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地球に異形出現 幼女神あわてる  作者: SUGISHITA Shinya


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117/160

117 マスコミは報道を開始し大統領は演説する

 IGYOが公園を出たタイミングの夕方、マスコミは一斉に報道を始めた。


 IGYOという人類の作った兵器では退治できない地球外生物らしいものが、帽岩渓谷州立公園に出現。IGYOはすべての生き物を捕食する。都市に固まって住む我々は格好のターゲットである。現在IGYOは東に向かっており、人口10万都市、95万都市、750万都市の人たちが順次食べ尽くされてしまうだろう。

 IGYOは、前政権時代に一度発生したが特殊な方法により討伐された。前政権は、サビオ大統領に是非これだけは聞いてくれとIGYOに関する引き継ぎの申し出をしたが大統領と側近連中は意図的に引き継がず、IGYO対策室、IGYO対策マニュアルも廃止し、資料は全て破棄したとの趣旨である。


 そして大統領補佐官の例の記者会見の放送されなかった部分が放送され、大統領が引き継ぎを拒否したことが裏付けられた。


 大統領派は陰謀説であった。


 名指しされた10万都市、95万都市、750万都市の人たちは、大統領支持派が多い。なので最初は陰謀説で静観していたが、パラパラとIGYOの目撃情報がもたらされるにつれて動揺がはじまった。


 位置的に最初に襲われる10万都市の住民たちがまず逃げ出した。道路は大渋滞である。


 地方局によって10万都市の住民の脱出が道路の大渋滞とともに報道され、現場に近い友人知人たちから情報が入り始めた95万都市、750万都市の住民たちに動揺が走る。


 陰謀説は事実の前に吹き飛ばされる。陰謀説を唱えていたサビオ大統領支持派も我先にと避難をはじめた。

 道路は駐車場に成り果て、クラクションと銃声が鳴り響き、怒声と悲鳴が交差し収拾がつかなくなった。


 サビオ大統領に側近が進言した。

「大統領、何か手を打ちませんと直近で一千万人の犠牲が出ます。それからも続くでしょう。とにかく国民を安心させなくてはなりません。顔を出してください」

「・・・わかった」


 IGYOが州立公園を出て一日たった朝、大統領執務室から大統領が演説した。


「国民の皆さん。今、我が国はIGYOという怪物に侵略されています。しかし、我が国は偉大な国であり、世界一の国であり、世界一の国民であります。我らの叡智を結集して、自力でIGYOを倒した最初の国になろうではないか。前政権はリューア神という邪神、邪教に頼り姑息な手段で退治したらしいが、我々は世界一だ。堂々と戦い世界一の力を全世界に示そう。神は我々と共にあり、一緒に戦おう」


 高揚した大統領は一息ついた。いつの間にか執務机に置いてあったコップを手に取り水を飲んだ。


 演説を続けようとしたら、ピクッと手が動いた。手がひらひら始める。足が動く。


「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ、よいよいよいよい」

 サビオ大統領は椅子から立ち上がり聞いたことのない呪文のようなものを唱えながら手をひらひらさせて踊り出した。


 全世界が大統領のえらいこっちゃ踊りを見た。

 中継はプツンと切られた。


 北の大国

 大統領はじめ幹部の感想。IGYOが出たらすぐリューア神様に頼もう。


 中心国

 我が国がかなわないのに壱番国ごときがかなうわけはない。


 英国

 だから言ったではないか。


 EU、その他関係した国々

 リューア神様は本物の神だ。恐ろしい。余計なことを言うから踊り出す。触らぬリューア神様に祟りなし。


 某宗教国家。統括大僧正王(日本語訳)

 「・・・・・・・神は我と共にあり」

 神がどの神を指すのか恐ろしくて誰も聞けなかった。

 統括大僧正王の寝室にリューア神とほかの神たちが並んだ小さな偶像が安置されているという噂を聞いて統括大僧正王を追い落とそうとしていた反大僧正王派は、今のところは偶像のことは忘れ静観することにした。


 日本

 大統領の放送直後、夜中にも関わらず首相、閣僚たちがモーニングを着用して白バイ、パトカー先導で山城稲荷神社に参拝し、「公費」で玉串奉奠をした。どの放送局も事実だけ解説抜きでニュース映像を流した。

 いや解説はあった。

「首相や閣僚は階段を登るのが大変そうですね。日本のために頑張ってもらいましょう」


 マスコミも野党も誰も咎めなかった。SNS上でさえ批判はなかった。


 政教分離を厳しく唱えている憲法学者などはニュースを見なかったらしい。幸いどこからもコメントを求められなかったのでほっとした学者連中である。もちろん訴訟は起こさなかった。


 壱番国大統領執務室に集まっていた側近連中は真っ青である。独裁者のような大統領であった。その大統領が呪文を唱えながら踊り出して官邸中を踊り回っている。意思は確認できない。どうしたらいいかわからない。顔を見合わせているだけだ。


 副大統領は官邸に向かって急いだ。

 副大統領は大統領支持政党の重鎮で、経済界出身の大統領と側近たちとは反りが合わず、距離をとっていた。物理的な距離もとっていて呼ばれなければ官邸に行かなかったが、大統領の踊りをみて官邸に駆けつけた。


 副大統領が官邸大統領執務室に着くと大統領直通電話に電話がかかってきた。副大統領が受話器を取った。前大統領であった。

「老婆心ながら一つ忠告させてもらおう。IGYO対策室を復活し、室長、メンバーを復職させたらどうか。彼らならIGYO対策を知っている」

 それだけ言って電話は切られた。


 実業家の閣僚は前大統領の言うことなど聞くことはないと反対した。


 大統領がお飾りで副大統領にした支持政党の重鎮が怒鳴った。


「黙れ。これは経済の話ではない。人命がかかっている。お前らは経済、経済といってIGYO対策室を廃止したな。その結果がこのあり様だ。一千万人を死の淵に追いやった。無策が続けばさらに犠牲者は増える。お前は単なる経済人の政治屋だ。人の命を預けることはできない。政治家ではない。出て行け」

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