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第86話 志保の家

「さて、5号のアップデートは後ほどという事で、本題に移りますか」

「あ、アバドンの事ですかね、、」

 トゥトゥナの言葉に信吾が相槌をうつと、コクリと頷く


 信吾はトゥトゥナの所から志保とトワの救出、アバドンの事、異世界の国の事を交えながら今までの自分達の目標や目的等を話し、これからどうするかをみんなで話し合う事にした。


 実際にはトゥトゥナから生き残りを救出して、同時にドラゴン達のいざこざを収めるって依頼を受けただけで今後は本人達の自由で、信吾が口を出す所では無いのだ。


 だがトワは信吾と共にすると言っていたので、後は志保の事になるのだが、考えてみればこんな世界で放り出すのもおかしな話でもあるので、一応志保に確認を取っただけで、志保を保護する事を決めていたのだが、


「私はイズナの言っていた事が気になるので、その、、隠れ婆さんの所に、、行ってみたいです」

 と志保が言った。


「そう言えば、イズナが言ってたな」 

 と、信吾が了承した。


「あー、と、信吾さん?ちょっといいですか?」

 フォルガイムがボソリと言った。

「ん?どうした?フォルガイム?」

 信吾が聞くと、両手を組んで指をクルクルと回しながらフォルガイムが口を開いた。


「あの、その、自分も志保ちゃんと一緒に行きたいなぁーって、、思って?」


 信吾は腕を組みながら頷いた。

「いいぞ、むしろ一緒に行ってくれ。大丈夫だと思うけど、何かあったときにフォルガイムが対処してくれればこっちも助かる」


「すいません、ありがとうございます!」

 フォルガイムは信吾の手を取り頭を下げた。


「てことは今後は俺とクモスケとトワで修行かな?」

 クモスケとトワはウンウンと頷いた。


 目標はとにかく強くなる事。魔王ルシファーやアバドンから地球を守るのを目的として。


 話しが一段落したのを見計らってトゥトゥナが口を開く

「話は纏まったかな?なら依頼を受けてくれたお礼をしたいところなんだけど、、何がいいかな?」

「うーん、お礼と言われても、何があるのか、ってか今の所何かが欲しいとかって言うのは無いと思う、、あ、ならエリクサーあります?この間使っちゃって無くなっちゃったんですよね」


「えっ?エリクサーなら一つあるけど、そんなんでいいの?」

 トゥトゥナの問に信吾が皆を見ながら

「みんなは?」

 と聞くと

「特にない」と返ってきた

「まぁ、お礼と言うのは建前で、先日も言ったが、我々に出来ないことをやってもらうわけなんだから、協力は惜しまないつもりでいる。だから遠慮なく必要なものがあったらいつでも言ってくれて構わないよ」


