第56話 ダンジョン(仮)
話しながらみんなで寝てしまった信吾達。
朝になり信吾は目を覚ます。
ホログラムのクリーンを押し、その後にスムージーを出して飲む。
それから全解除して絨毯の上に優しく移動していくシャボン玉の膜。周りをみると既にみんな起きている。
膜が消えてみんなに挨拶をする。
「おはよう」
「おはようございます」
「おはよー」
「お、おおおおはよう」
フォルガイム、クモスケ、5号がそれぞれ挨拶を返す。
分厚い扉を開けて広間にでるとトゥトゥナが待っていた。
「おはようございます皆さん。食事の用意ができてますのでこちらへどうぞ」
そういってトゥトゥナが歩き始めて、寝ていた部屋の受け付けの様なカウンターを挟んで反対側のドアを開けて入っていく。
そこは食堂になっていて長いテーブルがいくつも並んでいる。その上には数々の食べ物が並んでいる。
「信吾さんの食文化で合わせてみました。さ、どうぞ食べてください。食べ終わりましたらまた研究施設に来て貰えればいるので適当な時間に来てください。あっ、食事の後片づけはこちらでやるのでそのままで大丈夫ですよ」
そういってトゥトゥナは食堂から出ていった。
信吾はざっとテーブルの上を見る。野菜が多く次にフルーツ類が並んでいる、その先にはチーズフォンデュがあり、これはクモスケの好みに合わせたのだろう。
次に白いソースがかかったパスタがあり、横にはパン、サンドイッチがある。スープはコーンスープになっている。肉系が無いのはここの食文化というか必要が無いからだろうか。
それぞれ自分の皿に取り分けて各自食べ始める。信吾とクモスケが隣同士で向かいの席にはフォルガイムと5号が座って食べている。やはりクモスケの皿には、ほぼチーズフォンデュが乗っかっている。
信吾は白いソースがかかったパスタが気になりパスタ中心で盛ってある。味はクリームソースのようだが朝から食べるものとして重くなくさっぱりとした味に仕上がっている。クモスケのチーズフォンデュは朝から食べるのはどうなんだろうと密かに思っていた。
フォルガイムはバランスよく全てを少しずつ皿に盛って食べている。
5号も何気にチーズフォンデュが多いが、他はバランスがいい感じだ。
「5号も食べてるけど、食べた物ってどうなってるの?そもそもエネルギー源ってなんなの?電池じゃないよね?」
信吾が何気なく5号に質問した。
「あぁ、私は有機物ならなんでもエネルギーにしてしまうぞ。まぁ燃費は言い方だと思うぞ、今のこの食事だけで三日は飲まず食わずで大丈夫だぞ、何もせず動かなければな」
「何もしないで動きもしないならいる意味ないじゃん」
クモスケが珍しく突っ込んだ
「珍しいなクモスケ、突っ込みのキレが鋭すぎる」
「ようするに、それなりに動いても自分達と同じぐらいの食事で大丈夫ってことですよね?」
「そういうことだな」
そんなこんなで朝食を食べ終わり再びトゥトゥナの所へ行こうと居住層から研究施設へ移動する一行。
途中の扉の部屋で六つのドアの内二つはもう分かっているが、行ったことの無い他四つの扉の先は何があるのか信吾は気になった。
「なぁ5号、この他の扉って中何があるの?」
他の扉を指差して5号に聞いた。
「こっちの部屋はただの物置だな、今までの研究で作り上げた代物が所せましと置いてあるだけだ。で、こっちが書庫で世界中の本が並んでいる。でこっちが研究所でアンドロイドを造った装置やら何やらがある部屋だ」
一つ一つ扉を開いて説明しては閉め、説明しては閉めを繰り返している5号。確かに5号が言ったように扉を開いた時にチラッと見えたが物置には何かの道具が置いてあり、書庫には高さ五メートルを越える高さの本棚があり、びっしりと本が詰まっている。そして研究所には大きな水槽があり、中には何も入ってはいなかったがそこで何かを培養するような装置がたくさんあった。
「今度時間がある時にでもゆっくり案内してやる。とりあえず今はトゥトゥナ様を待たせているから、、」
ガチャ!
