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第38話 クモスケの感情

 水族園を出た三人はしばらく車を走らせて目的地の空港を目指す。


「あとちょっとで着きそうだぞ」

 信吾が言うとクモスケとフォルガイムはキョロキョロと窓の外を見る。


 そして数分後

「到着ぅー」


 信吾が車を止めて外に出た。

「あれ?そっちですか?」

 入り口から遠ざかっていく信吾を見てフォルガイムが訪ねる。

「んん、入り口から入ってもいいんだけど、何となく直接滑走路に行きたいと思って、飛び越えようかと」

 言いながらスタスタと歩いていき、高くジャンプした。続いてクモスケもジャンプ。

「待ってくださいぃー」

 いきなりの奇行に驚いていたフォルガイムが慌ててジャンプして飛び越えた。


 滑走路に出た信吾達は、早速凧上げをするべく空間収納から凧を出して準備する。

「えっ?これ全部ですか?ざっと見て100はあるんじゃないですか?」

 フォルガイムが驚いて信吾に聞く

「そうだな、これ全部飛ばすぞ、だから広い場所にしたんだよ、気配を探ってみても何にもいないし、まぁさすがにこんな広くて獲物がいないようなところに好きこのんで拠点にしないよな?」


「なるほど、だから水族園に強い個体がいたんですね、魚を獲物にできるから」


「そういうこと、さっ、どんどん上げるよ」

 そういって三人で凧を上げ始める。

 最初はクモスケにやり方を教えながらだったが、すぐに慣れて上手く飛ばせるようになった。

 クモスケも楽しそうだ。


 上げたら凧糸を地面に固定する。それを繰り返して100ある凧を全て飛ばし終わった。


「おおおおぉー壮大だな」

 凧を見上げながらスマホを取り出して写真を取る

「えっ?信吾さんスマホ?バッテリーはあるんですか?」

「ああ、モバイルバッテリー?充電出来るやついっぱいあるぞ?」

 そういって空間収納から取り出して渡す

「いや、もらっても、スマホ家に置いてきちゃったし」

 そういってモバイルバッテリーを返す。


 信吾が片眉を上げる

「フォルガイム、雄也だった時何処に住んでた?」


「えっ?目白です、、池袋駅近いですよ」

 信吾の問いかけにフォルガイムが答えると、何やら考え込んでいる信吾。

「ま、いいか、今は遊ぶぞ!お正月だしね。よし、フォルガイム、この大きめの凧持ってて、そうそう前で持って」

 信吾はフォルガイムが半分以上隠れるぐらいの凧を持たせて重力魔法を行使する、無重力だ。

「うわっ!ちょっと信吾さん?体が浮いたんですけど?」

「ああ、今無重力の魔法をかけた。しっかりつかまってろよ、飛ばされたら助けられないからな」

 そういって凧糸を持って走り出した。グングンとフォルガイムが持った凧が上がっていく。

「ちょっとちょっとちょっとぉぉー、、あ、気持ちいい」

 下で凧糸を操っている信吾がフォルガイムに向かって叫ぶ

「おおーい、楽しいかぁー?」

「楽しいですぅぅぅーー」

 と返事が返ってきた。


「あぁ、確かに気持ちいいな」

 フォルガイムが空中遊泳を楽しんでいると、すぐ隣で声がした。

 信吾が飛行で隣まで来て、浮きながら感想を伝えた。

「えっ?凧糸は?誰が持って?」

 すぐに下を見るとクモスケが持っている。

 フォルガイムは嫌な汗が流れる。


「うわぁぁぁぁ!」

 叫び声をあげながら上下左右と力任せに振られる。

 ブチンッ


 凧糸が切れて大騒ぎのフォルガイム。

 信吾は笑いながら空中遊泳を楽しんでいる

 クモスケはピョンピョン跳ねながら楽しんでいる。

 カオスな状況が続いて、日が傾いた。

 楽しい時間はすぐに過ぎていってしまう。


「そろそろ帰ろうか」

 信吾が言う。

 疲れきっているフォルガイムが地面に大の字になっているのを横目に凧を片付ける信吾とクモスケ。

「楽しかったからまた来たいな」

 クモスケと話ながら片付けを終わらせて、

「あとちょっと行きたいところあるんだけど付き合って」

 凧の片付けが終わって空港のお土産屋に行く信吾。

 色々と物色しながら空間収納に入れていく信吾

「お、これなんかいい素材になりそうだな」

 次々と入れていく信吾。収納し終わった信吾は


「よし、じゃ帰るぞー」

 そういって空間転移で御神木の聖域にあるプレハブ小屋に戻ってきた。


 プレハブに戻ってきた三人は、クモスケとの約束で晩御飯は豪華にしようということで、次々と空間収納から食材を取り出した。もちろんカラスもだ。

 カニ、タコ、鳥、肉や野菜も出して調理する。

 ついでに餅米も研いでおく。


 クモスケは人型から蜘蛛の姿に戻って食べている。まだ人型の食べ方が上手くできずに困っていたのだ。信吾が、徐々に教えていくから、ということになったので蜘蛛の姿になったのだ。


