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第35話 フォルガイム

 鉄仮面は自分は死にました、と言って少し間を起き、信吾とクモスケを見る。信吾は鉄仮面を見て続きを促した。

「どこから話しましょうか、、、そうですね、自分は東京に住んでで、過去に色々ありまして、それから部屋に引きこもってました。いわゆるニートってヤツですね。毎日毎日パソコンの前でゲームやらアニメやらを見てました」

 一息ついた鉄仮面を見て信吾が言う


「そう言えば朝飯まだだよな?一緒に食うか?」

「あ、そうですね、いいんですか?」

 それを聞いた信吾は早速空間収納からサンドイッチやパン、牛乳を出して渡す。

 信吾とクモスケも一緒に食べる。

「食べながらでいいから、少しずつゆっくりでいいから教えてくれ」

 お互いパンを食べながら頷いた。

 するとゆっくり鉄仮面は話し始める


「異変が起きたのは、クチャクチャ、多分10月か11月クチャクチャぐらいだった感じですが、クチャクチャ」

「ちょっと待て、食べながらとは言ったけどそうじゃない、そうじゃないんだ、飲み込んでから喋れ」

 信吾が日本人としては汚ない食べ方を注意すると鉄仮面はしっかりとのみ込んで喋り出した。


「失礼しました。それでですね、ある日ご飯の時間になってもご飯が作ってないんですよ、親もいなくなってて、、しばらく我慢したんですが二日目で外に出ようと決心しました。外に出た途端に大型犬位の大きさのカブトムシに襲われまして、叫びながら逃げていたらベヒモスが現れたんです」


 信吾は片眉を上げて質問する

「ベヒモス?」

「はい、ベヒモスです。急に現れたベヒモスが言ったんです、これはいい実験材料になるって、そしたら空高く浮かび上がったんです、カブトムシと一緒に、で、気付いたらあの赤い部屋に、首里城にいたんです。多分転移か何かだと思いますが、、、」


「なるほどね、そこでベヒモスとレヴィアタンが一緒に研究してたって訳だ」

 信吾が言うと


「そうですね、その後すぐにベヒモスはどこかに行ってしまいましたが、、多分話の流れから西のどこかに行ったのではないかと、中国方面に。自分は恐ろしくて墨の方で小さくなっていました。すると継ぎ接ぎだらけの化け物が出てきて自分を、、、食べたんです、、うっっぷっっ!」


 手を口にあてて深呼吸をする、ゆっくりと。

 信吾は何も言わずに次の言葉を待つ。

 少し落ち着いてまた口を開く


「そこで自分は死にました。それからの記憶はヒト型の虫になった後の記憶です。

 その後もまだレヴィアタンの研究は続き、どんどん継ぎ接ぎされて行きました。

 その内にレヴィアタンが捕まえて来た虫達が数百匹自分の事を慕うようになって来ました。

 その虫達も実験材料にされているのを見て、自分がやめてくださいって言ったんです。そしたらボコボコにされました。そんな日が何日も続いていました。

 そしてある時に妙な気配が近付いてくるとレヴィアタンが言ったのです。少し様子を見た後ベヒモスと連絡を取ったのです、何やら賭けをしているようでしたが、内容まではわからなかったです」


 頷きながら相づちをうっていた信吾が一気に話をした鉄仮面に向かって言う

「なるほどね、それが俺達って訳だ、大体わかったからもう大丈夫、お茶でも飲んで少し休め」

 ペットボトルのお茶を出して渡す。

 ゴクゴクと飲んでいると信吾がまた口を開いた

「それでどこまで記憶が残ってる?俺を瀕死に追い込んだのは記憶にあるのか?」


「いえ、注射器で秘薬を注入したまでしか記憶はないです」

「オーケーわかった、なるほどね。雄也でいいのか?」

 信吾の質問に少し考えて口を開く

「いえ、雄也は死んだんで、、、今の自分は何でもない只の化け物です。これからどうすればいいか、、」

 下を向いて途方に暮れている鉄仮面を見て信吾が言う


「どん底だな、ある意味スタートラインに立ったわけだ、そこからはもう上がっていくだけだから心配無いだろう」


「えっ、いや、でも、どうすれば、、こんな姿になっちゃったし、、自分なんかがみんなと同じようになんて出来っこないよ、家に帰りたい、、、、、何もしたくない、、、、」


 下を向いて卑屈になっていると信吾が少し強い口調で

「ウジウジすんな!そりゃ生きてりゃツいてない事だってあるさ!そこから下に落ちることはもうないんだから登って行け!自分の腕で!カッコ悪くても無様でも、弱音を吐くな!」

 鉄仮面は驚いた様子でこっちを見ている。


「あ、いや、悪いちょっと熱くなりすぎたか、昔自ら死を選んだヤツを思い出してな、、、まぁなんとかなるさ、気負うなよそんなに。俺は今が楽しければいいじゃん、とか、楽しんだもん勝ちっていつも思って自由に行動してるんだよ。まぁ前向きっつーのかな?自分で言うのもアレだけど、、、、だからお前さんを助けに向かったんだ、生きて欲しいから、、でも結局は何も役に立たなかったけどな」

