第44話 信吾のお悩み相談
「ありがとうございました。それでは失礼します」
そういって踵を返して退室しようとする信吾
「ちょちょちょちょっと待つのじゃ、待つのじゃぁー信吾分かったこれをこれを授けようだからだから落ち着くのじゃじゃ」
「いや、アマテラス様が落ち着いてください、じゃじゃってなんですか」
差し出された短剣を受けとる。
「これは?」
「これはじゃな、悪魔を消滅させることのできる短剣じゃぞ。凄いのじゃぞ」
「はぁー、分かりました。それで相談って何でしょうか?」
観念したように言いながら空間収納に短剣を入れる。
「そうじゃな、まぁ座って茶でも」
信吾が頷いて校長室にあるようなソファーに座ると、お茶がお菓子と同時に空間から出現した。
お互いに一口すする。
「実はじゃな、ある部署だけが忙し過ぎて休憩も休みもとれんのじゃ、そんな中無理矢理にでも休憩をとる者や、取れない者、しかし上司は休憩を取れと言う、、これの繰り返しらしくてのぅ、現場が何といおうか、、その」
「はぁー、なるほど分かりました。それで今は皆さんがピリピリしてて仲が悪くなる一方で、どんどん派閥も出来て効率も悪くなり、スムーズにまわらないと、言ったところですかね」
「そ、そうなのじゃよ、その通りじゃさすがじゃな」
信吾は顎に手を当てて少し思案する。
「そうですね、まずその休憩を取れていない方に事情を聞けませんかね?」
「あぁ、よいぞ、ではそこの扉を開けばもう現場に出る、そなたは自由にしてもよいぞ」
アマテラスが指をさした方に扉が現れる。
お菓子を一つつまみ、お茶を一口すすり一息つく。
「よしっ!行って参ります」
内心は面倒臭いが、仕方なく気合いをいれる。
そして
ガチャっと扉を開けた信吾が
「あぁ、そうです、アラクネ様の罰ってなんとかなりませんか?私たちを助けて頂いたのに罰を受けるって言うのはどうも、、アレなんで」
開けたまま振り返り、ダメ元で言ってみた。
「あぁ、よいぞ、どうせ形だけの罰じゃ、そなたの名前を出して納得させればなんとかなるじゃろう。どうも罰を受けさせないと納得しない者達がおるのでの」
確かに悪いことをしたにも関わらず罰を受けないと色々と不都合が出てしまう。そしてそれを許せなくて、何かしら言ってくる。といった輩がどこにでもいるようだ。
「宜しくお願いします。では、行ってまいります」
そういって信吾は扉の中に入って行った。
広いフロアの事務所の様だ。あわただしく動いている室内。その一角に一際忙しそうにしている人が見える。
「すみません、ちょっと失礼します」
「えっ?あ、あなたは?」
「はい、アマテラス様から相談を受けている信吾と申します」
「あ、はい、私はニコラ・テスラと申します」
「!!つっ!は、初めまして」
信吾は内心相当に焦った。かなり焦った。しかし平静を装った。
「あの、休憩を取りたくても取れなくてと聞きました、更に上司の方は休憩を取れとおっしゃっているとか」
「そうなんですよ!この忙しいのに休憩を取ってるヤツもいれば、取れるわけもないのに上司は『自分で休憩の時間を作らなきゃ駄目だ』と」
「なるほど、休憩を取っている方は自分で時間を作っているということでしょうか?」
「いや、違います。皆一生懸命無い時間をフルに使い仕事をしているのに、そいつだけ休憩をしているんですよ、だからそいつのせいで皆が時間を作れないんですよ、今ギリギリ回っているかどうか、といった感じです」
「分かりました、その休憩を取っている方は今どちらに?」
「あぁ、あちらです、あのアルベルトです」
ニコラ・テスラが指をさした方を見る
「!!っつ!くっ!」
アインシュタインだ、さすがに驚いて目がチカチカする。
「分かりました、ありがとうございました」
そういってアインシュタインのところに行く信吾は何気に緊張していた。
***
ニコラ・テスラもアインシュタインも超有名な天才だ。アインシュタインは相対性理論、ニコラ・テスラはフリーエネルギーの開発等、とんでもない超天才だ。二人ともアカシックレコードにアクセスしていたんじゃないかと都市伝説が生まれる位だ。
ニコラ・テスラのフリーエネルギーについては特に言及はしないが、アインシュタインの逸話を述べるとしたら死後の脳の事だろうか。天才すぎて脳を研究しようと、いくつかに分けて保存してあると発表されている。
***
信吾はアインシュタインに声を掛ける
「こんにちは、私はアマテラス様から相談を受けている信吾と申します」
「あぁ、私はアルベルト・アインシュタイン」
こちらを見定めるかの様な目で見られた信吾は
「休憩の件でお話を聞きたいと思いまして」
「なるほどね、そりゃ休憩するでしょ?疲れるからね」
