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吸血姫に受肉した神の子、世界を救う~努力目標~  作者: 烏兎徒然
二章 下界と呼ばれる俗世界にて
8/10

神祖の吸血鬼

古城の一室、玉座に堂々と座るイレースィの姿は、吸血鬼として受肉しても神界のそれと然程変わりはなかった。

双眸の宝石のような瞳はルビーのように紅く煌めく瞳に変わり、八重歯と呼ぶには整いすぎている牙を除けばまさしくイレースィそのものだ。

しかし以前の神秘的な魅力とは打って変わり、少女の姿でありながらもどこか蠱惑的な魅力が全面に出ていた。イレースィの性格的にもその妖しさは似合っており、その美しさは陰るどころかまた違った別の美しさを醸し出していた。


もちろんアルマも同じく金の瞳が紅く、イレースィ同様牙が生えている事を除けば、些か肌の色がより白くなった以外に神界での姿との違いはあまり見られない。


しかし今現在のアルマに関してはイレースィの蠱惑的な魅力にアテられて、頬は真っ赤に紅潮している。



○  ○  ○  ○  ○



ビフレストに降り立ち一週間。彼女達がまず初めに行ったのは城の掃除であった。

かなり放置されていたらしい古城の外装を、メイド技術の神業を使い修復し、内装も同じく埃一つ残さぬよう徹底し、アルマが全力を持って掃除に励んだ結果、ボロボロの古城はものの数時間足らずで恐らく大陸一綺麗な城と成った事であろう。


本来であれば自身に内包された神力を用いたメイド式神術で数分もあれば終わらせられる作業であったが、

受肉して神力の大幅な制限を掛けられたアルマは、神術の下位互換と称される周囲のマナを扱い術理を行使する魔法によっての掃除でかなり時間を取られたと不満げである。


掃除を終えた二人は次に、書庫へと赴き大量の書物を読み漁り、この世界における歴史や常識を学ぼうとした。


「しかし……余りにも文献が古すぎるな。常識という点ではこれらの書物を鵜呑みにしてはいかんな」


神界でないためか普段より少し格好を崩し頬杖をついて本を捲るイレースィは大きくため息をつく。


「ええ……ですが一部有益な情報もありましたし。ここ一週間の時間は無駄ではなかった事でしょう。何よりこの、強さという曖昧な概念を明確に分類しレベルという数字で視覚化した世界……なんとも不可思議な世界です」


アルマはチラリとイレースィを見ると、その横顔が明らかに狼狽しているのが見てとられた。


「ッ姫様……! まさかとは思いますが……」


「ちっ……! 違うッ! 私ではない! 父上がレベルやステータスといった概念を組み込んだのだ!」


「主神様が……ですか? ビフレストの住人はいきなりそのような概念を与えられて、さぞ混乱したのではないでしょうか?」


イレースィは肩をすくめアルマの問いに正確な訂正をする。


「まさか。父上は『レベルやステータス』が元々あった世界に作り変えたのだ。そこに住まう住人達の記憶も操作してな」


「なるほど……でもなぜ主神様はそのような事を……?」


イレースィの体がピクリと反応する。それを目聡く察知したアルマはイレースィに更に詰め寄る。


「なぜ主神様はそのような事をー? 姫様?」


笑顔で問い詰められたイレースィは、やはりアルマには敵わないと悟る。


「まてまてまて!! 一度話を聞け!」


「ええ、聞きますとも。聞きますとも。それで何がどうなってこのようなヘンテコな世界にしてしまったのですか?」


主神が関わっているというのに、その世界をヘンテコ呼ばわりするアルマは本当に主神に創られた存在なのかと疑う程不敬をものともしない。

そんなアルマに問い詰められては洗いざらいすべてを話すしかないか……と腹をくくったイレースィ。


「第一世界でRPGが流行っていた頃、私ももれなくそれらのゲームにハマっていてな。しかし一人用のゲーム故に…………恐らく父上は私と遊びたがったのだろう『我が愛娘よ! 我もあーるぴーじーを創ったぞ! 父と共に一緒に遊ぼうではないか!』と突然言ってきたのをこの世界に来て、ようやく思い出したのだ……。当時私は反抗期であったし、もちろん断ったのだが……今になって父上の創った世界に降り立つ事になるとはな……私は完全に忘れていたが、もしかすると父上は知っていてこの世界に私を赴かせたのではないのかと邪推せずにはいられんな」


