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第74話 力の差

「ぶはぁっ!」

緊張の糸が解かれたように全員が息を吐いた。


アバドンが消えて精神的に追い詰められていたストレスが無くなり、乱れていた呼吸を正す。

すぐに信吾はイズナの所に行き、様子を見る。


「大丈夫か?」

信吾が声を掛けるとイズナは飛び起きた。

「さっきのはキツかったな、、ありゃなんだ?説明してくれないか?」

「えっ?気付いてたのか?」

「あぁ、実際は気絶してたがな、もし起きてたら志保がヤバいと思って気絶させたまま、オイラは様子を探ってたんだ」

信吾は一瞬安堵の表情を見せたが、そんなことはしていられないとチラッと黒い物体を見る。脈打つ黒い塊は少しずつ大きくなっている。


「時間がなさそうだな、イズナ、ちょっと刀見せてくれ」

「えっ?あ、あぁ」

焦っている信吾に押されて刀を差し出す。

「やっぱり、折れてるな」

「うわっ!マジかよ!ヤバいな志保に怒られる」

先程のドラゴンの投石で刀が見事に真っ二つになっていたのを信吾は見逃さなかった。

「この刀が守ってくれたのかもな」

「つっっ!志保が反応した」

「本当か!出来れば話がしたい!」

「、、、わかった」

一瞬迷ったが、すぐに了承してメガネをかける。

肌の色が変わったのを見て志保に戻ったのを感じた信吾は声を掛ける。

「志保ちゃん、大丈夫か?」

「はい、、」

目を伏せて刀を胸に抱いた。

「志保ちゃん、それ直せるけど、、どうする?志保ちゃんにとって、大事な物だと思うけど、おじさんに貸してもらえないかな?」

優しく問いかけると


「えっ?な、直せるんですか?直せるなら直して貰いたいです!」

志保にしては大きな声で信吾に詰め寄った。

「わかった。時間がないからすぐにやるよ」


受け取った刀に魔力を流し一気にドロドロに溶かすと、空間収納から少し鉄を出して混ぜる。それを錬金術で繋ぎ合わせた。それだけじゃなく高温にて不純物を取り除き、何度も何度も折り返し鍛錬をしたように圧縮させていく。最後に造り込みで微調整してから終わらせる。ここまでの時間は一分で、かなりの魔力を消耗してしまったが、仕方がない。

「はいよっ、鞘は時間がないから後だけど、この刀は直す前と素材も重さも形も長さも同じにしてある。だけど強度と切れ味が増してるから気を付けてね」


志保はポカンとしている。

「あと、その拳銃も見せてくれないか?」

「は、はい」

素直に渡してくる志保。

「うん、デザートイーグルかな?かっこいいよね」

「えっ?はい、わかるんですか?嬉しい!好きなんですね?どんなとこが好きなんですか?この、、」

「ちょっちょっちょっと待って、それは後でいっぱいお話しするから今は待って」

いきなりテンションが上がり、語りだしそうな志保に待ったをかける。


「これってモデルガンを改造したんだよね?殺傷能力は?」

「人、、、、こ、殺せます」

かなり躊躇したが、声を押し殺しながら答えた。

「いや、別にこんな世の中になったんだから法律とかどうのこうの言うつもりはないよ。でさ、これもちょこっとイジってもいいかな?多分もっと威力が増すと思う」

「えっ?ほ、本当ですか?お、お願いします」

「でも、絶対に人に向けて撃ってはダメだからね?注意してね」

「はい!分かってます!」

いい返事を返す志保


早速作業に取り掛かる信吾。

まずはじめにアウターバレルとリコイルスプリングを一瞬でバラす。

志保が何故か嬉しそうに見ている。


魔力を流し、また高温で鉄や鋼などを混ぜながら圧縮していく。この工程でかなりの強度が確保された。そして威力を上げるために色々と試行錯誤する。

ここまでで三十秒


(さてと、あとは弾丸、、どうすっかな、、このまま撃ったら弾丸の方が砕けるな、なんかいいアイデアないかなぁ、、、)

悩みながらバラしたアウターバレルとリコイルスプリングを組む。そして空間収納を無造作に開く。

(あっ!、これを混ぜてみるか、もしかしたらもしかするかも、いや、もうそういう風に作り変えるしかない)