 苦笑いしながら信吾が言う

 鉄仮面はなにやら考え込んでいる様子。信吾が畳み掛ける


「昨日何があろうと、過去に何があろうと楽しんじゃいけないなんて事はない。少しの切っ掛けさえあれば人は何にでもなれるんだよ、只その一歩を踏み出すかどうかが問題なわけで。

 考え方を少し変えれば容易なんだけどな、例えば人生なんてどれだけ自己満足出来るか、とかっていつも思ってるけど、、大事なのは今だよ。今後も辛いことや悲しいことがあるかもしれないけど、それが無かったら幸せを幸せとは思えないんだよ、そんな幸せを幸せと思う心すら手に入らない。だから今、今なんだよ。諦めて死ぬよりも、生きるために命をかけた方が、、」

 信吾が言葉を切った。

 すると鉄仮面ポツリポツリと喋り出す


「すごいな信吾さんは、とても真似できるような人じゃないけど、、、信吾さんみたいになりたい、、、自分もなれるのかな?」

 言いながら信吾を見た。


「これは受け売りなんだけどな、、お先真っ暗ってのは凄い前向きな言葉なんだ、暗い中を手探りで探していって、その中に誰も見たことがない、もしかしたら面白いくて楽しい素晴らしい場所があるかもしれないんだよ?しかもそれは誰にでも平等にそこに行く権利があるんだよ。わかるか?苦しくても前に進むんだ、わからなくなったら仲間に頼ればいいじゃないか」

 肩をポンっと叩いてやる


 肩を震わせている鉄仮面は涙こそ流せないが泣いているようだった。


 しばらく黙って踏ん切りがつくのを待っている

 数分の後に顔を上げて

「信吾さんに着いていきます!こ、これからお願いします!」

 信吾の話をじっと真剣に聞いていたクモスケが言う

「やだ」

『えっ?』

 信吾と鉄仮面がハモった


「こいつ、信吾殴った、僕も殴った、キライ」

 信吾がクモスケに言う

「大丈夫だよ、俺は気にしてないし、それはもう過ぎたことだからさ、今後直していけば大丈夫、こいつもそんなに悪いヤツじゃないからさ、クモスケも見守ってあげてればいいよ」

 信吾が言い終わる前に即答で答える

「わかった」


 前々からクモスケは単純である。

「よし、なら早速外に出よう、お前さんの名前を決めようじゃないか」


 そういって三人で外に出ると、信吾がおもむろに空間収納からバイクを取り出した。400ccのスポーツタイプだ。

「お前さんちょっとこれに股がってみて」

 信吾が言うと鉄仮面は

「信吾さんのその能力とか詳しく聞きたいんですけども、、、」

 言いながら股がると

「ぶわっはっはっはっはっはっはっ苦しぃー」

 信吾が笑い出した。

「えっ?な、何がおかしいんですか?」

「だって完全に仮面ラ○ダーじゃん!ウケるぅ~お前さんの名前は今日から仮面ラ○ダー鉄仮面な、ブフッ」

「そんなのダメに決まってるじゃないですか!」

「ふふふそうか?なかなかいい感じだったんだけどな、まぁ仕方がない、そうだな少しもじるか、、鉄仮面、鉄仮面、、フォルムがカブトムシっぽくて鎧みたいだから、仮面ラ○ダーガ○ム」

「いや、ホント怒られますから止めてくださいよ」

「誰に怒られるんだよ、、そうだなじゃあフォルムが鎧武者っぽいからフォルガイムでどう?これなら大丈夫だろ?」

パッと顔を明るくした様な雰囲気の鉄仮面は言う

「そうですね、強そうな名前ですね、どうでしょう?クモスケさん」

 急に振られたクモスケは

「わからない、僕は、クモスケがいい、お前、雄也でいい」

「えっ!いや、せっかくかっこよくて強そうな名前ですよ?それで行きます!いや、生きます!」

 何やら気合いが入ったようなので鉄仮面改め、フォルガイムに決定した。


 実は信吾は雄也って呼ぶつもりではいたが、仮面ラ○ダーの件をやってみたかっただけだったのだ。


「まぁいいか、気を取り直して朝のトレーニングをしますか」


 そういってみんなで柔軟体操をしてからみっちりとトレーニングするのであった。


  ______

 お昼になり軽く昼食にする。

 食べている合間にフォルガイムが信吾に聞く

「信吾さんの能力とか強さってどうなってるんですか?何でそんなに強いんですか?」

 信吾が質問に答える

「そうだな、それは追々教えていくけど、そんなことより雄也の方が強いぞ?俺よりも。だって一撃でやられたんだぜ?」

「えっ?フォルガイムですよ、自分の名前は」

「お、おう、フォルガイム?フォルガイム君、うん、そうだな、強いぞフォルガイムは」

 ノリで言っていた、何て言えずに戸惑いながら言った。

「そうですかね?注射器打たれる前の記憶だとやっぱり信吾さんとクモスケさんには勝てないと思ったんですけどね?」


「まぁ、この中じゃ今、一番弱いのは俺だな、クモスケとフォルガイム?うん、フォルガイムは同等じゃないかな?クモスケも人の姿を手に入れて飛躍的に強さが増したっぽいからな」

