第48話 お風呂とトレーニング
朝食を終えて転移ゲートを開き、江ノ島までやって来た六人。
江ノ島までの橋を歩いて渡る一同。
「前に出張で横浜に来た時に、休日を使って観光がてら来たことがあってな、橋渡ったすぐのところにあるサザエが美味しくて未だに覚えてるよ。それで歩いて上の展望台まで行って景色をみたりしたんだ」
「そうなんですね、サザエ美味しそうですね」
信吾とフォルガイムが話ながら橋を渡り終えた。
坂道を登った道の途中に旅館がある。
「あったあった、ここだここ」
自動ドアを手動で開き中に入る。
「こんにちはー、大人六人の入浴だけなんですけど」
「誰と喋ってるんですか」
「いや、なんとなくだよ、雰囲気が大事なんだよ」
そういってカウンターに一万円を置く
「いやいや、入浴だけなのに高くないですか?」
「こんな世界になったんだからお金なんて持っててもしょうがないだろ?ま、これもまた雰囲気だよ」
信吾とフォルガイムのやり取りが終わり浴室に向かう
「とりあえず女湯からお湯張るから、みんなで洗うぞー魔法も使えば早いから手伝って」
浴槽の水を捨て、洗った後に魔法でお湯を張り準備が出来た
「雪さん、これシャンプーとリンスと石鹸、使って。後クモスケにやり方を教えて上げて」
「、、、なるほど、そう言う事ですね、私を連れて来たのは。分かりましたお任せください」
嬉しそうに言う雪女。
シャワーは出ないので浴槽のお湯だけで何とかしてもらう。
そして男湯でも同じように洗ってからお湯を張り、身体を洗ってから浴槽に入る信吾とフォルガイム。
「あーーーーーー気持ちいいーーー」
「いや、分かりますけど、おじさんみたいですよ?」
「おじさんだぞ?変じゃないけどおじさんだぞ?」
ゆっくりと浸かっている二人
「そういえば予定が一部決まったって言ってましたけど、今後どうするんですか?」
「そうだな、とりあえずクモスケの産卵待ちってところかな?」
「えっ?クモスケさん妊娠してるんですか?」
「ま、まぁな、いや、何にもしてないからな?手は出してないからな?でも俺と血が繋がってるらしい」
「手を出す出さないはどっちでもいいですけど、なんにもしてないのに妊娠して血が繋がってるって、前までの自分だったら完全に怪しんでますよ。今この世界にいるからなんとなく信じられますけど、、ファンタジー世界ですからねぇ、、」
「そうだな、、ファンタジーと言えばフォルガイム、その身体ってどうなってるんだ?普通に感覚はある、、んだよな?」
「ええ、もちろんですよ、何も隠すものがないから、いつも裸で歩いてるようなもんですよ。でもやっぱり汚れたりするから定期的に洗わないとって感じですかね」
「なるほどね、変態君って事か」
「違いますよ!それクモスケさんに言わないでくださいね、絶対にいじってきますから」
「ははは、まぁでも確かに洗ったらキレイになったな?なんかワックスでも塗れば艶が出そうじゃん?」
「なんで?なんで油なんか塗らなきゃいけないんですか、身体に。それこそ変態じゃないですか」
「いや、ボディービルの人なんかはテカテカで鍛え上げられた身体を見せるんだぞ、カッコいいじゃないか」
「なるほど、そうですねって違いますよ!」
そんな他愛のない会話をしていると山さんと海さんが入ってきた。
「お背中流しに参りました」
一応申し訳程度に隠すところは隠しているが露出部分が多い格好で、ヤル気満々といった気合いの入れよう。
「やっぱりなーーこうなるかぁ、だから雪さんだけって言ったのに、、、」
ブツブツ言ってる信吾を浴槽から引っ張り出そうとする変態いや、二人。
「いいじゃないですか、流してもらえば」
「ま、せっかくだし二人で流してもらいますか」
そう言って浴槽から出た二人。信吾はしっかりと前を隠している。
シャコシャコと小気味良く洗う二人。何気に年の割には良い体つきをしている信吾。トレーニングの成果といえよう。そんな信吾とフォルガイムに
「では、ま、前を失礼します」
「いや、もう大丈夫」
「そんなことおっしゃらずにっ!」
「遠慮しないでくださいっ!」
いつの間にか山さんと海さん二人で信吾の背後から前に回る。
そんなやり取りをしていると
ガラッと扉が開いた。クモスケと雪女がこちらを見ている。
固まった一同。
「何してるの?」
他意もなく純粋に聞いたクモスケ。
「いえ、信吾様のお体を洗おうと思いまして」
少し焦ったように言う山さん。
「僕も洗う!」
クモスケはお風呂から上がっていて浴衣を着ている。意外と似合っている。
信吾は少しずつ後退り、土魔法で自分の周囲を囲って、すぐに空間収納から海パンを出してはいた。
「何してるのー?」
上から覗いているクモスケが中に入って来ようとしている。すぐさま土魔法を解除して出口に向かう。
「逃がしませんよっ!」
興奮した山さんが出口で通せんぼして言う。
後ろからはクモスケと海女が追いかけてくる。
まずいっと思った信吾はすぐに方向転換して逃げる。逃げている信吾にクモスケが糸を出して拘束しようとしてくる、が、なんとか回避、何故か海女が妖術で水を飛ばしてくる。ヒートアップしたクモスケが土の弾丸を放ってくる。
「いててててて」信吾は逃げ惑いながら、いつの間にか浴槽の中で一部始終を見ているフォルガイムに言う