 食べているクモスケを見るとお腹が大きくなっているのがわかった。卵が大きくなっているようで順調だ。

 少し信吾はクモスケの事が心配になってきた。

(あまり、連れ歩くのもよくないかな?安静にしてた方がいいだろうな)

 と密かに思っていた。


 食事が終わり辺りは真っ暗になっている。

 土魔法で簡易のお風呂を作り、お湯をはり、三人でゆっくりしてから、

 そろそろ寝ようか、ということでそれぞれが寝床に入っていった。クモスケは信吾と同じプレハブで蜘蛛の姿のまま寝るようだ。

 フォルガイムは別のプレハブで寝る。

 こうして元旦が過ぎていくのだった。


 深夜0時を過ぎて、不意に信吾が起きた。考え事をしていた信吾は、全然まとまらずに少し外の空気を吸おうと外に出た。

  ______


「冬の夜空って綺麗だな、、」

 信吾は無重力で空に浮いていた。周りの木より少し高い位で、月に照らされた御神木が輝いて見える。冬の星座もくっきりと見える。


  ****

 信吾は中学生の時に、やんちゃをして担任教師にこっぴどく叱られた事がある。女性教師だが保健体育専門で体育会系だ。先生には弟がいて、その弟さんはプロ野球選手で当時は有名なピッチャーだった。

 その弟さんと信吾がダブって見える程、同じ様な中学生生活を送っていたらしい。不良と呼ばれている部類で劣等生だ。喧嘩やタバコ、窃盗等、手に終えない状況だったらしい。喧嘩でしょっちゅう鼓膜を破ってきていたらしく相当荒れていた様だ。

 信吾はそこまではいっていないが近いものを感じたらしい。そして担任教師に呼び出され個室でボッコボコにされた挙げ句、泣き出した先生は見事に信吾を更生させた。ちなみに弟さんもいい教師に恵まれて、更生した後にプロ野球に入団したらしい。

 確かにその出来事がなければ信吾は行くところまで行っていた可能性もなきにしもあらずだ。

 そしてその時に一番心に残っている言葉がある

「困ったり悩んだりしたら、空を見てみろ、自分がどんなにちっぽけか、どんなに小さいことで悩んでいるか、空をみれば自ずと分かってくるよ」

 その言葉がしばらく耳から離れなかった。

  ****


「先生、今俺が考えてることってスケールでかすぎるよ」

 ボソッと呟いた。


 悪魔の事、異世界人の事、自分の強さの事、クモスケの事、フォルガイムの事、地球の事、日本の事、神様の事、グルグルグルグルと悩んでは思考放棄の繰り返しで頭がおかしくなってきそうだ。


 ふいに腰の辺りに何かが巻き付いた。見ると蜘蛛の糸っぽい、、先を見ると人型に戻ったクモスケが心配そうにこちらを見ている。

 すぐにクモスケに無重力の魔法をかけて腰の糸で手繰り寄せる。


「起こしちゃったかな?ごめんな」

 信吾が言うと、首を振って答えた

「ううん、信吾がいなくなって心配で来た」


「そっか、、、空見てみな、綺麗だろ?御神木も月明かりに照らされてキラキラしてるよ」

 二人で空中をフワフワと浮きながら、視線を動かして説明する。

「うん、、、」

 クモスケが軽く返事をする。少し沈黙が訪れて再びクモスケが口を開いた。


「信吾、、、僕なんか、わからない事が多いの」

「んん?」

 信吾がクモスケの言っていることを首を傾げながら考える。クモスケが続ける

「今日三人で、出掛けたり、雄也とケンカして怒られたり、戦ったり、遊んだり、食べるの難しかったり、信吾がいなくて恐くなったり、そんな時、、、何かここが動く感じがするの」