「あ、ありがとうございます。その時はお願いします」


 そう言ってエリクサーを受け取り、空間収納にいれる。


 話も大分煮詰めた所で、信吾が腕時計を見る。

 時刻はもう18時を過ぎている。

 ちょうど切りが良い所で食事になり、全員で食堂に移動する。


 食事をしながらみんなで5号に話しかける。

 しばしの別れに寂しさを滲ませながら他愛の無い話をする。

 信吾はそんな他愛の無い会話の中、5号の能力で少し気になっていた事をサラッと聞いて、頭の中で反芻しながら、また他愛の無い会話に花を咲かせる。


 食事も終わり一晩泊まることにした信吾は、居住区に行き、シャボン玉や、色んな機能に驚く志保とトワに説明をしながら眠りについた信吾だった。




 朝になり朝食を取りながら、本日の予定を話す信吾。

「今日は志保ちゃんの家に行って、その後、御神木の所に行きたいと思ってる」

「御神木ですか?」

 志保が首を傾げながら聞いてくる

「あ、そうか、御神木じゃわからないか、、前にイズナが言ってた隠れ婆さんがそこにいるんだ、御神木の所にね」

「あ、そうなんですね」


 軽く御神木がどんな所か、誰がいるのかを話しをした、一応御神木の実の事も伝えておいた。

 そんな会話をしつつ、食事も終わり、そろそろ出発しようと全員で席を立つ。


 トゥトゥナの所に行き、出発の挨拶をする。

「今回の件は本当に感謝します。我々一同は協力は惜しまないからまたいつでも来てください」

「いや、こちらこそありがとうございます。では、5号をお願いします」


 5号とも軽く別れを告げて、決して重くならない様に笑顔で別れた。


 ***


 行ったことがない場所には空間転移が出来ない信吾は、志保と初めて会った場所にひとまず転移した。


 信吾は魔法の絨毯を出そうと思ったが、全員で乗ったら狭いので、ここは志保が乗っていたベンツと、信吾の好きなスポーツカーを出した。


 志保のベンツにはフォルガイムが乗り、信吾のスポーツカーにはクモスケ、トワが乗り込んだ。

 そのまま志保が前を走り後ろをついて行く信吾。


 しばらく走ると

「おい、、、狭くないのか?あっちに乗れば良かったんじゃないか?」

 信吾が後ろを見ながら呟く。

 助手席にはクモスケが乗って、後部座席にはトワが

 狭苦しそうに乗っている。


「狭いが、前の車に乗るよりかはいいと思ってな」

「ん??」

 信吾が首を傾げると

「気づかないか?フォルガイムは志保に好意を抱いている」

「うぇっ?マジ?」

「信吾は鈍感か?」

「あぁ、だから一緒に隠れ婆の所に着いて行きたいって言ってたのか?」

「信吾は超鈍感か?」

 トワにそんなことを言われてクモスケをチラッと見る

 クモスケは信吾を見ながら首を傾げている。

「うん、クモスケはいつも通りだな」


「てことであたいは我慢はしたのだが、、狭すぎるからもっと広いのを希望」


 てことで志保に止まってもらって、違う車を出して目的地に向かう信吾であった。


 どのくらい経ったのか、日が真上にきた辺りでようやく高い建物が見えてきて市街地に出た。


 またしばらく進むと大きな家が見えてきて、古風な作りのいかにもお金持ちですと言った家の前に志保の車が止まった。


 どうやら着いたようだ。


 志保の案内で家の中に入り、広いリビングに通される。

 真ん中には低いテーブルがあり、その周りには高級ソファがテーブルを囲う様に置いてある。


 辺りを見回すと部屋の中全てに御札や除霊の呪文やらが貼ってあって違和感を醸し出している。


 志保は気にせず、というかその光景が普通なのだろう、自然と皆に座るように促した。


 みんなが高級ソファに座り一息ついた。

 それから全員分の飲み物を空間収納からだしてテーブルに置く。


 時刻は昼の12時を少し過ぎている。

 適当に食材を出して食べながらの雑談になった。


「やっぱり日本食のほうが美味しいですね」

 フォルガイムの言葉に志保も頷く

「まぁ、日本の食べ物は品種改良されてたりとか、化学調味料とか増し増しで入ってるらしいからなぁ、、」

 信吾がフォルガイムの問に答える

「そうなんですか?」

「うーん、味が濃いから旨く感じるんだろうけど、異世界の肉も旨く思えたのは多分魔物の肉だからじゃないかな?魔力が関係してるとかだと思うぞ。他は確かに微妙だったけど、、」

「なるほど、確かに言われてみれば、、」

「あーあと海外の食べ物は日本食ほど化学調味料が入ってないんだよ、だから日本人独特の病気にかかったりとかって都市伝説であるらしいんだけど、、まぁ今のところ問題ないから気にしてないけどな」

