第78話 いざ、異世界の冒険へ
異世界の国へ行くことに決まった一行はどうやって行こうか悩んでいた。
ウトゥはUFOでトゥトゥナの所へ行き報告をするということなので、信吾達はお互いにお礼を言ってから別れた。
移動は信吾の空飛ぶ絨毯でもいいのだが、さすがに六人プラス二人だと狭すぎるので、少し考えていた所、
「アタイの背中に乗る?」
とトワが提案してきた。
「いいのか?そりゃ、龍の背中に乗れるなら乗ってみたいのが本音だけど、トワは嫌じゃないのか?」
「アタイ?アタイは逆に乗ってほしいくらいだぞ?今まで誰も乗ったことないし、一人で飛ぶより絶対に皆と飛んだ方が楽しそうだからな」
「そうか、なるほどな、なら乗りたいけど、この山の麓までお願いしたい」
「ん?なんで?あの国の近くまで結構あるぞ?乗って行けばあっという間に着くと思うけど?」
「麓からは歩いて行きたいかな?ちょっと異世界のモンスターとか、この世界が変わったのを調べながら行くのもいいかな?って」
「あ、そっか、面白そうだな、異世界を冒険する感じか、素材なんか集めたり、ゴブリン退治したりとか、もしかしたらどこぞのお姫様のピンチを救ってイザコザに巻き込まれるとか」
「おい、おーい、変なフラグ立てるなって、只でさえ面倒ごとはゴメンなのに、、、」
「そうなのか?」
「まぁ、暇ならいくらでも巻き込まれてもいいんだけど、いかんせん時間がないだろ?あとニから三年で世界が滅ぶかもしれないんだ、それまでになんとか力をつけないと、な、だからまずは情報収集かな、、」
「それもそうか、わかった」
「皆はどうだ?それで大丈夫か?」
信吾が皆に問うとそれぞれが了承の意を示した。
「じゃ、クモスケ悪いんだけどこの兵士達を糸でグルグル巻きにしてもらってもいいか?」
「わかった」
「えっ?ちょっとクモスケさん、なんの疑問も持たないんですか?」
フォルガイムが突っ込むと
「だってトワの背中に乗った時、いきなり目を覚ましたらパニクって暴れて落ちるかもしれないだろ?」
「あ、なるほど」
一瞬でグルグル巻きになった二人は、フォルガイムと信吾が抱えて、龍の姿に戻ったトワの背中に乗った。全員が乗ったのを確認して
「行っくよー」
そう言って空高くまで舞い上がった。
「うをぉぉ、凄いな!初めて龍の背中に乗った人間ってちょっと感動だな」
「昔話の人になったみたいですね」
「アタイの背中から落っこち無いように注意してくれよ」
「オッケー」
皆を乗せたトワは一度上空へ行き、そのまま山を超えて、反対側に出た。そのままゆっくりと山の斜面沿いに麓まで下降した。
「さて、ここから大分距離がありそうだな。上空からは薄っすらと見えていたけど、あの辺りは多分ラスベガス辺りだと思う。ここから五百キロぐらいか?」
地図を見ながら信吾が言う。
と同時にトワが龍から人の姿に戻った。
グルグル巻きになった兵士二人も糸を解いて寝かせる。
「なかなか距離がありますね、どうします?この兵士達」
「こいつら死んでないよな?流石に寝すぎだろ?」
「ですよねぇ、もうそろそろ日が暮れますよ?いい加減起きないと夜寝れなくなっちゃいますね」
フォルガイムが心配げに言う。
「いや、それはどうでもいいだろ?」
「アタイ運ぶの嫌だよ?」
「オイラも」
「僕も」
それぞれが担いで歩くのを拒否した
「信吾、なら私に考えがある。なんかオフロードの車出してもらってもいいか?」
5号が提案した。
「えっ?うん、いいけど、どうするんだ?」
言いながら適当に大きなオフロード車を出す信吾
「ふむ、ガソリンは入ってるな、よし」
おもむろにドアを開けてキーボックスの所を触ったかと思ったら急にエンジンがかかった。
「自動で動くようにしたから大丈夫だ。その二人を後部座席に寝かせてやってくれ」
「えっ?マジ?それってどういう事?5号の能力の一つか?」
「あぁ、そうだ、基本的にコンピュータが組み込まれている機械なら何でも動かせる様に出来るぞ」
