第77話 志保の過去
メガネを掛けて肌の色が変わり、志保になった。
「あ、あの、カレー美味しかったです。ごちそうさまでした、久しぶりにあんな美味しいの食べたんで嬉しくて、この一言どうしても言いたかったんです」
開口一番カレーの話しで、今の今までイズナの真面目な話しが吹っ飛んだように皆が笑顔になった。
「あぁ、美味かったな、また食べような」
「また、私が作ってやるからな」
5号が胸を張ってドヤ顔で言う。
「ふふっ、皆さん優しくて、面白い人達ですね、羨ましいです」
「そうか?あんまピンとこないけどな?」
信吾が首を傾げるとクモスケがフォローする
「信吾は優しくて僕を守ってくれる」
「信吾さんはたまにボケたり子供みたいになったりするから突っ込む方は大変ですよ」
「さすがフォルガイム君、でもそこがいいんじゃないかい?」
「アタイも信吾は頭が良いって言うか、頭の回転が早いと思う。出会ってまだ一日も経ってないけど、話しの中でわざとボケたのか天然なのか迷う時があるな」
「信吾はたまーにカッコいい時がある、ダンジョンでクモスケを助けた時なんかはホントカッコ良かったぞ」
「ダンジョン?アタイも行きたい!行ってみたい!」
皆で信吾の事を褒めたりけなしたりで、ワイワイ騒ぎ始めた。
「まぁまぁ、それはまた今度ゆっくり話すとして、今は志保ちゃんだ。話し聞かせてもらってもいいかな?」
「うふふっ、やっぱり皆さん仲がいいですね」
ニコニコと笑顔で頷いてから話し出す
「私の話しですが、まず自己紹介しますね。トワさんは知らないと思うんで、、、私の名前は権守志保、高校三年生で18歳。
趣味っていうか、好きなことはアイドル見たり、アニメ見たり、動画サイト見たりで、陰キャのオタクって感じ、、いや、そのものです。
他にはお父さんの影響で武器全般が好きだったり、、です。
お父さんの仕事はヤクザで、日本刀とか本物の拳銃とか、ドスは長いのから短いのがあったり、他にもお侍さんが使ってた刀だったり、西洋の武器?っていうのかな?ハルバードとか槍とか、色んな武器を集めてて、それで私も好きになって使い方勉強したり、モデルガン改造したりとかしてました。
そんな親を持って、小学生の頃、仲良かったお友達から急に距離を置かれたことがあったんです。
何度も何度も近づいて行くんですが、やっぱり親の仕事のせいで敬遠されちゃって、それから人とは壁を作って距離を置くようになったんです。
その頃から人が苦手になってしまって、いつも一人でいました。そんな感じで段々と引きこもりになってしまって家にずっといたんです」
一呼吸置いて
「ごめんなさい、長くて」
「いや、大丈夫大丈夫。イズナと同じ事言うね」
ふふふっと少し笑って、志保が続きを話す
「中学生になって、ずっと一人で部屋にいた時に、お父さんの子分の人が部屋に入ってきたんです。
それで、急に近づいて来て、お小遣いあげるからお父さんには内緒にしてって言いながら迫ってきたんです。
私もヤバいって思って抵抗してたんですけど、やっぱり男の人の力は強くて、、全力で抵抗してたんですけど、その人いきなりお腹殴ってきたんです。
顔を叩くとバレるからだと思うんですけど、何度も何度もお腹殴ってきて、もうダメだって思った時、体が勝手に動いたんです。凄い力でその男の人をねじ伏せて、殴る蹴るでボコボコにしちゃったんです。
それから男の人が苦手になってしまって。
その後お父さんにバレて、その人はいなくなっちゃったんですけど、私がそんなことをしたのが変で、お父さんは色々と調べてたみたいですけど、なんか似たような事が昔お婆さんの時に一度あったとかで。
それで私も何かが私の中にいるって感じたんです。