 言いながらもしゃもしゃと食べまくる信吾。


「またあの国に行って魔導船に乗ってみたい」

 今度はクモスケが何気なく言った。

「わかる!あたいも乗ってみたいぞ」

 トワがクモスケの言葉に賛同して目を輝かせている


「冒険者として依頼をこなしたり、強いモンスターを倒したりもしたいよね」

「ダンジョンにも潜ってみたい」

「他の国にも行ってみなきゃね」


 そんな話をしながらふと部屋を見回す信吾。

「そう言えば志保ちゃんの実家ってヤクザ屋さんなんだよね?」

「はい、そうですよ」

「じゃあさ、ヤクザ屋さんの始まりって知ってる?」

 信吾の問にフルフルと首をふる志保。


「いつからかは定かではないんだけど、第二次世界大戦の前、もしくは戦後って説があるんだけど、戦前の説は元々喧嘩の仲裁が最初で自警団みたいな立ち位置で町をまとめていたって説ね、もう一つ戦後の説は、これまた戦後の無法地帯となった町を、MPなんかが日本人に色々と嫌がらせをしている時に町を守っていたのがその自警団で、そこから大きな組織となって、大きな工場や、芸能関係を取り仕切ったりと、ある意味必要不可欠だった組織なんだけどね、、いつの間にか悪い方へと、、、やっぱり組織自体が大きくなりすぎたりすると枝分かれしていった末端の組なんかはねぇ、、お察しの通りで、俺の知り合いだった、組員なんかも景気が悪すぎて他のアルバイトとかしたりで、昔ほどお金が回らなすぎてねぇ、、そう考えると志保ちゃんの家は相当大きな組織だったのかな?」

「うーん、、わかりません」

 首を振りながら答える志保


「、、、、いや、話し終わっちゃったよ、、、なんか質問とか気になる事とか無いのかなぁ、、」

 最後の方は尻すぼみで聞こえるか聞こえないかの声量となっていた。


「あ、ごめんなさい、父の仕事の事はよくわからなくて、、映画とかは見たことあるんですけど、でも、そんな世界と違いすぎるというかなんというか、、強いて言うなら中国の人達がとか外国の人達が出入りしてたことがありましたね、それが仕事と関係があるのかわかりませんが」

「中国マフィアとかか、そりゃ凄いな。実際に日本のヤクザの人達がいなければとっくに日本が攻撃されててもおかしくはないって聞いたことがあるからなぁ、、その話が本当なら必要悪ってやつだったんだろうな、抑止力的にも」


「そ、そうなんですね。本当に仕事内容に関してはわからなくて、、あっ、でも武器なら多少興味あったので得意です、事あるごとに父に武器庫に連れて行かれてよく自慢話しをされました」


「あ、それならその武器庫に案内してくれないかな?めっちゃ興味あるっ!」

「もちろんです!わかりました」

 志保は自分も行きたかったのか嬉しそうに答えた。


 志保を先頭に地下室にある武器庫に向かう。


「あ、でも、セキュリティやらロックが、、、あ、そっか、電気止まってるからセキュリティは無いか、、いや、でも鍵自体は掛かってる?」

 独り言の様なつぶやきに信吾が答える

「まぁ、大丈夫でしょ。問題無い」

 そう言って地下室の奥の大きな扉が見えた。


 志保の言っていた通り物々しいセキュリティがそこにはあった。

 ハリウッド映画に出てくる様な網膜センサーと、カードキー、暗証番号を入れるボタンがあった。

 さらに物理的にも破られない様に二重構造の分厚い鋼鉄製の扉が部屋を守っていた。


「ふむ、でわでわ、失礼して」

 信吾は手揉みをしながらエレベーターの様に左右に開く扉の前に立つ。


 おもむろに扉の隙間に指を入れようとするが流石に隙間が狭すぎて入らない。

 が、諦めずに少しずつ無理やり入れ込む。

 指先3ミリ程度入った所で指先に力を入れる、更に身体強化の応用で指先に魔力を込めて一気に左右に力を入れた。


 ガキンッ!ガキンッ!ゴゴン!ゴゴン!ガガガガガガ!バギン!バギン!


