106 宗形の休日 (4)
「こんにちは。シンです。手伝いに来ました」
「お兄ちゃん、これ」
「これか。ふうん。確かに中に機械が入っているね。解析しよう」
シンが空中にタブレットを作る。手を当てて何か操作しているらしい。
「よし、解析用AIロボットを作った。これを殻の中に送ろう」
神様の手から光が出て殻の中に浸透して行った。
タブレットに解析中の文字が浮かび上がる。
解析終了と文字が浮かび上がった。
「カプセルの中の機械は信号を発生する装置だ。一定以上異形が増えると信号を送信するようになっている」
「なんのため?」
宗形が代表して聞いた。
「多分侵攻するタイミング、それに星の位置を知らせるんだろう」
「壊してしまえばいいのでしょうか」
「殻が割られるか、または中の機械が壊れたら信号が送信されるようになっている。頑丈な機械だ。事実上壊れない。壊れたとすれば何かが意図的に壊したことになる。何かが生きているとわかる。侵略の候補地になるだろう」
「どうしたらいいのでしょうか」
「もう少し機械の解説をしよう。この機械には受信機能はない。異形が増えたら異形の魔力のようなものが星に満ち、その力が機械を起動させ送信するようになっている。爆弾のようなエネルギーカプセルが内蔵してあり、それの爆発でエネルギーを取り出し強力な信号を送信するようになっている。カプセルが割れた場合も同様に送信する。一回限りの送信になる。受信機能を持たせると待機エネルギーが必要だ。機械が大きく複雑になる。カプセルを作ったものは、ダメ元であちこちにカプセルをばら撒いたと思われる。その場合機能を絞った簡単な故障しずらい機械が良いと思ったのだろう」
龍愛と龍愛の眷属はみんな黙って聞いている。
宗形が再度聞く。
「どうすればいいのでしょうか」
「対応策として、一つは異形は退治してこの装置には触らないようにする。もう一つは受信機能はないので信号を送信しないようにプログラムを書き換えてから壊してしまう」
「プログラムは書き換えられるのでしょうか」
「ああ、簡単だ」
「その前に龍愛、この星にこれと同じものがあるか?」
「ううんと。ううんと」
多少不安になる龍愛の眷属である。
「もうない」
「はい、よくできました」
いつの間にかアカに抱っこされている龍愛である。なでなでされてにこにこしている。
朱様が言うのなら確かだろうとほっとした龍愛の眷属。
宗形が聞いた。
「龍愛どうする?」
「壊す?」
「壊してください」
「わかった。プログラムは、・・・書き換えた。AIロボットは回収した。龍愛、壊していいよ。跡形もなく一瞬で消しなさい」
「うん」
龍愛が指でカプセルを指した。太いエネルギービームがカプセルに当たり瞬時にカプセルが消えた。
「よくできました」
再びアカに撫でられて大満足の龍愛である。
『世界樹の子らよ、ありがとう。カプセルの機械はこの世界のものではない。知り合いの神には話しておこう』
『これは龍愛の親神様。この頃龍愛が頑張っていますので少しお手伝いをしただけです』
『これからもよろしく頼む。他の世界からの侵攻の危機は遠のいたが、いつ侵攻があるかわからない。龍愛は力をつけなさい。眷属の皆も同じだ。力をつけて龍愛を支えて欲しい』
『うん』
『承知しました』
親神様とのコンタクトは切れた。
龍愛の親神様と聞いて緊張した龍愛の眷属である。それにしても神様、朱様は、親神様に龍愛のことを頼まれるのだから龍愛のはるか上の力の神様だと思った。
「それじゃあ僕らは帰る。カプセルの機械は大変参考になった」
「シン様、受信装置を作りました。置いていきましょうか」
「そうだな。龍愛が持っているか?」
エスポーサが龍愛に透明な石を使ったネックレスのようなものを渡した。
「あの、エスポーサ様。さっきの機械を作ったもの達が発する電波のようなものの受信装置でしょうか」
宗形が聞いた。
「そう。今は何も受信していない。赤く光れば受信。おそらく別な世界とのゲートが開いた時でなければ受信しないだろう。こちらから先ほどの機械で送信する場合は、ゲートを開けて送る形になると思う。だから大量のエネルギーが必要で爆発するカプセルが埋め込まれていたのだろう」
「その受信装置は透明な石に見えて機械には見えないのですが」
「あんな不細工なものは作れないわ」
龍愛の眷属はさすが神様の魔女だと思った。
訓練の時怪しげな水を飲まされたが薬物が検出不能な水だった。受信装置も神毒や怪しげなドリンクと同じ理解不能な原理で出来ているのであろう。鑑定すればただの水晶かダイヤモンドではないかと思った。
「ただの水晶よ」
やっぱりと思った龍愛の眷属一同である。
「龍愛、何かあったらすぐ言うんだよ」
「うん。お兄ちゃん、お姉ちゃん。みんな、ありがとう」
神様、朱様たちが帰って行く。
龍愛と眷属は深くお辞儀をした。
かくして宗形の休日は終わった。終わってみればいつにも増してハードワークであった。




