013 龍愛のトレーニング
舞さんを見送って参道を歩いて階段下に着くと上からドラちゃんが駆け降りてくる。次は階段を転げ落ちてくる龍愛、その後をドラニちゃんが降りてくる。
「ラスト、一本」
ドラちゃんが階段を駆け上がる。
階段下に落ちて来た龍愛、ドラニちゃんに尻を叩かれて、登らないと夕食抜きだよと言われて四つん這いでふえーんと泣きながら階段を登って行く。
神だから傷一つつかないとわかっていても幼女が転げ落ちてくるのは心臓に悪いね。泣きながらでも登って行くからいいか。バリアは張ってあって人には見えないし。
「人が見たら幼児虐待と言われそう」
「そうだね。早く力をつけてもらわないと神考課で戊になってしまうからしょうがないだろう」
アカと話しながらドラニちゃんの後をゆっくりついていく。
いつの間にかアカと手をつないでいた。
龍愛が階段を登り切った。
ドラちゃんに頭を撫でられている。ドラニちゃんが汚れ飛んでけと埃を落としてやる。服は制服だけど上級神製だろう、破けていたり綻んだりはしていない。
抱っこしてやろう。
「頑張るんだよ。みんな心配しているんだから」
背中をポンポンするとヒックヒックがおさまった。
「さ、着替えて夕食にしよう」
龍愛は鳥居の根元に置いてあったランドセルを背負って、ドラちゃんとドラニちゃんの間に入り手をつないで歩いて行く。3人で夕食、夕食と言いながらニコニコしている。さっきまで泣いていたけど後を引かないらしい。いい事だ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「おばあちゃん、夕食」
龍愛が元気回復だ。
「はい、はい。手を洗って着替えてね」
「手伝いを呼びましょうか」
「大丈夫です。この話があってから、夫も私も腰が痛いのが治りましたし、膝も痛く無くなって達者に歩けるようになりました。体の不調は全部治りました。おかげで医者通いをしなくて済むようになりました」
上級神からの家賃の一部だろう。
夕食を稲本さん夫婦と一緒に美味しく食べて、お風呂に入って、さて龍愛の特訓。
「龍愛、勉強だよ」
「龍愛、わかんない」
「心配しないで。小学校一年から始めるから。今日は幼稚園も追加。幼稚園から小学一年までやろう」
「ひぇー」
ドラちゃんが、龍愛の首根っこを掴んで2階に行った。2階の一部屋に押し込んで缶詰状態で教えている。ドラニちゃんも一緒だ。
寝ちゃっても悪いし、散歩だな。
「散歩に行って来ます」
「はい。行ってらっしゃい」
もう暗くなっているからアカが腕をとってくっついてくる。
階段を降りて参道を大鳥居の方へ。あれ前を委員長が歩いて行く。大鳥居の先にコンビニがあったから、コンビニか。参道は暗いから危ないね。一緒に行こう。
「こんばんは」
「あ、こんばんは」
アカが僕の腕を取っているのをしっかり見た。
「あの、二人は」
「こういう関係」
「どういう」
「こういう」
アカが答えてくれる。
「付き合っているのでしょうか」
「そうねえ。そういえばそうだけど少し違うかも。いつも一緒」
「夫婦のような」
「そう。ジェナという子供もいるし」
「え、ええええ、子供、外人」
「龍姫と龍華の妹です」
「それじゃ、龍姫ちゃんと龍華ちゃんは二人の子供?」
誤解されるといけないから僕が答えてやろう。
「子供といえば子供、違うといえば違う」
「コンビニに着きましたよ」
アカが教えてくれる。
僕らは外で待っていることにした。
舞さんはコーヒーを買いに来たらしい。紙コップに蓋をして出てきた。
「お待たせしました」
「いいえ」
二人で腕を組んでいれば時間なんて関係ないだろうと思った舞。
再び大鳥居をくぐり参道を登る。少し坂道になっている。
舞さんが思いついたらしい。
「あの、みなさんの役所への届けはどうなっているんでしょうか」
遠回しに戸籍のことを言っているんだね。答えてやろう。
「この国の人ではないので戸籍はありません」
暗礁に乗りあげた舞であった。調査終了に近い。
横道に近づいた。
「それじゃあまた明日」
「はい。また明日」
家に戻ると、ドラちゃんとドラニちゃん、涙目の龍愛が2階から降りてくる。
ドラちゃんとドラニちゃんを抱っこしてよしよししてやる。
「進んだかい?」
「うん。今日は幼稚園と小学一年の分を叩き込んだ。明日は2年、明後日3年の分」
「叩き込んだんだ?」
「そう。痛かったみたい。意外と地頭はいいので叩き込み甲斐があった」
へえ。どうやったのかな。まあいいか。3日やれば小学3年まで済むから。それからあとはデータベース構築でいいかもね。




