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第73話 アバドンの目的

「最悪だ」

 誰かが呟いたが、信吾は気にしてる余裕は無かった。


 信吾は震える足に力を入れて、軽くジャンプして身体を解す。

 とにかく精神を集中させて落ち着かなくてはいけないと自分を叱咤して気合いを入れるが、悪魔の禍々しさ、そう、アバドンの存在自体が精神を狂わす感覚がある。

 恐らく普通の人間なら気が触れて、おかしくなっていてるだろう。そんな存在がアバドン。今は上空に浮遊していて距離もあるが、近づくだけで精神がガリガリと削られてしまいそうだ。


 信吾は集中しながら目だけで周りを見渡す。

 ドラゴン、兵士二人、仲間たち。兵士二人は気絶しているが、ドラゴンも仲間たちもアバドンの存在、禍々しさに固まって動けない様子だ。


 徐々に落ち着いてきて冷静に深呼吸をする信吾。


「ふぅー、トワ、アバドンについて何か知っていることはあるか?ちなみにルシファーの配下らしいが、強さが桁違いだから、絶対に攻撃しようとするなよ、なるべくなら話し合いでなんとか切り抜けたい」

「配下?あ、あ、そうだな、アタイが知ってるのはヨハネの黙示録の話しで、ルシファーを封印してたとか、、だからルシファーより強いんじゃないかってのがアタイの予想。でも天使って聞いてたけど、、」

「天使?いや、アレはどう見ても悪魔だぞ?」


 信吾とトワが話しているとアバドンは聞いていたかのように会話に入ってきた。


「ふふふ、わたくしは正真正銘悪魔で間違いないですよ。ただルシファーの配下って訳でもないですけど、、言うなればわたくしが面白いから、只一緒にいるだけ、といったところでしょうか」

 アバドンは左手を後ろに、右手を胸の前で動かして説明している。


 信吾はアバドンが動く度にいちいち警戒してしまう。

 アバドンが話しを区切ると同時に遠くの方からドラゴンが咆哮を上げた。

「ガァァァアァアァアァアァアァーーーーー!」

 気合いの入ったドラゴンがブレスを全力でアバドンに放った。

「五月蝿いですね」

 アバドンは右手を胸の前から動かさず、手の平を上に向けて黒い球体を出した。その球体が急激に大きくなりブレスを飲み込んだ。いや、吸い込んだと言った方がしっくりくる。


 そのまま球体を浮遊させ、ブレスを放ったドラゴンに向かって放り投げる。するとそのドラゴンは一瞬で球体に吸い込まれた。

 吸い込んだ球体は霧散して消えていった。


「ブラックホールか?いや、そんな超重力の塊をいとも簡単に制御できるわけがない、、と、思う」

 思った事がつい口に出てしまった信吾だが、最後の方は自信がなく声が小さくなってしまった。


「そうです、ブラックホールであっていますよ、信吾さん」

 さも簡単といった風に答える


「お、俺を知っているのか?」

「もちろんです、ベルゼブブを倒してから所々ですが、わたくしの配下に監視させていました」

 また何事もないようにサラッと答える

「ベルゼブブの、、、いや、仲間の報復か?お、俺達を殺しに来たのか?」

 会話の最中ずっと笑顔だったアバドンは、今度はビックリした顔をした。

 悪魔のクセに表情が豊か過ぎて逆に違和感を感じる信吾


「そんな訳ないですよっ!こんな面白い事、ここで終わらせたらわたくしは何の為に存在しているのか分かりませんよっ!」

 ビックリした顔をしたと思ったら今度は憤怒の表情で憤る


「も、目的はなんだ?ここに何しに来た?」

「ふふふ、目的ですか、そうですねぇ、わたくしは只、面白くしたいと思っているだけですよ、ですがどうも信吾さん達が弱すぎて弱すぎて、、ちょっとつまらないと思っただけですよ」


「い、意味が分からない、面白いとはなんだ?お、お前にとって何が面白いんだ?」

「はっ!信吾さんも興味あるのですね。ふふふ、ではお教えしましょう。この世の行末、この世の終わり、所詮この世は何者かに創られた世界、神々よりももっと上位の創造主とでも言いましょう、、わかりませんか?信吾さん」

 身振り手振りで力説して、信吾を見る


 問われた信吾は、アバドンが語り出したのを、これは長くなりそうだ、と思いながら無言でアバドンの目を見続けた

「そうですか、そうですか、、この世は元々は一つの宇宙だったのです、、それなのに無数に存在する宇宙となったのです。それが所謂パラレルワールドというものです。いいですか?信吾さん」

