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第79話 情報収集

 血の匂いがする場所を後にした一行は、歩きながら雑談を交わす。

「兵士さん達はどこから来たんですか?あのドラゴンがいた山から遥か西にある国ですか?」

「あぁ、そうだ。そう言えば自己紹介がまだだったな、私はギルバード、こっちがハインリヒ。よろしく」

「あ、よろしくお願いします」

 と、信吾達も全員自己紹介をする


「変わった名だな、他国の者か?」

「はい、西の海を渡った小さな島国です」

「そうか、西か、うむ、ようこそモンターナ王国へ」


 少し怪しんだが、他国の事、西の島国を知らない兵士は深く考えなかった。

「東ではないのだな?」

「はい、東には何かあるんですか?」


「東にはクライン王国がある。その国とは停戦中でな、百年は戦っていないが、一応モンターナ王国への立ち入りはかなり厳しく取り締まっているんだ。入れないこともないが、何かとやっかいでな」


「はぁ、そうなんですね」

「まぁ、君たちとは関係がないだろう。ところでこの国に何しに来たんだ?ドラゴン討伐か?」


 信吾は一瞬目が泳いだが何とか取り繕う。

「あー、はい、そうなんです。冒険をやってまして、強いモンスターを討伐しながら強さを求めて修行中なんです。とにかく強くなりたいのが僕達の目的ですね」


 冒険者があるのかどうかもわからなかった信吾は冒険と言って、少し濁して答えた。


「なるほど冒険者か、登録は?」

 その答えに信吾は冒険者という職業があった事に安心した。


「いや、登録はしてないです。何しろまだ来たばっかりで、登録の仕方も分からないし、登録する場所もどこにあるのかも分からないんで、そのうちしようかと」


「それならモンターナ王国の城下町に冒険者ギルドがあるからそこで登録するといい、君たちならすぐにランクも上がるだろう」

 にこやかに答えるギルバード。


「いや、僕達は身分を証明するものも持ってないし、お金も無いんです。なのでそちらの国に入るのも難しいかと、、、なので遠慮しておきます」


「そうなのか、勿体ないな、、ならば上に聞いて見ようか?」


 信吾は顎に手を当てて考え込む。


 いずれは身分証明書は必要になるし、どうせ目立つことにもなる、お金も必要だし、情報も欲しい。異世界の武器や、魔道具、他にも必要なものが出てくるかもしれない、しかし、兵士はこちらを利用しようとしてるのかゴリ押ししてくる。まぁ、メリットとデメリットを考えるとメリットの方が大きいかも、と考えて答えを出す


「あ、えっと、では、お願いしたいんですが。何かお礼をした方がいいですよね?」


 ギルバードはニヤリと微笑んで言う

「信吾は珍しい魔法で素材を確保していたな?その中に入っている素材をいくつか分けてもらいたいのだが、、どうだ?上に話しを通すときも素材の話しをして無理矢理通すつもりなんだが、、、」


「分かりました、黒龍でどうですか?落とした首とセットで」


「ほ、本当か!?まさか黒龍をポンと出すなんて思わなかったから驚いた。精々オークや、ジャイアントスネーク辺りかと、もしくはジャイアントタートルとか、、」


 何やら驚いている兵士は次々とモンスターの名前を上げていく。名前を聞く限り想像が出来るので話しを合わせる信吾


「あー、聞いた事はありますけど、まだ見たことはないですね、この辺にいるんですか?」


「いや、もっと先だろう。あのドラゴンがいた山から西にモンターナの国があるのはわかるな、その道中で言ったら、さっきS級モンスターがいた所から国まではどんどん弱いモンスターになって、最終的にゴブリンが国の周りにいる程度になる」


「なるほど、ドラゴンに近づくにつれてモンスターが強くなっていくんですね。だから縄張り争いを、って事か、、」


「そういう事になるな。で、本当に黒龍をもらえるのか?あれは勇者様のパーティーでも苦戦すると言われているドラゴンだぞ?」


 おっとまた貴重な情報ゲットと顔には出さないが内心喜んでいる信吾


「えぇ、問題ないです。それにしても勇者様ですか、勇者様のパーティは黒龍に勝てるんですか?」


「聞いたことがあるのは一体だけ倒したと報告が上がってきたな、、その黒龍の素材を使って武器と防具を揃えて魔王の討伐に向かって、見事に討伐に成功したんだから黒龍の素材だけでも相当高値がつくぞ」


 いや、この人はペラペラと貴重な情報を喋ってるけど天然なのかな?と思いながら信吾が答える。


「問題ないです。よろしくお願いします」

 そう答えた信吾に、クモスケが異変を察知して信吾に告げる。


「信吾、なんかいる」

 一度足を止めてクモスケが指差す方を見ると、遠くの方に巨人らしき影が一体、木にもたれ掛かっているように見える。だが気配は二つある。


「うん、問題ないだろ、トワどう思う?」

「よゆーっしょ」

「んじゃ、いってみっか」


 近づいて行くと木に巻き付かれた一つ目の巨人、サイクロプスが暴れていた。


「おおぅ、ダンジョンのサイクロプスと違って、本場は一味違うな」

「そうですね、こっちのほうが威圧感ありますね、それとあの木ってもしかして、トレントって木の化け物じゃないですかね?」

 フォルガイムが動く巨木を見て兵士に質問した


「そ、そうだ、その通りだ。マズいな、アレはA級モンスターだ。流石に私達兵士二人だと討伐は難しい相手だ。本来ならここは迂回して避けて通るべきだが、信吾は大丈夫なのか?」