「な、なるほど、コンピュータを乗っ取る感じで動かすのか、ハッキングってヤツだな」
「まぁ、そんなとこだ」
一同関感心して5号を称賛する。
称賛された5号は照れて「どうってことない」と手を振る。
オフロード車は自分の意思を持ったかのように動き出した。
(一度皆のスキルを確認する必要がありそうだな、誰がどんな能力持ってるか知っとかないと、、)
と、信吾は思った。
信吾、クモスケが先頭で、真ん中のオフロード車の横にフォルガイム、イズナ、そして最後尾は5号とトワ。この並びで先に進むことにした。
「ん?しっ!ちょっとストップ、ストップ」
山の麓を離れて間もなく何かの気配に気付いた信吾。すぐに他のメンバーも気配に気付いて警戒する。
「ゴブリンとかじゃなさそうだな、結構強いんじゃないか?」
「うーん、強いのが4体、縄張り争いかな?牽制しあってるっぽいね」
かなり遠いが、信吾の言葉にクモスケは感じたままに返答した。
「どうした?行かないのか?特に問題ないんじゃないか?」
トワがやる気満々でウズウズしながら言う
「じゃ、いっちょ行ってみっか」
全員が頷いて先に進む。一キロ程進んだ所で睨み合っている4体が確認できた。
「こりゃすげぇ、遠くからでもわかるはずだ」
ポツリと呟く信吾。その先にいたのは、まず一番大きい、体長5メートルはある巨人のモンスターだ。
そして次に大きいのが、首が無数にあるヒュドラ。
次にトワの龍形態を似せたバッタもんの龍、全てがトワに劣っている劣化版龍のような容姿。
そしてもう一体が俗に言うキマイラで、角の生えたライオンの頭部、背中にはコウモリの羽、尻尾はトカゲ、胴体からカマキリの鎌と、トゲトゲしい鋭い角が至る所に生えている。4足歩行で太い足からは鋭い爪がしっかりと地面を掴んでいる。
キマイラ、別名キメラというだけあって色々な生物が組み込まれている。見た目が予想外過ぎて、聞いただけだと想像が付きにくいモンスターだ。
「アタイあのバッタもんの龍な」
「僕はあの色々くっついてるヤツ」
「じゃあ自分は巨人ですかね」
トワ、クモスケ、フォルガイムの順で選ぶ。
「うわっ!面倒なやつが残ってるな、ヒュドラか、、」
言いながらフォルガイムにミスリルの剣を渡して、信吾はヒヒイロカネのバットを装備した。
「5号は一応ここで兵士二人を見ててくれ。で、イズナ、ちょっと手伝ってくれ」
「ふぇ?」
急に振られたイズナがビックリして信吾を見る。
「イズナって拳銃の腕は?遠くから狙撃と連射出来るか?」
「えっ?まぁ、出来なくもないが、的当ては志保の方が上手いけどな」
「そうか、志保ちゃんの方が上手いか、、だけど、危険だからな、イズナ頼む」
信吾が言うとイズナが少し黙り込む。
「志保がやりたいって言ってるが、どうしようか」
「うーーん」
少し逡巡した後に
「わかった。条件として5号の近くを離れないのが条件だ、いいか?」
何故かトワとクモスケがニコニコ顔で喜んでいる。
メガネを掛けて肌の色が変わって志保に戻る
「ありがとうございます!頑張ります!」
「あぁ、5号の近くを離れない様にね」
「分かりました!」
拳銃を撃てるのが嬉しいのか、テンションが上がっている志保。
「志保ちゃん、あのやたらいっぱい首がある奴なんだけど、顎の下あたりの一番細くなってる部分わかる?」
信吾が指を指して説明する。
かなり距離があるが、相手が巨体故、志保でも確認できた。
志保がコクっと頷くと
「そこを狙って撃ってくれ。その火炎弾の威力なら首を千切ることができる。でも再生すると思うから、その断面を俺が焼く。その繰り返しで倒す感じ。オッケー?」
志保がコクコクと頷くと、早速拳銃を構えて照準を合わせている。
トワ、クモスケ、フォルガイムの突撃隊三人を見ると、早く行きたくてウズウズしているのがわかった。
「よしっ!行きますか!あ、出来れば回収したいからなるべくキレイに倒してくれ。んじゃ行くぞ、よーーい、、どんっ!」
