第68話 妖しげな女
「分かりました、すぐに向かいます」
信吾とトゥトゥナの通信が終わり、女に向かって言う
「時間がないから色々と、はしょって質問するけど、答えてもらいたい。このまま誰もいない場所で化け物と戦いながら一人で生きるか、それとも俺達と来るか。ちなみに俺達と来ればこの世界がどうなっているかとかの疑問がある程度解消すると思う」
しばらく沈黙して答える
「一つだけ質問いいか?」
信吾は女の目を見ながら無言で頷いた
「お前達についていったら安全かどうかを聞きたい」
「うん、安全かどうかはこんな世界になってしまったからなんとも言えないけど、少なくても俺達は君に危害を加えるつもりはない」
「わ、分かった。色々と説明してもらえるんだろうな?」
「勿論だ。さあ、行くぞ」
信吾はベンツを空間収納に入れて空飛ぶ絨毯に乗り込むと手を女に手を差し出す。一瞬で車が消えたことに目をパチクリしているが、差し出された手を無意識にとっていた。
フォルガイム、5号と乗り込むとクモスケがいない。
信吾があれっ?と思ったらクモスケが走って現れた
「ごめん、さっきの恐竜みたいなトカゲを収納袋に入れてきた、後で食べる」
ニコッとクモスケが言うと皆が若干引いた様な目をした。
クモスケが乗り込んだのを確認すると信吾は空飛ぶ絨毯を操作して上空に飛び上がり、東の方へ徐々にスピードを上げていった。
「さてと、少し時間がかかりそうだから、今から行く場所を説明しておく」
信吾は前方を向きながら皆に話しかける
「今から行く場所はロッキー山脈の南側、ザックリだけど行けばわかるらしい。で、ドラゴンなんだけど今トゥトゥナ様の部下が対処してるらしいんだけど、いつまた暴れだすか分からない状況なんだって。だから急いでくれとのことだ」
「それって自分達が行ってもなんとかなる問題なんですか?」
「あぁそうだな、確かにそう思う。フォルガイムの言うことは最もだ。だけどトゥトゥナ様は直接なんとか出来ないらしい、間接的にはなんとかしてるみたいだけどね。で、なんかおかしいのがそのドラゴンは周りのドラゴンと姿形が違うとも言っているんだ、どういう意味か全く分からないが、UFOで遠距離から対処しているだけにコミュニケーションをとれない。近づけば恐らく叩き落されるって言ってた。俺達もドラゴンとやり合って勝てるとも思えないしな」
「うーん。分からない事だらけですね、とりあえず行ってみないと分からない的なノリですね」
「だな、姿形が違うドラゴンと普通のドラゴンが対立しているらしいから種族間での揉め事っぽいけど、ドラゴンと話し合いができれば説得できるんだけどな」
「そうですね、異世界のドラゴンと会話が出来ればの話ですけどね」
「まぁそこは大丈夫だろ?5号?」
「あぁ、なんとも言えないが、向こうが話しをしてくれればなんとか言語が通じるようには出来る」
5号は翻訳の魔法のような能力を皆にかけることが出来るので信吾はそれをあてにしている。
「とまあ、そんな感じなんだけど」
言いながら皆の真ん中にちょこんと座っている女をチラッと見る信吾。
「狭くてゴメンな、とりあえず皆を紹介するな」
急に話しかけられた女はキョロキョロして戸惑ったように頷いた
「こっちがクモスケ、元々は蜘蛛だったんだけど進化して人に近い姿になった」
クモスケは女の方を向いて頷いた。
「次にフォルガイム、元々は人間だけど悪魔族に改造されて昆虫の力を手に入れたからこんな姿になってるけど、実は意外とビビり」
「ちょっと信吾さん!」
フォルガイムが憤慨するが信吾は続ける
「こっちはTSR5号。俺達は5号ってよんでるんだけど、AIロボットといったほうが分かりやすいかな?最新型らしいからそれなりの知識はあるし、色んな能力もあるみたいだな」
「私もつい最近信吾達と会ったばかりだが、短い間に色々とありすぎてもう結構長い間一緒にいるような感覚はする。ま、とりあえずどうなるかは分からんがよろしくな」
「で、俺は向井信吾、42歳、普通の人間だ」
信吾の言葉にフォルガイムが焦ったように信吾を見て
「普通の人間?えっ?普通の人間ですかね?いや、自分と比べれば普通の人間かもしれないですけど、普通の人間はそんなに、、」
フォルガイムの言葉に被せるように信吾が言う
「で、そちらさんは?お名前を教えてくれるかな?」
「うむ、権守志保だ」
「志保ちゃんだね、よろしく」
志保の言葉の続きを待つが沈黙がしばらく続く。しびれを切らした信吾が志保に話しかける
