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第28話 ファーストコンタクト

 プールでプカーっと浮いているクモスケに信吾は声を掛けた。


「楽しそうだな、クモスケ」

 ニコニコしながら言うと、服を脱ぎ出して全裸になった。40過ぎのおっさんが全裸でプールにダイブする。

 バッシャーンと音とともに水しぶきと波がクモスケを襲う。

 静かに休んでいたクモスケはイラッとして土の弾丸を放つ。

「いてっ!冷て!寒!」

 信吾が震えながら叫ぶ。

 それはそうだ、今は冬真っ只中、沖縄と言えど12月はさすがにプールに入るような気温ではない。


 実は年末、大晦日である。とはいえ信吾は大晦日だからといって何かするつもりは無いが。


 すぐにプールを出た信吾は温風魔法で身体を暖める。

「よく寒くないなクモスケ」

 言われたクモスケは不思議と平気だった。


 そう、ヘビを補食した時に獲得した熱耐性だが、低温も耐性が付いていた。

 なんとなく察した信吾は服を着てプールサイドに座る。

 そして気配感知にて強敵の存在が近付いているのがわかった、が、相変わらず敵意は無い。接触するつもりは無いらしい。

 それを確認した信吾はおもむろに空間収納から何かを出した。


 信吾は部屋にこもって錬金術を駆使してあるものを作っていた。


 まずはポリカーボネートで出来た盾だ。警察の盾と同じ素材、サイズも大体同じで覗き穴は無い。

 そしてポリカーボネートが主体だが、違う種類の素材が入っている。まずは炭素でできているカーボン、そして金属等の鉱石類もふんだんに組み込まれている。

 普通に考えれば不可能と言うか、そんなことは出来ないのだが魔法(錬金術)で無理やり原子構造などを弄って無理矢理作った不思議な代物だ。とにかく硬くて頑丈な盾を意識して、重さなどどうでもよかった。


