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第47話 魔法と妖術

 魔法の試し打ちをして、少し疲れてきた信吾はクモスケ達のところに戻って来た。


「ひゃー、疲れたけどやっぱり二つ以上の同時行使はいいね」

 三姉妹は雷の魔法からずっと口を開けたまま固まっていた。

「信吾強い!凄い!」

 驚いて語彙力がない言い方になってしまったクモスケが感想を言う。


「ありがとな」

 クモスケの頭をポンポンしながら言う。

「神様からお墨付きもらったんだ、魔法の才能があるってね。だから今後は魔法の訓練を中心にやっていこうと思ってる。もちろん近接戦の練習もバランスよくやっていくけどね、一緒に強くなろうな、クモスケ」

 クモスケはコクコクと頷いている。


「あ、あの信吾様、今のは、いや、何て言うか凄いですね。私達も何かお手伝いが出来るんではないかと思ってついてきましたが、全然お役に立てそうにありません」

 雪女が言う


「何かお手伝いって?何か出来るってこと?魔法?」

「妖術ですかね、妖気を使ってこんなことが出来る程度ですが」


 雪女は吹雪を起こし氷の刃を放つ

「おっ!凄いじゃないか!周囲の温度が一気に下がったな。めっちゃさぶいよ~」

 周囲の温度は一気にマイナス5度まで下がっていた。


「山さんと海さんも何か出来るってこと?」

「えっ?や、山さんって、、、はい、一応は」

「えっ?う、海さんって、、、なんかいいですね」

 信吾が何気なく言った、名前の呼び方に山女と海女はそれぞれ答えた。

「オッケーじゃ、三姉妹で俺に攻撃してきて、割と本気でも大丈夫だと思うから」



一瞬躊躇ったが、三姉妹が目を合わせて頷いた。

「分かりました、お手伝いが少しでも出来るのであれば、来た意味がありますからね」

 信吾は意識を集中させて五感の内の視覚に魔力を通してみる。すると視界が一気に明るく見えた。

 前々から信吾がやってみたかった事の一つだった、そしてやってみたら出来たといった感じだ。身体強化の応用みたいなものだ。


 軽く身体を解すように暖める。


「よっしゃ、こーい!」

 少し離れて開始の合図をする。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと大地が大きく揺れる、しかも信吾の周囲、半径10メートル程しか揺れていない。信吾はバランスを崩し体制が整わない。

 山さんの能力かっ!と思っているとそこへ氷の刃が襲ってくる。

「くっ!」

 バランスを崩しながらも何とか初撃をを回避した信吾は、立つのを諦めて膝をつき、片手をついて、次々と襲ってくる氷の刃をファイアーボールで迎撃する。その隙をついて信吾は土の弾丸を飛ばす。当たればいいので威力はさほどない。

 しかし海女の能力の水の壁が土の弾丸を飲み込む。

「なっ!ウォーターウォールってやつか?」

 魔法ではなく妖術だ。海女特有の能力で水をどんな形にでも変えて、しかもコントロール可能だ。


 信吾はやり方を一新する。

 飛行で地面の揺れを回避して、体制を整える。そして周囲の温度を火魔法で上げていく、どんどん上げて約40度位に強制的に上げていく。雪女の氷の刃は鋭さがなくなり当たっても水をかけられた程度。

「後は海さんだけか」

 ボソッと呟いたと同時に水の壁が人の形になって襲ってくる。水のゴーレムとでも言おうか、その右手を横から張り手してくる。ビンタのような軌道に思わず信吾は防御する。

 ビターンという音が辺りに響く。そう、飛び込みをして腹打ちしたような音だ。

 ビターンビターンビターンと何度も防御しながら考える。

(火で蒸発させる手もあるが、水蒸気爆発が起こっても厄介だ、となるとこれかな?)

 ビターンビターンビターンとまだ続いているビンタに思わず信吾は、何か恨みでもあるのか?などと思ってしまう。


 周りの温度を変えないように徐々に水のゴーレムを凍らせていく。まずは足の方から徐々に。

 異変に気付いた海女は少し距離を取ろうと下がらせようとするが動かない。

 水のゴーレムはビンタを止めて信吾に抱きつく。

「ゴボゴボッ」

 窒息作戦に出た。このままだと一緒に凍ってしまうと思った信吾は少し焦ったが、もう水のゴーレムは移動が出来なくなっているので、すんなり信吾の方から距離を取った。そしてなす術がなくなった三姉妹は全ての妖術を解いた。