遠い目をしたイレースィにアルマは何と声をかけてあげるべきか戸惑った。


「ま、まあ! 主神様が創られた世界なのでしたら考えようによっては強者が存在する可能性もありますよ!! た、楽しみですねー! ね、姫様?」


恐る恐るイレースィに目を向けると、光を失った瞳が徐々にキラキラと輝き出した。


「たしかに! うむ! 存外この世界も悪くないかも知れないな!」


神の子はあまりにもチョロかった。




○  ○  ○




「さて、姫様。これから私達は廃棄世界の延命を行なうべく行動するわけですが、廃棄世界の定義は覚えておられますね?」


イレースィが機嫌を取り戻したため、人差し指を立てさっそく教育モードとなったアルマ。

自身が教育係を努めた経験もありイレースィが優秀なのはもちろん知ってはいるが、時折想像を絶するポカをやってしまう事も長年の付き合いであるアルマは知っていた。


「うむ。世界の命ともいわれる龍脈。それを世界の住人が発見し、利用した場合、凄まじい発展を遂げるがそれは世界の寿命を削っている事と同義。故に龍脈の力が一定以上消費されている世界は、死が確定した廃棄世界と呼ばれる。

稀に龍脈の搾取を辞めた世界等も存在するが、今まで搾取された寿命は元には戻らぬ。その場合は準廃棄世界と呼ばれ死する事はないが、力を吸い取られた世界からの恩恵は規模が縮小され、住人にとっては繁栄が望めない大打撃を受ける事となっている。だったな?」


「ええ、よく覚えておられました。つまり私達の当面の目標は、龍脈を利用している組織を根絶やしにする事です」


「なんとも端的で私好みの作戦だな」


この主従は力の信奉者という点でよく似ている。


「アルマの言う通り仮に組織を根絶やしに出来たとしてだ、そうすればビフレストも準廃棄世界となるのか?」


「いえ……もうここまで龍脈を搾取されてしまっては、緩やかに死に向かう事しかできないでしょう……ですので手の施しようのない世界、それこそが廃棄世界なのです…………」


「なるほど……な」



神々が世界に向ける感情は、人間が可愛い愛玩動物に向けるそれと近しい。

そこに住まう人々は虫程度。直に接してみれば多少の愛着は湧くだろうがそれだけだ。

アーシュヌは明るく振る舞っていたが、その心中では苦悩していたことだろう。


「まあ暗い話はここまでにしておこう。とにかく私達は常識を知るため外へでなければならぬ。その際、受肉したこの体がどこまで力を発揮できるのか検証する必要がある」


「そうですね。幸いにも主神様が阿呆だったおかげで、強さの基準点が明確に分類され視覚化されている事で安易におおよその力量を確認することも出来ますしね」


自らを創りだした父上を貶す事の出来るアルマは、私以上のイレギュラーな存在なのではなかろうか……。イレースィはそんな事を戦々恐々と考えた。


「さて、この世界に降り立った時、ある程度この世界の攻略に必要な知識は埋め込まれた事だし、さっそく試してみるか」


「え?」


イレースィの言葉にアルマは疑問を覚えた。


「私はそんな事なかったのですが……」


「何? 私だけか? しかし良く考えて見れば罰という側面も強いが、今回はあくまでも神々の試練。アルマが除外されていても不思議ではないか」


「私の試練の時にもそんな知識は与えられなかったかと……試練については神々の間でもよく話題のネタになるのですが、他の神々にしてもそのような話、往々にして聞いた事がありません」


