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地球に異形出現 幼女神あわてる  作者: SUGISHITA Shinya


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127 海のIGYO (2)

 サメのようなものは、オーストラリアの海岸沿いにクジラを捕食しながら移動していた。

 そのうちクジラが逃げてしまって餌が無くなった。


 海岸沿いに泳いでいたら小さい生き物がいた巣よりはるかに大きい巣が移動しているのを見つけた。


 巣のあちこちから小さい生き物が見える。これは大きい巣だと思った。少し距離をとって、フルスピードで巣に突進、海面下の巣を破った。


 船に衝撃と衝撃音があり、船長が状況確認を命じた。浸水、浸水と報告があり、隔壁閉鎖を命じた。

 うまく隔壁が閉鎖できたようで浸水は制御できた。


 船長は船内に放送した。

「乗客の皆さん、クルーズはお楽しみいただけていますでしょうか。明日シドニーに入港となります。なお、今衝撃がありましたが、本船は二重、三重の安全対策をとっています。安心して航海をお楽しみください」


 放送が終わると同時に再び船に衝撃が走る。衝撃音が地獄のゴングのようだ。船長は再び隔壁閉鎖を命じたが、浸水が続けば喫水が下がる、隠しようがない。もし機関室が浸水すれば船が動かなくなる。最悪沈没だ。乗客乗員合わせて約4000人。タイタニックを軽く超えてしまう。最悪の事態が頭をよぎる。


「キャプテン」

 船員がとがった声で呼びかけた。

「分かっている。遭難信号発信。船内放送をする」


「乗客の皆さん、再度船に衝撃を感じました。原因は不明ですが、安全のため甲板に上がってください。甲板で船員の指示を受けてください。なお、荷物は持たず、「避難」してください」


 うっかり避難と言ってしまった船長、船内はざわついた。

 すぐもう一度衝撃と衝撃音が響く。乗客は我先にと甲板へ移動を始めた。


 機関室に浸水。エンジンが止まった。

 さらに数回衝撃と衝撃音がする。船はじわじわと沈み始めた。


 船長は衛星電話で船の運行会社に沈没しつつあると連絡した。

 船会社は沈没すれば4000人犠牲になる。歴史に名を残す。良い話ならいいがこれは再起不能になりそうだと思った。急いでオーストラリア連邦政府に連絡した。


 一方、遭難信号を受信したオーストラリア連邦政府機関、遭難信号を発信したのは豪華クルーズ船、クイーン・アンジェリーナ、乗客乗員約4000人と知る。

 もし沈没なら大惨事である。正確な記録が残るなかでは世界最悪、史上最悪の海難事故になってしまう。

 すぐ船会社からもクイーン・アンジェリーナが沈没しつつあると連絡が来て焦る。


 すぐさまオーストラリア連邦首相が対策会議を連邦首相が議長となり、国防省、外務・貿易省、移民・国境警備省の各大臣、ニューサウスウェールズ州首相で組織した。事務局は首相・内閣府とした。何かあるとまずいから他の省には連絡員を出させた。州関係者はビデオ参加である。


 まずは海軍と空軍に現場の情報収集、救難出動を命じた。現場に近いニューサウスウェールズ州政府も情報収集に当たることになった。


 会議が終わる頃、州政府の連絡員が発言を求めた。

「しばらく前にホエールウオッチングの観光船が沈没しましたが、原因は船底に開いた大穴です。外側から内側に力が加わったのは分かりましたが、何が衝突したのかいまだに分かりません。報道対応に当たった観光船会社のアルバイト嬢のハシモトが、「原因がIGYOなら被害が拡大し続ける。人の兵器では対応できない。リューア様に討伐をお願いしなければならない」と言っていました。関係ないかも知れませんが一応ご参考までに」


「なんだ、それは。アルバイトの言うことだろう。そんなことはこの重大な会議に持ち出すことではない」

 外務・貿易大臣がせせら笑った。小声でアボリジニがと言った。


「待ってくれ」

 国防大臣が発言した。

 首相が発言を促す。


「IGYOは聞いたことがある。大国が軒並み被害にあったという噂だ。クルーズ船は衝撃があって、船底が破損、隔壁閉鎖と聞く。それが時間をおいて数回だ。暗礁ではないだろう。氷山はない」


