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第81話 アマテラスの隠し事

 急に倒れたトワを見て志保と5号が驚いて支える

「えっ?トワさん?どうしたんですか?」

 焦って声を掛ける志保にフォルガイムが冷静に言う

「あー多分信吾さんと一緒に神界に行ったんじゃないですかね?心配無いですよ。放っておけばその内帰ってきますよ」


「ああーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 クモスケが飛んできて叫びながら指を指している。

「うわっ!ビックリしたな、、クモスケさん今までで一番大きな声だったんじゃないですか?生の声がこっちまで聞こえて来ましたよ」

 見張りで離れているフォルガイムにも聞こえた大きな声に皆がビックリしている。


「また、信吾が行っちゃった、しかもトワと一緒に」

「クモスケさん、ダメですよ、霊体になったとしても空間を開かないと行けませんからね、あと信吾さんイジったら怒られますからね」

「わかってるよ、雄也は相変わらずうるさいな」

「フォルガイムなんですけど?」


 久々のやり取りを聞いていた志保が困惑しながら聞く

「えっと?大丈夫なんですかね?このままで」

「大丈夫だよ、ただ、今のクモスケさんのでっかい声で、もしかしたらモンスターが来るかもしれないから、一応合流しとこうか、二人担いで来れないかな?」

「あ、大丈夫です、すぐに戻ります」

 そう言ってクモスケが信吾を担いで、5号がトワを担いでフォルガイムの所に向かう。


 合流して信吾とトワを寝かして毛布を掛ける。

 兵士二人は相変わらず寝ているが、そのまま寝かせておく。

「そろそろ志保ちゃんも寝たほうが良いかもね」

「そうですね、何気に眠いです」

「フォルガイムも寝たらどうだ?後は私とクモスケが見てるから」

「そうですか?じゃあ、お言葉に甘えて」

 そう言ってフォルガイムと志保は眠りについた。


 5号とクモスケが残って見張りをしていると、無数の気配が近づいて来るのがわかる。

「やっぱり来たじゃないですかクモスケさん、お願いしますよ、自分寝ますんで」

 気配に気付いたフォルガイムがクモスケに言う

「わかってる、雄也は寝てていい、僕が全部やる」

「おやすみなさい、、、あ、フォルガイムっす」

 何の心配もしていないフォルガイムが再び眠りにつく。


「5号はここにいて、うち漏らしたのを頼む」

「了解」


 クモスケがその場から飛び出した。


 *****


 一方信吾は色とりどりの空間を進んでいくと

「待ってくれ待ってくれ!信吾ちゃん!」

 信吾が振り返るとトワがいた。

「えっ?トワも来たのか?」

「うん、霊体になるのはオハコだから」

「あぁ、そっか、じゃ行くか」

 そう言って二人で進むと色とりどりの空間が切れた。そこは閻魔の間で、カウンターの奥にはクシナダヒメがいた。


「あ、こんにちは、クシナダヒメ様」

「うわぁー信吾さんじゃない!どうしたの?」

 すると信吾の後ろからトワが声を掛ける

「久々だな、クシナダヒメ、スサノオとアマテラス達は元気か?」


 声が掛かった方をクシナダヒメが見る

「ん?えっ?まさか蛇龍?」

「我の名前はトワだ、信吾が名付けてくれたんだ、改めてよろしく頼む」

 ニコっと微笑むトワ


「え、え、な、何しに来たの?」

「そんなに警戒するでない、昔の事は忘れてはいないが、別段気にもしておらん。弟も自業自得だと思っておるし、我には関係がないこと故」

「トワ?口調が変わってるけど?」

「あ、やべ、昔馴染みと会うとどうも口調が戻っちゃうな、気を付けないとね」


「いや、まぁ、喋りやすいならそれでもいいけど、、知り合いなんだな、ってかそれもそうか、トワは昔から日本にいるもんな」

「そうそうそう、そうなの、アタイはアマテラスより、もっともーーっと前から存在してるんだ」

「まじで?」

「マジマジ」


「イザナミノミコト様とイザナギノミコト様が日本をお造りになった後ですわね」

 と、クシナダヒメが言う


「そう、大分後になったけど、イザナミが黄泉の国に行った辺りでアタイは生まれたんだ、実際ヤマタノオロチは弟って言ってるけど血の繋がりはないしね、只、可愛がってあげてたら弟っぽくなっただけ」


