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第39話 餅つき

 夜が明けて朝になり、フォルガイムは起き出した。

 プレハブ小屋を出て辺りを見渡すとエルフ達が木の実を食べながら談笑している。

 昨日研いでおいた餅米を蒸すための準備をする。

 餅つきをするための準備をしていくフォルガイムだが、一向に起きてこない信吾を少し心配になったフォルガイムは、信吾達が寝ているプレハブ小屋をノックした。


「信吾さん?クモスケさん?朝ですよー」

 中からゴソゴソ音がする。しばらくして「ガチャッ」と音がして信吾が顔を出す。

「あーーおはよう、今起きた。わりぃ、ちょっと待ってくれすぐに行くから」

 また中に引っ込んでバタバタと音がする。


 身支度を済ませて髭を剃った信吾。不意にクモスケが言う。

「信吾、新しい靴ってない?カラスとの戦いで踵の所と足首の所がボロボロになっちゃって」

 悠長に話す以外、いつも通りのクモスケが言った。変に昨夜の事は意識はしていなさそうだ。


「わかった、そうだな今度はこのモコモコのブーツなんてどうだ?あとスカートはこれで、それと約束のスカーフ、一応前回のと全く同じ素材に全く同じ特殊効果付与が施してあるからな」

 そう言ってクモスケにスカーフを巻いてあげる。


 昨日フワフワと浮きながら思考の渦に飲まれている時に、思考放棄した時の合間にチャチャッと作っていたのだ。


「あ、ありがとう。凄く嬉しいよ」

 ニコニコしながらクモスケが言った。

 凄く喜んでいる。よっぽどスカーフが気に入ったのか大事に指先で触れている。


「さて、今日は餅つきだ、楽しもう」


 外に出た二人は既に用意されている餅つきセットの近くまで行くと、フォルガイムが言う。

「今蒸してるんであと30分位ですかね、それまでにお餅につけて食べる物を用意しましょう」


「オッケーじゃ、お餅用の蜜と、きな粉、他には大根と醤油位かな?」

 信吾が言いながら次々と空間収納から出していく

「大根は、このおろし金を使ってみんなでおろしまくるぞ」

 信吾はおろし金3つと大根を15本取り出した。

 三人でスタートしたが、三人共とんでもないスピードでおろしまくっている。

 あっと言うまに大きめのボールが一杯になった時にエルフ達がやって来た。


「おはよう、信吾」

「おはよう、マンマゴル」

 エルフ達と信吾達がそれぞれ挨拶をして、マンマゴルが信吾に聞いた。

「これは何をしているんだい?」

 餅つきセットを見ながら聞いたマンマゴルに信吾は答える

「餅つきって言って、餅米をつくんだけど、、、年が明けてお正月に食べる物なんだけど、、、マンマゴル達もどうだ?よかったらこんなのもあるぞ」


 説明をはしょった信吾は、リンゴ、ミカン、ブドウ、梨などフルーツ各種を取り出した。

「おおっ!豪華だな信吾!頂いても?」

「あぁ、勿論だお正月だしな、みんなで食べよう」

 そうこうしている内にフォルガイムが

「そろそろお餅つけますよ」

 フォルガイムの声に信吾が反応して、水に付けてあった臼と杵を持ってきて準備をする。


「さて、じゃ早速俺からつかせて貰うけど、相方はフォルガイムな」

「いいですけど、真面目にやって下さいよ?変にボケとか必要ないですからね?」

「おい、それはフリか?フリなのか?」

「違いますよっ!さ、やりますよ」


 ペッタンペッタン、ペッタンペッタン、ペッタンペッタン、ペッタンペッタン

 リズミカルに餅をついていく信吾、さすがに日本人として食べ物で遊ぶ事をよしとしない親に育てられた為に、真面目に餅をついている。

 段々ペースが上がって尋常じゃないスピードでついている信吾、それについていくフォルガイム、どちらもまだまだ余裕だ。