まさか……とイレースィは顔を青ざめる。


「ス、ステータス閲覧!」


---------------------------------------------------------------------------

名前:イレースィ

種族:神祖の吸血姫(神の子)

レベル:1101

(神の子種族ボーナスにつき+1000)

(始まりの吸血鬼の種族ボーナスにつき+100)


魔素量(MP)53万

生命力:5500

攻撃力:700

魔法力:8,000,000

防御力:600

敏捷力:18,000


【所持スキル一覧】

魅了瞳(チャーム)

神眼(しんがん)

神祖(しんそ)威圧覇気(いあつはき)

縛り(レギュレイション)

解放(リリース)

聖魔混合

霧化

下位眷属召喚

中位眷属召喚

上位眷属召喚

高位眷属召喚

吸血(ドレイン)

血液操作ブラッドオペレーション

影移動(シャドウムーヴ)


【耐性スキル】

・太陽無効:陽の明かりのダメージを無効化する。

・毒無効:あらゆる毒を無効化する。

・銀属性無効:アンデッドに特効となる銀属性を無効化する。

・聖属性無効:アンデッドに特効となる聖属性を無効化する。

・にんにく耐性:しかし投げつけられるなどすると倦怠感に襲われる。

------------------------------------------------------------------------------------------

称号:神祖の吸血姫

・神の因子を持つ始まりの吸血鬼

称号:最高神の寵愛

・万物を創り出した最高神の加護が付与されている者のみが得られる

称号:神々の寵愛

・あらゆる神々に愛されたものに与えられる称号

称号:聖なる者 魔なる者

・聖の属性と魔の属性を持つものに与えられる

称号:吸血族の魔術を極めし者

・吸血鬼の特性魔術をすべて完璧に使いこなせるものだけに与えられる

称号:邪神を創りし者

・世界を混沌に陥れる存在である邪神を生んだものに与えられる

称号:邪神

・邪神と認められたものに与えられる

------------------------------------------------------------------------------------------


「ち……父上のばかあああああああ!!!!!!」


イレースィは頭を抱え、その場で転げ回った。


「ど、どうされたのですか姫様!?」


アルマにはイレースィのステータスは見えていなかった。そのためアルマから見たイレースィは呆然と一点を見つめた後、頭を抱え膝から崩れた後転げ回るという、普段の大胆不敵なイレースィとはかけ離れた様子にアルマも慌てる。

が、それはそれとしてそんな姫様も可愛いな、とアルマは幼子のように転げ回るイレースィを目に焼き付けていた。



しばらく暴れまわり、正気を取り戻したイレースィはアルマへと無言で手招きする。

恐る恐る近づくアルマの顔面をイレースィは勢いよく右手でわしづかみ、自身の(おそらく主神によって)与えられた知識と、今見た自身のステータスの知識を共有させた。

神力に大幅な制限が課せられてはいるが、この程度の事象改変であれば魔法で代用してこなすくらいの事は簡単にできる。


「な……なるほど。主神様の過保護っぷりが伺えますね……神力の制限が掛けられてるとはいえ、これは……」


「さて次はアルマの番だ。流石に父上はアルマにまで恩寵を与えているとは考えづらい。だからこそアルマのステータスこそが平均である可能性が高い」


「わ、分かりました。では……ステータス閲覧」


------------------------------------------------------------------------------------------

名前:アルマ

種族:神祖の吸血姫の従者(光の上位女神)

レベル:551

(上位女神の種族ボーナスにつき+500)

(神祖の吸血鬼の直属眷属である種族ボーナスにつき+50)

魔素量(MP)18万

生命力:12000

攻撃力:9500

魔法力:2500

防御力:12000

敏捷力:18000

スキル:魅了瞳(チャーム) 神眼 威圧 縛り 解放 聖魔混合 加護の光

称号:神祖の吸血姫の従者 神の子の寵愛 神祖の吸血姫の寵愛 吸血族の猛者 聖なる者 魔なる者

------------------------------------------------------------------------------------------