「ちょっ、ちょっと待とうか、こんなところで日本神話の事実を聞かされるなんて思ってもみないから、、で、どうなった?」

「ふふ、信吾ちゃんも興味津々だな。それは後にして、早くアマテラスに会って事実を聞かなきゃじゃない?」


「あ、それもそうだな、クシナダヒメ様お願いします」

「うん、、ちょっと待ってて」

 そう言ってアマテラスと連絡を取る


「あー信吾さん、今アマテラス様は忙しいらしくて、手が離せないみたいなの。だからまた日を改めて欲しいと、、」

 それを聞いた信吾は、なんかクシナダヒメの様子がおかしいのを感じた

「クシナダヒメ様、トワが一緒にいる事言いました?」

「えっ?ええ、言ったわよ」


 信吾が目を細める

「ならアマテラス様の部屋で待ってますので開けてください」

「えっ?」

「いいから開けなさいよ、別に取って食ったりしないわよ」

 トワがクシナダヒメに言うと渋々アマテラスの部屋に直通の扉を出した。


「私は悪くないわ、大丈夫、大丈夫」

 クシナダヒメがブツブツ言っているが、気にせず扉を開ける信吾。


「こんにちは、失礼します」

 扉を開けるとアマテラスが執務机に座ってボーッとしている。後ろにはアラクネが控えている。


「お久ーアマテラスちゃん元気?あれ?」

「何してるんですか?アマテラス様」


「うわぁ、クシナダヒメは通したのかっ!な、何じゃ、何しに来たんじゃ?」

「クシナダヒメ様は悪くないですよ、自分が待ってるって言ったんで」

 アマテラスは憤慨しているが、なんとか信吾が落ち着かせる。


「アマテラスちゃん、なんでそんな格好?前はかわいい女の子の姿だったじゃない?なんでそんなおじいちゃんみたいに?」

「うっ!ど、どちらさまかな?そなたを呼んだ覚えはないぞ」

「そーんな冷たい事言わないの、昔は色々助けてあげたじゃん?時にはスサノオを黙らせたり、時にはツクヨミを説得したり、時にはスサノオとツクヨミの仲介したり?覚えてる?」


「うっ、、」

 目を逸らすアマテラス

「大丈夫大丈夫、その後の事なんか気にしてないから、ほら、仲直り」

 言いながら手を出すトワ。

 恐る恐る手を出して握るアマテラス


「あ、す、すまなかった。あの時は、、」

「いいの、アタイもずっとモヤモヤしてて、仲直りしたいと思ってたから、信吾ちゃんに感謝だね」

 ニコっと微笑んだトワに笑い返すアマテラス


「あのー、何の話しですか?」

「それは内緒。ご想像にお任せしますってやつね」

 信吾が気になって聞くがトワははぐらかした。


 信吾は気になったが本人が言いたくないなら想像するしかないと引き下がる。

 昔は仲が良かったが何か確執があって敵対してたとかそんな所だろうと、検討つける。


「じ、じゃあ、本題に移ってもいいかな?」

 アマテラスがコクリと頷いた。

「先日俺達の所にアバドンが現れました」

 目を見開くアマテラス

「その時に色々と聞きました。トゥトゥナ様にも聞いていたのですが、この世界の事、今までの事、今までの話しの中で気になる点が一つあります」

 一呼吸置いて、アマテラスを見て反応を待つ

 アマテラスはゆっくりと頷いて、先を促す。


「何故異世界を助けたのか、です。そのまま放って置けばこっちには関係がない事だし、面倒な事もしなくてすんだはずです。何故ですか?何を対価に実行したんですか?」


 一気に捲し立てる信吾にアマテラスは少し引いた

「い、いや、対価など、無いぞ、ワシ等神々は慈悲深く、、」

「嘘ですね、初めて来た時も、二回目の時も何か隠してる感じがあったんです。でも、面倒事は避けたいから敢えて聞かなかった事もあります。でももう今はそんな事言ってられません。後二から三年で悪魔達の世界になってしまう可能性があるんです。それを何とかしたいと思っているんです!いい加減に本当の事を喋って下さい!お願いします!」