 いちいち聞いてくるアバドンに信吾は小さく頷いた。

 頷いたのを確認するとまた笑顔で話し始める。


「一つの宇宙はとても広いです、とてもとても広いです。まだまだ広がっています。なので宇宙を4つの区画に区切ったのです。その一つの中にある地球、そして神々達がこの地球に連れてきた異世界人は地球とは違う区画だったのですね。そして、何故異世界人を連れてきたのか。恐らくその区画、異世界人がいた区画が創造主によって消滅させられるからでしょう。いいですか?信吾さん」


 また聞いてきたので頷くと、また笑顔で話し始める

「どうですか?その創造主からすれば生き物全て、魂までも全てが創造主の手の中、指先一つで我々は愚か、強大な宇宙までもが一瞬で無になる。そう考えるとなんとも矮小な存在なんでしょうか!、、で、あるなら、それまでとことん面白い事につくしましょうではないですか、わたくしの思うままに、わたくしのやり方で」


「な、なるほど、一つ」

 信吾がアバドンに人差し指を立てて伺うとアバドンは頷いた。


「何故異世界人がいた宇宙の区画は消滅させられる?そして、消滅した区画とこの区画は言わば繋がっていると思うんだが、何故影響がない?」

 アバドンは信吾の言葉を聞きながらも、片眉を上げてみたり、ニヤニヤしたりと表情がコロコロと変わる


「その二つの質問にお答えしましょう。まず一つ目の何故消滅させられるか、ですが、直接の理由は増えすぎたパラレルワールドのせいでしょう。だから消滅させられる。その無数のパラレルワールドごと。二つ目の何故影響が出ないか、ですが、それが創造主の力とでも言った方が分かり易いですかね、、ふふふ」


 信吾は腕を組んで考え込んだ。暫く沈黙が訪れた

「なるほどね、増えすぎたパラレルワールドのせいって言ってもピンとこなかったが、恐らくは創造主とやらが管理するのが面倒でスッキリさせたいとか、そんなとこだろう。で、もう一つは、パワープレイで切って貼ったり繋げた、みたいな感じで影響が出なかったって事か」


 アバドンが驚いたように頷いた。


「ここからは俺の推測なんだが、パラレルワールドの作り方って神様が知ってるというか、神様にその権限を与えたのが創造主、で、好き勝手やり過ぎて作り過ぎたのがその異世界人の区画、だから消滅させられる。だけど異世界人は助けたいから創造主にバレない様に地球に小細工、主に更地にして一から作り直すってテイでこのパラレルワールドを作ったってのが真相。その作業がいい加減過ぎて俺達が巻き込まれたって事かな?この推測が正しければ完全に神様達のミスだな」


 アバドンが嬉しそうに両手を広げた

「理解が早くて助かります。まぁ概ね当たっています。だから人間と神々を滅ぼすルシファーについてるのです。神々さえいなければもうパラレルワールドを作る事は無いでしょう。わたくしは神々を滅ぼします」

 アバドンはニヤリと口端を吊り上げた

 その時なんとも言えない、まるで地獄の蓋が開いた様な不気味さを感じて身震いした。


「お、お前はルシファーの配下じゃないのか?」

「ルシファーの配下、、ですか、少し違いますね、恐らくはわたくしの方が強いですし、、まぁ、最も面白いから一緒にいるだけですよ、これ、先程も言いましたね。ふふふ。まぁそんなに警戒する必要はないですよ、何しろ準備期間中なので、後二から三年は手出しはしませんから安心してください。ただし、ルシファーの配下の者達は分かりませんがね」


「ルシファーの配下は人間を絶滅させようと?」

「そうですね、ルシファーはもとより、悪魔達は皆人間が嫌いでね。わたくしはどうでもいいですがね、死のうが生きていようが。ですが、やっぱりどちらにしても面白くないと、なので信吾さんには期待していますよ。この盤面をひっくり返すような底知れない何かを感じますからねぇ、とにかく準備ができ次第、神々もろとも人間も滅ぼしますので、それまでになんとか力をつけてくださいね、ふふふ」


「わ、分かった、ならもうそろそろ帰ってもらっていいか?もうこっち側の皆も俺も精神的にキツい」

 またビックリした顔をするアバドン


「そうですね、帰りますよ。ですが言ったでしょう、面白くしたいと、わたくしはわたくしの思うままに、わたくしのやり方でと、、、これが面白くする要素です。ふふふ、ふふふ」


 言い終わると右手を高く上げて空間を歪めた。すると、その中から何やら黒い物体が召喚された。そのまま黒い物体は空中に静止しているが、静かに脈打っているように見える


「さぁて、信吾さん達はどう対処しますかね?面白くなってきましたねぇ、これは強いですから気を抜くとやられちゃいますよ。精々頑張って見て下さい、これで死ぬならそれまでです。ではでは、また、生きていたらお会いしましょう」


 アバドンはそう言い残して消えた。そして、すぐに辺りの闇が払われて明るくなった。思わず眩しくて目を細める信吾。

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