015 体育の授業
今日も学校。
学校に着いて僕らは体育の授業だ。
剣道をやるらしいよ。面、胴、小手などをつけた。
あれ、小学部の荒木田先生が来た。なんでも有段者なのだそうだ。生徒に人気がある。美人で強いからね。剣道は男女混合で授業だ。
素振りをやって実技。荒木田先生と山田春ちゃんで教えるらしい。
山田春ちゃんは、アカに小手を決められて竹刀を落としてしまった。
体育教師の面目が、と思ったらしい。次は猛攻だ。軽くいなされてポンと頭を叩かれて倒れてしまった。かわいそうに。ムキにならなければいいのに。
と思いながら観戦していたら、荒木田先生に引っ張り出された。
授業だからね。しょうがない。ええと中段に構えるのか。荒木田先生も構える。ふうん。結構やるね。では一手ご指南を。
「冗談でしょう」
荒木田先生が竹刀を引いてしまった。一手ご指南が聞こえてしまったらしい。
「止め、止め、とんでもないわ」
生徒はポカーンとしている。
「そうねえ。朱さんと模範試合をお願いするわ」
「僕は学校の剣道は知りませんよ」
「なんでもいいわ。流派はあるの?」
「神流一刀両断派、神流無手勝派、神流忍術派、神流必殺派などかな」
「恐ろしい流派だわね」
「実戦流派ですから」
「ちょっと振ってもらえればいいのよ。みんなにわかるように」
「そうですか。ではあそこにかかっている木刀でやりましょう」
山田春ちゃんが木刀を持って来てくれる。
僕とアカは防具を外した。やりにくくってね。
ではやろう。
まずは素振り。あまり良い木刀ではないけどいいか。
アカが
「行きます」
「はいよー」
打ち込んでくる。
カンカンカンと木刀がぶつかる音が響く。
数分やった。この辺でいいかな。
アカと木刀を少し力を入れて振る。
二人の木刀がぶつかったところでスパッと切れておしまい。
カラカラと木刀の先が転がる。
「こんなものでいいでしょうか」
「・・・すごいわ」
「実戦流派ですから」
「そうみたいね。今の剣道界でかなうものはいないでしょう」
春ちゃんが木刀の切り口を見ている。見ても仕掛けはないよ。
それで僕とアカはもう剣道の授業はしなくていいそうだ。
暇だから体術の練習をしていよう。手刀、足刀が空気を切り裂く音がする。あまり力を入れると体育館が切れてしまうから程々にしておく。
あれ、春ちゃんが真っ青だ。少し空手をやるらしい。
混ぜてやろうか。手招きすると首が取れてしまうくらい横に振る。お断りされてしまった。
体育の授業が終わった。私立だからちゃんと更衣室がある。
着替えて、アカと舞さんを待っている。荒木田先生がやって来た。
「こんど神流を教えてくれない」
「いいですよ。いつでも神社に来てください」
「お願いするわ」
龍愛の眷属候補第一号だな。
アカと舞さんが更衣室から出て来た。姉妹でも学校では教員と生徒だからね。目で合図しただけ。
それでは教室に戻って授業だ。
みんな体育の後で眠いようだ。眠い時間が過ぎて昼休みになった。
今日は舞さんは弁当を持参したそうだから三人で屋上に行こう。屋上は庭園になっていて自由に出入り出来る。
屋上にはあちこちテーブルと椅子が置いてある。さすが私立である。
僕らは舞さんと奥まったところのテーブルにした。
アカが料理を出す。サラダと魔肉のステーキとパンだ。舞さんが驚いている。
「どなたが作ったんですか?」
「二百人衆です」
「二百人衆って?」
「僕らに仕えてくれる人達です」
「????」
「舞さんのお弁当は綺麗ね」
「お母さんが作ってくれたの」
「ピクニック弁当のようだね」
「明日は小学3、4、5年が近くの山へピクニックだからお母さんが予行演習で作ってくれた」
「明日はピクニックだっけ」
アカがそうだと言っています。
「山か。龍姫と龍華がいるから大丈夫だけど」
そう言いながら焼きたて魔肉を頬張る。うん、美味しい。
「その肉は豚でも牛肉でもないようですけど」
「こちらにはありません。こちらの人は食べられるかなあ」
「水を飲んでもらえば」
「そうだね」
僕らの星の特殊な水だ。
「この水を飲んでもらえますか?そうすれば食べられるかもしれません」
アカがコップの水を差し出す。
舞さんが目をつぶって飲んだ。体が光った。本人は目をつぶっていたから気がつかなかっただろう。龍愛の眷属候補第二号だな。
「大丈夫そうです」
「ではステーキを一枚どうぞ」
「三分の一くらいでお願いします」
「そうですか。それでは三分の一にして、はいどうぞ」
アカが皿を出して上に乗せてやる。ナイフとフォークも添えた。
「牛肉よりおいしい。それに温かい」
「それは良かったです」
「かみごたえがあるけどそれでいて口の中でほろっとほぐれてすごく美味しい」
最高の魔肉だからね。だけどこちらの普通の人が食べたら毒だ。
「龍姫達の弁当は?」
「稲本奥さんが作るから大丈夫です」
「そうか」
「神さんと、朱さんの親は?」
「いないんですよ」
「ごめんなさい。聞いちゃって」
「いいんですよ。その代わり支えてくれる人や仕えてくれる人がいるから」
「神さんと朱さんはどこかの国の王族なんですか」
「王をやっています」
「ええええ」
「あ、昼休みが終わってしまいます。教室に戻りましょう。午後は数学ですので消化に悪そうですね」
はぐらかされてしまった舞。
舞は朱さんがニコニコしているから冗談だろうと思ったけど、冗談のニコニコか、本当だからのニコニコなのかどっちか判断がつかなかった。午後の授業は数学でなくても消化が悪そうと思った。




