第34話 クモスケとの一夜
記憶が急激に頭に入ってきた鉄仮面はその場で意識を手放した後、信吾も疲れていたので休もうと、前に使っていたプレハブ小屋を出してベッドに休もうとした。辺りはすでに真っ暗だ。
「さすがに外に放置はマズいよな?」
信吾はそういうとクモスケが答える
「別に、いいんじゃない?」
一瞬流されそうになったが首を横にふってもう一つプレハブ小屋を出してベッドを設置。
布団に寝かせてあげた。
エルフ達も自分達のねぐらに戻って就寝したようだ。
信吾とクモスケは自分達のプレハブに入りすぐに布団に入った。クモスケは糸でハンモックを作り天井にぶら下げてその上で揺られながら寝るようだ。
「あ、あのー、クモスケちゃん?この背中の足って伸びてきたりするの?刺さったりとかはないよね?」
信吾の真上で仰向けになったクモスケの背中の足、6本全てが垂れ下がっていて、信吾の目の前をブラブラとしていた。
ちょうど網の目の隙間から垂れ下がっていた足を器用に動かして信吾の身体をまさぐった。
信吾はされるがままで、硬直しながらくすぐったいのを我慢した。
そして急に無くなったと思ったらクモスケの顔が網の目の隙間から覗いていた。
クルッと反転して仰向けから俯せに変わったのだ。
クモスケの容姿は黒髪黒目で日本人の見た目をしている。そして信吾に少し似ている所がある、堀が深くてどこかアメリカ人の様な深い目元が特に似ている。
信吾の父親は九州の男でとても濃い顔で、それも受け継いでいる。
「うわっ!怖いよ~ホラーだよ~」
信吾が言うとクモスケが信吾の目をじっと見ながら言った。
「ずっと信吾と、話しがしたかった、そして、言いたいことがある」
信吾がクモスケの目を見て少し首を傾げて次の言葉を待つ。
「ありがとう、、って言うのかな?」
*
クモスケは信吾の記憶が入っては来たが、言葉と生活スタイル、いわゆるルーティン的な事しか理解が出来ていない。
感情などは理解が出来ていない。それは蜘蛛だったからだ。ようするに蜘蛛は生きるために巣を造ったり、獲物を捕えて補食したり、子孫を残すために繁殖したりと、本能で動いていたからだ。そこに感情などは全く無いのだ、、しかし人間の身体を手に入れて徐々に感情を理解しつつ、蜘蛛だった頃に信吾と旅をしたり、遊んだりいろんな事を思い出しながら、自分自身わからないまま感謝を伝えたのだった。
*
それを聞いた信吾は
「こっちこそありがとうな、クモスケがいなかったら確実に死んでたよ、、、改めて、ありがとうな」
じっと信吾を見ているクモスケと視線を交わしながら沈黙が流れる。ちょっと照れて恥ずかしくなっている信吾は照れ隠しに慌てて口を開いた。
「そういえばクモスケって雌だったんだな、わるかったよ、クモスケなんて名前をつけて」
「大丈夫、信吾がつけてくれた名前、わるくない」
「そう言って貰えると助かるよ」
ニコっと笑顔で言ったクモスケと、申し訳なさそうに言う信吾。するといきなりクモスケが
「僕、信吾の子供産みたい、産む」
「僕っ子か、一人称は私とかの方がいいんじゃないのか??、、、ん?ん?ん?え?ええええええええぇぇぇ?」
*
実はクモスケは信吾の血が余った時に、自分の無精卵に血をかけて有精卵に出来ないか試していた。
言ってしまえば無理な話しだ。種ではないから、も、あるがそれ以前にやはりクモスケは蜘蛛で遺伝子事態が違うのだ。人間と蜘蛛では子供は出来ないと言うのは誰でもわかるだろう。しかしそれを可能にした人物がいる。アラクネだ。アラクネが宿っている時に試行錯誤していたクモスケを見てアラクネは少し手助けをしていたのだ。それは人間の間では禁忌とされている遺伝子を弄ってクローンを造る、言わば神の所業だ。クローン故に性格には子供ではないが、信吾の血の繋がったクモスケのクローンと言ったところか、性能的には只の蜘蛛に他ならないが。