それがイズナだったんですけど。
その時はわからなくて怖くてお父さんに相談したんです。そしたら霊媒師みたいな人を何人も連れてきて結界やら御札やらお祓いの道具やらを私の部屋に隙間が無いくらいに貼り付けたりしてたんです。それをずっと剥がすことなく今まで貼ったままでした。
恐らくそれが、、御札とかが原因でこっちの世界に来たのかと思います。
それからこっちの世界に来たからなのかイズナと何故か意思の疎通が出来るようになって、、それからイズナから色々と聞いたりして仲良くなったんです。
異変を感じて、最初は家に籠もって過ごしていたんですけど、食料が無くなってきて、なんか確保しようと外に出たんです。
その時に持ち出したのがこの長ドスと改造したモデルガンです。
大きな虫たちはこれでなんとか倒してたんですけど、あ、もちろんイズナがですけど。
で、最後の、あのクモスケさんが倒してくれた変なトカゲみたいなやつには全く効かなくて、逃げてたときに信吾さんに助けられたんです。
ちなみに車の免許はありますよ。初心者マークですけど」
ふぅーっと息を吐いて言い切った事に安堵の表情を見せる志保。
「なるほどな、色々と経験してるね」
「壮絶な過去ですね」
トワとフォルガイムが感想を言う。
それに続いて信吾が志保に質問する
「一つ聞いても?」
信吾を見て頷く。
「志保ちゃんのアイドルが好きって、どんなアイドル?」
信吾の質問に皆が驚いた顔をした。
「ちょっと信吾さん、気になる所そこですか?マジっすか?」
「マジウケるな、でもアタイもアイドル好きだぞ」
「いや、そうきたか」
「信吾、アイドルってなんだ?うまいのか?」
最後のクモスケの質問で場が和んだ。クモスケがわざとらしく言ったのは気のせいだろうか?
「あ、あの、私が好きなのは地下アイドルとかじゃなくて一般的に有名なアイドル全般です。そうですね、信吾さんは今おいくつですか?」
「42」
「はい、その頃って言うとモー○スですかね?」
「そのプロデューサーが手掛けてるグループ全部かな」
「わかります!でも私は48と46の方も好きなんです」
「俺もだよ、あとは韓国のグループかな」
「うわぁー凄い!かわいいですよねぇー私かわいい女の子達が好きなんですよ」
「わかる!それに俺の年になってくると、子供を見てるみたいで、頑張ってる姿なんか見ちゃうと感動したり、助けてあげたくなっちゃうんだよ、おじさんは」
「そうなんですね!そうなんですね!嬉しいっ!信吾さんは凄いですね、私のデザートイーグルもすぐ分解したり、アイドルも好きなんて、、もしかして信吾さんも、、?」
「いや、どうだろ?インドア派でもあるけど、アウトドア派でもあるなぁ、、」
「あー武器の話しもしたいけど、、あのっ、一番推しの女の子って誰ですか?」
「んー、誰とかって無いんだよね、皆が仲良くワイワイしてるのを見てるのも面白いし、ダンス見るのが好きだからダンス上手いコとか、かな?まぁ俺なんか年が年だからその都度変わるかな?例えば最初はマキちゃんだったけどエリちゃんとか、さきちゃんだったり、くーちゃんとか、、りほちゃん、最近だとヒメちゃんとか、、マナちゃんかなぁ」
「わかりますぅー!みんな辞めちゃいましたけどね、わかりますぅー。私は、、、」
「ストップ、ちょっと待とうか?志保ちゃん、、このままだと日が暮れてしまう」
「ぜんっぜん二人の会話が分からないっす」
「アタイはわかるぞ。表も裏もな」
「おおぅ、5号今いいとこなのに、止めるなよぉー」
「えっ?表と裏ってどういうことですか?トワさん!」
「いや、志保ちゃん、表はいいけど裏なんて知るもんじゃないよ、俺も女の人の裏を見てきてるからわかるけど、、ある意味悟りを開いちゃう」
