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第33話 鉄仮面の異変

「と、言うことですが、何か質問はありますか?」

 事のあらましを説明し終えたアラクネがエルフ達に問う。


「大体把握しました。二つ程質問があるのですがよろしいですか?」

 サリオンが言うと、アラクネが頷く。

「まず一つ目ですが、私達の直轄の上司のアマテラス様はこの事をご存知なのでしょうか?」


「いいえ、まずアテナ様に報告し次第アマテラス様には伝えようかと思っております。いかんせん今ここに私がいるのも、こちらの世界に干渉したのも禁止されているので、何かしらの罰は受けると思うので、、、」

 最後の方は小声になっていた。

 サリオンは聞こえていたが、気を遣って聞いてないことにした。


「なるほど、解りました。では、こちらからは特に何もしなくてもいいと言うことですね。ただし何か聞かれたら今の話をすれば良いということでよろしいですか?」

 サリオンの問いにアラクネは頷く。


「もう一つが、その悪魔の事なんですが、信吾殿を追ってここに来たりとかはしないでしょうか?」


「それは心配いりません。何故ならこの御神木があるからです。この御神木があるからこそ、ここら辺一帯は聖域となっていて邪悪な者や悪魔は近付けません。」


「ええ、聖域で守られているのは解っているのですが、どうも心配性でして、その、、おっしゃっている悪魔は相当にお強いんですよね?その、、ただ心配でして、、、」


「確かに強いですね、それもずば抜けて。私なんかは逆立ちしても敵いません。ただ御神木の聖なる気、いわゆる聖気は聖域全体に濃く広がっています。なので絶対に悪魔を通しません。その辺はアマテラス様の方が良く解ってらっしゃるかと」


