第51話 目的地到着
蝿の王ベルゼブブを倒した信吾達は稚内空港で少し休むことにした。
時間ももう午後の4時を回っている。
「ちょっと早いけどメシにしようか」
信吾が空間収納からご飯、肉、野菜等を出す。
クモスケはベルゼブブを補食したいようだ。
「えーークモスケちゃん、あれ食べるの?折角シャワーも浴びたのにぃ?」
信吾が嫌そうに言う。
クモスケは信吾とベルゼブブを交互に見ている。
「わかったよ、でもせめて火だけ通してもいいか?」
クモスケはニコニコして頷いた。
そして食事も終わりクモスケがまた特殊能力を手に入れた。口から炎を吐く能力だ。
なかなか今後の戦いに重宝しそうな能力でご満悦なクモスケ。
「フォルガイムも食ってみれば?」
もう原型をとどめていないベルゼブブの残りカスを指差しながら言う。
「いや、いいですよ、能力を手に入れられるとしても、、ちょっと、、」
「能力かぁ、どうなんだろうなぁ、フォルガイムって結果的には進化してからベースってどっちになったんだ?昆虫のベースだったら能力が手に入るし、人間ベースなら無理だろうし」
クモスケは二人の会話を聞くのを止めて収納袋を持って切り伏せた無数の虫達のところに行き収納していく。
「確かにどうなんでしょうね?」
「マジでちょっと食ってみないか?こうやって焼いて味付けして、、、」
信吾がベルゼブブの欠片を焼いて塩とコショウで味付けして、サンドイッチにはさんでフォルガイムに渡した。
「うえぇぇぇ、マジっすか?食べなきゃダメっすか?」
「食べて強くなれるなら願ってもないチャンスじゃないのか?」
「そ、そうですね」
ジッとサンドイッチを見つめながらフォルガイムは目を閉じて一気に口に入れた。
恐る恐るゆっくり咀嚼するフォルガイム
「あ、味はそんなに不味くはないかも、味付けがいいのかもしれませんね」
ゴクッと飲み込んだフォルガイム。
そして一時間後
「あー食べなきゃよかったよ、結局なんにも能力は手に入らないんだから、罰ゲームですよ」
拗ねているフォルガイムをあやす信吾がいる。
「まあまあそんなに落ち込むなよ、悪かったよ変なこと言っちゃってな」
背中をさすりながら信吾が言う。
「何か飲むか?何がいい?何でもあるぞ?」
「コ、コーラで、冷えたコーラが飲みたいです」
「オッケーわかった」
コーラを出して魔法で冷やしてあげる。
「ほら、冷えたコーラだ」
プシュッと音を立ててペットボトルの蓋を開けたフォルガイムは口の中を満たすコーラに喜びを感じた。
「ありがとうございます」
そんなことをしているうちにクモスケが戻ってきた。
「疲れたからもうここで寝たくない?」
身体強化をかけた反動なのか少し体がダルいクモスケが言った。
信吾も何気に反動で疲れきっている。
「そうだな、ならあそこの中で寝ようか」
信吾が飛行機を指差す
「なるほど、飛行機の中のファーストクラスとかで寝てみたいですね」
「だろ?だろ?行こうぜ!」
中学生のようなノリで信吾が走っていった。
飛行機はドアが開いていて階段も下がっている状態で、そのまま中に入る三人。奥へ奥へと入っていき、とある場所にでた。そこには木目調のデザインで個室のような空間になっている場所がいくつかある。中にはソファーベッドがあり、向かいにはテレビがあり、横にはコンソールテーブル。中にはリモコンが入っている。間違いなくファーストクラスの居住スペースだ。
それぞれがその個室に入り設備をいじったりしている。
「やっぱり電気がないと不便ですね」
「そうだなぁ、、、」
信吾は空港のパンフレットを見ながら空返事をした。
「どうしたんですか?」
「いや、ここの空港は稚内空港って言うんだけどシンプルな空港だなって思ってな、なんか空港内にラウンジでもあれば行ってみたいと思ったけどなぁ、、」
「なるほど、、まぁでもシンプルも自分は好きですよ、あんまりごちゃごちゃしててもアレだし」
「アレだしのアレとはなんぞや」
「アレはアレはですよ、そこ突っ込まないでくださいよ、言葉の流れでなんとなく分かりますよね?」
「アレってなんだ?おいしいのか?」
珍しくクモスケが会話に入ってきた。
「クモスケさんは食べる事しか頭にないんですか?」
「そんなことはないぞ、信吾の事も考えてるぞ」
「はいはいそうですか、じゃ、自分は先に寝ますね」
