014 学校の裏山
登校二日目、龍姫、龍華、龍愛が階段を駆け降りて行く。龍愛も途中躓いたが、泣かずに降りられるようになった。
僕とアカは手を繋いでゆっくり降りる。
参道の途中で舞さんが待っていた。
「おはよう」
「おはようございます」
手を繋いでいる僕らを見て目が大きくなった。もう隠さないんだという心の声が聞こえる。
ドラちゃんたちは走って行った。待ってよーと龍愛の声が聞こえる。
参道を出て右に曲がった。
歩いて来る生徒たちも増えた。
手を繋いで歩く美男美女の神と朱、その脇を歩く舞の三人は目立っている。あちこちから三人を話題にした話し声が聞こえる。
校門に着いた。今日もゴリラ一号が立番である。
「おはようございます」
舞が挨拶する。
ゴリラはこっちを見ずに挨拶する。見ないことで赤面予防することにしたらしい。
「おはよう」
ちらっと僕とアカが手を繋いでいるのを見たが何も言わなかった。
教室に入っていくと僕とアカが手を繋いでいるのを見てざわついたが、一緒に住んでいると昨日知ったので然程の騒ぎにはならなかった。一緒に住んでいる方が大問題である。
今日も退屈な授業が始まった。
『シン様、シン様。学校の近くの山に変なのがいるよ。学校を狙っているみたい。学校に向かっているよ』
『そうかい。ありがとう。行ってみる』
さて善は急げだ。僕とアカがみんなの意識からなくなるようにしておこう。
アカと窓から飛び出す。あ、ドラちゃんとドラニちゃんが気がついた。すぐ窓から出て来る。龍愛はドラニちゃんがぶら下げて来た。
さて行くか近くの山。ポンと校舎を飛び越える。山を一つ越えた。
いるね。2体だ。四つ足、熊ぐらいだ。まだ小さいのだろうな。
「龍愛、よく見ておくんだよ」
ドラちゃんが棒を収納から出して、一体を唐竹割りにした。
残った一頭は何が起こったか一瞬わからなかったようだ。
棒を龍愛に進呈する。
「龍愛、棒で切る」
ドラニちゃんが龍愛を残った一頭の前に投げる。ドラちゃんとドラニちゃんはスパルタだ。
ふえーんと泣きながら龍愛が出鱈目に棒を振る。
残った一頭が龍愛を殴り飛ばす。龍愛は木に叩きつけられ木が折れた。
ドラちゃんがすぐ龍愛に声をかける。
「龍愛、お前はこの星の神だ。この星を守らなければならない。起きてかかれ。相手をよくみて切れろと棒を振れ」
「ふえーん。お姉ちゃんがいじめる」
「甲乙丙丁戊の戊だよ。溶かされるよ。踏ん張れ」
「切れろ、切れろ、切れろ」
「相手をよく見ろ」
「切れろー」
片手を切り落とした。
「ほら出来た」
相手は怒り狂っている。残った片手で龍愛を捕まえに来る。
「よけて切れ」
龍愛が飛び上がって、体の下を通過する腕を切った。
相手は山の奥に逃げかける。
「龍愛、逃すな」
龍愛が後ろから脚を二本一緒に切った。
倒れた。
「止めを刺せ」
龍愛が首を落とす。
「龍愛、出来た」
龍愛がにこにこしている。
よしよしいい子だ。頭を撫でてやる。
「龍愛、こいつか」
「そうだよ。この星のあちこちにいる。これでないのもいる」
僕が相棒を出して死体の胴を切り開く。
ずいぶん特殊な生き物だ。心臓に当たるものがない。ピクピクと血管らしいものが収縮を繰り返している。それが心臓の役割をしているのかもしれない、血液相当は青い液体だろう。収縮が止んだ。
肺に相当するものもある。肺呼吸しているらしい。消化器らしいのも当然ある。脳に相当するものは頭部にある。
あとはそのうちこの星の研究者に研究してもらおう。
体組織の密度は異様に高い。重く、丈夫だ。骨も硬い。脳を保護する骨も頑丈だ。これではこの星の武器では役に立たないだろう。
観察ちゃんが何人もやって来てしっかりと観察して記録を始めた。ドラちゃんとドラニちゃんに腕や脚を切り開いてもらって見ている。解剖だね。二頭解剖した。時々世界樹の棒で切って見たりしている。解剖学者になれそうだ。
『シン様。シン様。頭に脳相当のものがあって、そこから神経らしいのが首を通って体の方に行っているよ。首を落とせば信号が体にいかなくなるから死ぬよ。胴体には心臓に相当するものがないし、ほとんどの臓器が複数あるから、胴体を傷つけて殺すなら、青い液体を流してしまうか、バッサリと二つに切らなければなかなか死なないよ」
「そうか。わかった。ありがとう」
これがあちこちにいるのか。
「龍愛、強くならなくてはね。それと眷属を作らなければね」
「うん」
「とりあえずトレーニングと勉強を頑張ろう」
「ううん」
やや返事が悪かった。
「棒はやるから収納にしまっておきな」
流石に神なので自分の収納はある。棒をしまった。
授業が終わる時間が近い。
ドラちゃんが死体を消した。
アカが倒れた木を直してくれる。暴れた跡も元通りにしておく。
片付け終わって、転移で教室に戻る。授業が終わるところだった。危ない危ない。
無事に学校は終わって、舞さんと一緒に帰宅した。
もちろん龍愛は夕練だ。そのあとは勉強。怠けていたツケだ。大変忙しい。この星のために頑張ってもらおう。