「はい、大丈夫でしょう」

「やはりな、まぁ一応討伐においての注意事項、、はいらないか、弱点で言えばトレントは火が弱い、サイクロプスは魔法に弱いとだけ言っておく」


「わかりましたっっておい!クモスケとトワ!」

 信吾が兵士と話している最中に、競うように行ってしまったクモスケとトワ。

「いってらっしゃーい」

 ため息混じりに信吾が呟いた。


 クモスケはまずサイクロプスに巻き付いている枝を全て断ち切った、その後トワがサイクロプスを蹴り飛ばしてトレントと距離を取る。トワとサイクロプスが対峙する。

 先に動いたのはサイクロプスで、拳を振り下ろしてきた、が、余裕で回避する、その後も何度か拳を振るうがトワには当たらない。最初はニコニコ顔だったが、全く当たる気配が無く、飽きてきたトワは一気にサイクロプスの頭上まで跳び上がり、しなやかな腕を振って拳をサイクロプスの頭に叩き込んだ。ドゴンッ!と、地面に響く音がした。サイクロプスの頭蓋骨がへこみ、耳や目、口から大量の血が吹き出し絶命した。


 一方クモスケは、トレントの触手を躱し、時には土の弾丸で触手を弾いて様子を見る。トレントは全く当たらないクモスケに対して、掴んで捕獲するのは無理だと思い、攻撃の手を変えた。トレントの葉を無数に飛ばしてきた。その葉は鋭く、カッターの様な形をして飛んでくる。だがこちらもクモスケの両腕に弾かれる。クモスケは腕を硬質化させて弾きながら一点を見つめていた。それはクモスケのサーモセンサーが示すトレントの内部の核だった。不思議に思ったクモスケはその部分に突きを放ち大きな穴を開けた。その穴から手を入れて核を掴み取る。

「なんだろ?これ?」

 クモスケが核を確認しているとトレントは後ろにひっくり返って動かなくなった。


 難なく二体を倒したクモスケとトワがやってくる

「大した事なかったわぁー、もうちょいやると思ってたけどガッカリィー」と、トワ


 座ってくつろいでいたフォルガイムと5号とイズナが近づいて来た。


「これ、何だろ?取ったら倒れて動かなくなった」

 クモスケは言いながら信吾に核を渡してくる

「ん?これ取ったら倒れちゃったの?取ったらダメなヤツだったんじゃない?」

「そうなのかな?悪いことしちゃったかな」

 クモスケが倒れたトレントを見て言うとギルバードが驚いた様に言う


「それは、魔石だ。魔物モンスターにはもれなく魔石があるだろ、それだ。魔石を破壊、もしくは体外に出ると魔物モンスターは活動を停止する」


 信吾は新情報に喜びながら、魔石って今まで倒したモンスターの中にもあるって事か、なら取り出さないとな、、と考えていると

 ギルバードに続いてハインリヒが言う


「トレントは火や魔法で倒すのが定石で、少しでも近づきすぎると触手で捕獲されて食われるんだ。だから絶対に近づかないし、ましてや接近戦なんてS級の難易度だぞ」

 ハインリヒの言葉に笑うしかなく、笑ってごまかすことにした。

 すぐにトレントとサイクロプスの所に行き、空間収納に入れる。


「トワ、君もエグいことするね、頭蓋骨陥没しまくってたじゃん、目から血と涙が出てたよ」

「一応手加減したんだけどね、潰れちゃった、てへっ」

 ギルバードとハインリヒを見ると口を開けて固まっている。

「まぁ、いっか、ははは」


 笑って誤魔化した信吾は先に進むべく歩き出した。


 その後も雑談混じりに歩きながら情報を引き出した信吾。


 まず気になる点は転移したにも関わらず、兵士に違和感が感じられない事。国の配置や山の場所、海の場所など違和感を感じる事があるはずなのに、無いという事。

 怪しまれない様に聞いたところ恐らく神様が何らかの干渉をしたから、と、信吾は結論づけた。


 次に国の事。かなり大きいらしく、詳しく聞いた信吾は、日本を丸めた位の大きさがあると推察した。

 その中心には城があり上に行くに従って偉くなるらしい。城そのものが住居区域になっていて、貴族が住む場所として一つの城となっている。形はウエディングケーキの様に段になっていて、下が広く上が狭くなっている。狭くなっているとは言っても王族が住む城なので、一般的な城がそのまま乗っかっている感じらしい。逆にその方が王様の警備がしやすいらしく襲撃は今まで一度も無いと。

