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第96話 国会議事堂へ行こう

 ニヤリと笑う信吾が勝負に出た。それを察知した志保は慎重にハンドルを右へ左へ動かす。それもミリ単位で慎重にしなければならない。

 急ハンドルを切ろうものなら一気にスピンしてコマのようにクルクルと回ってしまう。


 隙を伺う信吾は更に仕掛ける。左から抜こうとするが、それはフェイントで、すぐさま右へ体重を移動して一気に抜き去る。

 左手で拳を作り小さくガッツポーズをする信吾。


 一瞬の隙を突かれた志保は前を走る信吾を見ながらチッと舌打ちをした。


 そして遂に大泉ジャンクションを過ぎるとトワが仁王立ちしていた。両腕を上げて勝利宣言をしている。


 ゆっくりと減速してトワの前にバイクを止める。

 数秒後に志保が到着した。


 車から降りてくる志保とヘルメットを脱ぐ信吾は同時に口を開いた。


「ズルくない?姉さん?」

「トワさん反則ですよ?」

 それに対して二人に返すトワ


「だって、しょうがないじゃーん、ガス欠で止まるとは思わなかったんだもん」

 頬を膨らませて反論するトワ。


「まぁ、一応魔法やスキルを使わないってルールだったから、、ねぇ?」

 信吾と志保が顔を見合わせる。


「分かったわよ、、でも次は勝つからね」

 渋々納得したトワだが、次があるのかは甚だ疑問でしか無い。

 一応志保と信吾は頷いた。


 次いで車から降りてきた雄也は足をカクカクさせながら降りてきた。

 無言無表情の上、毅然と立っている風だが、足の震えは隠せていない。


 笑いが込み上がってくる一同は耐えきれずに吹き出してしまう。


 一通り笑った信吾は

「あぁーー楽しかったねぇ、またいつかどこかでやりたいね」

「いいですね!私こういうの実は結構好きなんですよ、映画とかのカーチェイスとか漫画とかで読んでてやってみたいと思ってたんですよ!すっごい興奮しました」

「アタイも今度は本気出すからね」

 と3人は頷きあって話しを終えた。


 ちなみにクモスケは蜘蛛の姿のまま信吾の肩に乗っている。久々の光景であった。


 それからは適当な車に乗り空中遊泳をしながら東京の街を見下ろした。


「ほらね、ビルだとか高い建物は軒並み無くなってるでしょ?」

 言いながら志保を見ると愕然とした表情で東京を見ている。

 暫く進むと違和感を覚えた。

「なんか違和感が?」

 信吾が言うと皆はキョロキョロと辺りを見渡す。


 すると何かに気付いた志保が叫ぶ。

「あっ!ほら!あそこあそこっ!国会議事堂見て!」


 すぐに視線を動かして国会議事堂を見ると、何かが刺さってると言うか、埋まってると言うか、、


「何だありゃ?モスラか?」

 信吾が言う

「なんですか?モスラって?」

「知らないのか雄也、ジェネレーションギャップやな」

「でっかい蛾の怪獣だよ、それこそ国会議事堂よりも大きくなるぞ」

 トワが答えた。


「で、そのモスラが国会議事堂となんの関係が?」

「知らないのか雄也、昔、国会議事堂はモスラに卵を産み付けられた事があるんだぞ?」

「えっ!それマジですか?」


「いや、そんなわけあるか!創作の話だ!特撮だよ特撮」

 すかさずトワがツッコミを入れる。

「ですよね~」


「一瞬マジで信じなかったか?雄也君?」

 信吾は雄也をジト目で見る。


 ノーリアクションでスルーする雄也。


「そんなことよりあれってもしかして新潟で雄也君が蹴っ飛ばした見上げ入道とか言う妖怪じゃない?」

 志保が言う


 目を凝らして見ると確かに面影が残っている。

「生きてる?」


「さあ?死んでるんじゃないか?」


「どうですかね?自分も殺すつもりで蹴ったつもりはなく、遠くに飛ばす様に蹴ったつもりですけどねぇ」


