第59話 四階層のトラップ
四階層の安全地帯に辿り着いた信吾達。
「さあ、次行ってみよう〜」
安全地帯の先の細道を進んでいくと広い場所に出た。
広間は丸くなっていて奥に進む道が4つある。
とりあえず真ん中まで進んだ信吾達はどの道に進むかを話し合いを始めた。
「ここは一番右から攻めていくのはどうだろうか?」
「そうですね。正解は分からないんだから一個一個試してみるのがいいかもしれませんね」
信吾とフォルガイムが話をしていると突然床が光りだした
「えっ?魔法陣?、、、」
ブンッと四人が一斉に消えた。
信吾はすぐに警戒態勢で周囲を見廻すと他の三人の姿が見えない。
「くそっ!バラバラに転送されたか!」
信吾が言葉を発した瞬間に後ろから気配がして振り返る。と同時にその気配の主が何かを口から吐いた。
信吾は咄嗟に後ろに下がり吐瀉物をぎりぎりで避けた。
気配の主は巨大な蜘蛛で今のは毒だと信吾は判断した。クモスケとは段違いにサイズがでかく、おそらくは二メートルを超える巨体だ。
間髪入れずに蜘蛛の糸を飛ばしてきて信吾を拘束しようとするが信吾も避けながら少しずつ隙を伺う。巨大蜘蛛は巨体の割になかなかスピードがあり次から次へと毒と糸を交互に飛ばしてくる。信吾は蜘蛛が苦手とする火で終わらせようとするがなかなか打たせてはくれない、
「しょうがないな、じゃあスピードアップしちゃうぞー」
そう言って身体強化魔法をかけた。その瞬間間合いを詰めて蜘蛛の顎を思いっきり蹴り上げた。蜘蛛はそれほど防御力が高くなく今の一撃でかなりのダメージを与えた。
「うん、スピードだけ注意ってかんじかな?」
蜘蛛が痛がっている隙に距離をとって魔力を込めて
「燃え盛れ灼熱の炎よ!踊り狂え獄炎の炎よ!必殺火ィーーー」
無駄に詠唱して無駄にカッコ悪い技名を叫んで放つファイアーボールはそのまま蜘蛛を飲み込み消し炭となった。
巨大蜘蛛との戦闘が終わり、何かをドロップしたようだ。
エリクサーの瓶と形は同じだが、中身が違うようだ。色が紫色をしていて怪しげな色をしている。
「中身何なのか分かんないけどとりあえず持ってくか」
*****
一方バラバラに飛ばされた一人、クモスケは飛ばされた瞬間に気配感知を周囲に巡らせ、警戒していると後ろに何かがいる。咄嗟に振り返ると巨大な蜘蛛が襲いかかってくる。難なく避けるクモスケ。避けながら辺りを見渡し、仲間を、信吾を探すが
どこにもいない。
「おい!でか蜘蛛みんなはどこにいる?」
クモスケが巨大蜘蛛の前足の攻撃と糸の攻撃を躱しながら聞くが当然ながら答えない、というか喋れる訳がない。
しばらく攻防が続き、クモスケも
(このでか蜘蛛はスピードだけだな)
と思い一気に方をつけようとした瞬間、巨大蜘蛛が土の弾丸を放ってきた。無数に飛んでくる土の弾丸だが、クモスケは冷静に少し距離を取り背中の六本の足で弾き飛ばす。
カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ
と、ものすごい速さで全弾弾き飛ばすクモスケの動きは圧巻の光景だ。
弾き飛ばしながらクモスケは右手を前に突き出して魔力を込めると、拳大位の大きさの土の塊を作り一気に放った。
土の塊は真っ直ぐ巨大蜘蛛の顔に向かっていきバスンっと巨大蜘蛛の顔面もろとも頭が吹き飛んだ。
難なく勝利したクモスケも信吾同様怪しげな色をしたドロップ品を持ち奥に進む。
*****
一方バラバラに飛ばされた一人フォルガイムは、信吾に言われた事を思い出し、冷静に、落ち着いて周囲を警戒する。するとガキンっと頭に衝撃が走ったがダメージはない。振り返ると巨大な蜘蛛が首を傾げている様に見える。
「うわぁ!ビックリしたぁ」
声を上げた瞬間にまた巨大蜘蛛の前足による攻撃が来る。だがフォルガイムは難なく受け止める。
「スビードは早いかもだけどパワー不足ですね」
バキッと巨大蜘蛛の前足を間接部分から引きちぎる。
堪らずに距離を取った巨大蜘蛛は大きく口を開けて毒を吐いてきた。咄嗟に避けるが少し肩にかかってしまったフォルガイム。見る見るうちに紫色に変化していく左肩に
「マズい!毒か!」
フォルガイムは一瞬慌てるが、瞬時に冷静さを取り戻し、こんな時信吾さんならどうする?信吾さんならさっさと片付けて仲間と合流するだろうと考え至る。
意識を集中させて一気に巨大蜘蛛の懐に入り手刀を放つ。
フォルガイムの放った手刀は斬撃となり巨大蜘蛛を縦に両断した。巨大蜘蛛との戦闘は終わったが左肩の毒は徐々に広がりつつある。フォルガイムは左肩を強く押さえつけながらゆっくりと、なるべく毒が回らないように慎重に前に進む。
*****
そしてバラバラに飛ばされた最後の一人、5号は信吾達同様警戒しながらみんなを探すが見つからない。そして三人と全く同じ巨大な蜘蛛が5号を睨んでいる。
「蜘蛛風情がいっちょ前に睨むんじゃない!貴様の攻撃などお見通しだ!掛かってこい!」
どこか上級の女騎士のように叫びながら両腕を剣に変化させて対面する。ジリジリと距離を詰める両者。先に動いたのは巨大蜘蛛で前足を横薙ぎに振ってきた。
