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地球に異形出現 幼女神あわてる  作者: SUGISHITA Shinya


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108/160

108 荻野 異形からDNAを発見したと論文発表する

 荻野の論文が発表された。


 異形からDNAを発見した。


 世界は仰天した。異形だけではなく、生命の起源、根源につながる大発見である。今まで異形などキワモノと斜めに構えていた生命科学に関係する全分野の研究者がIGYO分野に雪崩れ込んできた。


 荻野が共同利用していた中央研究施設の機器がなかなか利用しづらくなったから、荻野は最新のDNA、遺伝子関連装置一式、電子顕微鏡などの増設を恐る恐る事務局に打診した。


 すぐ事務局長から、急いで法医専用に購入するので形だけ申請書を書いてくれ、遠慮はしなくていい。設置場所は気にしなくていいと電話が来た。おまけに法医の研究費ではなく大学の費用で買うということであった。


 法医の隣の薬理学とかいくつかの研究室はすぐ移動させられ工事が始まり、IDカードで入室する独立したクリーンルーム、独立電源になり、そこに荻野の希望した機器が設置された。事実上荻野専用実験室である。

 もちろん専任技術職員付きである。いろいろ秘密がある法医なので黒龍、黄龍に採否の判定を頼みマルの技術職員である。


 大学は最大限のバックアップを事務局に命じていた。その結果の機器の購入、実験室の整備である。


 研究において日本人研究者は滅多に先端に立つことはできず追随するだけであったが、荻野は追随する世界の第一線の研究者を引き離し間違いなく先頭を突っ走っている。実に優秀なのである。


 もしかすると一人で異形、いや、今や地球外生命体の全体像を解明して、生命について地球と地球外生命体との統一理論を構築してしまうのではないかと追随する世界の研究者は大いに焦っているのである。

 荻野が転職サイトを見ていた時代は過去のものになってしまった。


 ところで法医は、ほとんどいない秡川教授、非常勤講師の荒木田、榊原、宗形、荒木田舞、ルーシーと常勤の荻野講師である。荻野を除いて癖ツヨの人でなしのメンバーである。舞とルーシーは癖ツヨではないと言うだろうが、人で(は)なしである。知っていればとても准教授になりたいとは思わないだろう。


 ところがIGYO論文、いや生命に関する論文を連発する法医に入ってしばらくして他の大学に出れば、准教授か教授になれるのではないかと思う人が出てくる。その一人、西帝大学の法医の万年講師が勝手に履歴書と業績を帝都大学の医学部長に送りつけてきて法医の准教授候補に自薦してきた。


 送りつけられた医学部長、面食らった。旧知の西帝大学の医学部長に電話した。


「おい、おまえのところの法医の万年講師が募集していないうちの法医の准教授候補に勝手に自薦してきたのだが、どうなっているんだ」

「俺は知らない」


 医学部長は本当に知らなかったが、西帝大学医学部では、教員の評価を行い、評価の低い教員にどうやって引導を渡すか、悩んでいた。その評価の低い教員の筆頭はその万年講師である。年功序列的に講師にはなったが、能力的に無理でその処遇に頭を悩ませていた。勝手に出て行くのならこれくらい良いことはない。


「知らないが、教員の異動は淀んだ人事にならずに良いことだ。進取の気性に富んだ・・・。まあ、よろしく頼む」

「進取の気性に富んだ、の次はなんだ」

「中年」


「おい、持て余しているんだろう」

「いや、まあ、その察してくれ」


「俺に引導を渡させようと言うのか」

「そちらには化け物とかデビルとかいるらしいからな。よろしく頼む」

 電話が切られてしまった。


 やつに貸し一つだと思いながら医学部長はすぐ秡川を呼んだ。

「秡川先生、すまないが西帝大学医学部法医学の講師から、秡川教室の准教授候補に自薦するとの書類が届いた。西帝大学医学部長は知らないそうだ。よろしく頼む」


「あそこには無能の万年講師がいましたが」

「その男だ」


「それで私にどうしろと。非常勤講師は皆大変優秀ですよ。それに荻野はフロンティアを突っ走っています。いまや生命科学に関して世界のぶっちぎりのトップランナーです。万年殿がやってきても実験助手でさえ務まらないと思いますが」


「面接ぐらいはしてもらって、落としてもらっていいんだ」

「そうですか。実験助手で思い出しましたが、欠員になっていた助教二人、または助教と実験助手一人づつを入れたいんですが」

 欠員は化け物に問題があるのではないかと医学部長は思ったが、

「わかった。それでいい」


「手を打ちましょう。万年殿の面接は宗形にやってもらいます」

「泣いて逃げ出しそうだ」

「変に希望を持たれても困りますから事実を理解してもらってお引き取りいただきましょう」

「よろしく頼む」


 実は定員が欠けていて充足しなければならなかったので医学部長としては別段の扱いではないが、祓川教授が喜ぶなら黙っていようとさる者の医学部長であった。


 秡川は助教二人か、助教と実験助手一人づつの補充を医学部長に確約してもらってご機嫌である。


 宗形に電話する。

「おい、頼みがある」

「忙しい」

「面接だ」

「聞いているの?忙しい」


「西帝大学医学部の法医の万年殿が履歴書と業績を送って来た。准教授になりたいらしい」

「黒龍か黄龍に頼めば。この間技術職員を入れるとき判定をしてもらったでしょう。マルバツボタンを用意しておいて、押してもらう。バツ判定ならお帰りだ」

「それは面白いな。今度助教などを募集するが使わせてもらおう」


「補充は万年殿の引導代だな」

「ばれたか。誰かいたら紹介してくれ。万年殿は頼む」


 欠員なので本来補充しなければならない。恩に着ることではない。喜んでいる祓川は意外とちょろいと思った宗形である。


「まあいいわ。日程が決まったら教えて。討伐依頼がなければ行くけど、依頼があったら荻野にやって貰えば」

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