第82話 長い夜の徹夜明け
アマテラスの執務室から転移の扉を潜る信吾とトワ。
一歩目を踏み出すと、異様な世界が一目でわかる。
「な、なるほど、いいね。訓練にはもってこいだ」
ニヤつく信吾と対象的なトワ
「重い、空気薄い、暗い、熱い、ジメジメする、そんな湿気が多いにも関わらず、乾燥した砂、イミフだね。で、これ普通の砂じゃなくて、この世界の砂、異常に動きづらい、絡み取られるみたいに足が取られる。こんなとこにずっといたら精神的にやられるぞ、普通の人間は」
「だーからいいんじゃん」
「信吾はドMなの?変態なの?」
「どっちも、かな」
横目でトワを見る
「きゃー襲われるぅー」
「がぁおおおーーまてーー」
見知らぬ惑星で戯れ合う二人。
「ハァハァハァ、きっついな、少し走っただけで息が切れる」
砂の上に大の字になる信吾に、トワも大の字になる
「それな、やっぱやめとく?」
「やめニャイ!頑張るにゃ!でも一度戻るにゃ!」
「何そのキャラ、ウケる~全然かわいくないしー」
「いや、この環境にも早いとこ慣れないとなってね」
「それと猫語関係なくね?ってか砂浜でじゃれ合うカップルみたいな事一度はしてみたかったけど、実際やってみると小っ恥ずかしいな、それを自然体で出来る信吾ちゃんはやっぱり変態だよ」
「ふぁ?、、はははっ、まぁ何をするにも楽しい方がいいんじゃないか?楽しんだモン勝ちって言うじゃん?ちなみに勝ち負けで言うなら環境に適応するのも大事な事で、只強けりゃ良いってもんじゃないんだよ、どんなに強い動物でも適応能力がなければ絶滅してしまうんだ、絶滅の要因は人間のせいってのがほとんどだけど、、でも人知れず、環境が変わり、適応出来ずに死滅していく種は山程いる、だから適応したもの勝ち、楽しんだモン勝ちってね、トワならそこら辺よく知ってるんじゃないのか?」
「あーー、確かにね、昔はいたけど今はいない種なんていっぱいいるな、、懐かしいな、昔を思い出すと、、」
「後悔とかしてるのか?」
「ん?うーん、まぁ、それなりにね」
「それはしょうがない、生きてりゃ後悔の一つや二つ誰だってあるさ、でもなるべく後悔しないように一つ一つの事柄を大事に選択して生きていくしかない、ってかそうやって生きて行くんだ、、なんか考えてみるとトワの方が年上なのに説教じみた事言ったな、俺も年取ったな」
「あっははは、確かにね。でも色んな人間見てきたけど、面白い人間だな信吾ちゃんは、こんな人間見たことないよ」
「おいおい、それはないだろ、こんなおっさんいくらでもいるだろ?偉そうに説教するおっさんなんて」
「そこじゃないよ、そこじゃ、マジでウケる」
二人で暫く話しをして、不意に信吾が立ち上がる。
「よしっ!一旦戻ろう、それからまた今度皆で来るか」
「そうだね、そうしよ」
信吾が転移ゲートを開く、が、繋がらず只、向こう側が見えるだけだった
「えっ?マジ?戻れない?いや冗談でしょ?信吾ちゃん?」
トワが青ざめた顔で振り返って信吾に聞く
「あーやっぱりダメか、面倒っ臭いな」
「えっ?何?何?」
「いや、このゲートで一旦神様の所行ってお礼してからにしようかと思って出したらやっぱり繋がらないから、また霊体になって、、、ん?ちょっと待てよ、俺達霊体のままじゃ、、ヤバい」
「あ、忘れてた」
急いでゲートを地球の兵士達の所に繋いだ。すぐに身体に戻り目を開ける。
「信吾ちゃん、マジで焦ったわー勘弁してよー、霊体がどうのって言うよりも地球に戻れないんじゃないかって思ってマジ焦ったー」
「ゴメンゴメン」
「おかえり」
5号の声がして振り返る
「ただいま、あれ?皆は?」
「フォルガイムと志保ちゃんは寝てる、クモスケはモンスター退治、私は打ち漏らしを頼まれたけど、全然打ち漏らさないから暇で暇で」
「モンスターが現れたのか?」
「うん、でも問題なくクモスケが対処してるから大丈夫」
「そりゃそうだろうな、フォルガイムも志保ちゃんもぐっすりだもんな」
フォルガイムを見ながら答えた
「時間がもう5時過ぎてる、そろそろ夜明けだな」
「もうそんな時間か」
「俺、ちょっと様子見てくるわ」
「あ、じゃアタイも行く」
そう言って信吾とトワがクモスケのもとに向かう
「おーいクモスケー大丈夫かー」
気配を探りながら近づいて声を掛ける
「信吾!お帰り!」
クモスケがオオカミを切りつけながら言う
「クモスケ血だらけじゃないか!大丈夫か?」
「うん、大丈夫、返り血」
「それもそうか、分かってますよ、うん」
「アタイが代わりに行ってくるからクモスケちゃんは休んでて」
飛び出して行こうとするトワに信吾が慌てて止める
「ああー待ってトワ、なんか武器いるか?」
「おっ、何がある?」
興味津々でワクワクしながら聞く
信吾は空間収納から一通りの武器を出す。
チタン製の片手剣二本、普通のナイフ、ヒヒイロカネ製のバット、折れた大剣、パチンコ玉、ミスリルの剣
