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地球に異形出現 幼女神あわてる  作者: SUGISHITA Shinya


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012 高等部3年1組の神と朱

 竹田先生が教室の入り口の引き戸を開ける。

「どうぞ」

「紹介もまだですから先生から先に」

「それでは失礼して」


 竹田先生、ついでシンとアカが教室に入る。

 教室は静まり返った。


「みんな静かに。もう静かか。両親の仕事の都合で転入して来た、樹乃神様、樹乃朱様です。自己紹介をお願いいたします」


 あのゴリラが様付けで生徒を紹介した。何者なのだろうと教室がざわつく。


「樹乃神です。仕事の都合で朱とこちらに引越して来ました。よろしく」

「樹乃朱です。山城稲荷神社に住んでいます」


「何か質問があるか?」

「はい」

 何人か女生徒が手を挙げた。


「荒木田」

「学級委員長をしている荒木田です。神さんと朱さんは兄妹でしょうか」

「いいえ」

 朱が答える。


「神さんはどこにお住まいですか」

「山城稲荷神社です。稲本さんにお世話になっています」


 教室がざわついた。一緒に住んでいるって事と教室のあちこちでささやかれる。


「一緒に住んでいるのですか」

「そうです」

 堂々たる返事に後が続かない荒木田であった。


「子供たちと一緒に住んでいますが」

 朱が親切にも爆弾を落とす。


「小学部5年の龍姫、3年の龍華、龍愛です」

 僕がフォローしておく。


 「子供を三人も」と思った荒木田であったが、小学5年では子供である可能性はほとんどない。子供ではないだろうと結論づけた。しかし子供の名前は3人とも龍がついている。皆親戚かと思った。


「すみません。もう一つ。小学校の3人の姓はなんでしょうか」

「樹乃ですよ」


「荒木田、その辺でいいんじゃないか」

「わかりました。ありがとうございます」


 たまに仕事をする竹田先生であった。もっと早く止なくてはと思ったが、荒木田学級委員長は、美人の荒木田先生の妹だから苦手な竹田先生であった。もちろん荒木田先生にそっくりな美人である。


「ほかにないな。席は荒木田の後ろの席です」

 荒木田学級委員長の後ろに朱、その次に僕が座った。窓際の席だ。飛び出すのに都合がいい。


 授業は退屈である。龍愛の親神様からこの星のデータをもらったから学ぶ必要がない。


 龍愛はデータベースを作らなかった。やはり甲乙丙丁戊の戊である。まずは龍愛にデータベースの構築をさせよう。それがすめば授業など問題はない。それまではドラちゃんとドラニちゃんから特訓だ。


 僕は世界樹のデータベースを使っていて、データベース自体は作ったことがないから面白いな。


 そんなことを考えているうちに午前中の授業は終わった。

 昼食は小学部と中学部は給食で高等部は給食なし。弁当持参もあり、学食もありだそうだ。


「朱さん、神さん、一緒に食堂に行きませんか」

 荒木田委員長に誘われてしまった。収納に入っている二百人衆の作った食事をアカと食べようと思ったけどまあいいか。


「はい。ご一緒しましょう」

 朱が返事をした。三人で教室を出た。荒木田さんも美人だから目立つ。


「荒木田さんは、荒木田先生の妹さんですか?」

「はいそうです。姉がまどか、私がまいといいます」


「二人合わせて円舞ですか」

「一人一人の名前はいいんですけど、二人合わさると何だかなあと思います」


「いい名前ですよ。そうそう、龍姫の担任が荒木田先生でした」

「そうなんですか」

 それならお姉ちゃんに色々聞いてやろうと思った。


 話しているうちに学食についた。

「ここで食券を買います」


 ラーメン・うどん・そば等の麺類、丼物、定食などだ。久しぶりにうどんを食べるかな。肉汁うどん。朱は鴨そば、舞さんはコロッケ定食だ。


 カウンターで料理をもらって、テーブルは隅の方が空いていたのでそちらに行った。

 4人席に3人で座ったが、相席を申し入れる勇者はいなかった。


 肉汁うどんはなかなか美味しい。うどんは工場生産だろうがツユが美味しい。久しぶりだ。醤油ベースのツユ。


 で、少ししたら、荒木田委員長の身上調査が始まるわけだ。

 舞さんは髪が長く、瓜実顔だ。つまり色白で目は切れ長、鼻筋が通ってやや面長の顔。和風美人だ。荒木田先生によく似ている。年の離れた双子だな。見つめていたら赤くなった。


「ええと、ああもう、忘れちゃった」


「荒木田さんはどこにお住まい?」

 朱が聞いた。

「旧市街よ。稲荷様の氏子」


「近いから遊びに来たら」

「いいの?」

「もちろん」


「そういえば音楽、美術、書道は何をとった?」

 荒木田調査官の予定していた身上調査は後回しになったらしい。話題が変わった。


「なんだっけ」

 朱に聞いた。

「音楽です」

「音楽だそうです」


「いつも一緒ね」

「はい、そうです」

 あっけらかんと答える朱。


 あまりにあっけらかんとしていてそれ以上追求ができない。

「龍姫、龍華、龍愛ちゃんは名字が一緒だけど」

「龍愛は親戚の子です。僕が名付けました」


「名付け親?」

「そうです。だから責任を持って預かっています。今まで怠けていたから特訓ですね」


「もしかしなくても一緒に住んでいるのでしょうか」

「はい、稲本さんのところにみんなで寄宿しています」


「龍姫、龍華は妹です。子供のようなものですけど」

「え、ええ」


 どんな関係だかわからない。龍愛ちゃんが親戚の子だというのは確定した。龍姫、龍華ちゃんは朱さんの妹と確定。本人が言っている。神さんはどう絡んでくるのだろう。


「そろそろ昼休みが終わりそうだな」

「戻りましょう」

 まだ途中だと思った荒木田調査官、時間ではしょうがない。

「はい。そうしましょう」


 午後の授業も無事終わった。


「途中まで一緒に帰りましょう」

 荒木田調査官は調査し残したことがあるらしい。

「はい」

 朱が返事をした。


 クラスの同級生はチラチラとこちらを見ている。声はかけてこない。今日は荒木田調査官に任せたようだ。


 学校の門を出て参道方面に歩いて行く。道ゆく人が振り返って見ている。振り向いて歩き続けるから電柱にぶつかった。痛そうである。


 荒木田さんに聞いてみる。

「鉄道の駅はありますか」

「はい。この道を真っ直ぐ行くと鉄道の駅です。参道の前を横切って行きます」

「学園の反対側か」

「そうです」


 大鳥居を潜って参道を神社方面へ。舞さんは参道の途中の横道に入って

「また明日」

「はい、さようなら」


 舞さんを見送った。チラッとフサフサした尻尾が見えた。観察ちゃんが送って行く。

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