「あら? あらあらあら」


アルマは『神の子の寵愛』『神祖の吸血姫の寵愛』の文字に顔を赤らめ、嬉しさのあまり表情筋が緩むのを必死で抑えている――つもりだがイレースィから見れば普通にニヨニヨとしていて「気味が悪い」と少し距離を取られていた。


ふむ……また知識の共有魔法が必要かと思ったが、アルマのステータスは神眼とやらを使えば、私にも普通に視られるな。ならば先程もアルマが神眼で私のステータスを見れば良かったわけか……まあ、父上からの知識をアルマに与えられただけ無駄ではなかったのだし良しとするか。


「そろそろいいか、アルマ」


思考が完全にお花畑だったため、主の声にハッっと意識を取り戻し無表情を貫く。今更の事であったが。

その様子を見たイレースィは一つ嘆息し、話を続ける。


「おそらくこの種族ボーナスとやら……1101のうち100は神祖の吸血姫の本来のものだと思う。しかし『神の子種族ボーナスにつき+1000』この文言は明らかにおかしい。本来の試練ならば受肉したら神の力は殆どないものとして縛られるのにも関わらず……こうなった原因はなんらかのイレギュラーが発生した。もしくは父上がやらかした。このどちらかであろうな……」


「この城にあった古い文献ですが『始祖』と呼ばれる偉大な吸血鬼は生まれながらにレベル50であったとの記述がありました。それが事実であると仮定するならば『神祖』なるものが初期レベル100であるのも『始祖』の上位種族と考えるならば納得できます」


「カビ塗れの文献を参考にするのも些か抵抗はあるが、当時この近辺を統治していた者が『始祖の吸血鬼』と呼ばれる120レベルの男だったそうだ。少数しか存在しない吸血族をまとめ上げ小さな国を建国し、小国の身でありながら一つの大陸を相手に席巻していたとまで謂われる伝説上の存在らしい。そうして大陸全土を相手にドンパチしていたらしいが、次第に飽き、同族の吸血族を放り出し国を捨てた後、自ら『血沸き踊る闘いのできる同族の強者がこの地に現れるまでの封印』を自身に施した。と、そう手記にあったわけだが……」


イレースィとアルマは互いの瞳を見つめあい、そして同時に嘆息した。


「仮に既にヤツの望む同族の強者が過去に現れていたのならなんの問題もない。しかし、そうでないのだとしたら、レベル120を確実に越えている私達がこの世界に来た時点で封印は解け……全力で私達に挑みにくるであろうな」


「面倒この上ないですね。なによりこの手記は自身の武勇伝を大袈裟に綴った自伝という感じで、書いた本人も面倒この上ない性格に思われます」


「ま、まあ、……だが考えようによっては僥倖かもしれん」


ニヤリと好戦的に笑うイレースィを眼にしたアルマは主の好戦的な態度につられゾクゾクとした闘争心が自身にも湧いて出てくるのを無理やりに抑えつけた。

受肉した精神は本能的な感情にひどく左右されやすい。


「もし仮に始祖が私達の目の前に現れるのであれば、この世界で私達は吸血族という種に限って言えば最強と実証されたも同然だ。自身の実力とやらを確かめるための物差しとしては丁度良い相手とも言える」


余りにも隔絶した強者という立場はつまらなく、しかしかと言って、強者相手に成すすべもなく敗北するのは二人には耐え難い屈辱である。

吸血族は元がそれなりに強い種族であるという事前情報はイレースィもアルマも知っていたし、当然吸血族より遥かに強い種族が多数存在している事も知っている。故に物差しだ。

一つの種族の中で一番という事は、他の種族の強者とのリングに挑戦者として上がるだけの資格はあると証明されるようなもの。種族の強弱に違いはあれど、その差異は絶対的という訳では決してないのだ。