「多分フォルガイム以外の皆は気付いていると思うけど、志保ちゃんからはなんか妖気のような物が発してるっぽいんだよね?」
フォルガイム以外のクモスケと5号が頷く。
「雪さん達とおんなじ感じがする」
クモスケの言葉にフォルガイムが驚いたように女に近づいてクンクンしだす。
「やめろ!変態!」
全員で突っ込みを入れる
「良く分かったな、まぁいずれバレるとは思ってはいたが、、、」
少し間を開けて志保が続ける
「オイラの名前はイズナ、狐の妖怪でこの娘、志保に取り憑いている。取り憑いていると言っても目的はこの娘を守ることで悪いことはしていない」
「やっぱりな、何か裏があるって言うか、何か妖しげに2つの何かが存在していると感じたんだ。要は二重人格的なね?車に乗ってた時と降りた時だと雰囲気が大分かわったからさ。ちなみに今表に出てるのがイズナなら裏にいる志保ちゃんは出てこれるのかな?」
「あぁ、問題ない」
すると胸のポケットに入れてあった眼鏡をかけるイズナ。眼鏡をかけた途端に肌の色が褐色の肌から真っ白なキレイな肌になり一気に雰囲気が変わった。
「は、はは初めましてっ、、権守志保ですっ」
志保は顔を真っ赤にして恥ずかしがりながら顔を下に向ける
「あ、あんまり人と話したことがなくて、、ご、ごめんなさい、で、でも、化け物から助けて頂いてありがとうございましたっ、、」
信吾は喋り方とオドオドした感じから人見知りでコミュ性だと察した。なので落ち着かせるように信吾は質問する
「あぁ、化け物を倒したのはクモスケだけどまぁ気にしないで。ところで志保ちゃんは人と話すのが苦手なようだけど、辛かったらイズナと変わっても大丈夫だよ?その、イズナと志保ちゃんって情報共有は出来てるっぽいから、何か聞きたいこととか言いたいことがあったら遠慮なく出てきて言ってもらいたいと思ってる。もちろんもっと俺達と一緒にいて慣れてきたらでいいからさ」
「えっ?あ、え、は、え、っ」
驚いたような、申し訳ないような表情をする志保
「だって質問攻めになっちゃうよ?その銃とか長ドスとか?今までの事とか?」
志保は視線を彷徨わせて腰にある銃と長ドスをみた。
「あ、あの、、これは!おお父さんのお仕事の道具で、あ、いや、ちがっ、これは作って、ううん、私の趣味、、、、、」
志保が一生懸命伝えようとするが言葉に詰まって黙ってしまった。説明もちんぷんかんぷんで自分でも何を言ってるのか分からなくなってしまったみたいだ
「うん、志保ちゃん、無理しなくても大丈夫だからゆっくりと慣れていこうね」
小さな子供をあやすように、優しく話し掛けて頭を撫でようとすると
「!!」
ビックリしたように信吾の手を大げさに避けた。
「ご、ごめんなさい、、私、、お、男の人が、、に、苦手で、、ごめんなさい」
焦ったように眼鏡を外して横を向いてしまった志保。
肌の色が褐色になりイズナへと変わった
「すまないな、志保は極度の人見知りで基本的に人間全部を苦手としているが、特に男には拒絶反応が出てしまう」
避けられた信吾はショックを受けたがイズナの言葉に納得した
「なるほどね、わかった。それで、その武器の事とか、今まで異変が起きてから3ヶ月くらいか?経っているけどその間どうしてたんだ?」
「ふむ、それは秘密だ」
「んん?えぇ?」
「それはそうだろう、まだ出会ったばかりなのに何故お前達を信じられる?言っただろうオイラはこの娘を守るために憑いてるって」
「う、、うん、そう、だな」
「恐らくはお前達はオイラより強い、オイラの抜刀を見抜いて片手間で刀の腹を摘んだお前を警戒するのは当たり前だろ?いくら手加減して寸止めで止めようと思ってもあのスピードは普通の人間なら見えるはずもない速さのはずだ。余計な情報を喋って全て引き出した上に必要無くなったら始末されるなんて事はよくある事だ」
「よくあるって事はは無いと思うけど、、」
「えっ?信吾に刀を抜いたの?」
「クモスケさん落ち着いて下さい、寸止めって言ってるし悪意は無いでしょう、それに信吾さんは普通の人間じゃないですからね、なんとでも、、、」
「俺は普通の人間だぞ?うん、普通の、人間だぞ」
「まぁ、詳しくはまだいいんじゃないか?逆にこちらもまだ言ってないこともあるし、お互いがもっと信用できてからの方がいいだろう」
5号の言葉にしばし考える信吾
「ま、それもそうだな、何となくな今までの流れで志保ちゃんの事は分かったし問題ない。もし俺達の事を少しでも信じてくれて話せるようになったら話してくれ」
イズナは少し逡巡した後に小さく頷いた。




