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第91話 二葉雄也の過去

 信吾の話に夢中になり、志保に痛いところを突かれたフォルガイムは恥ずかしそうに俯いている。


 そんなフォルガイムに志保は言う。

「いいじゃないですか、私も信吾さんには恩も感じてますし、一緒に返していきませんか?」


 その言葉にフォルガイムは顔を上げて頷いた。


 それから信吾との出会いから自分の不甲斐なさを包み隠さずに全て語った。

話し終わると同時に志保が興奮しながら感想を述べる。


「凄いですね、なんか聞いてるだけで興奮しちゃいますよ、レヴィアタンですか、厄介ですね。マモンも大罪の強欲でしたが、レヴィアタンは嫉妬でしたかね?そこら辺はアニメとかラノベで知識はあるんですよ、、その、、引きこもりで学校もろくに行ってなかったので、それでいつもパソコンでゲームしたりアニメみたりアイドルとか、ラノベとか、とにかくインドアで、、あっ!ごめんなさい、私の話しは置いといて、フォルガイムさんの話しを」


 興奮した様子で先を促す志保。


 苦笑しながらフォルガイムは続ける。

 レヴィアタンの次は御神木、エルフ達の事、それから妖怪たちと隠れ婆の事、そこからまた旅に出てベルゼブブとの戦闘、地下施設、ダンジョンと事細かく話しをして、やっと志保と出会って今に至ると。


「波乱万丈ですね、なんだか不思議とワクワクしてる自分がいるんですけど、なんでですかね?ものすごく恐い筈なのに、、」


 それはフォルガイムの話が突拍子もなく、どこか他人事の様に、まるで何かの物語の様な話しに、現実味がないからである。だが、本人はその事を分かってはいない。


「そう?でも今後もこんな事が続くのは確実だから、変に恐がるよりいいのかもね、、、でも恐かったらいつでも自分の、、、事を、、頼って、、」

 最後が尻すぼみで殆ど声が出ていなかった。


 後半聞き取れなかった志保は気にせずに

「そうですね、恐がるよりも前向きに考えた方がいいですよね」


 ニコッと笑って言う志保。


 フォルガイムは「危なくなったら自分が志保ちゃんを守るよ、だから志保ちゃんも遠慮無く頼って」と、思いを告げたいが、今一言えなかった。


 それはフォルガイムの、というか人間だった頃の【二葉 雄也】の過去が関係する。


 フォルガイムは無言で考えていて、沈黙が流れた。

 すると志保が口を開いた。


「それで、フォルガイムさんの過去を教えてもらってもいいですか?」


「えっ?」

 一瞬、話したよね?今、話したよね?と思いながら首を傾げたフォルガイム。


「最初に言いましたよ?過去を教えて下さいって」


 そう言われてフォルガイムは志保の言葉を思い出す。


 あの時「あの、、フォルガイムさんの事を教えてくれますか?過去とか、、信吾さんとかクモスケさんとかフォルガイムさんの出会いなんかは簡単な流れしか聞いて無くて、詳しくは知らないんで、、よかったらその辺も踏まえて」って言ってたよな?


 ん?その辺も踏まえてって、信吾さんとの話しはおまけみたいな物?メインは自分の過去ってこと?人間だったときの?


 ハッとしたフォルガイムは志保の顔を見ると、真っ直ぐに見つめてくる志保がいた。


 心の中を見透かされた様ななんとも言えない感覚がした。

 目を離さない志保に、遂に観念してポツリポツリと話し出すフォルガイム。


 フォルガイムの過去、それは、よくあるいじめられっ子であった。小学生の時から、高校1年生まで。


 そのキッカケは雄也の体型にあった。背が高いうえに同級生の2倍はあるのではないかと思うほどの巨漢だった。巨漢ゆえに汗を大量にかき、夏の暑い日に心無い友人から「臭い」と言われたのがキッカケであった。

 思いのほか友人の声が大きく、周りのクラスメートからも笑いが起こった。

 それからと言うもの「臭いんだよ!近寄るな」とか言われたが、まだ、受け流せる範囲だったので上手く受け流していた。徐々に罵倒が聞くに絶えなくなり、多少言い返したりしていた。そんな時にガキ大将の一人が、雄也の一言にキレてボコボコにされた。

 それからは言葉の暴力プラス物理的にも暴力を振るわれた。更にエスカレートしていき、男子女子関係なく囲まれてボコボコにされる様になった。それが小学生の卒業式まで続いた。

 我慢してやっと卒業式。中学生になったら環境もクラスも変わるから上手くやれば大丈夫だろうと、今度こそは上手くやろうと、子供ながらに一直線にしか考えられずに中学へ入学。


 大人から言わせれば対処方などいくらでもある、ただ、子供ゆえに経験も知識もなく愚直に言われた事に従うしかないのだった。あの学校と言う一種の洗脳や、宗教じみたルールの中、がんじがらめの少年はまさに囚われた虫のように1枚1枚羽をむしられていくかの様に崩れ、壊れていく。