「これくらいかな、どれがいい?パチンコ玉なんて武器って言わないけど、投擲すれば致命傷間違いなし、大量にあるから持ってって、使わなきゃその袋にいれとけばいいからさ。あ、折れた大剣は今直しちゃうから持ってかないで」
「そうだな、じゃ、これ借りてく」
選んだのはチタン製の片手剣一本とパチンコ玉を数百個
「じゃ、行ってくるね」
そう言ってものすごいスピードで飛んで行った。
「それにしても、これは凄いな」
周りを見て信吾が呟く。見るとそこら中にモンスターの死骸が転がっている。
「まだまだいるっぽいけど、何かあった?俺が神様の所に行ってる時に」
「えっ?えっとー、、僕もう大丈夫だからもう一回行ってくるね」
クモスケは自分が騒いでモンスターを呼び寄せたなんて言えずに誤魔化した。
「あー行っちゃったな、まぁいっか、とりあえずここら辺のモンスターの死骸を収納してますかね」
言いながら収納を開始する信吾。
収納しながらも、モンスターはちらほら襲ってくる
その都度ヒヒイロカネのバットで首を切り落として行く。力の差がありすぎてバットでも切れてしまう。
そして夜が明けて辺りが明るくなる。
モンスターの死骸を収納してると、トワとクモスケが戻って来る。
「何かモンスター達どっか逃げて行っちゃった」
「僕の所も逃げて行っちゃった」
「ま、そんなところだろうな、だってトワとクモスケが暴れてるんだぞ?一人ならまだしも二人だぞ、嫌でも強さが違うって解るだろう、俺もここにいるし、ゴブリンでもなきゃ強さが違うって逃げていくさ」
「そうか、なるほど」
「そうなんだ」
二人が納得する
「さて、じゃ、三人でモンスターの死骸集めるぞ、頑張るぞ」
「えーー、放って置こうよ」
トワが駄々をこねる
「ダメだろ、衛生的にもだし、放って置くとアンデッドになるんじゃないのか?こういうモンスターって」
「うーわかった」
渋々了解するトワ
クモスケは黙々と集めては食べ、集めては食べを繰り返している。
暫くして5号が来た
「終わったようだな」
「おっ!5号も手伝ってくれ、このモンスターの収集」
辺りを見る5号
「おいおいおいおい、凄い数だな、まるで山だ」
「今夜がやまだ」
「は?もう夜が明けてるぞ」
「うん、いや、何でもない」
トワとクモスケは遠い場所で収集、信吾と5号はここら辺一帯を収集する
それから一時間後
「おはようございます」
「おはようございまーす」
志保とフォルガイムが起き出してきた
「おう、おはよ、よく寝れた?」
「はい、お陰様で、ありがとうございます」
志保が答える
「あぁ、それはなにより、あ、それとフォルガイム、これ」
「あ、大剣直してくれたんですね、ありがとうございます!」
早速収納袋に入れるフォルガイム
挨拶を交わしているとクモスケとトワが戻って来た
「終わったー」
「終了でーす」
「オッケーお疲れ様、じゃメシにしようか、兵士二人は?」
「まだ寝てますね、起こしますか?」
「そう、だな、もう七時過ぎてるし寝すぎだろ、さすがに」
腕時計を見ながら答える
「ですよね」
それから
「すまなかった!」
と謝罪から入り朝を迎えた兵士二人と朝食を取る
パンと簡単なスープで軽くすませる
朝食を済ませて先に進む一向
「ねーむーいー」
と、トワがゾンビの様な歩き方になって進む
「そうか?なんかナチュラルハイになってきたぞ俺は」
クモスケは黙って歩いているが、視点が定まらずフラフラしている
「いや、寝てくださいよ、さすがに徹夜はキツいっすよ、ほら、三人とも目の下クマが凄いですよ」
「えーー?熊?森の熊さんはどこだー」
「違います、違いますって、信吾さん」
まるで酔っぱらいを相手にするようにバタバタするフォルガイム
「5号さんは大丈夫なんですか?」
志保が5号に聞く
「ん?私は有機物さえ摂取出来れば寝なくても平気だ。と言うかずっと寝なくても大丈夫」
「そうなんですね」
信吾、クモスケ、トワ、フォルガイムを放置して先に進む
そのままモンスターが現れては倒しながら進んでいき、あっという間に日が暮れる。
広くて平らな所を探してキャンプにすると、座った瞬間に寝出す信吾とクモスケとトワ。
「いやぁー、疲れたぁーもうヤダ、絶対に次からは徹夜させない!禁止!ダメ絶対!」
疲労がピークのフォルガイムが不満をぶちまける
「お疲れ様です。さ、食べてください、ご飯出来てますよ」
志保がフォルガイムに声を掛ける
「あ、ありがとうございます、いただきます」
志保の気遣いに疲れがふっとんで、ご飯をかきこむフォルガイム
今夜はカレーだ
「やっぱり信吾達パーティーの食事は少し変わってるな、これは見たことがないぞ、異国で鎖国している国があるのだが、こんな食材を食していると聞いたことがあるぞ、、」
「そうなんですね、それはどこの国ですか?」
「南にある国だ、割りと近いと言えば近いが、鎖国していて、取り引き事態が全くない」
「なるほどなるほど、興味ありますね、明日信吾さんに伝えてみよう」
そんなこんなで暫く雑談してから眠りについた。
見張りは最初はリベンジということで、気合いの入った兵士二人と5号となった。




