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第83話 深夜の相談事

 徹夜組が寝てから5時間が経った。時刻は23時。


「お疲れさん、5号」

 信吾が起きて5号の隣に座りながら声を掛けた。

「信吾か、大丈夫なのか?寝ないで」

「あぁ、5時間も寝れば充分だ、代わるから5号も休んでくれ」

「いや、私は大丈夫だぞ。まぁ見張りがいるかどうかもわからんがな、さっきから全っ然気配も何にもしない」


「そうなのか?うーん、、そうか、わかった。俺はちょっとギルバードさんに聞きたいことがあったんだけど、、、」

 ギルバードを見ながら信吾が言った。


「寝てるな」

「仕方ないか、明日にするか」

「いや、ちょっと待て、おい!起きろ!」

 5号が隣で寝ているギルバードを揺らして声を掛ける


「5号っおまっっしぃーーしぃーー寝かせてあげて」

 信吾が気を使って小声で言うがギルバードは、はっと目が覚めて起き上がる


「す、すまない、また寝てしまった。ありがとう5号」

「あぁ、寝たら起こしてくれって言ってたからな」


「あ、そういう事か、、大丈夫ですか?ギルバードさん」

「んあぁ?あぁ、信吾か、大丈夫だぞ」

 あくび混じりに答えるギルバード

「少しお話し聞いても大丈夫ですか?」

 信吾がお茶を出しながら言う

「あ、ありがとう、いただくよ。で、お話しって?」

 少し間を空けて話し出す。


「勇者様の事なんですけど、今ってどこにいますか?王都にはいるんですか?」


「うーん、最近は勇者様の情報は入って無いなぁ、魔王を倒して世界の救世主やらヒーローなどと呼ばれ始めて、それから我が国に来たんだ。その時に国王様から、世界を救ったということで褒美を賜ったのだが、その後そのまま王都にいて街の中を観光しながら食べ歩きしていたと聞いているが、あれから結構経っているからな、もしかしたら国に帰ったのかもしれんな」


「そうですか、国ってどこですか?」

「勇者様の国は東のクライン王国だ」

「あー、なるほど、確か敵対している国、ですよね?」

「あぁ、そうだ、しかし魔王が世界を滅ぼすと宣言してからクライン王国とは一時停戦となり、共通の敵としてお互いが協力してきた部分ではある」


「はぁ、忙しいですね、戦争やら魔王やらで」

「まぁ、な、停戦となってお互い力をつけるために発展してきて、今や我が国は平和そのもので、民も満足しているのだ。それも我が国の王様が民の事を一番に思って発展と様々な問題の対策を王様自ら買って出たのが理由の一つでもある」


「なるほど、いい王様ですね」

 ギルバードが大きく頷く


「ただ、クライン王国はそうでもないらしいが、、聞くところによると貧富の差が激しく治安も悪いと聞いている。しかし、何故か人は増えていっていると」

「うーん、そこら辺は見てみないとわからないですね」


「そうだな、、まぁ、他国の事はいいとして、我が国までの道のりが見えてきたぞ。まだまだ先ではあるが、もう少し行くと森を抜けて広い荒野にでる。そうすれば道もあるし、乗り物も問題はない」


「あ、そういえばギルバードさん達ってどうやってあの山まで来たんですか?歩いて、ではないですよね?」

「あぁ、勿論だ。乗ってきたのは飛竜だが、黒龍とは力の差が大きすぎて飛竜が上には行きたがらなかったのでな、山の向こう側に廻って、そこで逃して、麓から登ってきたって事だ」

「逃した?」


「そうだ、この従魔の首輪をつけると攻撃性のない草食の飛竜などが従魔に出来るのだ」

 腰の袋から首輪を取り出し説明する。


「飛竜って草食なんですね、あ、ちなみに肉食の魔物なんかは従魔にできたりします?」

「出来るぞ、この首輪は無理だが、もっと高性能な首輪なら肉食の攻撃性を抑えられるが、その代わり値段が相当高い上に強い魔物だとレジストされるからリスクは高いな」

信吾がなるほどと頷いていると、そのままギルバードは話しの続きを話し出す


「肉食の魔物はいいとして、飛竜は道のない場所を通る時に使うのだが、道がきちんと整備されている所なら魔導船があるからそれを使うのだが、今は生憎持っていなくてな、、って、もしかしてそれも知らないのか?」

