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第32話 アラクネ

 信吾の血肉を取り込んだクモスケは急激に身体が変化していった。


 グングン大きくなり、一気に中学生位の背丈になった。手や足、頭部、胴体とほぼ人間の身体となり、唯一人間と大きく違うところは、背中に全部で6本の蜘蛛の足が生えているといったところだ。

 一糸まとわぬ姿で、薄っすらと身体が発光している。


 鉄仮面はクモスケの変化に動じずに只ひたすらに牙を突き立てようと噛み付くが、発光体に阻まれて肉まで届かない。


 閉じられていたクモスケの目がゆっくりと開き、鉄仮面を視認する。そして胸の辺りに目を向ける。

 何かを確認した後に頷くと

 ズンッ!ズズズズズンッ!

 背中にあった鋭く尖った蜘蛛の足が鉄仮面の胴体を突き刺す。

 その深く突き刺さった蜘蛛の足は鉄仮面の心臓を貫いていた。

 鉄仮面は咳き込みながら吐血してその場に倒れた。


 蜘蛛の足は元の背中の位置に戻り垂れ下がった状態になっている。

「アラクネか?天から何かが来るとは思っていたが貴様か、何しにきた」

 鉄仮面から目を離し、声のした方向を向いたクモスケがゆっくり口を開く

「お久し振りですね、リヴァイアサン。私が来た理由ですか、そうですね、、救いに来たとだけ言っておきましょう」


「アテナか?貴様をここに送ったのは」

 アラクネと呼ばれたクモスケは何も喋らない。レヴィの目を見つめているだけだ。

「沈黙か、、、まぁどうでもいい。質問を変える、そいつは何なんだ?神の加護を貰っているようだが?」

 レヴィは顎で信吾を指しながら言った。


 アラクネは沈黙を守っている。

「貴様!いい加減にしろ!救いに来ただと?そんなこと貴様が出来る訳が無いだろう」

 アラクネは沈黙を破った。

「そうですね、天地が引っくり返っても貴方には勝てないでしょう、しかしこれはポセイドン様も関わっています、手を出さない方がよろしいかと」


「ふんっ!ポセイドンだと?それがどうした、今のポセイドンはこの次元の世界に来れないはずだ、そんなヤツが関わっていたとしても脅威足りえんわ!」


「では、私は何故ここに来られているのでしょう?」

 アラクネが自信気に言った。


「ぐぬっ、、、貴様、、、まぁいいだろう、しかし折角私が造った最強の昆虫兵器を壊しやがって、まっ、しょうがねぇなぁ、また造るか。貴様達のお気に入りの昆虫共は全滅するかもなぁ。ククククッ」


 アラクネは一瞬目を伏せてから再びレヴィの目を見る

「それでは、失礼します」

 そう言って信吾と鉄仮面を糸で巻き付け転移した。


 一人になったレヴィが腕を組みながら考える。

「ふんっ、奴らが裏にいるのは解っていたが、奴らに何かが出来る訳がない、、、、仕方がない、暫く様子を見るとするか」


  ____________


 転移したアラクネが転移先に着いて辺りを見渡す。

 そこには御神木が見える。


 するとすぐにサリオンとマンマゴルがやって来た。

「貴方は?それに信吾殿ではないか?っっえっ?これはまずい!瀕死状態ではないですか!」

 慌てて言うと信吾に治癒魔法をかけるマンマゴル。

「私も少し手伝わせてください」

 そういってアラクネは信吾の身体に触れて治癒魔法をかける。

 異変に気付いたティリオンとマンノールもやって来た。


 そして治癒が終わるとサリオン達に向き直った。


「初めまして、私はアラクネと言います、とはいえ少しこの子の体を借りているだけですけどね」

 借りていると聞いたサリオンは首を傾げながら言う

「は、初めまして私達はこの御神木の守護者の…」


 言葉の途中でアラクネが手を前に出して、ストップのポーズをする。

「貴方達の事は知っています、今から私の事をお話しするので一言一句違わずに信吾さんに伝えて下さい。私にはもう時間がありませんので」

 そう言ってエルフ達の顔を一人一人見ていく。


「か、構いませんが、、でしたらせめて少し休めるところに信吾殿と、そちらの、、、」

 サリオンが鉄仮面を指差しながら言う。


「では、お話しできる場所に案内して下さい」


 サリオンがこちらです、と手招きをして多目的に使っている木の上の小屋を案内した。

 糸で巻かれたままの信吾と鉄仮面を魔法で浮かせながら小屋へ入っていく。

 そして部屋の隅に瞬時に糸でベッドを二つ作り二人を寝かせる。

 ちなみに鉄仮面は胴体に穴が空いたままだ。


「さて、どこから話しましょうか、、その昔アテナ様に蜘蛛に変えられてしまった人間をご存知ですか?」

アラクネが言うとサリオンが答える。

「ええ、知っております。そしてあなたがそのアラクネ様、でよろしいですか?」


同時にマンマゴルがお茶を入れて差し出す。


「ええ、知っているなら話は早い、そこは省いて。では、続けます。」


 そう言ってアラクネは話し出した。



 その昔、神話の時代の話しだが、元人間のアラクネは

 アテナを怒らせてしまい蜘蛛の姿に変えられてしまった話は有名だ、その後アラクネは何百年と糸を紡いで紡いで紡ぎ続けてきた。そしてアテナの熱りが冷めた後に反省したアラクネは神界に連れていかれ、そのままずっとアテナに使えている。