ガンッと受け止め鍔迫り合いの様に力の押し合いをするが、それも一瞬で崩れ、追撃のように巨大蜘蛛は至近距離から毒を吐いてきた。だが5号は蜘蛛の攻撃を把握していて、警戒もしていたため瞬時に反応してカウンターで斬り掛かる。巨大蜘蛛の足を一本、二本と連続で切り落とし、素早く反撃に備える。だが巨大蜘蛛は反撃に出ずに距離をとり六本の足でバランスを取りながら左右に体を動かし始めた。
するとスピードを活かして5号の周りを不規則に回り始めた。ドスッと低い音がなり5号は、ぐうっと呻きながら膝をついた、5号の腹に土の弾丸がめり込んだ。続けざまにドスッドスッドスッドスドスドスドスと土の弾丸が襲ってくる。膝をついたまま動かなくなった5号に無数の弾丸を放った巨大蜘蛛は動きを止めて様子を見る。すると
「ご馳走さま、そしてお返しするぜ!」
5号が言うと体中から無数の弾丸が放たれて巨大蜘蛛の体を全ての弾丸が貫通する。5号は自身の体質、液体金属の体を上手く使い弾丸を取り込み、それを全て一気に射出したのだ。
しかし5号にダメージが無いわけではない、多少なりとも受ける際に衝撃がダメージとして伝わって来ていてかなりの体力を持っていかれた。巨大蜘蛛が消えていきドロップアイテムを拾う5号。そしてみんなと合流するべく足早に先に進む。
奥の道を進んでいく5号は広い場所に出た、と同時に声がした
「あれ?ここって?」
声がした方を向くと信吾がいた。
「あっ!」
とまた声がした方を向くとクモスケが信吾を見て走り出そうとしている
「クモスケ止まれ!動くな!」
信吾が急に叫んで5号はビクッと体を震わせた
クモスケはビックリした顔をして固まっている。
「あ、わりぃクモスケ、ビックリさせちゃったな。でもよーく床を見てくれ、さっきの魔法陣じゃないか?で、ここはさっきの広間で四つの道は全てバラバラに転移した先って事じゃないか?」
「そうか!なるほど」
「わかった、魔法陣を踏まないようにそっちに行けばいいんだね」
「まぁ、そうなんだけど、、、てかフォルガイムは?」
三人が顔を見合わせて誰も出てこなかった道を見る
「まさかっ!」
そう言って魔法陣に気をつけながら走り出した5号に信吾とクモスケが続く。すると道の先で左肩を押さえつけながらゆっくりと歩いてくるフォルガイムが見えた。
「フォルガイム大丈夫か!?」
三人が駆け寄り信吾とクモスケがフォルガイムに肩を貸す。
「毒だろ?これ飲め、さっきドロップした毒消し薬だ」
5号が言うと信吾が
「あっ!それ俺もドロップしたぞ」
「僕も持ってる」
それぞれが出すと色も瓶の形も同じだった。
「えっ?まさかみんなもでかい蜘蛛か?」
「えっ?信吾も?」
「どうやらそうらしいな」
「あいつスピードの割には弱っちかったよな?」
と、信吾が話をしようとすると
「あの、、早く飲ませて、、くださいよ」
危うく放って置かれた挙げ句に戦いの話になりそうだったところをフォルガイムが苦しそうに言った。
なんとか毒消し薬を飲んで落ち着いたフォルガイム。
毒は見る見る消えていき正常に戻ったようだ。
リストバンドに魔力を込めて毒が消えているか確認する一同。
「フォルガイムのとこってドロップしなかったのか?」
「えっ?あーいや、気づかなかっただけかもしれないです、何しろ毒が回ってて、早くみんなと合流しなきゃって思ってて、、」
「なるほどな、ちょっと待っててな」
そういってフォルガイムが来た道を疾走して戻る信吾。
間もなくすぐに戻ってきた信吾は手に毒消し薬を持っていた。
全く疲れた様子もない信吾は5号に話しかける。
「5号、一応治癒魔法かけようか?」
みんなの状態を確認した信吾が5号の体力が減っているのを見て言った。
「あぁ、まぁ大丈夫だ。それより何か有機物を取り込んだほうが効率がいいんだ。少し広間で休憩を取らないか?何か食材があれば貰えないか?料理なら出来るぞ」
「マジかっ!5号料理出来るのか?俺もフォルガイムもクモスケも料理なんてしたことないからロクなもの食ってないんだよ最近、、そうだなぁ〜カレー食いてぇな」
「カレーも作れないのかお前たちは、全くしょうがないヤツらだなもう〜ふふふ」
「あの、いや、喜んでるところ申し訳ないんですけど、信吾さんの空間収納って使えませんよね?収納袋も使えないんですから、、、」
5号と信吾の会話に割り込んだフォルガイムが思ったことを言う。
「ガビーン!なんてこった!そうだったぁー!」
「な、なんと!有機物はお預けか」
ガックリと肩を落とす信吾と5号。クモスケも何気にショックを受けて固まっている。
「信吾さんのガビーンにビックリっすよ、相当古い言い回しじゃないですか、、、死語ってやつですよ」
フォルガイムが呟いてその場は収まった。
そして広間に戻り魔法陣を踏まないように陣から距離を取って少し休憩をすることにした一行。
「これの通信の機能使ってる暇なんてなかったよな?いきなり後ろから襲いかかってきたんだよ俺のとこは」
リストバンドを指差しながら信吾が言うと
「僕もそんな感じ」
と全員同じ様な状況だったことがわかり、今度は巨大蜘蛛の話に移った。
しばらくはこの広間で休憩を取りながら雑談する信吾達であった。