「でもそれだと仕事が回らないらしいですよ?」
「それは知らないな、上司が休憩取れって言うんだから上司が何とかするべきだな、それに皆も休憩取ればいいじゃん?」
「だから、それだと、、、まぁ、分かりました」
信吾は考える。考えれば考えるほどニコラ・テスラが言ってる事はブラック企業のそれだ。これは業が深い事極まりない。
「一つ聞いてもいいですか?」
アインシュタインは頷く
「派閥が出来ていると言うことなのですが、アインシュタイン様の派閥とニコラ・テスラ様の派閥でよろしいですか?もっと言うと、休憩を取る派と、取らない派に分かれていると」
アインシュタインは頷く。
信吾は続ける
「しかし休憩を取っているのはアインシュタイン様のみで他の皆さんは休憩を取りたくても取れないと言った状況。さらにニコラ・テスラ様の派閥は取らないで頑張るということですね。
見た限りだと少しアインシュタイン様の方が劣勢ですね。
原因は、、やはり声なんですよね。皆がやってる、皆が言っている、となるとやはり他の皆もそれに押されてどんどんと拡大していくんです。そして徐々に『なんであいつだけ』とか、『ズルい』といった感情が生まれます。そして少数派が負ける構図になってしまいます。
例えそれが正しかったとしても、、、結果的に強迫観念のようにやりたくないことまでしなければならないといったことになり、効率も落ちて悪循環。モチベーションも上がらないわけですね」
アインシュタインが目を見開いて
「おおう、さすがだな!その通りだよ!よく分かってるなお前は。だがな、俺が何を言おうとなんにも変わりゃしねぇ、いくら正論ぶつけても全く直る気配すらねぇ」
信吾はニヤッと笑みをこぼした
「アインシュタイン様、解決方法をご存知ですね?」
「あぁ?ん~そうだな多分な」
信吾は「いくら正論ぶつけても全く直る気配すらねぇ」と言った言葉に違和感を感じた。自信を持って言っているが、上司が聞いてくれないと、であれば聞いたらどうなるか、要はアインシュタイン様の言う通りにさせたら劇的に上手く行くのではないかと。
「アインシュタイン様の考えを聞かせて頂いても?」
「ははっ!おもしれぇ、分かった。よーく聞いとけよ」
そういって前置きをしてアインシュタインは喋り出す
「一番手っ取り早いのは、俺が上司の立場になる事だな、だが、対価が安すぎるし何よりやる気が起きねぇ」
信吾は黙って続きを待つ
「まぁ、いくつかあるが、そうだなぁ、まずは人員を増やすことか?これも手っ取り早いが入れすぎると今度は利益が出なくなる。となると現状で何とかしようとすると答えは一つ、無駄を省く事だな。
何気に無駄が多いんだよこの部署って、皆も無駄に動いてるから時間が掛かるし、やっぱり無駄なんだよ」
「はい、ではどこら辺が無駄なのか詳細をお願いします」
信吾が聞くとアインシュタインが答える
「この資料を見てくれ、ここだ、この部分の業者がいつも来るのが遅いんだよな、しかも遅いからって、やらなくていいのにも関わらず、遅れるからってうちのもんが手を出しやがる。さらにこっちの業者もだ。それに関してはうちは一切手を出さなくてもいいんだよ。そういう契約だから。わかるか?」
信吾が頷く
「だからこの業者を何とかすりゃいい。早く来させるなり、切るなりな」
「ですが、向こうの事情もあるのでは?アインシュタイン様が言っても何も変わらなかったと言う結果が出ていますよね?」
「まぁな、でもこれがなければもっと上手く行くはずなんだよ」
「となると、上司の方が尻込みして上手く言えないとか、言いなりのイエスマンになってしまっている可能性がありますね。逆に上手く言いくるめられるとか?かな?」
「かもしれねぇな、上司は真面目すぎるって言うかお人好しみたいなところもある。だけどどこか抜けててな、決して仕事が出来るって訳でもねぇ。
連絡事項は忘れるわ、逆に現場の状況を全て把握していると言われれば、どうかと思うし。だから言いくるめられて上司の役を押し付けられて空回りしてるのかもな」
「素晴らしいですね。そこまで分かってらっしゃるとは、アインシュタイン様がやれば万事解決するのが目に見えますよ。なんとも勿体ない」
「おだてんなよ、俺には向いてねぇ仕事だよ。やっぱりマイペースに自分の出来る事を出来る範囲でこなすのが一番俺には合ってるからな」
信吾はその言葉にシビレた。
「分かりました。ありがとうございました、、、あ、あの握手してもらってもいいですか?」
アインシュタインは笑いながら手を差し出してきた。
「お前も大変だろうけど、頑張れよっ」
アインシュタインの一言に信吾は年甲斐もなく感動してしまった。




