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第95話 白熱のレース

 移動を開始した一行は、暫くしてすぐにパーキングに入った。運転はトワ。


 何故パーキングに入ったのかトワを見る信吾。


「なんかこのまま行くのもつまらないからレースしないか?」

「は?」

 聞き返すとトワがワクワクしながら言う

「アタイは一人でいいからさ、志保ちゃんと雄也のチームと、信吾ちゃんとクモスケちゃんのチームで別れて東京まで行くってのはどう?面白そうじゃない?」


 腕を組んで信吾は考える。

 仮にレースしたとして危なくないか?いや、誰もいないし例え自爆したとしても、例え300キロで突っ込んでも怪我はしないだろう、、多分。


「志保ちゃんは危なくないか?俺達は事故っても怪我はしないだろうけど、志保ちゃんはそうでもないだろう?」

「そこはイズナがいるでしょ?身体強化したり、隣に雄也がいれば咄嗟に飛翔したり、いや、そこは体を張って守りに徹するかな」


 話題に上がった志保と雄也は何とも言えない顔をして成り行きを見守る。


 必死にトワが押すも信吾は悩む。

「車はどうする?」

「そこは、任せるよ、信吾の方が詳しいし、いいレースが出来るように面白い車を出してくれるって期待してる」

 ニヤリと信吾は口端を上げる。

 実際信吾はスポーツカー好きなのもあり、元走り屋として危険度を度外視するとやってみたいと思っている。


「例えばこれか?ランボルギーニ、GT‐R、NSX、ポルシェ、レクサスあたりかな?世界にはもっと早い車があるけど、そう滅多にお目にかかれる物じゃないからな、さすがに持ってないわ」

 今信吾が空間収納に入ってるスーパーカーを出してみる。


「アタイはこれがいい!」

 真っ先にトワがランボルギーニに飛びつく。

「じゃあ私はこれで」

 次に志保がGT‐Rに乗り込む、意外とノリノリである。雄也も助手席に乗り込む。


 残りの車を空間収納にしまい込む。

「あれ?信吾ちゃんは?どうするの?」

 トワの質問に信吾は空間収納から1台のバイクを取り出す。

「カワサキのニンジャh2じゃ」

 ニヤニヤしながらバイクに跨がる

「でもそれってクモスケちゃん乗れるの?」

「あ、、」

 うっかりといった感じの信吾。

 そこにクモスケが口を開く。

「大丈夫、小さくなればいい、信吾にくっついてればいいだけだから余裕」


 そう言って装備一式を外して収納袋に入れて信吾に渡す。すかさず小さくなりこぶし大の蜘蛛に早変わりする。

「なんか久しぶりだな、その姿、いいね新鮮で」

 クモスケも片手を上げて答える。

その後ゴールやルールなどを決めてから開始する。

信吾は空間収納から革のレース用のツナギを出して着込む。更に膝にあるパットを確認して強化しておく。これで長距離膝を付いても大丈夫だと、、、、本気である。


ヘルメットを被って「んじゃ、行きますか」と信吾が言うと、それぞれがエンジンをかけて、ふかしながらエンジンを温め始める。

「スタートはこれが地面に付いたらスタートな」

 そう言って土魔法でソフトボール位の玉を作る。


 エンジンが温まった頃合いで皆に合図する。

 クモスケは糸でしっかりと信吾に捕まる。


「よっしゃ!行くぞ!」

 そう言って土の玉をポーンと上に投げる。


 地面に付いた瞬間ホイールスピンさせながら爆走する2台。信吾は落ち着いてバイクを始動させる。いきなり加速するとフロントが浮いてしまうため慎重にアクセルを開いていく。徐々に加速が追いつき二人を追い越す信吾。しかし車の2台も負けじととんでもない加速をする。追い越したのも一瞬で、すぐに二人に抜かれる信吾。


 車2台の比較として、排気量ではランボルギーニが上、パワー【馬力】自体もGT−Rは負けてはいるが、安定感はさすがのGT‐R、これはカーブでは差が出るだろう。加速も申し分なくランボルギーニに負けず劣らずだ、最高速もさほど変わらないが、多少の差は出てくる。若干ランボルギーニに軍配は上がる。その数十キロのスピードの差が命運を分ける。