考えながら御神木の実の種を出してマガジンに混ぜ込む、魔力を練り上げて種に注ぎながら混ぜ込んで完成。完成までまた一分。


「出来た。ちょっと試し打ち」

そういって黒い物体に照準を合わせる。

「ドンッ!ドンッ!ドンッ!」

モデルガンの口から出たとは思えない様な、腹に響く音と共に打ち出されたのは火炎弾


「ほい、時間無いから簡単に説明するね、引き金を引くと魔法の火炎弾が出る。反動も無くしたから簡単に撃てるよ。以上」

見た目も重さも口径も何も変わってないのが志保には分かった。だが中身が全く変わっているのに少し興奮気味にお礼を言う。

「あ、ありがとうございますっ!」


一部始終を見ていたフォルガイムが口を開く

「あの、信吾さん?今撃った火炎弾で黒い物体が少し大きくなりました」

「そうか」

一言呟くと黒い物体の方を見て、眉間にシワを寄せる。

「今のうちに逃げるのは?」

「駄目だ、そこに兵士二人が倒れてるだろ?別に置いてく置いてかないの話しじゃなくて、こいつらがいるってことは、近くに町なのか国なのか知らんけど、人がいっぱいいるところがあるって事だからな」


黒い物体の方を向いて答えていたが最後の言葉と同時にフォルガイムを見つめる。

「あ、そうですね、じゃあ倒すしか、、無いって事ですかね?」

「そうだな」

「ホントここ一日、二日で色々忙しいですね。落ち着いたら旅行でも行きましょうね」


フォルガイムの言葉に信吾は無言で返す。何故かイヤな予感がして、それが頭から離れないでいた。


「皆、気合い入れて行くぞ!クモスケと、フォルガイムは基本遊撃だ、それに合わせる様に俺が動く。5号、いつもの頼む。志保ちゃんはイズナに変わってもらってなるべく離れてくれ、で、イズナは離れた所からその拳銃で隙を見て援護してくれ」

「了解っす」

「分かった」


5号はすぐに信吾の鎧と剣になった。

志保は撃ちたそうにしていたが、そんな空気じゃない事を察してメガネを外した。

すぐに変わったイズナが信吾を見て頷く


「あの、アタイは?」

「トワは元に戻れるか?」

「もちろん」

「なら上空にいて隙を見て攻撃してくれ、出来るな?」

「了解、アタイも遊撃みたいなもんだね」

信吾は無言で頷いた。


「皆、とにかく命大事に、が作戦だ。ヤバいと思ったら無理せずに逃げろ。絶対にな」

全員が無言で頷いた。


「ちょっと待ってくれ」

イズナが言うと皆がイズナを見る

「オイラの妖術の一つ」

そういって手を前に出す。その瞬間手が光り出してその光が皆を包み込む。

「妖気で防御力上げた。所謂バフってやつだ」


「ありがとう!」

皆が口々に感謝を述べると、イズナは照れたようにそっぽを向いて、手を振った。


そして徐々に大きくなっている黒い物体はすでに普通の一軒家の大きさを超えている。

「おいおい、いい加減にしろよな、一体どこまでデカくなるつもりだ」

信吾が汗を垂らしながら言う。すると黒い物体が脈打ちを早めて一気に膨らんだ。

一軒家より更に大きく膨らんだ黒い物体が徐々に形を成していく。

顔はカエル、体が亀の甲羅、尻尾がトカゲ、足が太くて甲殻なのはわかったが、鋭い爪が生えている。


「なんて亀だ、、」

呟いた瞬間に化け物亀が信吾に向かって殺気を放つ。

「散れっ!」

声を出してトワとイズナが離れた。


離れたのを確認したクモスケとフォルガイムは地面を蹴って距離を縮める

それに気付いた化け亀はクモスケ達より速いスピードで口を開けて突進してくる。

いきなり食おうとしてくる化け亀に驚いた二人は高くジャンプして躱す。

お返しにクモスケが炎を吐いた、化け亀はクモスケを見ながら炎を喰い尽くす。クモスケはチッと心の中で舌打ちした。

その隙にフォルガイムは大剣を出して化け亀の後頭部目掛けて一閃する

「ガキンッ!」

と音がして大剣が真っ二つに折れた。すかさず距離を取ると信吾が魔力を込めて雷撃の魔法を放つ。

「ズバーンッ」

と音がして少し焦げた匂いと煙が立ち込める。

すぐにフォルガイムにミスリルの剣を投げる。フォルガイムはミスリルの剣を受け取り魔力を込めながら後ろに周り、尻尾を斬りつける。だが、寸前で尻尾を動かして回避した。更にうっとおしいとばかりに尻尾をフォルガイムに振る。化け亀は雷撃に一瞬怯んだが、何事も無かったようなスピードで尻尾を振るった。