「IGYOだというのか」

 外務・貿易省大臣が気色ばむ。

「IGYOは英国にも現れたと聞く。タイソーという知り合いに聞いた」


「英国にもか」

「そうだ。英国は確かな話だ。他はうわさ話だが、北の大国、中心国、壱番国、EU、日本など軒並みやられているようだ。壱番国の大統領の踊りを見たろう。あれはリューア神と言う神を誹謗、中傷したから神毒にあたったとタイソーが言っていた」


「リューアなど神であるものか。神なら邪神だ」

「そう言ったら日本の首相の頭が破裂したという話だ」


「あれは不倫の幸せの絶頂の腹上死だろう」

「そういうことになっているが、事実は違う」

「どこから聞いた」

「タイソーだ」


「誰だ、さっきから出てくるそのタイソーというのは」

「英国政府の高官だ。MI6にもパイプがあるらしい」

「・・・・・」


 会議は終わらなくなった。


「それでさっきのハシモト アルバイト嬢は今どうしている?」

 首相が州政府の連絡員に聞いた。


「所在はつかんでいます。今日日本に帰国と聞いています」

「止めろ」


 州政府連絡員が電話を始めた。

「今日でビザが切れると言っています」

「ビザを延長すると言え」


 また電話でやり取りした。

「面倒だからいやだと言っています」


「そいつは英語は流暢なのか?」

「はい、この間記者会見を上手にさばきました。ネイティブ英語+度胸です」


「なら、永住権をやるといえ。マスコミ関係の高度専門日本語通訳とでもしておけ」


 再び電話で話す州政府連絡員。

「承知したと言っています。ただ飛行機のキャンセル料を支払えと要求されました」

「払う。それでスマホをマイクに近づけろ」


「オーストラリア連邦首相のアントーニオ アルバーニだ。ハシモト嬢、教えて欲しい」

「何でしょう」


「IGYOとは何か」

「地球外からの侵略の先鋒です」


「正気か?」

「電話切りますよ」


「待て、分かった。リューアとは何者か?」

「神様だよ」


「どこにいるのか?」

「山城稲荷神社」


「どうして知っている?」

「龍愛ちゃんの眷族と友達だ」

「・・・・・・」


「クルーズ船の船底に何ヶ所も穴が開いた。IGYOと思うか」

「魚雷、暗礁でなければIGYOだろう」


「討伐はどうやって頼むのか」

「頼んだことないから知らない。英国のタイソーさんに聞けば。英国と仲良しなんでしょ」


 タイソーが出て来た。繋がった。この元アルバイト女は本物だと首相は思った。


「悪いが急いでいる。4000人乗船の船が沈没しそうだ。そちらから友達に話してくれるか」


「わかったけど、こっちのアパートは引き払ってしまったからなあ」


「とりあえずホテルに泊まってくれ。料金は支払う。住むところはなんとかする」


「それじゃ一度電話を切るから待っていて。全権委任出来る人をそこに呼んどいてね」


 電話が切られた。

 どさくさに紛れてこの件とは関係ないだろう住むところまでも強要されたと思った一同である。


「タイソーが話に出て来た。さっきもタイソーと言っていたな」

「はい。英国のタイソーです」

「そう言っていた。本物だろう」


 5分ほど全権委任を誰にするか話し合っていたら州政府連絡員のスマホが鳴った。ハシモトからだった。

「今から会議室に行く」


 会議室に若い女性が出現した。一同驚いて女性を見ていると女性の足下でワンと鳴き声が聞こえた。二ヶ月ほどの子犬がいた。


「黒龍というんだよ。誰が全権委任された代表?」

 首相はあまりの早業に「ああ、まだ決めてなかった」。


「じゃあのストーカーおじさんでいいや。どうせ住むところも手配してもらうんだし。早いほうがいいんでしょう?あのおじさんでいい?」

「あ、ああ。構わない」


「首相、私でいいんでしょうか?」

 モニターの画面で州政府連絡員が聞いた。

「みんな、いいな」

「異議なし」

 一人小さい声の人がいた。


「それじゃ行こう」

 女性と犬が消え、次にモニターの先の州政府連絡員が消えた。


「消えた」

「本物だ」

「そうだな」

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