「お、おい、助けろよ!盾だ盾をくれ!」
「収納袋脱衣場ですよ」
「な、なん、だと、、ぐああぁぁいてててて」
逃げ惑う信吾、ヒートアップする海女とクモスケ。
山女は出口を徹底的に死守している。雪女は唖然としながら動けずにいる。
壁に穴があき、天井にも穴があき、メキメキメキメキと音がすると、ドーーーーンドドドドドドーーーーン!旅館が崩れた。
一同しっかりと服を着て崩れた旅館の前で信吾が怒っている。
「一万円じゃきかないぞ!」
「いや、そこですか?」
フォルガイムが突っ込んでその場は収まった。
_____
砂浜に出た一行はトレーニングを開始する。
走り込みと筋トレをこなし、各自自主連をしている。
三姉妹はなにやら昨日信吾に言われた土のゴーレムを作れないか試行錯誤しているようだ。
フォルガイムは大剣を持ち素振りや自称カッコいいポーズの練習をしている。
信吾は砂浜に座り海を見ながら考え事をしている。
クモスケも一緒に隣で海を見ている。
「よし!フォルガイム、ちょっと模擬戦でもしないか?大剣なしで素手で相手してくれないか?」
「えっ?信吾さんと模擬戦?素手ですか、、、剣使っちゃダメですか?」
「ウ~ン、寸止めしてくれる?多分切られたら死ぬ自信あるわ」
「勿論ですよ、信吾さんに怪我させたら何されるか分からないですからね」
フォルガイムがクモスケを見ながら言う。
「じゃ、俺も」
そういって空間収納からチタン製の剣を出す。
「よっしゃ!始めようか」
お互いに構える。フォルガイムは剣を両手で持って前に構える、信吾は左足を前にして斜め前を向いて腰を落とす。視線はフォルガイム。右手に剣。
先に動いたのは信吾だ。一瞬で距離を縮めるとフェイントを入れて横にスライドする。
ガインッ!信吾の剣とフォルガイムの大剣がぶつかった。2手3手4手と打ち合う。やはりフォルガイムのスピードは信吾を上回っている。反復横飛びの応用で左へ左へとフォルガイムの周囲を周りながら打ち込む。
「くそっ!」
一旦距離を取る信吾。
「見えてますよ、信吾さん」
「分かってるよ、じゃ、魔法も使うぞ」
「ふっふっふ、いいですよ」
信吾がニヤリと笑う。完全にフォルガイムは油断している。
信吾は剣を下に向けて砂浜に先端部を当てるとそのまま距離を詰めて砂ごと振り上げる。一瞬視界が塞がれたフォルガイムは隙を見せた瞬間、ガンッと背中部分に衝撃が走る。振り替えると信吾はいない。
また後ろからガンッ。
「えっ?消えた?」
フォルガイムがキョロキョロとしている。
「いやー全くのノーダメージか、結構本気で打ったんだけどな」
信吾の声が上から聞こえてきたフォルガイムは、そちらを向く。飛行で浮いている信吾に言う
「目潰しなんて卑怯ですよ」
「勝負に卑怯もへったくれもあるか、油断してる方が悪い」
「あと、寸止めじゃないんですか?」
「君ノーダメだよね?大丈夫だ、ちゃんと力は抜いてるから」
「いやいや、今さっき本気で打ったとか言ってましたよね」
信吾はニコッと笑って誤魔化した。そして信吾は砂浜に降りてまた距離をとる。
「次いくぞー」
次は土の弾丸を無数に宙に浮かべた、それを一気にではなく時間差で複数射出した。
ガガガガガガガガガガン!ガガガガガガガガガガン!
それを全て大剣で打ち落とすフォルガイム。
弾丸と一緒に信吾も距離を詰めて剣を上から振り下ろす。ガインッ!剣と剣がぶつかり火花を散らす。
フォルガイムは難なく受け止めると、ドカッ、ガインッ!ドカッ、ガインッ!ドカッと信吾の攻撃が当たる。剣と剣がぶつかり合った直後に信吾は蹴りを入れていた。ちなみに時間差で放った土の弾丸も数発は当たっている。
「まだまだいくぞ!」
信吾は奇想天外でアクロバティックな動きを始めて剣と蹴りを入れていく
「えっ?えっ?えっ?」
信吾の動き事態は見えてはいるが対処が出来ないフォルガイム。
「うわぁぁぁぁぁぁー」
当てずっぽうで横凪に振った大剣の腹が信吾に当たる。
ガンッ!と音と共に信吾が吹っ飛んだ。吹っ飛んだ先にクモスケが走り信吾を受け止める。
「あっ!ごめんなさい」
フォルガイムが走りよってくる。
「いってぇー、けど大丈夫大丈夫」
言いながら治癒魔法をかける信吾だが、今の一撃で左腕が折れていた。
模擬戦を見ていた三姉妹も走り寄ってくる。
「大丈夫ですか」と三人とも心配している。
フォルガイムが恐る恐るクモスケを見るが、クモスケはただ信吾を心配しているだけだ。
「ごめんなさい、寸止め出来なくて、、、」
「いやいいよ、大丈夫だから、模擬戦なんだから怪我ぐらい当たり前だよ、そんな謝んなって」
寸止めしなかった信吾が何事もなかったかのように言った。
空間収納からスポーツドリンクを三つ出してクモスケとフォルガイムに渡す。信吾は一気に飲み干すと、一息つく。フォルガイムもキャップを外して少し飲む。クモスケは持ったままだ、キャップが開けられない訳ではなく信吾がまだ飲むかもしれないので持っているだけだ。まるで学生の運動部のマネージャーの様に。
「クモスケ飲んでいいよ」
「わかった」
クモスケはスポーツドリンクを少し飲んで言葉を待つ。
「ありがとうな、受け止めてくれて、助かったよ」
そういうとクモスケはコクコク頷いた。