 クモスケが胸を押さえながら言う


「ク、クモスケ、喋り方凄く上手くなってないか?」

 信吾が喋り方に気付いて聞いてみる


「カラス補食したからだと思う、その能力かな?」

「な、なるほど、カラスって頭いいからな、で、感情なんかも一気に分かってきたけど、イマイチってところか?うーーん、そうだな、、、」

 少し考えて説明する事にした。


 一つ一つ表情と身振り手振りのジェスチャーを交えて詳しく説明し出した。

「ざっと説明すると、出掛けられて嬉しいって感情、それにケンカするときは怒ってる感情、戦ってるときは高揚感とかかな?、仲間を思って心配って感情かな、そこら辺はクモスケしかわからないと思うけど、あと遊んだりは楽しいって感情、難しい時は上手くいかなくてイライラした感情かな?悩んでる時もあるね、後は俺がいなくて淋しいとか、悲しくなったりする時もあるかな?」


 最後の方は自分で言うと恥ずかしいが、信吾はあえて説明した。


 説明するとクモスケは頷きながら理解しているようだ。少し間をおいてクモスケが口を開いた

「でもね、ちょっと違うの、蜘蛛の姿だった頃も信吾と旅をしてて嬉しいとか、遊んでて楽しいとか、何か貰ったり食べたり、信吾が倒れた時悲しいとか、どっか行っちゃいそうで恐いとか、信吾との旅が終わっちゃうんじゃないかって不安とか淋しさとかは何となく感じてたの、、、」

 クモスケの話を頷きながら真剣に聞いて、焦らずに次の言葉を待つ。数秒沈黙が流れてゆっくりとクモスケが喋りだす。

「この姿になってからかな?、、、信吾の事をを考えると、ここが苦しくなって痛いの、今までとちょっと違う感覚と言うか、、、わからないけど、、でもなんか、気付いたら信吾の声しか聞こえなくなってたり、信吾しか見えなくなってたり、信吾を探してたり、、信吾の匂いとか追ってたり、、、」

 クモスケが言葉に詰まりまた沈黙が流れた。


 簡単に言ってしまえば恋愛感情だ。

 クモスケの行動を見ていれば誰でもわかった事だろう、もちろん信吾も分かっていた、信吾はそれなりに過去は遊んで来た事もあり、鈍感でもなんでもなかった。クモスケの気持ちも察してはいた。

 しかし、どうしたものか悩んでいた部分でもある。

 これは簡単な話しではない、恋愛感情がわからない相手に何て説明したら良いのか、しかも相手は自分本人だ。相談相手に分からずに告白しているようなものだ。

 付き合ったり、結婚などの形式なんて関係が無いだろう、それは人間が決めた形式的な、お互いが納得する手段だからだ。例え付き合おうと言ったところでクモスケには、はてなマークが浮かんで終わりだ。


 信吾はクモスケの言った事を反芻して考える。

 恋愛感情とは難しいものだ。いろんな感情が混ざった感情とでも言おうか、嫉妬、独占欲もそうだが、好きと言う感情は言い換えれば愛おしいく思う心。この人に何かしてあげたいとか、喜ばせたいとかの現れ。

 淋しさ、恐さは信吾と離ればなれになってしまう不安。要はそれを分かりやすく解決出来るのが結婚だが、それ以外で説明する方法と言えば、安心感だろう。


「クモスケ、俺は何処にもいかないし、ずっとクモスケのそばにいる。だから心配しなくても大丈夫、ずっとずっと一緒だ、寝る時も、食べる時も、戦う時も、、、な?だから安心していいよ」

 フワフワ浮きながらクモスケの手を取って言う。

 最後の一言はしっかりと目を見ながら微笑みながら言った。


 クモスケの目から涙が溢れた。

「あ、あれ?なんで泣いてるんだろ僕、、、」

 慌てて涙を拭いたクモスケは呟くように言う

「ありがとう、信吾、、なんかここが楽になった気がするよ」

 胸を押さえながら言うクモスケに信吾が微笑みながら頭を優しく撫でた。


「ラララララーラ ラーラララ ラ ラ ラ」

 泣き声に近い声で口ずさみ始めたクモスケ

「あ、なんか聞いたことあるような?なんの歌?」

「わけらないけど、急に頭に流れてきた感じ、かな?多分信吾の記憶の一つだと思うけど、、」

 二人で首を傾げて、もう一度二人で口ずさむ

『ラララララーラ ラーラララ ラ ラ ラ、、、』

「あっ!わかった、俺が子供の頃見たアニメ映画の主題歌だ!確か砂漠が舞台になってる」


 そんな会話を30分程していたらクモスケが安心したからか、眠たくなってきたようだ。

「そろそろ寝ようか」

 そういってプレハブ小屋に戻り二人で眠りについた。

 ちなみに信吾はベッド、クモスケは天井のハンモックだ。普通は二人でベッドに寝るところだが、信吾は何も言わなかった。クモスケも自然とハンモックに入っていった。

そして夜が明ける。

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