 そして、中学生になり希望を胸に抱いて教室に入ると、そこにはいつものガキ大将がいた。

 その瞬間、膝から崩れ落ちる様な、床が抜けて真っ逆さまに落ちていくかの様に、墜ちた。


 それからは逆らわず従順な犬となり死んだ目をしながら、地獄の日々を過ごした。

 時には裸にされ、時には体毛を燃やされ、動画を撮られ、自慰を強要され、水責め、熱湯、汚物、タバコを押し付けられたり、生傷が絶えなかった。

 いつの間にか涙も枯れ果てていた。


 そんな時に一人の先生が声を掛けてきた。

 その先生は親身になり、相談に乗ってくれた。親にも相談できずに、何度も死のうと考えていた時に声をかけてくれた先生。

 それから暫くは落ち着いた日々が訪れた。

 先生が動いてくれたんだと、助かったのだと思い希望が見えた。今後のことを考えながら一途の希望に前向きに考えていた。久しぶりに目にも光が戻ってきた。


 それから数日、自宅の部屋にいた時に、親が自分を呼びリビングに呼ばれた、いじめの事を先生から聞かされて親は泣いていた。とても心配されて、学校は行かなくてもいいと言ってくれた。だけど自分にはやっと芽生えた希望があった。だからもう大丈夫だと、学校へは行くから、と。


 学校へ行くと、相変わらず誰も話しかけては来ないが、平穏に授業を受けることが出来ていた。今までの分を取り戻すかのように。


 順調に学校生活を送っていると、授業中、担任からの呼び出しがあった。

 嫌な予感がしたが、気のせいだと頭を振って職員室に向かう。

 すると、すぐに帰りなさいと。

 えっ?わけがわからない?と担任に目で訴えると、お父さんが亡くなったそうなので、急いで帰りなさいと。


 その瞬間頭の中が真っ白になったり真っ赤になったりと視界が明滅した気がした。

 すぐさま頭を振って焦点を合わす。

 荷物を持ち走って家に帰ると、警察がいた。

 自殺だったそうだ。自宅の父の自室で首を吊って。


 それから母は心が抜けた様に、お酒に溺れていた。

 その後、母の実家から祖父と祖母が出入りする様になった。同時に叔母、叔父、従兄弟も出入りする様になり、皆でフォローしてくれた。


 自殺の原因はわからない、遺書も無かったが、警察は自殺と断定した。多少怪しかったが、もちろんただの自殺なので捜査なんかは入らない。


 納得は出来なかったが、今となってはどうすることも出来ず、そのことは全て闇に葬られた。


 その後雄也も心が抜け落ちた様に学校へ行く。

 するとすぐにガキ大将が子分を連れて囲んできた。

 そのまま人気の無いところへ連れて行かれ執拗に殴られた、涙も出ずに、ただひたすらに身を任せて倒れ伏した。そこにいた全員の小便と、唾を吐きかけられて暫く放心していた。


 枯れたはずの涙が溢れてきた。


 それから近くの河川敷へ行き、川の中に入る。

 汚れた服や身体を洗っていると、ふと

「死のう」

 ポツリと呟いた瞬間に、声がした。

 振り返るとそこにはいつか助けてくれた先生がいた。


「すまない!手が出せなかった!何も出来なかった!許してくれっ!許してくれぇぇ」

 先生は膝から崩れ落ちて、土下座の体制で泣き始めた。


「君は、君は、生きてくれ!辛くてもいつかっ!いつかは、、幸せになってくれ、理不尽な世の中だけど、負けるな、、君は」


 急に来て、急に泣き崩れて、言いたいことだけ言って去っていった先生を見ながら、もう少し気張って見るよ、先生。と言った。


 誰かが言っていた、辛いと言う字に一本足すと幸せになると。


 誰かが言っていた、辛い時には愚痴を吐いてしまう、吐くと言う字は、口にプラスとマイナスがあり、マイナスの事を言わない様にするとプラスだけが残る、すると叶うと言う字になる。


 誰かが言っていた。有難う、と言う字は難が有ると書く。苦難、困難が無ければ有難うに辿り着かないと。


 少し気が楽になり自宅へ帰り、いつも通りに朝を迎えた。


 学校へ行くと何やら騒がしくしている先生達。すぐに緊急集会が行われた。

 内容は、〇〇先生が亡くなったと。その先生は雄也を助けてくれた先生で、昨日雄也と別れたあと自宅にて首を吊り、自殺だと判定された。


 その日は授業どころではなく生徒は全員家に帰された。


 その後はあっという間にいつも通りになり、いつも通りのいじめを受けていた。


 そのまま中学卒業して、家の近くの高校に入学した。

 ガキ大将は別の高校に行き、そこにはいなかったが、噂が噂を呼び、地元の不良達に目を付けられてしまい、いじめはもちろん、中学の時とは違いお金が絡んできた。


 犯罪も当たり前の様に行う輩で、万引きはもちろんの事、バイクの窃盗からの、暴走行為。暴行や、監禁強姦、親の権力や、金に物を言わせた悪魔の所業かの様な悪逆無道。そんなのに目を付けられた雄也は流石に引きこもることしか出来なかった。


 それからは高校を退学し、通信での高校卒業資格を取り、就職しようとしたがなかなか就職出来ずに難民となり、そのまま工場内のバイトはするが基本的には部屋に引きこもりパソコンとにらめっこ、ネットサーフィン等をしてすごしていた。

 すでに中学時代から自分に自身が持てなくなり人との接触も極力避けていた。そしていつの間にか22歳となっていた。


 就職が出来なかったのも不自然な点がいくつかあったが、もうどうでも良くなっていた。


 そう、全てにおいて中学生の頃から何かが裏で動いていて常に雄也の周りで不自然な事が起きていた。それは勘違いとか、思い込みではなく確実に。


 だが今となってはどうすることも出来ない、と言う話にもなるし、今更どうでもよかった。今はフォルガイムであり、信吾がいる。信吾から言わせれば、

「過去は過去、過ぎたことはどうしょうもない、だからそれを糧にして、経験として、未来を考えるんだ、前向きにな」


 と言うだろう。

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