 次に信吾の装備だ。

 盾と同じ素材で作った動きやすい鎧で、肩、胸、腹、股間などの急所を守るように出来ている。

 首の部分に関しては動きを優先させた為除外した。

 そして魔力が通っているため魔法も多少は軽減される。

 今着ているのは水色の作業用のツナギだ。その上から防具を装備してポーズをとる。


 ボーと見ていたクモスケが突然横に来て、自分も欲しい!と意思を伝えてきた。

「もちろんあるに決まってるだろぉ、ほらこれがクモスケ専用の防具な」

 そういって空間収納から出した物は、鎧ではなくスカーフだった。

「クモスケに鎧があってもそれ以上に頑丈な身体だろ?だからこれをクモスケにプレゼントするよ」

 そういってクモスケの頭とお腹の間の括れ部分に巻いてあげる。


「これはな、魔力が籠っていてちょっとやそっとじゃ破れたりしないんだ。そして何よりビックリなのが、なんと!、、、」

 勿体ぶって口を開く

「致命傷をくらってもそいつが身代わりになって助けてくれるって代物だ」

 信吾は何故か知らないが特殊効果を付与出来るようになっていた。

「なんか良く聞くような便利グッズだけどな」

 そういってクモスケの頭を撫でる。


 他にも武器を作ろうと思ったが、魔力切れ寸前で作れなかった。

 特殊効果の付与は相当な魔力を使う為に一回しか出来なかった。

 それでなくても原子構造を無理矢理弄ったり、鎧の形状を整える為に使った魔力は、大半を占めるのだ。

 信吾は近いうちに使うことを想定して急いで作ったが、能力を使っているうちに熟練度が上がり応用が効くようになっていた。


 この錬金術は神から授かった、言わば神の力と言っても過言では無いため、半信半疑の信吾はその有用性をわかってはいなかった。

 そして今、魔力の使いすぎで実はかなりフラフラしている状態だ。


 クモスケは少したじろいだが、素直に頭を下げて感謝の意を示す。

 そして照れ隠しに土の弾丸を一発放つ。

 信吾はヒョイっと避けた、

「カッカッカッ、そんな照れんなって」

 ニヤニヤしながら信吾が言う

 クモスケは土の弾丸を連写した、ババババババババババッ!避けながら作った盾の内側に隠れる。

 カンカンカンッと弾き飛ばしていると、クモスケの糸が盾ごと信吾をグルグル巻きにした。そして、、

「あ、、」

 クモスケと眼があった瞬間「ブーーー」と音と共にイカスミが吐き出された。


 真っ黒になった信吾は「ブフッ」と笑いが込み上げてきて爆笑してしまった。

 笑っていると糸が解除されて自由になるが腹を抱えてまだ笑っている。

 クモスケもなんだかおかしくなってピョンピョン跳ねながら笑っている感じだ。


 一通り笑いあったところでクモスケと信吾はアイコンタクトをして頷きあう。

 正面からヤツが来る。クモスケの索敵と信吾の気配感知で既にわかっている強敵だ。そうアグリィだ。


「遂に接触してきやがったな、クモスケとりあえず手を出すな、様子を見よう」

 クモスケは頷き身構える。

 少しずつ近付いてきてその全貌が明らかになった。


 信吾は一目見てその強さを認識した。

 真正面から戦ったら間違いなく勝てないと、だが能力や魔法を行使して、からめ手を使えば負けはしないとも感じた。

 クモスケも同様だが一つ気になった点があった。


「初めまして、でいいのかな?敵意はなさそうだけど、何か用件でも?てか言葉通じるか?」

 信吾が言うとアグリィは答えた

「問題ない。言葉は解る、日本語だな」

 信吾は驚いた、言葉が通じるどころか日本語って言ったところにだ。

 続けてアグリィは言う

「ここから離れた方がいい、何しに来たかわからんがここはもうレヴィ様の縄張りだ、悪いことは言わん、、、、離れろ」

 どこか寂しそうに、どこか諦めたように言い放った。


 朝剃ったツルツルの顎を撫でながら少し信吾は考える

「色々と気になるところはあるが、レヴィ様ねぇ、、、そいつがあんたの親分って事か、ここで何かするつもりか?」

 アグリィはジッと信吾を見て沈黙する。

「まぁいいか、いきなりきて離れろ、か、俺的には折角この世界で知的生命体に会ったんだから仲良くしたいってのが本音なんだけどさ?そう言うわけにはいかなさそうかな?」

 信吾は頭を掻きながら言った。

 アグリィは一瞬ビクッと身体を震わせた。

 それを見て信吾は片眉を上げた。そしてチラッとクモスケを見る。

 クモスケはジッとアグリィを見ている。

「なんか喋ってくれよ、黙ってるだけだとどうしたらいいかわからないからさ」

「あ、あぁ、仲良くか、、、残念だが無理だ」

「あそ、まぁ出来れば俺達も冬を越すまではここにいたいんだけどさ」

 言いながらクモスケを指差す。

「と、とにかく今すぐ離れた方がいい」

 アグリィが焦ったように言う。

「んーーー、、俺は信吾って名前だ、よろしく。

で、あんたの名前は?」

 少し沈黙した後に

「名前などない」

「じゃぁそのレヴィ様って人から何て呼ばれてる?」

「やくた、、、いや、アグリィ、、そう呼ばれているが正式に名前を貰ったわけではない、、レヴィ様は今は、そう呼んでいると言っていた」

「ふーーん、、、、、、、、、、、、アグリィ!!」

 信吾は手を真上に上げて大きな声で名前を呼んだ。

 クモスケがビクッとした。

 そしてアグリィは跪いて丸くなって震えていた。

「やっぱりか、、、悪かったな驚かせて、ほら立って」

 信吾が手を差し出して立たせようとするがアグリィは自分の足で立った。

「ど、どういうつもりだ?」

 少し声を震わせながらアグリィが言うと

「お前さんを造ったのはレヴィってヤツで執拗な虐待を受けていると、で、最初から気になっていたんだけど、『離れろ』ってなんか違和感があったんだよね、縄張りってのも口からデマカセだろうし」

 チラッとアグリィを見ると目を逸らした。

「普通は『離れろ』じゃなくて『出ていけ』とかだと思うんだけど、なぜ離れろかは多分ここで何かするつもり、もしくはお前さんに何か不都合な事が起きるとか?例えば死ぬとかかな?」


 信吾は推測を述べた。

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