フォルガイムはソファーベッドに横になった。
「おやすみー」
それぞれが声を掛け合って個室に入る。
クモスケと信吾も横になったらすぐに眠りについた。
そして朝になる。
水を魔法で出して身支度をする三人。
朝食を軽く取ってから外に出る。
朝日を浴びながら軽く準備運動をして身体を暖める。
それからトレーニング開始。
走り込み、いつもの筋トレのメニューをこなしていく。
心なしか三人とも昨日の戦闘を思い出したのか気合いの入り方が違う。
毎日トレーニングをしている成果も出ていて基礎的な体力や力、スピードなどが徐々に上がっているのが分かる。しばらくして信吾が二人に集合をかける。
「あんまり無理しない程度にな、ほどほどにしてそろそろ出発しよう」
魔法の絨毯を出して準備する。
クモスケとフォルガイムが視線を交差させて、二人で頷いて魔法の絨毯に乗る。
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そして割りとゆっくり飛行しながら進み、3日が経過した。
「最北端はこの辺なんだけどな~どこだ?」
「ここって氷の上ですか?」
「あぁそうだよ、北極に陸なんてないからな、ちなみに南極は大陸があるけど寒さが半端ないんだよ、ここと比べ物にならない位寒いぞ」
「そうなんですね、この身体になってから寒さを感じなくなってまして」
「僕も寒さ感じないぞ」
「いや、クモスケは多分耐性がついてるからだと思うよ、俺はめっちゃ寒いから厚着しまくってるけどな」
信吾の体にはいたるところにカイロが張ってある。
「おっ?おっ?なんだあれは?」
信吾が見ている先には大きな看板が立っている。
「なになに?『地下施設はこの下 神』って書いてあるけど、大丈夫なのか?神様、こっちの世界に干渉しちゃいけないんじゃないか?、、、まぁ確か神界に行ったときにアマテラス様が分かりやすくしとく、みたいな事言ってたけど、、、」
信吾は一応看板を空間収納にしまっておく。
「この下ってことですよね?掘りますか」
「まぁ待て、掘って氷にでも亀裂が走って崩壊なんて事になったら洒落にならないからな、ここは魔法で少しずつ解かしていくしかなさそうな気がするよ」
そういって直径1メートル位のファイアーボールを浮かべて、更に魔力を込めて温度を高くする。
「あ~~暖けぇ~~」
「いや、暖まってる場合じゃないんじゃないですか?」
「おう、そうだな」
そのファイアーボールをゆっくりと氷に近づけていく。どんどん氷が解けていき約5メートルの位置まで解かしていくと、下に続く階段が見えた。すぐにファイアーボールを消す。
「階段がありますね、どうしますか?」
「行くに決まってるだろ、おらワクワクしてきたぞ」
「どこの戦闘民族ですか?」
「地球生まれの地球人だぞ?」
「わかってますよ、それ言いたいだけですよね」
「俺にはもう鼻くそをホジる力しか残ってねぇ」
「じゃあその力で歩いてもらってもいいですか」
「信吾大丈夫?疲れたの?僕が運んであげようか?」
「クモスケさん、信吾さんはただふざけてるだけですよ、だから心配しないでもいいんですよ」
「んじゃ、いっちょいってみっか」
「いつまでやるんですか」
フォルガイムが渾身の突っ込みを入れて階段を下る。
階段をおりた先には大きくて頑丈で重そうな扉があり、フォルガイムが難なく開ける。中に入ると体育館位の広さの部屋になっている。
その真ん中には魔法陣が描かれている。
「これは、多分転移魔法陣ってヤツじゃないのか?よく漫画やゲームでよくあるパターン的な?」
「ですよね?そういえば地下施設ってどのくらいの深さの場所にあるんですかね?」
「さぁな、そんなの俺に聞かれても困る、、、けど、確か人間が掘った一番深い記録がせいぜい12から13キロメートル位だったはず。記憶が定かではないからなんとも言えないけど、、まぁ最低でもそれ以上深いところにあるって考えた方が無難じゃないのか?で、そんなところまで行くのに階段とかで行くとしたら時間がかかりすぎるから転移魔法陣を使いましょうって事で描いたとかじゃね?」
「それですよ絶対そうですよ、よく思い付きますね信吾さん」
「いや、普通だろ。じゃみんなで手を繋いで中に入ろうか」
そして三人は手を繋いで魔法陣の中に入った。