 金属がひしゃげたり折れたり破砕したりといった音がする。

 同じ様に二枚目の扉も簡単に開ける信吾。


 呆気に取られる志保と、思わず笑ってしまったフォルガイムとトワ。クモスケは無表情で通常運転だ。


「おじゃましまーす」

 そう言って中に入る信吾達。

 部屋の中の光景を見て「おおおおぉぉぉー」と感嘆の声を上げる一行。


 それもそのはず、中には古今東西の武器が綺麗に整理整頓されて並べられている。もちろん御札や除霊の呪文も貼ってある。

「やっぱりな、この御札とかがあるから残ってたんだろうな」

 と信吾が言う。

「どういうことですか?」

 当然の疑問に志保は尋ねる

「前に神様がこちらの世界を、パラレルワールドを作る時にエネルギーを生むものや、武器関係はコストがかかるからコピーしなかったとかなんとか」

「はあ、、」

 首を傾げながらハテナマークを浮かべる志保

「まぁ、それは置いといて、凄いねここは、さながら博物館だね、お父さんは収集家だったのかな?」


 部屋の中にはそれこそ博物館並みに貴重な品が揃っていた。

 銃の所では信吾が好きなデザートイーグルもあり、他にもコルトパイソンやS&WのМ500等のリボルバー、更に自動小銃や機関銃、ショットガンもあり、思わず笑ってしまったのはグレネードランチャーまであった事だ。


 銃系統の横には日本刀がずらりと並んでいた。

 様々な長さ、様々な形の刀身があり、基本は片刃だが一部両刃になっている物もあり、興味を惹かれる信吾。

 壁に設置されている刀置きと、床に設置してある刀置きに丁寧に掛かっている。


 日本刀の横には日本刀以外の剣や斧、槍、弓、大槌がある。

 剣はグラディウスやファルシオンなんかの古い物を始め、サーベルやロングソードと呼ばれる剣や青龍刀まである。中でも数が多いのはダガーナイフで、色々な種類が置いてある。他にもサバイバルナイフや様々な形のナイフが並べてある。

 斧や槍関係はハルバードやバトルアックス、二叉の槍、三叉の槍、薙刀、素槍といったロングスピアや、ショートスピアがある。中には死神の鎌のようなものまであった。


 弓と大槌は種類はなく、ウォーハンマーと呼ばれる物が一つ、弓はシンプルな物一つとボーガンがあるだけだ。


 更にその横には忍者の武器があった。

 手裏剣は卍形や十字形、三ツ刃の他にクナイがあり、マキビシもあった。忍刀と呼ばれる反りの無い片刃の刀があり、他にもクサリガマ、トンファー、ヌンチャク、手甲爪がある。そしてナックルダスターと呼ばれる、いわゆるメリケンサックがある。トゲの付いた物や鋭利な刃が付いた物まである。



 志保に解説付きで全ての武器を説明してもらっている。

 本当に武器のみの収集家で盾や鎧なんかの防具系は一切無く、銃の弾丸すらも無い。とにかくひたすら武器のみだった。


 ずっと志保の説明を聞いていた信吾が少し逡巡して躊躇いがちに志保に話しかける。


「この武器さ、持っていってもいいかな?使う使わないは別として、このまま地下に埋もれさせておくのも勿体ないと思って」

「えっ?あっ、はい、全然大丈夫ですよ、むしろ持っていって下さい。そのほうがこの武器達も喜ぶと思います」

 ニコリと微笑みながら言う志保。


 そしてこの部屋にある全ての武器を空間収納へ入れて、ひと息ついていると

「落ち着いたらお風呂でもどうですか?」

 と、志保から提案がある

「おっ、いいね」

 と乗り気な信吾。


 志保に風呂場に案内された信吾は風呂場で魔法を使って用意する。さすがお金持ちといったお風呂で、やたらとデカい。さながら銭湯の様になっていて湯船の上の壁には定番の富士山が描かれている。

 そしてお湯が出てくるだろう所が、口を開けたライオンの彫刻だった。


 先に男性陣から入ってから、次に女性陣が入る。もちろんお湯は張り替えた。

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