153 オーストラリア在住のカンナの日常 (6)
某国
「主席。SNSに我が国の潜水艦の大ジャンプ映像が多数アップされています」
「なんだと」
「海軍から、映像を見るにオーストラリアの沿岸調査に向かわせた潜水艦だと報告がありました。潜水艦は大ジャンプ後動けなくなって浮いているようです」
「すぐ調べろ」
壱番国
「大統領。SNSに某国の潜水艦の大ジャンプ映像が多数アップされています」
「なんだと」
「海軍から、映像を見るに場所はオーストラリアの領海内、それもだいぶ領海内に入り込んだ地点らしいと報告がありました。潜水艦は大ジャンプ後動けなくなって浮いているようです」
「ううむ。なんだと思う」
「R指定事案では」
「R指定は日本のAVだろう。あれは想像力をかき立てる。妄想モードだ。エロい。モロより興奮する」
「日本女性の恥じらい、隠す美学、淫靡さ、背徳感がなくなってあっけらかんと行為するようになってしまって、今やただのモロの劣化版ではないでしょうか。せっかくの日本文化を手放してしまえば日本は我が国の劣化版です」
「日本もそこまで行ってしまったか。牧場で家畜が番っているようなものか。残念だ。それにしてもお前も好きよのう」
「大統領ほどでは」
大統領、咳払いをした。
「話を元に戻そう。リューア様だろう」
「はい」
「自業自得だな。まあ我々は高みの見物だ」
「情報収集しておきます」
「頼んだ」
他国の不幸は蜜の味である。
英国
「首相。SNSに某国の潜水艦の大ジャンプ映像が多数アップされています」
「なんだと」
「海軍から、映像を見るに場所はオーストラリアの領海内、それもだいぶ領海内に入り込んだ地点らしいと報告がありました。潜水艦は大ジャンプ後動けなくなって浮いているようです」
「ううむ。なんだと思う」
「タイソー関連事案では」
「タイソーはどうしている」
「オーストラリア州政府首相のインタビュアーをやったらしいです」
「いつ行った?」
「つい先ごろらしいですが出入国の記録はありません。仕事を休んだ記録もありません」
「けしからん」
「日本の諺に藪をつついて蛇を出すというのがあります。タイソーをつつくと」
「ムナカタが出るというわけか。書類上我が国にいることになっているならそれは他人の空似だ」
「そうしましょう」
「それで潜水艦は自業自得だな。まあ我々は高みの見物だ」
「情報収集しておきます」
「頼んだ」
他国の不幸は蜜の味である。
北の大国
「大統領。SNSに某国の潜水艦の大ジャンプ映像が多数アップされています」
「なんだと」
「海軍から、映像を見るに場所はオーストラリアの領海内、それもだいぶ領海内に入り込んだ地点らしいと報告がありました。潜水艦は大ジャンプ後動けなくなって浮いているようです」
「ううむ。なんだと思う」
「えらいこっちゃ関連事案では」
「だろうな」
「はい」
「自業自得だな。まあ我々は高みの見物だ」
「情報収集しておきます」
「頼んだ」
他国の不幸は蜜の味である。
オーストラリア領海内でぷかぷか浮いている某国潜水艦は各国の注目の的である。晒しものになってしまった。
オーストラリア連邦政府
「首相。SNSに某国の潜水艦の大ジャンプ映像が多数アップされています」
「なんだと」
「海軍から、我が国の領海内、それもだいぶ領海内に入り込んだ地点と報告がありました。潜水艦は大ジャンプ後動けなくなって浮いているようです」
「なんでSNSに大量にアップされているのか」
「わかりません。ちょうどその場にいたとしか言いようがありません。それに」
「それに?」
「どの動画も潜水艦がジャンプする前から撮影を始めています。まるでジャンプすることを知っていたような動画です」
「リューア神関連事案だろう。国防大臣、国防軍司令官、保安情報機構長官を呼べ。ハシモトリューア神連絡担当官に連絡しろ」
「国防大臣達はもう来る頃です。ハシモトには連絡します」
ちょうどハシモト連邦政府リューア神連絡担当終身官(非常勤)から連邦政府首相宛、秘書官に電話があった。
「ちょっとぷかぷか潜水艦のことで話があるんだけど」
すぐ首相に電話が繋がれた。
「やっほー。元気?」
「・・・・・」
「今領海内で某国潜水艦がぷかぷか浮いているでしょう」
「ああ今聞いた」
「あれを領海外に曳航して爆破、沈没させてやろうか」
「それは」
