥さんもたまに良い思いをしなければ旦那の怪しい行動に目をつぶれなくなりますから」
「すまないな」
私が楽になるので切符など安いものだ。
「何か言ったか」
「いえいえ。何も。切符はエディンバラまでです。奥さんに観光してもらって抜け出せばいいと思いますよ」
抜け出せと言ったってそこからまたネス湖は遠いぞと思ったタイソーである。
エディンバラ大学に舞とルーシーがいたら黒龍か黄龍がいるかも知れない。そしたら頼むか。湖だからホーク愛でもいれば好都合だが。
などと考えているうちに切符は押し付けられていた。
「ではよろしくお願いします」
あきらめて自室に戻ったタイソー。紅茶は冷めていた。
部下を呼んで不在の間の仕事の手配をした。
「また内務大臣の仕事ですか?連絡係をつけましょうか?」
補佐の隣で美人秘書がにこにこしている。
「どうしたわけか奥さんを連れて行っていいことになった」
あからさまにがっかりする美人秘書。誤解されるだろうが。