「なるほど。ではどちらが始祖とやらを相手にしますか? 私でいいですよね? 姫様がわざわざ出張る程の相手ではありませんし」


「いや、待て。私は神祖の吸血姫のみが扱える種族特有の魔法、いわゆる魔術とやら全てを使えるが、アルマは使えないであろう?」


「いえ、私も多少は種族特性の魔術とやらは使えるようですよ。まあ、膨大な量の魔術を覚えたとて、戦闘に組み込むには経験が必要ですので姫様はお休みなさっていてください」


「いやいや、多少の魔術が使えるだけというのはあまりにも心許ないぞ? 私は神術の扱いは神界一であったし、それはもはやその下位互換である魔法も網羅しているといっても過言ではない。つまり魔術と魔法を全て極めた私が相手をするべきであろう」


「仮にも上位神並の格がある者ならば魔法など誰であっても行えます。そんな事は出来て当然。物の数には入れないでくださいませ。それに戦闘技術において姫様は私に勝てた試しが一度もありませんよね?」


「なっ! せ、戦神の連中が私に弟子入りを求めにくるんだぞぉ!?」


イレースィの瞳に少し涙が溜まるのを見て、アルマの嗜虐心がゾクゾクと刺激される。

久々に受肉した、生物ならではの本能的感覚にアルマは快感を覚え身震いする。


「ふふ、で・す・が! その姫様の師は私ですよね? 何を仰っておられるのやら、この姫様は……呆れてものも言えませんね」


「そ、それをいうなら神術の扱いにおいてのアルマの師は私だっただろぉ!!」


いえいえ私が、いやだいやだ私が、と何度も問答した後、本格的に泣きそうになったイレースィを見かねて「では公平にジャンケンで決める。ということでいかがでしょう」というアルマの妥協案に、仕方がない、とイレースィもその提案に乗ると、すぐさま溢れ出しそうになっていた涙を引っ込め、いつもの不敵な表情へと早変わりした。


「ではいきますよー。じゃーんけーん『おい』」


水をさされた、と声のする方へと不快げに視線を向けたアルマ。

その視線の先にいたのは、全てを看破する『固有スキル:神眼』――を使うまでもなく分かっている。


銀色の髪は後頭部へと流すように綺麗にオールバックにまとめられており、シワひとつ見当たらない趣味の良い豪奢な貴族服を纏った壮年の男性は部屋の隅で腕を組み苛立たしげにしている。

その鋭い目つきから覗けるのは怪しげな紅い瞳。


――――『始祖の吸血鬼』ギュリエルであった。


当然イレースィもアルマもその存在には気づいてはいた。

なにせ名乗りを上げながら堂々と城へ乗り込んで来たのだから。

しかし会話の邪魔をしないよう律儀にも待っていてくれていたようなので、とりあえず放置していたのだ。


「先程からずっとお主らの会話を聞いていたが阿呆なのか。ようやく同族である強者と相見える事が出来たと思ったら、どちらが余と戦うか決めるため、もう無駄に三十分も待たされているのだが? いい加減余もここまでコケにされては黙ってはいられぬぞ」


むしろ三十分も黙って待ってくれていた。という事実に本来であるならば感謝一つの言葉があってもいいところなのだが、そこは相対した相手が我道を征くイレースィと、主しか眼中にないアルマというコンビの時点でそんな言葉は存在しえない。


「黙っていられない? いいえ、黙っていてください。姫様との神聖なるジャンケンを邪魔した貴様の処遇は後で決めるとして《サクリファイス・セイクリッドチェーン》《サイレンス》まずは大人しくしているように」


アルマが指先を向けると瞬時にギュリエルの真下から光の鎖が現れ、それは目にも留まらぬ速さで容易にギュリエルを縛り上げ、身動き一つ取れなくさせる。

自分をあっけなく拘束するその事実に驚いたギュリエルが声をあげようとするも、声を出す事が出来ない。


なるほど、黙っていろ……とはこういう事か…………。

たった一瞬で格の違いを見せつけられた始祖の吸血鬼ギュリエルは拘束が解けるまで、少女二人の延々とあいこが続くじゃんけんを見せつけられるのであった。


魅了瞳(チャーム)