 アマテラスの言葉を遮って更に捲し立てる信吾


「白状しちゃいなよ、アマテラスちゃん」

「う、うむ、、」

 少し逡巡するが、覚悟を決めたアマテラスはゆっくりと話し出す。

「ゆ、勇者じゃ、魔王を倒した強い勇者がいると聞いて、画策していたのじゃ、ルシファー対策として。しかしその異世界が宇宙もろとも消滅されると聞いて何とかしようとしたのが今の結果じゃ、、しかしワシ等は勇者に期待しておる、間違いなくルシファーを倒してくれるじゃろうて」


「やっぱり、、」

 ため息混じりに信吾が呟く

「アマテラス様、その勇者にどんな能力を与えました?ってか与えたんですよね?チート能力を」

「あ、あぁ、そうじゃ、その能力でルシファーを討ち取ってくれるはずじゃ、間違いない」

「その能力は?」

 少し溜めてアマテラスが言う

「絶対に何でも切断する能力じゃ」


 アマテラスの言葉に沈黙が支配する。


「あっはははっ!ウケるな信吾、そんな能力当たらなければ意味がないってヤツじゃん?マジ会ってみたくなったな、その勇者様に、ははっ」

 沈黙を破りトワが笑い出す。


「アマテラス様、その勇者の実力って御存知ですか?」

「まぁ、大丈夫じゃろ、、」

「ルシファー、いや、アバドンの実力って御存知ですか?」

「ふむ、最強の黒龍より少し強い位の、、」


「そんな訳無いじゃないですか!圧倒的に格が違います桁違いに。次元そのものが違います。無理です。ハッキリ言いますが、その勇者じゃ無理です、勝てません」

 信吾の質問に答えるアマテラスに被せ気味に信吾が怒鳴る。


「う、そじゃろ?嘘じゃろ?そんなに、、」

「嘘をついてどうするんですか、事実です」

「ど、どうすれば、、」

 信吾の言う事実に頭を抱えるアマテラス


「知りませんよ、俺は何故アマテラス様がそんな大事な事を隠してたのか知りたいですよ」


「あ、信吾それ多分だけど、向こうからこっちの世界に来た人間達には一番知られたく無いんじゃないかな?神の威厳とか、立場的な感じで、まぁ、要するに情けないからだと思うよ。自分達の失敗もそうだけど、理由が理由なだけに言えないでしょ、察してあげようよ、悪魔達の所業を他人に任せるなんてねぇ、、自分達には対処出来ないって言ってる様なもんでしょ?」


 うわぁー、といった表情でトワを見る信吾


「トワ、知られたくない様な事を色付けて解説してくれてありがとう」

 引き攣った顔で言う信吾。


 悲しそうな顔をしているアマテラスに少し同情してしまう


「アマテラス様、とりあえずここでガチャガチャ言ってても仕方がないので、何とかしてみるつもりですよ」

 アマテラスが信吾を見る

「元々そのつもりですし、だからその為に強くなりたいんです。協力してくれますよね?」


 項垂れながらアマテラスが言う。

「信吾よ、お主、神になるつもりはないか?そなたなら神になる条件も備えておるし、適任じゃと思うのじゃが、、」

 アマテラスの言葉にトワが反論する

「なんっ!なんてことを言い出すんだお前はっ!絶対にそれだけは許さないぞ!」

 トワが何故か憤慨して机を叩きながら怒鳴りつける


「お、おい、どうしたんだトワ、ちょっと落ち着けって」

 トワを後ろから抑えながら信吾が言う


「そもそも、俺は神様みたいになるつもりはハナっからないぞ、そんなことしたら誰が皆を、仲間を守るんだよ、異世界人だって皆悪魔達にやられちゃうだろ?そうならない為にここにいるんだ、落ち着けトワ」