 それを見ていたクモスケがやりたそうに見ている。


「クモスケもやるか?」

 信吾が聞くとクモスケは嬉しそうに頷いた。

 信吾はなんか嫌な予感がした。

「お、おい、クモスケちゃん、あんまり力入れすぎると壊れちゃうから優しくでいいぞ、軽くな、軽~く」

「わかった」

 クモスケがニコニコしながら臼を持つ

 フォルガイムが新しい餅米を入れていい感じに水と混ぜ合わせている。この時点で大分出来上がっていて、食べる分も十分ある。


「じゃ、自分がいいですよって、言ったらついてくださいね、クモスケさん、見ていたから分かってはいると思いますけど、リズミカルにですよ」

 そう言ってクモスケを見るとニコニコしながら頷いた。

「いいですよ」


 フォルガイムとクモスケの餅つきが始まった。

 最初はゆっくりと始まり、二人の連携でペッタンペッタン、ペッタンペッタン、ペッタンペッタンと上手くついている。徐々にペースが上がっていき、ペッタンペッタン、ペッタンペッタン、ペッタ、ペッタ、ペッタ、ペッペッペッペッ、ペペペペペペペペペペペペペペペペペペペペ。最早人間技ではない、人間には視認できない、音もなんだかブンッッと言う音しか聞こえてこない。

「ストップストップストップー」

 信吾が言うとピタッと止まって信吾を見る二人。

「もういいでしょ、そろそろ食べようよ」


 何事も無かったように二人は餅を用意して座る。信吾も用意をして、お正月にお餅を食べる理由も含めて挨拶をする。

「では、このお餅を食べて、歯を強くして、長寿や健康を願いましょう、いただきます」

『いただきます』

 みんな一斉に食べ出す。

 エルフ達に長寿や健康を願いましょうと言うのはいささか微妙だが、気にせずにフルーツを食べるエルフ達。信吾達もお餅や、大量にあるフルーツを食べながら談笑する。


 しばらくしてエルフ達に信吾が質問する

「サリオン、いくつか聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「いいですよ、何でも聞いてください」

 そう答えたサリオンは信吾の顔を見る


「まずは、俺の魔法の事なんだけど、やっぱり二つ以上の行使って難しいかな?」

「そうですね、人間の限界はやはり二つまでと聞いていますが、、ただ大昔に二つ以上使っていた人間がいたとは聞いたことがあります。私がまだ小さい頃でしたが、、、」

「うん、やっぱり例外はいたか、、その方法がわからないと、、オッケーわかった」

 何かに納得した信吾は頷いた後に、続けて聞く


「次に悪魔達なんだけどあいつ等って何しにこの世界に来たわけ?理由なんかわかる?」

「い、いや、ちょっとわからないな、マンマゴルどうだ?」

 気まずそうにマンマゴルに振ったサリオン。

「そうだな、、詳しくはわからないが、悪魔の王が何かを企んでいるとしか、、、」

 言葉を噤んだマンマゴルに信吾が言う


「歯切れが悪いな、、そこまでが限界か、そうだなじゃあ、聞くけどその悪魔の王ってのはルシファーってヤツじゃないのか?」

 マンマゴルが目を見開き

「な、何故それを?」

「いや、何となくな、リヴァイアサンとかベヒモスなんて強いヤツを従えているなんてルシファーしか考えられなくてね、他にも従えている強敵もいるだろう、、、まぁ、これ以上はこの話は聞かないよ」


 ホッとしているマンマゴルを横目に信吾は続けようとしたら、フォルガイムが口を開いた

「その話なら少し知ってますよ、確かレヴィアタンが通信かなんかで言ってました、多分敬語だったからルシファーだと思うんですけど、計画は順調に進んでいると言ってました。最初自分の事かと思ってましたけど多分違いますね、ベヒモスの事かと、、その直後に西に行くと言っていたので」