「あ、はい、すみません、何せ小さい村の田舎者でして、体鍛える事しかしてなかったので」


 信吾はそんなことを言いながら魔導船に興味が湧いた。


「あ、そうか、信吾達はあれだな、私達が気絶していた時に乗っていた変な乗り物だろう?あれと似てはいるが地面と接触はしてないし、もっとこう、、ゴチャゴチャしてないと言うか、、まぁ、国に着いてからのお楽しみだな」

「地面と接触してない?なら空も飛べるんですか?」

「いや、魔導船は地面から少し浮くだけだ。空を飛びたいなら魔導飛空船がある」


 信吾は思う、もしかしたら魔導具ってのは地球の文明よりも発展してるのかも、と。年甲斐もなくファンタジーの世界にワクワクしてしまう信吾。


「早く行ってみたいです!明日からとばしましょう!」

 急にテンションが上がった信吾に少し引きながらギルバードは答える。

「そうだな、乗り物を出してくれるなら楽だし早いだろう。恐らくもう一日か二日で着くはずだ」

 それを聞いた信吾は少し落ち着く。

 暫く雑談をしながらゆっくりと時間が流れる。


 するとフォルガイムと志保が起きてくる。

「見張り、交代しますよ。皆さん休んでください」

 フォルガイムが言う

「お、もう交代か、すまない。では休ませてもらう」

 とギルバードが言い、寝床にはいる。


「信吾さんも、5号さんも休んでください」

「私は寝なくても大丈夫だ」

「俺も何か目が覚めちゃったからなぁー」


「そうですかっと」

 信吾と5号が座っている場所の対面に座るフォルガイム。

 志保はフォルガイムの横に座る。 


「信吾さん、ギルバードさんが南の国には日本のお米の様な物を食べる民族がいて鎖国してるって言ってました。どう思います?」


「えっ?マジか?てことは王国はお米が無いって事になるな。主食は小麦かな?パンとか?麺類とかかな?まぁいいか、でもその日本みたいな国に一回は行ってみたいな」

「ですよね!ですよね!」

「どんな感じかは知りたいけど、色々と忙しいからなぁ、落ち着いたらかなぁー」

「色々忙しいって?どういう事ですか?」


「うーん、昨日?昨日か?ん?何か記憶が飛び飛びになってるけど、、」

「あ、それ多分徹夜したからですよ。信吾さんとトワさんとクモスケさん、みんな意識朦朧としてて半分寝てたからですよ、酔っ払いみたいに動いてみたり、寝言の様にブツブツ言ってみたり、突然暴れてみたりで大変だったんですよっ!もう」