一応アラクネは宿っている時に念話で注意事項を伝えていた、それは蜘蛛の姿に戻らないと卵は産めないこと、蜘蛛の姿には自由自在に戻ったり出来る事を伝えていた。最後に「私の子孫のクモスケちゃんだけにサービスだからね」などとどこか恩着せがましく言っていた。
ちなみに性器事態は有るため行為をしようと思えば出来るが子供は出来ない。もちろんそんな行為事態クモスケは知らないうぶっ子だ。
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「えーっと、どう言うことかな?」
困惑しながら信吾がクモスケに聞く
「信吾の血、信吾との卵、お腹にある、産まれる時までお腹で守る」
クモスケが拙いながらも言うと信吾は詳しく聞こうとするが、今一よくわからない。それもそうだ信吾の常識からあまりにもかけ離れていたために理解に及ばない。
「んー、アラクネ、手伝ってくれた、信吾の血で、、、」
一生懸命伝えようとしているクモスケを見てなんとなく察した信吾、とりあえず行為はしていないこと、アラクネがなんらかの方法で自分の血を使ったと、なんとなく理解した。自分の子供が出来たなんて実感が全くわかないが。
「じゃ、そろそろ寝ようか、おやすみ」
「おやすみ」
話しをしていると時間を忘れていて既にもう22時を過ぎている。二人でおやすみを言いながら眠りについた。
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そして次の日、実はお正月、元旦だ。
「おはよう、クモスケ」
「おはよう」
二人で挨拶を交わして身支度をする。
顔を洗って歯を磨き、着替える。
二人で一緒にしていたが、クモスケはまだエプロンのままだ。
「クモスケのちゃんとした服を作らないとな、背中のに穴の空いた服を」
信吾が言うと、クモスケは何で?と首を傾げた。
さすがに裸はマズいと言いかけたが、何で?と聞き返されるのを察知した信吾は言葉を変える。
「いや、そのエプロンって防御力が無いから強いのを作ろうと思ってな、ちょっと時間かかっちゃうけど」
それを聞いたクモスケはエプロンを脱ぎ、葉っぱと蔦を全て外し出した。
「ちょっっ!クモスケ何で脱ぐの?」
そういった直後クモスケの糸がどんどんクモスケに巻き付いていく
「こんな感じで、どう?」
クルッと一回転しながらクモスケが言う、その姿は信吾の簡単な防具を真似た、急所を守るだけの動きやすい格好だ。しかし身体に密着しているためピチピチで、さらに露出が多い。一応小振りな胸は隠れているが形がくっきり現れている。ちなみに糸は白くて、防御力は実はかなり高い。硬質化して作られた糸は柔軟性にも優れていて、防具としては最高品だ。
それをじっくり見た信吾は
「もうちょっとここはここまで、で、ここはここ、
で、そこはこんな感じで、そうそうそう」
どんどん露出を少なくしていく。
「それからこれだ!ニーハイソックスにニーハイブーツ、あとこのスカート履いて、髪の毛は後ろで縛ってポニーテール、あとはこのマントを羽織っておいて」
完全に信吾の趣味だ。
されるがままのクモスケがボソッと言った
「また、信吾が作った、スカーフ、欲しい」
「、、そうだな、また作ってやるよ、あとそのマントも変えたいな、フード付きのローブみたいなの作ってやる、そうすれば完璧かな」
信吾が言うと飛び跳ねて喜んでいる。
準備が整って外に出る。
隣にある鉄仮面が寝ているプレハブ小屋を開けると、ベッドに座って何やら考え込んでいるようだ。
「おはよう」
信吾が声をかけると鉄仮面は振り向いて
「おはよう、、、ございます」
と挨拶を交わした。
「少し話せるか?」
信吾が言うと鉄仮面は頷いた。
「俺の見解と言うか推測なんだけど、お前さん日本人だろ?で、その記憶が甦って来たんだけど、色々ありすぎて困惑してるってとこかな?」
信吾は初めて会った時に「日本語」と言う言葉を聞いたのを思い出して推測を立てた。
「そうですね、自分の名前は二葉 雄也、22歳ですが率直に言うと自分は死にました」