「めんどくさくなると思うんだよね。あれはあの国の潜水艦だし。それにあの国製ディーゼル機関の潜水艦だからポンコツで価値はない。だけど領海内に侵入して浮上している潜水艦をそのまま逃したのではこの国のメンツが立たない。領海内で爆破したのではこの国とあの国の関係が難しくなる。だから領海外で爆破する。あ、タダでいいよ」
「タダだな。わかった。某国に貸ひとつというわけだな」
国際問題にならず某国に貸ができ、損せず解決できそうでホッとした首相である。
再び某国
「主席、日本在住の特務機関員にして龍愛様担当の劉紅花より連絡がありました」
「なんと言ってきた」
「龍愛様から例の潜水艦を公海まで曳航してやろうか?だそうです」
「料金を取るのだろう?」
「はい。一億円」
「高いではないか」
「その代わりオーストラリア政府に文句は言わせないそうです。領海内に浮いていた国籍不明潜水艦が沖に流され沈没してしまったということになるそうです。データは持ち出すなということです」
「沈没してしまったというのは我が国で爆破、沈没させろということだろうな」
「オーストラリア政府の顔も立てなければなりません。乗組員を救出後そのように処置する必要があろうかと」
「やむを得ない。近くに我が国の船がいるか?」
「たまたま近くの公海上に潜水艦救難母艦がいます」
潜水艦はオーストラリアの沿岸の海底データを収集する長期にわたる任務があり、その支援のための潜水艦救難母艦である。たまたまいたのではないがたまたまでなければならない。
「すぐ劉特務機関員と連絡を取り母艦を爆破予定地点に向かわせろ」
「承知しました」
「爆破したら遅滞なく代金を支払え。払わなければ切り取りにくるぞ。利息も持っていかれる」
「すぐ払います」
クルーザー
「話がついたよ。潜水艦を領海外に曳航すれば某国が爆破する。某国の潜水艦救難母艦がたまたま公海上にいた。曳航代は一億円だよ」
カンナが宗形に報告した。
「たまたまと言うより他にないだろう。よくやった。半分やろう。では早速曳航しよう」
「どうやって曳航するの?」
龍愛が聞いた。
「どうせ沈没させるのだからアンカーを投げて艦体に食い込ませて曳航しよう」
宗形がそう言って、さっさと船首に行き、アンカーを振り回し始めた。勢いがついたところで斜め上から艦体にアンカーが刺さるように投げつけた。大音響を発してアンカーが艦体に刺さった。というかアンカーが艦体を突き破った。
「よし。曳航開始」
宗形は乱暴である。
クルーザーが潜水艦を曳航し公海上に出た。待っていた某国の潜水艦救難母艦が直ちに潜水艦の乗員を救助。
こっそりデータを持ち出そうとした乗員、空から大鷲が急降下して足で掴んで上空へ。再び急降下し、乗員を海面に叩きつけた。分厚いコンクリートに超高速で衝突したようなものである。データも人も全壊、飛散した。
すぐハシモトから連絡が母艦にあった。
「約束を違えてデータを持ち出した乗員がいる。処分したがデータ持ち出しはそちらの艦長の指示か、主席の指示か?」
母艦の艦長が慌てて答える。
「いえ、持ち出そうとした乗員個人の暴走です。完全に個人の犯行です。犯罪者を処刑していただきありがとうございました」
艦長はすぐ本国にデータ持ち出し未遂事件を報告した。
母艦乗組員が潜水艦に爆弾を設置、宗形がアンカーを艦体から引き抜く。母艦とクルーザーが潜水艦から離れ、母艦がすぐ潜水艦を爆破し、潜水艦は沈没した。
爆破、沈没を確認してオーストラリア連邦政府から発表があった。
「我が国領海内に故障、漂流してきた国籍不明潜水艦は、領海外に漂流していき爆発を起こし沈没した」
某国
主席が潜水艦救難母艦の艦長からの報告を受ける。
「潜水艦からデータを持ち出そうとした乗員がいて、大鷲が掴んで海面に叩きつけた」
主席は真っ青になった。
続いて潜水艦を爆破、沈没させたと連絡を受けた。
「データ持ち出し未遂の迷惑料一千万を加え直ちに支払え」
直ちに一億円と迷惑料一千万円が龍愛口座に振り込まれた。
主席が呟く。
「潜水艦一隻と一億円が・・・。余計なことをして一千万追加になってしまった。・・・丸損だ。それにオーストラリアに借りができてしまった」
ガックリと肩を落とす主席である。
各国首脳
「あははは」
情報機関が仕入れて来た晒しものの顛末に笑ってしまった。
クルーザー
カンナが
「時間を少し取ってしまったのできょうの料金はタダにするよ」
参加者は珍しい潜水艦大ジャンプを見て、アンカーによる潜水艦曳航、爆破まで見られてその上今日の料金はタダである。大喜びである。