 そしてその紡いでいる時に出来たアラクネの子供達がずっと子孫を残し続けてきたのだ。

 今世界中にいる蜘蛛達はアラクネの子孫と言っても過言ではない。

 クモスケが人間の姿に進化したのは偶然が偶然を呼んで奇跡が起きたとしか言えない。

 元々アラクネの血を受け継いで来た子孫達にもその可能性はあったが雲を掴むような不可能に近い話だった。クモだけに。


 まずベースとなる身体の強さが必要、正にクモスケ並みの強さが必要だが、そんな蜘蛛が他にいるわけがない。

 そして人間の血肉だが、ただの人間の血肉だけだと意味がない。信吾のような、何度も死にかけて精神的にも肉体的にも強い遺伝子が必要だった。そして一定量の血肉も必要となる。血の一滴程度では無意味だ。


 この世界が造られて、信吾とクモスケが出会い、強くなり補食し進化する。

 この確率の低い事をやってのけたのは奇跡としか言えなかった。


 そんなクモスケを神界から見つけたアラクネはクモスケがピンチなのを察知し、アテナに一言だけ言って少し時間を貰った。


 ちなみにポセイドンには言っていなかった。

 そう、レヴィとの話し合いは殆どが駆け引きで、ポセイドンの関与だが、全く無かったのだ。


 そして決め手となったのが、ここに、この次元の世界にアラクネが物質化していることだ。

 通常神界にいる神様、並びにアラクネのような聖人達は、魂のみの、言うなれば霊体だが、まずこの次元の世界に来ることすら許されていない、干渉できないのだ。しかし奇跡的に拒絶反応の無い受肉できる体があり、それを証明して見せたのがレヴィの説得力となったのが功を奏した。


 クモスケ自信はどうしているかというと、今はアラクネが主体だが霊体が抜ければ通常に戻る。意識はあるから何が起こっていたのかは全て解っている。さらに言うと信吾の血肉を取り入れて、恩恵を受けたのは身体の進化だけではなかった。信吾の記憶がクモスケの頭の中に入ってきたのだ。ただクモスケの元々の知能に信吾の知識や経験を詰め込んだところでチンプンカンプンで理解が出来ないのだ。せいぜい言葉と人間の生活スタイルといった単純なものしか理解ができない。


 そしてもう一つ、小さかった身体には飲んだ信吾の血は多すぎたのだ。そしてクモスケは、余った血を他の用途に使ったようだ。


 そして鉄仮面の事だが、心臓を貫いて確実に死んではいるが、今は仮死状態。治癒魔法をかければ生き返るのだ。


 そのからくりはクモスケが巻いていたスカーフにある。信吾から貰ったスカーフには一度致命傷を受けてもスカーフが身代わりになって助けてくれるといった能力が付与されていた。

 それをクモスケに乗り移った時にクモスケの記憶を読み取り、スカーフが鉄仮面に飲み込まれているのを確認した直後にスカーフごと貫いたのだ。


 かといって進化前のアグリィに戻ることはない。

 と思いがちだが、そうでもない。


 進化後の完璧な身体でアグリィが復活する事は一種の賭けだったが、一縷の望みに賭けてアラクネは試してみた。


 あのレヴィの秘薬は一種の悪魔の魂のようなもので注入すると受肉を開始して宿主の命と引き換えに完璧な身体を手に入れるといったもの。さらに自分の駒として絶対服従させる為に改良に改良を加えていた。

 よく悪魔に魂を売ったとか、悪魔と契約した時の対価は命だ、なんて話は良く聞く話だ。


 そしてアグリィの身体が拒絶反応を起こしたら失敗なので、レヴィは研究に研究を重ねて遂に完成したのだった。


 悪魔と契約した人間が死んだらどうなるのか?

 それは受肉した身体のみが死んで悪魔の魂は残っている。だとしたらその死んだ身体は使えなくなった為に悪魔は抜け出してしまう。そして身体はもぬけの殻に成り果てるだけ。

 その隙間を縫ってアラクネは賭けに出たのだ。

 吉と出るか凶と出るかは誰にもわからない。




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