志保は首を傾げてハテナマークを浮かべてる。
「俺は昔夜の仕事でパブとかキャバクラでボーイの仕事してたことあるんだ。その時に裏での会話とか聞いてたり、見てたりするから、、いや、全部が全部そうじゃなくて、一部ね。まぁ後はご想像にお任せするけど、後、例えばお嫁さんなんかは、付き合ってる時、結婚した時、子供が生まれた後って変わるのよ。変わらない人もいるらしいけど、まぁ、それは本能的なものだから仕方がないとしても、やっぱりそんなことは知らずに、こうであれっ、て夢を抱いちゃってる方が幸せなんだ」
「それってもう裏を言っちゃってる様なものでは?」
「ん?いや、、そんなことは、ない、はず」
「うーん、うん?信吾、さては若い頃何かあったな?こっぴどく騙されたとか?悪さして痛い目見たとか?」
「うっ!」
「図星っぽいですね」
「そんなこと言ったら男だって変わるぞ?最低な男とか見てきたぞ、アタイは。その都度いたいけな少女達を守ってきたんだからな。信吾も自業自得なんじゃないのか?」
「うっ!ち、違う!違うわーい!バカーー」
いたたまれなくなった信吾は飛行で山頂の方に猛スピードで飛んで行った。
クモスケをぶら下げて
「あ、飛んでっちゃいましたね」
「ク、クモスケさん糸かなんかでぶら下がってましたけど?」
「うーん、シュールだな」
「心配無いですよ、すぐ戻って来ますよ」
「クモスケちゃんもいるしな、でもマジウケるな信吾は」
「普段は頼りになるんですけどね、たまーにあんな感じになりますね」
「そ、そうなんですね、面白いですね、信吾さんって」
「あ、もう戻ってきましたね」
ゆっくりと降下してキレイに着地する信吾とクモスケ。
「おかえり、お早いお帰りで」
「ただいま」
不貞腐れた感じで返す。
「話しを元に戻すけど、多分イズナと意思疎通できたのって、御神木のおかげかもしれない。あの時って確か酸素濃度が異常に高いうえに、御神木から聖気が出て地球全体を覆ったらしいんだ、多分その影響かな」
何事も無かったように話し出す信吾。
これ以上突っ込むと面倒になりそうなので皆黙って頷いた。
「あ、あとさ、今度志保ちゃんの家に行って見よう、なんか興味があるんだ、、」
「えっ?い、いいですけど、何するんですか?」
「さっき言ってた武器とか見てみたいんだ」
「あ、そう言う事ですか、、でも残念ながら武器庫は厳重に鍵が掛かってて、ルパン一族でも盗み出せないって言われてました。なのでお父さんしか中に入れないんです」
ニヤリと信吾が口端を吊り上げた。
「フッフッフ、開けて見せましょう、この手で」
「まぁ、信吾が本気になれば入れるんじゃないかな?鍵を開けずにね」
「身も蓋も扉もないってやつですね」
「上手いなフォルガイム、ほれ、座布団」
「いらないですよ!」
暫くくだらないことをダベりながら笑い合う一同。
「ってか、まだあの兵士達寝てるのかよっ!起こしてくるか?」
「いや、まてまてトワ、そう言えばさっき山頂の方に飛んでった時、山の向こう側の遥か向こうに何か大きな建物が見えたんだ。多分転移してきた異世界人が住んでる国じゃないかと思う。俺が地図で指定した所と合致するし、、にしてもデカすぎのような気がしたが、、」
「ホントか?もしかしてこいつらはそこから来たってのか?」
「うん、多分な」
「どうする?連れてくか?」
「まぁ、ここに放置でもいいような気がしてきたけど、一応連れてってみるか?嫌か?どうする?やめる?やめたい?」
「信吾さん、実はめんどくさいんじゃないですか?」
「んなこたぁーないよ」
「じゃあ行ってみましょう。異世界の国へ」