三人は一斉に飛び出した。信吾は志保の狙撃を待つ。志保が狙いを定めて火炎弾を放った。直後キレイにヒュドラの首が一本飛んだ。その瞬間に信吾はヒュドラに近づき、ヒヒイロカネのバットを魔法の杖のように魔法媒体にして、ファイアーボールで断面を焼いた。再生されないのを確認して、志保に合図を送ると、ダンダンダンダンダンダンダンダンダン!と早撃ち連射で確実にヒュドラの首を落としていく。信吾はその正確さと連射速度に感心してニヤつく。
信吾も確実にヒュドラの首の断面を焼いていく。やがて動かなくなったヒュドラを警戒しながら近づく。
反応がないのを確認して、空間収納に入れる。
ふぅーー、と、一息ついて突撃隊三人を見ると既に終わっていた。
クモスケは一発でキマイラの首を落としてサムズアップしている。
フォルガイムは首を狙って飛び上がった所に一発もらったのが悔しいらしくうなだれているが、しっかりと仕事はこなしたようだ。もちろんダメージはゼロ。
トワも難なく終わらせているが、人の姿のまま存分に暴れた様で、バッタもんの龍は傷だらけのボロボロになって息絶えていた。
信吾は無言でそっと手を合わせて全て空間収納に入れた。
志保と5号の所に戻ると、何やら騒がしい。
見ると兵士二人が目を覚ましていて騷しくしている。志保はメガネを掛けてイズナになっていて、5号とイズナで兵士二人をなだめている様だ。
「うわぁ!き、きた!何なんだ!あんた達は」
兵士の一人が、近づいてくる信吾達を見て喚き散らす。
「何なんだって言われても、人間だと答えるしかないな」
「あんなS級指定のモンスター相手に一人で向かって、更に簡単に倒してしまうなんて」
「あのモンスター知ってるのか?」
「当たり前だろうっ!巨人トロールとヒュドラにウロボロス、そしてキマイラだぞ!一体でも国の軍を動かさなくては討伐なんてありえない!」
信吾はモンスターの名前が分かってニコッと笑った。
情報が手に入って満足げな信吾は続けて質問する。
「まぁ、心配無いですよ兵士さん。敵対する気はないんで、所でどこからどこまで覚えてます?かなり寝てたみたいだけど、帰る所とか分かれば送っていきますよ」
したてに出ていれば情報が入りやすくなると思い信吾は敬語で話す。
「うっ、そう言えば、、」
兵士が頭を抱えて考え込む。
「そうだ、私達二人はドラゴンが暴れていると、報告が入り、調査の為、あの山に向かったのだ。本当にドラゴンなのか、もし本当ならどんなドラゴンなのかを調査して報告する予定だった」
兵士の一人が思い出したように言うと、もう一人の兵士が口を開く
「そう言えば、何故気を失ったのか覚えていないな、ドラゴンを確認したのは覚えているが、それっきり覚えていない、、、」
「どんなドラゴンか覚えてる?」
トワが質問する
「漆黒の鱗を持ったドラゴン、それは情報にあったドラゴンだったのだが、もう一体いると聞いていたのだが、見当たらなかったな、、もしかしてあんた達が倒したのか?」
S級指定のモンスターを目の前で倒した連中なので、ドラゴンも倒していても不思議は無いと思い、控えめに聞いてみた。
「それはね、アタ、、、」
トワがアタイと言いかけたが信吾が咄嗟に口を抑えた。
「あ、はい、もう一体のドラゴンはどこかに飛んでいきました。それと五体いた情報のドラゴンですが、四体倒して、あと一体は逃げました」
「なんだとっ!四体倒した!?」
「はい」
口を塞がれたトワが怒っている様子に信吾は小声でなだめる。
嘘も方便で、正直に全てを話すと何かと面倒になり、更に不利になる可能性がある事を説明して納得してもらう。
「まさかとは思ったが、、なんとも信じられん話しだな」
「そうだな、四体だなんて、、しかもあれは最強の黒龍だぞ?レッドドラゴンやブルードラゴンならまだしも、、」
信吾が片眉を上げた。が、レッドドラゴンとブルードラゴンの事は言及せずに質問を続ける。
「では、少しづつ進みながらお話ししましょうか、もうすぐ日も落ちますし、早くここから離れましょう」
そう言って血の匂いが立ち込める場所を後にした。