 信吾はどうもフォルガイムの名前が違和感あって抵抗があるようだが、なんとか慣れようと必死になっている。

「そうですかね?あまり実感はないんですけども、、、」

 自信なさげにフォルガイムが言う

「そうだな、じゃ、実践と行こうか、行ってみたい場所があるんだ」

 そういって残りの昼ご飯を平らげる。


 マンマゴルのところに行き、少し出掛けてくる。夕方には戻る。と伝えて歩き出そうとしたらマンマゴルに止められた。


「信吾、信吾、前に信吾に借りてた本なんだけど続きってある?」

「あ~、俺が旅行行く前に貸した漫画ね」

 そう言うと空間収納から続きの巻を出してあげる。


「あ、それと、実はもうそろそろ東の大陸の建物が地中に埋まって、転移可能らしいんだけどどうしようか?」


「おっ!そうなんだ、早いな、、うん、アメリカ大陸か、じゃあこの大陸の西側のこの辺かな?位置的にはここが一番いいかもね」

 信吾は世界地図を出して指差して教える。そこはサンフランシスコとその周辺だ。

「異世界人って全部で3億人ぐらいだっけ?」

「あ、あぁ、確かそうアマテラス様が言っていたのを聞いたことがある」

「ってーことは、ここに一つの国、それとここかな?後は適当でいいんじゃないかな?ちなみにわかってると思うけど北は寒くて南は暑いからね」


 信吾が一つ一つ指差しながら説明する。国を作るための場所を信吾が指差したのはニューヨーク周辺と、メキシコ周辺だ。この二つと先程言ったサンフランシスコの三つの国を中心に後は点々と国をバラけさせれば上手く行くと信吾は言う。


「わかった、ありがとう信吾」

 マンマゴルはお礼を言う

「んじゃ行ってくるよ」

 手を振りながら信吾が言うと

「あ~ごめんもう一つ気になったことがあって」

 信吾がコケた


「なんだよもぅ~」

 言いながら先を促す

「この漫画を見てて思ったんだけど、向こうの星ってこの地球よりもずっと大きいんだ、、だから重力が全然違うと思うんだよ、それによって大きな支障が出てくるかもしれないってね、どうかな?」

 信吾が真剣な顔になって考え込む。

「どのくらい?違いは?」


「正直わからない、でも地球より大きいのは確か」

「うーん、一概にはなんとも言えないんだよなぁ、デカイっていったって質量というか密度の問題だしなぁ、、ちなみにエルフ達は?マンマゴルはこっちに来てどう感じたんだ?」


「私達は特に何も感じてはいないのだが、、」

「ならそれが答えなんじゃないか?心配することは無いだろう」

「そうか、ならいいのだけど、、」

「漫画の読みすぎだよ。じゃなっ!」


 そう言って信吾は手を上げながら後ろを向いて歩き出す。

 それについていくクモスケとフォルガイム。

 フォルガイムが信吾に言う

「さっきの話ってなんですか?アメリカ大陸とか異世界人とかって、どういう話ですか?」

「そうだな、その話もしなきゃだな、オッケェ」


 歩きながら今まであった事、エルフ達の事、能力の事を説明する信吾。なんとなくクモスケとの事はあまり喋らなかった。


「うわぁ~ホントですか!異世界人!凄いワクワクしますね!」

「だろ?だろ?楽しみで仕方ないよ」

「ですよねぇ~」

 二人で仲良く盛り上がってると、クモスケが言う

「雄也、信吾に近付くな、離れろ」

 言いながら信吾とフォルガイムの間に入って来た。

「フォルガイムなんですけど、、、」

「雄也、離れろ、離れろ」

「ちょっとクモスケさん押すの止めてくださいよ、木にぶつかっちゃうじゃないですか!」


「ふふふ、あっはっはっはっははははっ」

 急に笑い出した信吾を見てフォルガイムも連られて笑い出した。

「面白いだろ?生きてりゃ楽しいことが一杯あるんだぞ?もったいねぇと思わないか?ほら、着いたぞあそこにいる、あいつだ」

 指差したのは大きな熊だ、そう、前に信吾に一撃を与えて、醤油で逃げられたあの熊だ。


「うわっ!何ですか?あのデカイ熊は?」

「あいつは前に、俺に大ダメージを与えた事のある、強い強い森の熊さんだ。前よりもまた強くなってるっぽいけど、、そこで作戦があるんだ、まず俺が前に出て相手をする、そしてフォルガイムの名前を叫ぶからお前は飛び上がって右足を前に出す、右手も前に、左手と左足は曲げておく、その形で飛び蹴りを喰らわしてやるんだ!わかったな?」

 信吾は勢いで言って、返事も聞かずに熊に向かって走り出した。

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