「それにしては飛び過ぎじゃないか?殺す気じゃないとここまでは飛ばんだろ?」


「にしてもなんとも、、偶々蹴った方向が東京方面で、更に国会議事堂に偶々あたるって、ある意味ウケるね」


「アレが上空に飛んで数キロ離れた国会議事堂に刺さるとこ考えるとめっちゃシュールだな」


「飛んでる時点でもうヤバい」


「ブフッ!」


 信吾と、トワと、雄也が話しをした挙げ句、余りの面白さに吹き出してしまった信吾達。


「君は政治家に恨みでもあるのかね?」

 笑いながら信吾が言うと雄也は

「えぇーまあ、少なくとも不満はありますよ?多分大半の国民は不満あるんじゃないですかね?だからといってあんな物当てないですけどね」


「そうか?まぁ、確かに国会議事堂は寝やすいって言うしねぇ、議論中に寝るってことは余程環境がいいんだろうな、、逆に極端に暑くしたり寒くしたりすれば寝る人も減るんじゃないのか?」


「不満な点はそこですか?」


「ウケる!マジで氷点下20度ぐらいの所で議論してもらいてぇな!」


「それはいい、絶対に寝れないだろうな、寝たら死ぬからな」


「ガタガタ寒さに震えながら、税金が〰とか少子高齢化が〰とか言ってるんだろ?マジで最高じゃん」


「そうなったら議論も進まないだろうな、段々手足の感覚が無くなってきて、今日はそろそろ終わりにしたいと思いますって言って5分で終了」


「いやいや、そういう問題じゃないと思いますけど、二人共悪ノリはやめて下さいよ」


 一連の流れを聞いて志保が爆笑している。


「いやー君は最高だよ、こんな事狙って出来るもんじゃないからねぇ」

「いや、狙ってませんよ?」


 まだまだ続きそうな3人の漫才じみた話しを、志保は笑いながら見ていた。


 仕方がないので近くに行って確認してみることにする。


 国会議事堂に埋まっている塊を出すべく信吾はクモスケに言う。

「クモスケあれ糸でくっつけて出せるか?多分俺の重力魔法で軽くなってると思うから、優しくな」

 クモスケは片手を上げて了解の意を示す。

 何気にまだ蜘蛛の姿のままだ。久しぶりの信吾の肩が心地いいらしい。


 するとガラガラと大きな音を立てて引っ張られる物体は信吾の前に置かれた。

「やっぱり新潟で雄也が蹴った妖怪で間違い無いな」

「どうします?死んでます?」


「おーい、大丈夫かー」

 トワがバシバシと叩いて起こそうとする。だがいっこうに反応がない。


「やっぱり逝ってしまわれたのか」

 と信吾が呟いた時に動きがあった。


「ぐっっ、がっっ、あぁぁ、あああ」

「起きたな、おい妖怪、なんか用かい?なんちゃって」

「起こしておいてなんか用かいはないでしょ?」

「いや、ダジャレに言及しなさいよ」

 またまた信吾と雄也とトワの会話に笑いを絶えられない志保。


「あああああああああああああああ」


 信吾達を見るやいなや、見上げ入道は叫びながら逃げて行った。

「あ、逃げた」

「逃げたな」

「何にもするつもりはなかったんだけどな、改心したなら隠れ婆さんの所で保護しても、なんて思ったけどな」

 と信吾が言いそれにトワが返す。


「まぁ、しょうがないんじゃない?あの逃げ方は相当だ、、いつか運が良ければまた会えるだろ」

「奴らに捕まらなきゃいいけど」

「うわっ!フラグ立てやがった」

 信吾とトワがやり取りをする


「そろそろ行きますよ」

 と、雄也が言って一行は動き出す。

「その前にお花むしってくるわ、皆も出発前にしたほうがいいよー」

と言って国会議事堂の壁で口笛を吹きながら用を足す信吾。


 東京にはもう用が無い為、すぐに中央自動車道経由で河口湖方面に向かい、樹海を目指す。


運転は志保に任せる。

「中央道ってえげつないカーブが多いから気を付けてね」

と言ったら何故か目を輝かせた志保であった。


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