 そして城下町だが、これもとにかく広く、畑が広大に広がっている地域、商店の街、住宅街、工業地帯、その他細かい施設、教会、孤児院等が完備されていて、住民も平和に暮らしている。住民は人間を始めとして、獣人族、エルフ族、ドワーフ族が暮らしている。

 後は直接入ってみて自分の目で見るのが確実だろうと、話しを区切った。


 ***


 辺りはすっかり暗くなり、焚き火の明かりが辺りを照らしている。5号に食材を渡して、簡単に料理を作り皆で食べる。兵士二人も雑談を交わしながら一緒に食事をする。

 食べ終わると見張りを決めて早々に寝ることにする。

 兵士二人がいる為、冒険者らしい野宿をすることにした信吾。

 最初の見張りは、昼間いっぱい寝てしまったせいで寝られない兵士二人ですることになった。一応こちら側もフォルガイムを一緒に見張りにつける事にした。


 まだ21時前だったので、全然眠くない信吾は一人上空にいた。

 無重力でフワフワと浮きながら兵士達との会話を自分なりにまとめていた。


「異世界人か、面白そうだけど遊んでる暇は無いな、、どうしたら強くなれるんだろうか、、そもそもの話し、もう普通の人間としては限界なんじゃないのか?いっその事人間やめるか?いや、どうやって?わからん、とにかく情報収集だな、その中で強くなれるヒントがあるかもしれない、、勇者って強いのかな?いや、黒龍をパーティーで倒すって言ってたから個人個人はそうでもないか、、」

 そんなことをブツブツと一人で呟いている信吾に突然声が掛かる。


「信吾ちゃん、何ブツブツ言ってるの?」

「うわっ!ってトワかよ、驚かすなよ」

「信吾ちゃんいないと思って、気配探ったらここにいたから来ちゃった」

「来ちゃったじゃないよ、ここは上空だぞ?」

「問題ないよ、アタイは龍だよ?飛翔なんて朝飯前よ」

「そりゃ、そうか」


「で、なんで独り言かなぁ?悩み事があるならお姉さんにいってごらん?」

「いや、世界の偉人達や、天才の人達って考える時に声に出しながら考えると、頭の中を整理したみたいに、考えがまとまりやすいって言うからさ」


「そんなことを聞いてるんじゃないつーのっ!独り言なんてどっちでもいいのっ!悩んでる事を相談しなさいって言ってるの、、まったくぅー」

「ははっ、、優しいなトワは、まぁ、どうすれば強くなれるかなって、、クモスケとフォルガイムには、また差をつけられちまったからな、、やっぱり普通の人間には限界があるのかなって、、、」


「うーん、なかなか難しいねぇ、、、人外になるのはあんまりオススメしないな、お姉さんは」

「うん?なんでだ?」

「いくつか人外になったのを見てるけど、結局理性がなく、その人がその人でなくなっちゃうんだよ、だから、、ダメ」


「なるほどね、ちなみにどんな人外になったんだ?」

 トワは信吾の問いに一瞬戸惑ったが、それを聞いて注意してくれるならと、信吾の問いに答えた。


「鬼とか悪魔かな、アタイが見たのは。でも異世界だと多分だけど、アンデッドのリッチーとか?ヴァンパイアのノーライフキングとか?後はやっぱりこっちでも悪魔かな。クモスケちゃんとかフォルガイム君みたいに虫の力を手に入れるのもあんまり現実味がないよね?あとはモンスターになっちゃうとか?それこそ信吾ちゃんが信吾ちゃんじゃなくなっちゃう、、から絶対にダメだからね、、ダメだから、、ね」

 悲しそうな顔で信吾を見るトワ


「ああ、わかった。大丈夫だ、そんなに心配するなって、トワとは永遠とわに一緒にいるって言っただろ」

 トワの目を見ながら答えた信吾。

「ブフッ!」

 急に吹き出したトワ

「マジやめてよー、トワって何回言うのよぉー、もう、、でも、ありがとう、信吾」


「ああ、こっちこそありがとな、、」

「礼を言われる事はしてないよ。でもさ、トレーニングなら付き合うよ。アタイ実は悪魔の召喚が出来るんだ。昔、陰陽師が魔法陣で呼び出してたのを見て覚えたの。だから実践訓練で鍛えるってのもアリでしょ?」


「ホントか?それは願ってもないな、実際に実践訓練はかなり為になるからな」

「そうそう、そうなんだよ、でも場所に困るんだよねぇー」

「あーーその問題があったかーー」

 二人で場所を考えていると下から声が掛かる。


 5号が信吾を呼んでる。その横にはクモスケと志保もいる。

 するとクモスケが信吾の腰に糸を巻き付けた。次に自分と志保と5号にも巻き付けて、信吾に向かって腕で丸を作ってオッケーと合図する。

 信吾はすぐさま無重力の魔法を掛けて三人を引っ張り上げる。

「何してたの?」とクモスケ

「キレイな空ですねぇ」と志保

「信吾、例の物出来たぞ、後は信吾だけだ」と5号

 三人が同時に喋った。

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