【魔眼の一種。古代の高位悪魔の中に少数ながらも存在していたが、もはや既に長命種でさえもお伽噺の中だけだとその存在を信じる者は少ない。目を合わせた相手に魔力を直接注ぎ込み、魔眼の対象者を崇拝するよう操作する。しかし稀に廃人となり使い物にならなくなりうるため注意が必要である。】


神眼(しんがん)

【神の目と呼ばれており、古代の勇者が神から与えられた瞳だと言われている。

四方千里を見通し、そこがたとえ光なき暗闇であろうと、障害物に遮られた部屋の中であろうとこの瞳があれば問題ない】


神祖(しんそ)威圧覇気(いあつはき)

【神の因子を持った始まりの吸血鬼のみが扱える。

ただの威圧よりも強力であり、悪の因子を持った低位の生物がその威圧を浴びると塵となる。

悪の因子を持たない人種等にはただの強烈な威圧であり、それに加えてとてつもない程までもの恐怖の感情を与える特典付き。争いを事前に防ぎ信仰心を芽生えさせる平和で温厚な能力である】


縛り(レギュレイション)

【強力すぎる自身の能力全てに制限をかける。もちろんこれは他者に与えることはできない。これでドアノブをネジリ壊す事も、貴方の父のコレクションが壊れるような事もなくなる】


解放(リリース)

【己に縛りを課した場合、その状態を解除する事ができる。緊急時に隠された力を発揮するのはカッコイイので常に『縛り(レギュレイション)』のスキルを付けていることを推奨する】


聖魔混合

【聖の因子と魔の因子が交わり、両方の特性を持った魔術を行使する事が可能となる】


霧化

【自身を霧化させ、あらゆる物理効果を無効とする。しかしその際は自身も攻撃する事はできない】


下位眷属召喚

【レベル5相当の蝙蝠(バットバット)を最大で三百匹召喚する。自身と眷属はリンクしているため、あらゆる経験や知識が自身にも伝わるようになっており、諜報活動等に向いている。ぜひ役立ててほしいものである】

中位眷属召喚


【レベル15相当の悪魔蝙蝠(デビルバット)を最大で百匹召喚する。蝙蝠(バットバット)の上位種であり高い知恵があるため蝙蝠(バットバット)を率いて活動させればスパイ組織だって作れてしまうかも知れない】


上位眷属召喚

【レベル30相当の黒狼(ブラックウルフ)白銀狼(シルバーウルフ)を最大で三十匹ずつ召喚する。通常の狼より一回り近く大きく多少の魔法を扱える】


高位眷属召喚

【レベル100相当の白大蛇(ホワイトバイパー)を召喚する。その全長は250mを超える程巨大である。幼き頃のイレースィが好きであった白蛇君のぬいぐるみを参考にして作られた。主人に絶対の忠誠心を持っているので仲良くやってほしいものだ】

吸血(ドレイン)

【他者を吸血し、吸血対象者を吸血鬼とすることで自身の眷属とすることが出来る。魅了瞳(チャーム)と違い、吸血対象者は完全な自我を残しているが、主人には服従する。強さはその当人の能力による。】


血液操作ブラッドオペレーション

【自身の体内にある血液や、他者の血液を自在に操る事が可能。血液を凝固する事も可能であり、その際の硬度は自身の魔力量に影響される。血液の量は自身の魔力量に依存している。汎用性に長けており応用が効く。とってもカッコイイ】


影移動(シャドウムーヴ)

【影のあるところであれば自身専用の次元を作り出す事が出来るため、影から影への移動手段として使うもよし。バッグパックの変わりに荷物を入れてもよし。ゴミ箱にしてもよし。しかしその場合は必ず片付けを怠ってはならない】

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