 三姉妹との模擬戦は終了した。


「さすがです!信吾様!私達三姉妹の妖術をいとも簡単に対処する手腕はさすがとしかいいようがありません」


「なんかいつもより妖術の威力が上がってると思ったんだけど、これって御神木の聖気のお陰かも」


「私も思った!けどそれも信吾様には通用しなかったのよね、、もっと頑張らなくては駄目ね」


 雪女、海女、山女の順に感想を述べていく。

 クモスケが何故かドヤ顔をしている

「いやぁ、最初から驚かせてくれたよ、途中からやり方を変えたけど、、まぁなかなか面白かったよ」


「信吾は強いよ、僕の方が信吾は強いって言うけど多分僕は勝てないよ、勝つ方法が思い浮かばないって言うか何て言うか」

 クモスケが珍しく長文を喋った。

「そうだなぁ、、でもまだまだクモスケの方が強いと思うよ、クモスケはただ勝ち方が分からないってだけでしょ?負けはしないと思うよ」


  ***

 実際まだまだクモスケの方が強いところはある。

 信吾の動きは目でとらえられてはいるし、スピードもクモスケが上だ、そしてクモスケの防御は完璧に近いところなので防戦一方になればジリ貧を狙える。だが攻撃に関しては、いろんなからめ手を使えばいけないこともないが、そこが思い付かない部分でもある。クモスケの唯一の弱点と言ってもいいだろう。

  ***


「山さんってさ、地面を揺らす以外に海さんみたいにゴーレムとか作れないかな?」

「あっ、はい、残念ながら作れません」

「そっか、出来たら土のゴーレムとも戦いたかったけど、仕方ないね、。あーいや、でもさ、せっかく海さんが水のゴーレムなんだから砂とか混ぜれば土のゴーレムが出来てもっと強くなるんじゃない?」

 信吾が下を向いて砂浜の砂を見ながら言う。


「例えばさ、地面を揺らすのをもっと細かく細かく振動させて、砂を動かしてまとめる感じで。で、いっぱいまとまったら今度は海さんがなんかする、みたいな感じで?ごめん、なんかするじゃ意味不明だよね、ゴメンゴメン忘れて」


 しばらく五人で雑談をした。

 クモスケと三姉妹は少しずつ仲良くなっているようでなによりだ。


 そして大分夜も更けて時間はすでに22時を回っている。


「そろそろ帰ろうか、またしばらくはここで特訓するのもいいかもね」

 信吾が言う。

 実はこの周辺の海にも強い個体はいたが、最初の信吾の魔法ですっかり気配が消えていたのだ。


 空間転移のゲートを開きプレハブ小屋の前まで戻る。

 その場で解散をして、それぞれが戻っていく。


 お風呂に入りたいところだが何気に信吾は魔力枯渇寸前だったのだ。まぁ、それはそうだ、あれだけ魔法を行使したのだ。しかもかなりの上級魔法を連発したのだ、疲れない方がおかしい。

 その為信吾はベッドにダイブしてすぐに意識を手放した。

 クモスケもハンモックで信吾が寝たのを確認して眠りについた。

 そして回復した時にまた信吾の魔力は飛躍的に上がるのだった。


 夜が明ける。

 エルフ達が起き出してくる時間帯。

 少ししてフォルガイムも起きてくる。エルフ達みんなと挨拶を交わしマンマゴルと少し雑談をする。

 マンマゴルとはもう仲良くなり一緒に漫画の話で盛り上がったりしている。


 更に数分が経ち信吾とクモスケが起きてくる。

「おはよう」

 信吾が伸びをしながら挨拶をするとみんな一斉に挨拶をしてきた。

 エルフ達、妖怪達とみんなそろっている

 軽く雑談をしながら朝食を取る。


「よし、行こうかフォルガイム」

「えっ?どこにですか?」

「江ノ島」

「な、なにしに?」

「お風呂入りに」

「行きましょう」

「その後トレーニングな」

「分かりました」

 信吾とフォルガイムの会話を聞いていたクモスケは

「僕も行くよ」

 クモスケの名前が出なかったのが心配になったクモスケは思わず声を出した。

「あぁ、もちろんだ、でもその後のトレーニングは少し様子見だな、、その、お腹のさ、、」

 信吾は蜘蛛の産卵は確か二週間位だったと記憶していた。少し自信がなかったのもあり早めの安静を試みた。

「あ、うん、大丈夫だと思うけど、信吾の言う通りにする」

 クモスケが信吾の言葉を聞いて嬉しそうに答えた。

「あー、あと雪さんも来れるかな?農作業が忙しかったらいいんだけどさ」

「えっ!?私ですか?大丈夫です!行きます!」

声がかかり一瞬ビックリした雪女は姿勢を整えて嬉しそうに答えた。

「あの、私もー」

「私も大丈夫ですよ?」

山女と海女が同時に言う

「あーいや、雪さんだけで、、、」

「それは駄目ですよ私達三姉妹は三人で一人ですから」

三人で一人?ちょっとなにいってるか分からないな?と思いつつ

「んーーーーしょうがない、じゃ六人で行きますか」

そういって空間転移のゲートを開けた。


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