5号が言い終わる前にクモスケがもう一つの扉を開けて
「こっちには何があるの?」
といった瞬間クモスケが吸い込まれるように中に入ってしまった。
「ば、バカやろー!」
「クモスケ!」
瞬時にクモスケの糸が信吾の腰に巻かれて信吾が踏ん張って助けようとするが、ジリジリと吸い込まれていく。5号は直接糸を引っ張る。
「信吾さん!」
フォルガイムが信吾の手をとり引っ張る。だが不思議な力で四人全員吸い込まれて扉が閉まる。
「うっ、いててててて、腕がちぎれるかと思ったぜ。クモスケ大丈夫か?」
「このっバカクモスケ!何でいきなり扉を開けるんだ」
「ごめんなさい」
素直に謝るクモスケに怒鳴った5号は
「あっ、いや、こっちこそ怒鳴って、、ご、ごごごごめん」
「いや、ツンデレかよ」
「信吾さん、突っ込んでる場合じゃないですよ。ここはなんなんですか?しかも扉が開かないですよ」
フォルガイムが扉に手を掛けて開けようとするがびくともしない。
「はぁぁぁー、しょうがない進むしかないな。ここはダンジョンの内部だ、奥まで行けばなんとかなるだろ」
「ダンジョン?ここは地球だぜ?どう言うことだ?」
「異世界人が転移してくるだろ?で、ダンジョンも転移してくる訳だ。そのダンジョンを地球のオリジナリティーを出して今造っている最中だったんだ。異世界のダンジョンを研究して維持、管理する為にも必要なんだ。それでダンジョン核に全て任せて後は魔力を注入するだけで終わる予定だったんだが、扉を開けてしまうとダンジョン核が勘違いして外部からの魔力や使えそうな素材を吸収したといったところだな。分かったか?」
「あ、あぁよく分かったよ」
ズズンズズンと奥の方から音がする。明かりに関しては問題はない。壁がうっすらと光を放っていて視界は問題ない。そしてなにやら音を立てながら近づいてくるナニか。
「お、おいおいおいおいおい!ありゃケルベロスってやつじゃないのか?」
信吾が言いながら向いている方に三つの頭を持つ大型犬よりももう少し大きく太いサイズで筋肉ムキムキでシッポは長く蛇の頭になっていて、うねうねとうねっている。
「ま、まずいぞ!ケルベロスがいきなりくるとはな。あれは確か猛毒を吐いてくるモンスターだったはずだからみんな気を付けろ!」
「いやーこりゃマジでヤバイかもな、空間転移も空間収納も使えねぇ、、フォルガイム収納袋はどうだ?」
「えっ?あっ!えーーーダメです普通の袋みたいに底があるから使えません」
焦るフォルガイム。
「なるほどな、縛りプレイか」
「し、下ネタいってる場合じゃないですよ!」
「その縛りプレイじゃねぇよ!空間系の能力の縛りだ!」
「わ、分かってますよ、みんな落ち着いてください、こんな時こそ冷静に行きましょう」
「いや、多分みんな冷静だぞ?むしろお前が一番テンパってる様に見えるけど?」
横目でフォルガイムを見ながら右手に意識を集中する信吾。
「ほい、ウインドカッター」
ヒュン!っとケルベロスに向かって飛んでいく風の刃はケルベロスの真ん中の首をはねた。
血が吹き出て辺りを真っ赤に染めるが、それも一瞬で止まり、頭が再生して元どおりに戻る。
「うん、やっぱり再生するわな。まぁ、魔法は使えるみたいで良かったよ。クモスケ火を吹くなよ、ダンジョン内はでかい火を使ったりすると酸素が一気に無くなるからな」
頷いたクモスケはケルベロスに向かって行く。
ケルベロスは向かってくるクモスケに左側の頭が毒液を吐いて、真ん中の頭が火を吹いた。右側の頭はジッとクモスケの隙をうかがっている。
右へ左へステップを踏んで毒液を回避するクモスケに横から炎が襲ってくる。炎を回避するため片手で毒液を払いながら前進する。姿勢を低く保ちながら背中の足を鎌状に変えてケルベロスの足に一発、二発と斬撃を放つ。するとケルベロスの蛇のシッポが襲ってくる。油断していたわけではないがクモスケの腕に一筋の傷がついた。すかさず反撃に出るクモスケだが蛇のシッポはうねうねとクモスケの攻撃を躱しながらまたクモスケの腕に一筋の傷がつく。
「信吾さん、クモスケさんヤバそうじゃないですか?少し押されてるし、火ぃ使ってるし、毒液を手で回避ってヤバくないですか?」
「落ち着けフォルガイム、毒はクモスケには効かないんだよ、耐性があるからな。あれ?言わなかったっけ?」
「確か初耳ですよ!」
フォルガイムがテンパりながら叫ぶ。
すると5号がピクッと動いたがすぐに後ろに下がった。私も昨日鑑定で見て知っていたぞ、と言おうとしたがそんな場合じゃないと思いすぐに下がった。
「あと、火なんだけど、魔法の、、、まて後だ後!ちょっと行ってくる」
クモスケが蛇のシッポと攻防戦を繰り広げているが、シッポで精一杯で、三つの頭まで対処しきれていない、今まで隙をうかがっていた右側の頭が体を曲げて首を伸ばしてクモスケに牙で襲いかかる。
蛇のシッポの攻撃をなんとか凌いではいたが横から牙が来る。思わず回避するため上に跳んでしまったクモスケに着地点で大きな口を開けている右側の頭。
着地点を見たクモスケは糸を天井に伸ばして回避しようとするが、シッポはそれを許さない。なす統べなく糸を解除して着地するが、そこには頭が待ち構えていて、クモスケの左足に食らいついた。瞬時に硬質化してダメージは無いが、足を取られたクモスケは身動きが取れない。
信吾が姿勢を低くしながらケルベロスに突っ込んでいく、左側と真ん中の頭の攻撃を無視するかの様に素通りしてクモスケに向かう。同時にウインドカッターを展開して一発右頭に放つ。続いてシッポにも無数のウインドカッターを放つ。が、全てシッポには躱されてしまう。
ザンッっと音と共に右頭が首と離れた。噛む力がなくなった頭。だが間髪いれずにクモスケに襲いかかるシッポ、が空振りする。
低い姿勢のままクモスケを抱き受けて走り抜ける信吾。
「大丈夫かクモスケ?」
距離を取った信吾がクモスケに聞いた。
お姫様抱っこされたままのクモスケが答える
「かすり傷程度だけど、ありがとう信吾。ちょっと危なかったかも」
信吾がクモスケを降ろすと右腕に魔力を集中させる。
そしてケルベロスに向かって腕を突き出す。
ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!
獄炎の炎がケルベロスを包み込む。暫くケルベロスは雄叫びを上げながらもがいていたが徐々に黒焦げになり、ドドーンと倒れ、とうとう息絶えた。