 あとの差はカーブでどれだけ減速からの立ち上げをするか、コースを見極めるかが重要となってくる。

 これに関してはドライビングテクニックで、腕の見せ所だろう。


 暫く関越自動車道を爆走する3台。

 他の車がいたら間違いなく、、、、、まぁ、そこは考えないことにする。


 ランボルギーニが先頭を走る。それに追随するも少しずつ離されていくGT‐R、その後ろで風を受けながら疾走する信吾。前傾姿勢でなるべく風の抵抗を受けないようにするが、風圧は凄いことになっている。少しでも頭を上げようものなら一気に身体ごと持っていかれるだろう。

 そんな中クモスケはしっかりと信吾の体に糸を巻き付け離れないようにする。クモスケがいる所はフロントのアッパーカウルの内側、分かりやすく言えばメーターの上にある透明なカウルの内側。その位置はそこまで風の影響はない。


 カーブでは、GT‐Rが安定感を発揮して距離を縮める。GT‐Rの足回りの技術はさすがと言わざるを得ない。


 トワは気分上々で走り抜ける。

 何気に志保も笑みを浮かべながら巧みにハンドルを操る。

 その横でつり革に捕まり必死の形相で乗っている雄也。


 そして信吾は笑っていた。腹の内側からワクワク感が止まらなくハイテンションになっていた。おそらくはアドレナリンがドバドバと出ているだろう。

 楽しすぎて涙も浮かんでくる勢いではしゃいでいる。

 カーブではアウト・イン・アウトで駆け抜ける。体重移動でバンク角を最大限にして極力スピードを下げない、常にアクセル全開で、回転数はレッドゾーン。

 笑いが止まらない信吾。ある意味敵との戦闘より興奮しているだろう。


 暫く走り、高崎ジャンクションを過ぎる。ここからは今までと比べてカーブが少なくなり、直線が増えてくる。

 そうなってくるとトワのランボルギーニが有利な展開となってくる。

 しかし忘れてはいけない。ガソリンと燃費の事を。

 3台ともスタート時は満タンであった。


 高崎ジャンクションを過ぎた3台はスピードを落とすこと無く走り抜けるが、暫く走ったところでランボルギーニが減速する。一瞬で抜き去るGT‐Rとニンジャ。

 ランボルギーニはとうとう燃料切れで止まってしまう。

 燃費を考えると当然であった。


 タンク容量、燃費、運転の仕方で左右される距離だが、限界を迎えたランボルギーニはプスンと音を立ててエンジンストップした。

 実はGT‐Rも燃料切れの心配はあったが、最初から理解していた志保はアクセル操作で上手く調整していた。

 要は加速が一番燃費が悪く、例えば信号があってスタートと停止を繰り返す時が一番ガソリンを食う。人間が手押し台車を押すときも最初だけ力を入れて後は惰性だせいだけで、余り力を必要としないのと同じ事。

 直線になった時が一番重要でなるべくアクセルを固定して回転数を変化させないといった対策をとった志保に軍配が上がった。


 直線に入り一気に勝負に出る信吾はアクセル全開で志保を追いかける。ジリジリと距離を詰める信吾。

 高坂サービスエリア手前でGT‐Rのすぐ後ろにつく。

 車の後ろは風の抵抗が少なくなり、反撃の隙を伺う信吾。そう、この原理はスリップストリームと言って、バイクやクルマを高速走行させると、後方に乱気流が生じ、気圧が低くなる。そこにバイクやクルマが付くと、前のバイクやクルマが後ろのマシンを引っ張る力が働き、空気抵抗も軽減させる原理のことを言う。


 その原理のことを知っていた志保は後ろを追いかける信吾を見てチッと舌打ちをする。

 このレースは大泉ジャンクションまでが勝負で、抜けた所で勝敗が決するルールとなっている。


 あと少しなのに、もうちょっとなのに、と歯噛みする志保。いつ仕掛けてくるか後ろを気にしつつ走り抜ける志保。

 運転に集中していると急に影がさしたと思って思わず上空をチラッと見る。


「なに、、あれ、、」


 上空には東洋の龍が長い体をうねらせながら飛んで行く。片手にランボルギーニを持って。


あっという間に前に躍り出た龍に志保と信吾は同時に叫んだ。


「ズルいぞ!トワの姉さん!」

「トワさん!それは無いですよ!」


 お互いの叫び声は聞こえてないがレースは絶賛続行中

 あっという間に見えなくなったトワを諦めて、最終決戦のレースに集中する二人。


 信吾は所沢で勝負に出ると志保は予想する。

 その通りで、信吾も所沢で勝負を仕掛けようと画策している。

 所沢まで後5キロの看板を一瞬で過ぎる2台。

 ニヤリと口端を上げて笑う信吾が勝負に出る。


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