「あ、えっ?マジで?それはすまなかった」

 反省する信吾。その後ろから

「ん〜ーーっ呼んだ?」

 と、トワとクモスケが伸びをしながら起きてきた。

「あ、おはようございます。まだ寝てても良かったんですけど、起こしちゃいましたかね、ごめんなさい」


「おはよ、んまぁ大丈夫。なんかぐっすり寝て気分スッキリって感じ」

 クモスケもコクコク頷いている。

「今何時?」

「そうね、大体ね、、2時」

「大体ねはいらないっすよね」


「何かお腹すいたし、喉も乾いたから何かちょーだい」

 クモスケもコクコク頷いている。

「わかった。じゃ、かるーく飯でも食うか、兵士二人は寝てるから何でも出せるぞ、どうする?」

「んじゃぁ、肉!」

「焼きそば」

「たこ焼き」

「サンドイッチ」

「カレー」

「唐揚げ」

「味噌汁」

「酒」

「コーラ」

「果汁百%のオレンジジュース」


「おいおいおいおい、待て待て、落ち着け、訳分からんからみんな一斉に喋るなっ、てか酒ってだれやねん。ここは居酒屋かっ」


 みんなを落ち着かせ、一つ一つ出す信吾。

「唐揚げとか温めるから待ってて」

 5号と二人でワタワタと動く信吾であった。


 かるーくだったはずがガッツリになってしまった。

 そして食後にデザートまで頼んで、まったりとしていると

「あー、美味かったな。何だかんだ食っちまったけど、俺はもう食えないぞ、腹いっぱいだ。皆は?」


 信吾が全員を見渡すとお腹をポンポン叩いていたり、手を振ってもう食べられないアピールしたりと三者三様でお腹いっぱいなのが分かる。


 そのまま雑談へと流れ込み、今までの流れの情報共有をした。


「その惑星面白そうですね、何ならそこに逃げて暮らすってのはどうですか?」

 フォルガイムが信吾に問いかける


「んなアホな、あんなとこで暮らしたくは無いし、何よりアバドンが俺達を逃がすとは思えない。何としても追っかけてきてゲーム感覚で遊びだすだろうな」

「うーん、それもそうですね」


 フォルガイムが項垂れていると、横からイズナが話しだした。

「ちょっとオイラのお願いを聞いてくれないか?」

「えっ?イズナ?いつの間に、、」

「志保には下がってもらった。ちょっとオイラから話しがあるんだ。聞いてもらえるか?」

「あ、あぁ、どうした?」


 神妙な面持ちで話し出す

「一度隠れ婆さんの所に連れてってくれないか?」

「えっ、、うん、まぁ、それは構わないけど?」

 首を傾げて先を促す

「オイラ考えたんだけど、どう考えても今のオイラじゃ、信吾達の特訓の邪魔になるって思うんだ。だから少しの間、隠れ婆さんの所で自分なりに鍛えようと思ってるんだ。それに少し、、いや、自分なりにやってみたいことがあるんだ。頼む、、」

 少し頭を下げながら言うイズナに


「うん、イズナの目を見ると強い意志が宿ってるから、多分俺がここでなにか言ってもイズナの為にも志保ちゃんの為にもならない、、か」

 少し心配げな顔でイズナを見る信吾に今度は5号が話しだした。


「私も、、私も、一度トゥトゥナ様の所に戻りたい」

 信吾が5号の方を見る。ジッと見つめる信吾

「う、うー、ほ、は、し、仕方が無いんだ。分かってくれ」

「分かってくれもなにも、理由は?もしかして嫌になったとか?」

「そ、そんなことはない!断じてない!ただ、私ももっと信吾達に近づきたい、、私は、役に立ちたい、もっと、、信吾の、、」

 最後の方は小声になっていて聞き取れなかった


 意を決して声を張り上げる

「一度トゥトゥナ様の所に戻って、もっともっと強く、有用になるように、アップデートなり開発なり研究なり改造なり、、」

「お、おう、わかった。5号ストップストップ、その内コロ○ケなり、とか言いそうで、、いや、違うな」

 首をブンブンと振り雑念を払う信吾


「わかった!二人の話しはわかった。だけど条件がある」

 信吾が二人を見てニコリと笑顔になってすぐ真剣な顔になる


「絶対に無茶するな、あと何かあったらリストバンドで連絡すること、期間を決めて目標を立てて無理しないこと、わかった?」

 どこか親の様な事を言う信吾に二人は戸惑いながらも頷いた


「あ、あともう少しでモンターナ王国に着くみたいだから、少し見て回ってからでも遅くないだろ?少しは楽しもうじゃないか?皆が強くなってまた一緒に冒険が出来るまで一度は離れるけど、すぐにまた一緒になれるんだからさ、俺達はずっと仲間だから、家族みたいなもんだからな」


 イズナと5号が少し俯いて沈黙が流れた。


「うん、まあ、、ふふっ」

「ブフッ」

 急に笑い出した二人を見て不思議がる信吾


「いや、なんか悩んでたのがバカみたいだなって、今までこれを言ったら、変に気を使わせちゃうかな?とか、ずっと役に立たなくてお荷物かな?とか、一度離れたらもう戻れないかも、とか、否定されるかも、とか思ってたり、ずっとマイナスの事を色々と考えてて、、暫く考えたまま言い出せなかったんだ。まぁ、重く考え過ぎていたきらいがあったな、もう少し信吾のように気楽に考えてもいいのだなって」

 イズナも5号の言葉にコクコクと何度も頷いている


「そうだよ!もう少し肩の力を抜いてさ、一人で考え込まないで皆に相談してもいいし、何でも言って欲しいと思うよ、俺達は家族なんだから!仲間なんだから!」

 ウンウンと頷きながら言う信吾。


 それを聞いたトワが口を挟む

「マージで信吾ちゃんって小っ恥ずかしいこと平気で言うよね〜、マジ変態だわぁー」

「おいおーい、今シリアスな場面、わかる?シリアス」

「どこがシリアスなのよ、ってか信吾ちゃんが言うと全部喜劇に聞こえるわ」


 ギャーギャーと言い合っている二人を見て、イズナと5号は心の中でお礼を言って、深く信吾に感謝した。


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