 信吾が顎に手を当てながら言う

「西って何処とかって分からないんだよな、、、う~ん、昨日俺が雄也だった時に住んでいた場所聞いたのと繋がっているとは思うんだけど、、雄也がデカイ虫に襲われたまではいいとしよう、でも何故そこにベヒモスがいた?偶然か?って思うと無理があるんだよな、で、雄也の住所を聞いたらピンときたんだよ」

 少し間をおいてフォルガイムを見ると首を傾げている。

 続けて信吾が言う


「結界って知ってるか?」


 フォルガイムが首を振る。エルフ達も初耳と言った感じだ。クモスケはじっと信吾を見ている。


「日本には皇居を中心に五芒星の結界が2重に張られているんだ。高い建物を建てて高い建物同士を直線で結ぶと五芒星になるんだ。その結界を結ぶ一つの高い建物が雄也の住んでいた近くにあるはずなんだよ、で、もう一つ気になっていたのが目白にある不動明王像だ、これも悪しき物から護るために、東京の各所に設置されているはず、そう、目黒にもあるはずだ、それを今日午後にでも確認しに行こうかと思ってるんだ」

 驚きながらフォルガイムが言う

「マジっすか!そんな都市伝説的な話し現代人は誰も信じないんじゃないですかね?まぁ確かに不動明王像は近くにありましたね、よく手を合わせてましたけど、、ちなみになんですけど、その結界が壊れるとどうなちゃっうんですか?とても嫌な予感がするんですけど?」

 その質問に信吾はニヤリと口端を上げて答える

「そうだな、結界事態は明治時代に張られたものだと認識しているんだけど、それを張ったのが陰陽師だ。張った後は衰退していったんだけど、その理由は今は省くよ、で、フォルガイムの質問の答えなんだけど結界が無くなると封印されていた妖怪が出てくるって言われているらしい」

 一同絶句している。

「ま、都市伝説界隈では有名な話だけど、あくまでも都市伝説だ、それを確かめないと話が進まないからな」

 絶句している一同をみながらまだ信吾は続ける


「もう一つ、異世界人の事なんだけど、どうだ?順調か?」

 信吾はマンマゴルを見て聞いた

「あ、あぁ順調だぞ、徐々に人間や魔族、獣人をはじめとした生物達、モンスター含めて、更にダンジョンやお城等の建物も転移中だ」

「なるほどなるほど、順調か、、なんか嫌な予感がするんだよね、、、まぁいっか、ちなみになんだけど、計画書を立てたのは俺なんだけどさ、その内容を確認したのも俺なんだけどさ、その作業って誰がやってるの?自然の環境以外の街なんかを地中に埋めて、更地にして、更に転移までやってる人?なのかわかんないけど、誰なのかな?」

 ギクッといった感じで固まったエルフ達。


 沈黙が流れる。

「オッケー分かった、なら直接聞きに行くよ」

「えっ?だ、誰に?」

 マンマゴルが言うと信吾は答える

「神様」

「や、やはり気付いていたのか、あの空間の事を」

「まぁね、マンマゴルが明らかに狼狽えてるんだもん、そりゃあね、、」


 マンマゴルと初めて会った時に空間の能力を説明した時にイロトリドリの世界に入ってしまい吸い込まれそうになったことを話した事がある。それを思い出してさらに気まずそうにするマンマゴル。


「で、嫌な予感がするからさ、一応ここの場所も用意できるかな?この大陸」

 そう言って空間収納から世界地図を取り出して指を指す。オーストラリアだ。西の大陸は一応ベヒモスを警戒して候補から外す。


「わ、わかった言っておく」

 マンマゴルが言うと信吾は

「爪が甘いよマンマゴル、今自白したようなもんだよ?言っておく、って絶対第三者が関わってるじゃん、、まぁ別に誘導尋問した訳じゃなくて、本気でやって欲しいんだ。頼むよ」

 マンマゴルは下を向いて気まずそうにしている。

 代わりにサリオンが答える

「わかりました。なるべく早急に手配して、早急に終わらせます」

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