 会話のキャッチボールをして最後アマテラスの名前が出た時にみんな下を向いてしまった。

 神々の失敗に関しては度々聞いていて、信吾同様少し胡散臭く思っていた一同ではあった。


 エルフ達は一通り理解して一段落ついた。


 するとアラクネが鉄仮面に近付く。

 話を聞いていたエルフ達は吉と出るか凶と出るか、どちらが来てもいいように身構える。

 目を瞑り少し沈黙する。

 意を決したアラクネが目を開き治癒魔法をかける。

 すると穴が空いていた胴体が元に戻り、不思議な光を放っている。恐らくは体内でスカーフが放っているものと考える。

 スカーフの光が消えていくと同時に傷付いた心臓が元に戻り鼓動を開始した。


 そして鉄仮面は意識を取り戻した。

 ピクピクッと身体を動かしてゆっくりと起き上がる。

 鉄仮面は辺りを見渡すと見たことの無い顔ぶれが並ぶ。


「ここは?ん、んん?私は何をしていたのだろうか?貴方達は?」


 身構えたままのエルフ達とアラクネはゆっくりと起き上がった時に最大限の警戒をしていた。

 だが気の抜けたような声が発せられ安堵のため息をはいた。慎重派のティリオンだけはまだ警戒は解いていない。


 その時後ろの方から、急にガタッと音がして

「クモスケっ!」

 と、叫んだ信吾の声がした。

 どうやら目を覚ました瞬間に、気絶する前の光景を思い出したらしい。

「信吾っ!」

 振り返り声を出したのはクモスケだ。

「ちょっ、ちょっ、ちょちょちょっと待ってクモちゃんクモちゃん!クモスケちゃん!」

 今度はアラクネが声を出した。

 一人芝居をしているように首と腕は信吾の方に向かおうとしているが、胴体と下半身は鉄仮面を向いたままだ。

 しばらくバタバタしていたらクモスケが落ち着いた。

「クモちゃんごめんね、すぐに出ていくからもうちょっと待っててね」

 とてもやさしい声でアラクネが言った。

「と、言うことで大丈夫そうね。そこの鉄火面ですけども、邪悪なオーラも感じないし、敵意や殺気もない。恐らくは大丈夫でしょう」

 ようやくティリオンも警戒を解いて頷いた。


「では、そろそろ神界に戻りますね。他に何かありますか?」


 エルフ達を見廻すと特になさそうな雰囲気だ。

「では、また会う日まで」

とてもあっさりと帰っていった。


 するとクモスケの身体から薄っすらと発光していた光がゆっくりと消えていき、一糸まとわぬ姿が徐々に露になった。

 ずっとアラクネとクモスケの一人芝居のようなものを目撃した鉄仮面は驚きの連続で固まっている。

 信吾は訳がわからず首を動かさずに目だけで周りを確認していた。

「信吾っ!」

 クモスケが叫びながら信吾に抱きついた。

「えっ?えっ?えええぇぇぇ?!」

 再び信吾は気絶した。



「クモスケ殿、それはいくらなんでも、、、」

 マンマゴルが言う

 クモスケは訳がわからず困惑している。


 ひとまず周りの木から葉っぱと蔦で作った粗雑な物を即席で作り、胸と股間部分に巻いて貰った。


「落ち着いて下さい、クモスケ殿。今信吾はダメージを受けて気を失ったわけではありませんので、、、」

 マンマゴルがそう言って、続け様にサリオンが言う

「では、信吾殿を起こします。恐らくは大丈夫だと思うので」


 葉っぱと蔦を巻いたクモスケに大丈夫、大丈夫と言い聞かせながら信吾を起こす。


「んぁああ、、、、、、、、、、、、、うん」

 目を見開き数秒間フリーズした。

「なんとなく今の現状理解したけど、ダメだまたすぐに気を失いそう。血が足りねぇ、まずは食う」

 そういうと空間内収納から肉や野菜や果物、とにかく栄養の有るもの、糖分、塩分、何でもござれだ。

 ついでにクモスケにはティーシャツを出して着させる


 バクバクと食べては、野菜ジュースで飲み込み、またガツガツと食べては、栄養ドリンクで飲み込んだりとしている。

 クモスケはティーシャツを着て少し体を動かしてみた。

 ビリッとティーシャツの背中が破れてしまった。

「あ、信吾ごめん、背中にある足を動かしたら破れちゃった」

 クモスケが申し訳なさそうに信吾に言う。


 信吾は食べ物でパンパンに膨らんだ頬っぺたをモゴモゴ動かしながら、また空間収納からあるものを取り出した。

 背中に足があって破れてしまうことから考えて出したものはエプロンだった。上からひもを頭に通し、後は腰で縛るだけ。

「こんな感じでいいのかな、、、?うん、ちゃんと足も動かせて便利だね」

 クルッと一回転しながらクモスケが言うと

『は、裸にエプロン、、だと?』

 声がハモった。

 性格には葉っぱと蔦にエプロンだが。


 声の主は信吾と鉄仮面だ。

「お、お前さんも食うか?」

「あ、あぁいいのか?」

 また信吾はモグモグしながら頷くと、食べ物をどんどん渡す。

「クモスケもどんどん食べろー、チーズもあるからな」

 とにかく三人で食べまくった。

 エルフ達も軽く木の実を食べながら、みんなで食卓を囲む。




 食事も終わり三人でパンパンになった腹を撫でながら信吾が口を開いた。

「さてと、今すぐにでも寝たいところだけど、今の現状の見解を言ってもいいかな?」

 全員信吾を見ながら頷いた。


「まず、クモスケが俺を補食して進化したってのはなんとなく察しがついた。色々細かいことは疑問だが。次にそこの鉄仮面だけど、全く何がどうなってんのかわからない。ってか誰?何が起きたらこうなるんだ?で、何故俺が今エルフ達の家にいるのかも疑問だ、確か沖縄にいたはずだけど?悪魔は多分だけど、まだ生きてるってとこか?この疑問に答えられるのはいるか?」

 するとサリオンが口を開いた

「信吾殿、アラクネ様をご存知ですか?」


「んん?アラクネって言うと神話の話で、確かアテナに蜘蛛に変えられてしまった人間って位かなぁ」


 その話を皮切りにサリオンとマンマゴルが、代るがわる足りない部分を補足しながら、アラクネの話しを一言一句違わずに説明した。


「なるほどねぇ、するってーと俺は一番いい場面を見逃したってー事になるのか、、、いや、そこじゃない、、俺と一緒に驚いてるお前さんだよ、ちょっと雰囲気違いすぎないか?スカーフの話しを聞いて思ったんだけど、お前さん人間だった頃の記憶が甦ってないか?」

「えっ?」

「えっ?」

 二人で顔を見合わせて、鉄仮面は手を見て体を見てはペタペタと自分を触って確認している。

「なんじゃこりゃー」

「いやいや、古いな」

 信吾がそういいながら空間収納から姿見を出して見せる。

 すると自分自身を見た鉄仮面は頭を抱えた。

「あ、頭が痛い、、割れそうだ、、、、」


 頭を抱えて、うずくまるとフラッシュバックのように、アラクネに刺された時の事からどんどんと遡るように記憶が甦ってくる。

 信吾を攻撃した事、レヴィに秘薬を注入された時、眷属達を補食した時、どんどんどんどん遡る、慎吾と始めて会った時、クモスケと信吾が楽しく過ごしているのを羨ましそうに見ていた時、さらにもっともっと、人間を補食した時、継ぎ接ぎの身体に改造されている時、ベヒモスとレヴィが話しをしている時、人間だった頃、昆虫だった頃。


 鉄仮面は外に飛び出して木の上から落っこちた。

 すぐにその場で吐いて倒れ込んで意識を手放した。



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