フォルガイムは避けきれずに肩に衝撃が走る。激痛が走るが、声を押し殺して地面を転がり一旦離れることにする。

クモスケは後ろ足を鎌状に変えて地面を右、左と蹴りながらステップを踏む。そのまま時計回りで化け亀の足、甲羅、尻尾、と至る所に攻撃するが、全く効いてる気配がしない。

化け亀の前には行きたくはないが、クモスケのスピードに追いついていないことを見ると大丈夫だろうと高を括る。それを見た信吾は身体強化の魔法をクモスケに掛ける。光ったクモスケはどんな生物も弱点である目を狙って鎌状の足を突き立てる。

化け亀はギロリと目をクモスケに向けて前足の爪を振るってきた。今までのスピードとは段違いのとんでもないスピードを出してきた。隠していたスピードに対処が出来ないクモスケはそのまま爪が腹部に食い込む。

クモスケの腹から血が吹き出して倒れ伏す。


倒れたクモスケを捕食しようと化け亀が近づいて行く。

すると上空から滑空してきたトワが体当たりをして転がそうとする。下から持ち上げるように突っ込んだトワは全力でひっくり返そうとする。

「グアアアアアアアアアー倒れろーーーーー!」

化け亀はそのまま勢いに飲まれひっくり返った。

すかさずトワは思いっきりブレスを吐いた。

「ゴオオオオオオオオオオォォォォォォォォォーー」

力の半分以上使ったブレスはトワの体力を著しく奪った。

息を切らしているトワの後ろから信吾が叫ぶ

「クモスケを安全な場所に頼む!」

トワがチラッと信吾を見て頷くとすぐに動き出す


信吾は魔力を練り上げて一気に放つ

「ヘルファイア!」


獄炎の炎が化け亀に纏い付き燃え盛る。

「トルネード!」

追い打ちで風の刃を炎の中に無数に叩き込む。

更に追い打ちで

「爆発しろ!フレアボム!」

爆裂魔法を放つ。

信吾は息を切らしているが、必死に息を整える。

モウモウと煙が立ち込め、辺りに静寂が訪れる。


ドドーンと嫌な音がした。

信吾は警戒しながら煙が晴れるのを待つ。

静寂の中、煙が晴れると中からひっくり返ったはずの化け亀が、元に戻っていた。そして無傷の化け亀が首を長くして信吾を見下ろした。


「クソっ!」

信吾が悪態をつくと同時に横からトワが化け亀の喉に食らいつこうと口を開けながら突進する。

化け亀は信吾を見たまま、トワの方向を見ずにおもむろに、実に片手間でトワを爪で引き裂いた。

トワは3本の爪で引き裂かれた肩から胴体までの深い傷から血を吹き出してその場で崩折れた。


トワの方を見向きもしないで首を長くして信吾を見下ろす。何故か笑っているようにも見えた。

「クソっ!強すぎる!」

悪態をつくが状況は変わらない。

信吾は絶望感に苛まれ、化け亀の強さに足がすくんで動けない。

徐々に近づいてくる化け亀を見上げながら、打開策を考えるが一向に浮かばない。

化け亀が大きな口を開けて信吾を丸呑みにしようとする。信吾は地面に膝を付き目を瞑った。


「信吾さん、逃げてください」


穏やかな声がして目を開けるとフォルガイムが化け亀の口の中に飛び込んだ。


「早く!早くー!」

フォルガイムの声が小さくなっていく。

信吾は呻きながら後退り、涙が溢れた。


完全にフォルガイムを呑み込んだ化け亀は、また信吾を見下ろしながら徐々に、ゆっくりと近づいて行く。


「し、信吾、ダメ、逃げて」

声のした方を振り向くとクモスケが血だらけで腹を抑えながら信吾の前に立つ。

「や、やめろ、クモスケ、やめてくれ、やめてくれ」

「逃げて!」

クモスケは信吾をイズナのいる方へ蹴り飛ばす。

イズナはクモスケの意図を察したが、イズナもイズナで皆の戦いに圧倒されて一歩も動けなかった。援護すらも。だが一部始終を見ていたイズナは自分を叱咤して立ち上がり、信吾を抱き起こす。

「ダメだ!ダメだ!クモスケー!フォルガイムー!」

イズナの手を振りほどこうと必死に手足を動かすが上手く動かない。


クモスケは涙を流しながら歯を食いしばり、腰を落として構える。

踏み込んだ足は弱々しいが、化け亀の首下まで距離を詰めて鎌状の足を振り上げる。だがそれも虚しく化け亀の前足に軽く払われた。


転がったクモスケは、まだ諦めずに立とうとするが足に力が入らずに、その場で倒れ込み、動かなくなった。

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