118 大統領代行 リューア神に討伐依頼することを決定する
「法の定めにより今から俺が大統領代行だ。まずはあの実業家の奴は首だ。奴が作った部署は直ちに廃止、全員解雇」
「IGYO対策室は復活、室長、室員全員直ちに呼び戻せ。CIA長官、副長官は首。前職が復活。今の統合参謀本部議長は代理をつけるのを忘れた。代理だった。前政権時代の統合参謀本部議長が引き続き職務にあたっている。そうだな。慣例通りだ。国防長官は罷免だ。とりあえず前職が復活」
「今はこの体制で行く。それと側近、補佐官は全入れ替えだ。今言ったことを実行したらおまえらは出ていけ」
すぐ大統領代行は自分の側近を呼んだ。
一時間後、復活したIGYO対策室長 レナード ブライトマンが、国防長官、CIA長官、統合参謀本部議長を伴って大統領執務室にやってきた。
大統領代行が指示する。
「まずは公園で犠牲になった戦車隊の隊員の遺体を回収。IGYOの後方から回り込めばいいだろう。遺族に知らせよ。大統領が犬死にさせたようなものだ。名誉の戦死だ。落ち着いたら軍葬とせよ。その手続きもしてくれ。それからIGYOの進行方向の街の治安維持、避難誘導にあたれ。急げ」
「承知しました」
国防長官と統合参謀本部議長が執務室を急ぎ足で出て行った。
「ブライトマン室長。早速だが、今我が国を荒らしているIGYOの討伐について意見を聞きたい」
「大統領代行。IGYOは人類の兵器では討伐できません。ただリューア様とその眷属のみが討伐できます。リューア様にお許しをいただかなければ討伐してもらえません」
続いてCIA長官が発言を求めた。
「我々のつかんだ情報によれば、北の大国と中心国がリューア様に討伐依頼せず、IGYOに核兵器を使いましたがIGYOは核兵器のエネルギーを吸収して巨大化しました。二度に及ぶ核兵器の使用にリューア様は堪忍袋の緒が切れ激怒、核兵器を使用できなくしました。その結果、核ミサイルも原潜も原子力空母もウラン関連物質がただのゴミになって機能停止しました」
CIA長官は話したことが代行に理解できるまで待って続けた。
「えらいこっちゃ踊りは検出不能の神毒によるものです。テレビ中継によりますと大統領は演説中コップに入っていた液体を飲みました。あれがえらいこっちゃ神毒と思います。神毒を飲んだ者は踊れなくなれば死亡します。言い方を変えれば死ぬまで踊り続けます。ただ検出不能の神毒ですから死に損です。自ら死ぬまで踊ったという事実しか残りません。解剖しても何も毒物は出ません」
代行はしばし沈黙の後聞いた。
「ではリューア、様とは本当に神なのか」
ブライトマン室長が答える。
「この星の神です。だから核兵器によって自分の星が傷つけられ、IGYOが巨大化し、さらに星が傷つけられると激怒したのだと思います」
CIA長官が続ける。
「私もそうだと思います」
「ブライトマン室長の話だと神は顕現すると捉えられるが、本当に顕現するのか」
「はい、前回のIGYO事件の時に討伐依頼に行きお会いしました」
「神に会ったのか。神は実際にいるのか。信じられないことだ。しかし、誰も置かないコップがあって神毒が入っていたのだから神がいるとすれば説明がつく」
「いままでの神と違うことは顕現することです。顕現して奇蹟をなす神の前には顕現しない神はただの妄想の産物です」
「室長は・・・。まあそうか。それでは直ちにIGYO討伐をリューア様に頼んでくれるか。どうやって頼むのか」
「日本の山城稲荷神社に行き直接頼みます」
「直接と言うのは神に会うのかね」
「はい。信徒、善男善女でなくては山城稲荷神社がある山の階段を登れません」
「そうだ。わがCIA工作員も10段しか階段を登れなかった」
「ということは室長は信徒なのか」
「はい」
ブライトマン室長は、鈍く黄金色に輝く小さな像をテーブルの上に置いて手を合わせた。
「こちらがリューア様です。隣がシン様とアカ様、ドラちゃん様、ドラニちゃん様です」
「シン様以下はなんなのか?」
「シン様とアカ様はリューア様の親のような神様です。そしてその眷属がドラちゃん様、ドラニちゃん様です」
だんだん混乱してきた代行。
「あまり深く聞かないことにしておこう。では依頼してくれ」
「まず、初穂料が基本一体一億円です。今回はMOABを使用してそのエネルギーを吸収して少し大きくなっているので加算されるかと思います。それと全世界に向けて我が国の大統領がリューア様を誹謗中傷、名誉毀損したので、賠償金をだいぶ支払うようかと」
「どのくらいになるのか?」
CIA長官が答えた。
「噂によると核を使った中心国では一兆円以上支払ったとか。北の大国はそれより少し安かったようですが一兆円を超えたとの噂です」
「事実上人類では対応できない。全世界向けに誹謗中傷したのも事実だ。やむを得ないな。中心国、北の大国並みの一兆円は覚悟か。金額は室長に任せる。円安だから安上がりになるだろう」
「ところがリューア様には宗形マネージャーという方がいらっしゃいまして、しっかりしているからなかなか難しいかと」
「宗形マネージャーは人か」
「いや、眷属です。IGYOバスターズの一員です」
「またなんとも言えない名前だな」
「はい。他称ですが。眷属がIGYOバスターズです」
「そ、そうか」
「それともう一つ、支払ったお金は日本国の税金がかからないようにしなければなりません」
「それはすこし日本とお話をすれば簡単だろう」
「遅滞なく支払わないと集金に来ます」
「誰が来るのかね」
CIA長官が引き取る。
「噂によると集金係はシン様、アカ様の眷属で、北の大国が支払いをとぼけたら大統領官邸にやってきて、警護の者は発砲した弾丸が自分に戻って死亡、残りは眷属の咆哮で心臓が止まったとか。さらに眷属に毒を飲ませようと企んだ者は神毒にあたって大統領官邸中を踊り回ったとか。それとは別に噂ですが頭が内部から弾ける神罰があるとかで日本の前首相と国税庁長官が頭が弾けたと聞いています」
「首相はホテルで亡くなったと聞いたがよく知っているな」
「本職ですから。それに日本は情報統制がゆるゆるな国ですから」
「素人とは違うと言うことか。えらいこっちゃ踊りは踊りたくないな。討伐後すぐ払おう。急ぎ依頼してきてくれ。戦闘機を手配する」
またかと思った室長である。
「それから、プレスリリースを出せ」
「大統領は現在意思が確認できない状態にあり、法の定めに従い副大統領が大統領代行となった。IGYOについては唯一討伐できる組織に現在依頼中。引き受けていただければ数日のうちに討伐完了する見込み。目処が立ったら大統領代行が会見する」
「プレスの連中は事情を知っているようだからこれでわかるだろう」
側近に命じた。
「承知しました」
会議は終わった。




