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なろうラジオ大賞5 参加作品

ドラゴンはたまごの中で何を思う

作者: ヲンダ

 魔法使いの研究機関付属の、規定以上の能力がないと入れない魔塔に来た。

 国王付きの僕は数ヶ月に一度、陛下の命令でここに様子を見に来る。案内係の魔法使いについて数回転送を繰り返し、特別な部屋の前に立つ。部屋の中は外に比べ湿度も温度も高い。

 部屋の中央にドーム状の透明な膜が張ってあり、中に大人の顔くらいのたまごが温められている。何のたまごかは分からないが、たまごからは特殊な魔力を感じるのでここで温められている。

 温め始めてもう六年になるがたまごは孵らない。孵らないが死んでもいないので温められている。

 この部屋の温度や湿度はドラゴンの目撃例が多い南部森林地帯に合わせてある。

「これはいったい何のたまごなのかねえ。君は何だと思う」

 僕が案内係に問うと彼女はすぐ答える。

「分かりません。魔塔としては何のたまごか断定しておりませんので」

 僕は少し笑ってしまう。断定していないのに、この部屋は……。

「六年も温めて孵らないなんて。僕はドラゴンのたまごだと思うが、どう思う。魔塔ではなく君個人の考えは」

「私個人の考えでよろしければ。私もドラゴンのたまごではないかと思います。書物によると十年かかるみたいですので、もう少しですね」

「でもある魔法使いが残した書物には、ドラゴンのたまごが孵るのに百年かかったという記述もある」

「百年というのは確か、ドラゴンが自分の主となる大賢者が生まれるのを待っていたということですが」

「ははは、君はよく勉強してるね。もしこのたまごも自分の主を待っていたら百年かかるかもよ」

「百年ですか。寿命の三分の一をこのたまごに費やすのも面白いかもしれません」

「ああ、君はたまごが孵るのに立ち会うことができるかもしれないね。残念ながら僕は無理だな。あと六十年で孵ってくれればドラゴンを見られるかもしれないがね」

 今回もたまごが孵るのを楽しみにしている陛下には残念な報告しかできない。

 陛下は人間だから見ることはできない。王太子殿下も無理だろう。

 たまごが孵るのに三百五十年かかり現在の関係者は一人も立ち会うことができないなど、その時は誰も考えていなかった。


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