 信吾の言葉を聞いたトワが落ち着く

「ゴメン、取り乱した」

「うん、大丈夫だ、心配ない」

 自然とトワにハグをしてなだめる。


「って事なんで残念ながら神様になりません、そこで提案というか、頼み事があるんですが、いいですか?ってか聞いてください」


「な、なんじゃ?」


「心置き無く暴れられる場所に連れてってもらいたいんです。宇宙って広いじゃないですか、だから訓練に適した様な、誰も生物がいない、出来ればキツーい環境の中で訓練すればより強くなれると思うんです。なのでそんな惑星に連れてってください」


 少し悩んでいるアマテラス

「そうじゃな、それは構わんが、どうやって戻るつもりじゃ?いや、それは問題ないか、空間転移の能力があるのじゃったな、ふむ、どこかいい場所はあるかの?」

 アマテラスが振り返ってアラクネに聞く


「はい、そもそも信吾さんはどんな所がよろしいと思いますか?」

 アラクネの問に答える

「そうですね、超重力の所もいいんですけど、慣れるのに時間がかかる上に、逆に地球に戻ったらすぐに軽い方に慣れちゃうんですよね、重いのには慣れないのに軽いのにはすぐ慣れちゃうって人間の悪い所なんですよねぇ、、、だから、、いや、そもそもどんな惑星があるかわからないので、お任せします」


「ふふっ、分かりました、信吾さんにピッタリできつい環境があるのでそちらをご紹介します、ちなみにその惑星は特殊で、、、そうですね、光速の二十%で公転しています。なので時間の誤差が生じますのでご注意下さい」

 アラクネがそう言うと腕を上げる、すると空間が歪み扉が現れた


「時間の誤差が生じる?もしかして相対性理論の?理屈はわかりますが、どのくらいの誤差がでます?」


「はい、その惑星は特殊で、その相対性理論が逆になります。一年が2倍になります。要するにそちらの惑星で過ごして、一年後地球に戻ったとしても半年程しか進んでいません」


 信吾は驚き固まる。

「どうなってるんだ?完全に逆だろ?普通なら俺達の時間が遅くなって、帰ったときに地球の時間が進んでて、浦島太郎状態になるはずなのに、、、」

 思考の波に攫われている信吾。


「どうぞ、行ってらっしゃい」


 我にかえった信吾がアラクネに言う

「あ、ありがとうございます、、アラクネさん、ここに配属になったんですか?」

「そうなの、今はアマテラス様の秘書をやってるの。よろしくね」

 小声で信吾に言うと扉を開けてくれた。

「行ってきます」

 と、言ってトワと一緒に扉を潜る。


 扉が消えてアマテラスとアラクネ二人になり、部屋に静寂が訪れる。


「アマテラス様が神にならないかと仰った時は少し焦りました。あの蛇龍はわかっていた様ですが、、どうやってなるかを言っていたら恐らく信吾さんも怒ってましたよ、、」

「そうじゃな、、すまない」

「はい、神になる為には、一度死ななくてはなりません。信吾さんに死ねなんて言ったら、、それはそれは一大事かと、なので、今は機を伺いましょう」

 頭を下げながらアラクネは言った。


「お主こそ粋なことするではないか、信吾達が来るのを分かっていたかのように時の精霊を用意してるとは」

「はい、精霊の存在を知られたらそれこそ私が罰せられますから、ああいった感じでちょっと強引に説明するしかなかったですからね、案の定信吾さんは相対性理論の事を知っていて怪しんでましたから」

「そうじゃな、ワシ等の関与無く精霊の存在が分かるならそれでもいいのじゃが、ワシ等が関わってると知られれば、それこそ厄介じゃからな」

「ふふ、そうですね、また懲罰のお世話になってしまいますね、ふふふ」


「ありがとうな、アラクネよ」

「勿体ないお言葉です」


「そうじゃな、ワシも信吾にはお世話になりっぱなしじゃし、ここは一つ無茶をさせてもらおうかの」

 アマテラスは先程とは打って変わって前向きに考え、何か信吾達の為になるようなことを画策し始めた。

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