第25話 戦う理由と意味
ヘビとの戦闘で信吾は決定打となる一撃を入れるため準備をする。
少し時間がかかるので、5分程時間稼ぎをクモスケに頼んだ。そして少し距離をとって作業を開始する。
それをみたヘビはチャンスとばかりに無防備になっている信吾に攻撃を仕掛けた。
それをさせまいとクモスケは鎌で牽制する。
ヘビは頭を降って鎌をいなす。
何度か攻防を繰り返すが、少しクモスケがおされている。
ヘビは一瞬の隙をついてクモスケをすり抜ける。
信吾に攻撃を仕掛けようとしたその時、クモスケはヘビの尻尾に糸を巻き付けてそのまま足を踏ん張り持ち上げる。
うおおおおおおおおおおおっとクモスケの声が聞こえてきそうな位必死だ。そのまま180度ターンをして投げ飛ばす。投げ飛ばされたヘビは飛ばされつつも横目でクモスケを視認すると口から毒液を飛ばしてきた。
血管が切れそうになってフラフラしていたクモスケは毒液をもろにかぶった。
フラフラしていたクモスケは動きが止まった。
それを見たヘビは弱ったクモスケを補食しようとゆっくりゆっくり近づく、全身に毒が行き渡った頃合いかと、慎重に口を開けたその時、お返しとばかりにクモスケは毒液を吐いた。
実はクモスケは蜂との戦闘の後に毒耐性を獲得していた。信吾から毒消しの魔法をかけてもらって回復した時に獲得したのだ。
ヘビの口の中に入った毒液はヘビの体内に入り込んだ。「あああああああああああぁぁぁぁーーー」
どこから声が出ているのかわからないがヘビの断末魔の様な雄叫びが耳をつんざく。
同時にバッタンバッタンと全身を激しく地面に打ち付ける。
「待たせて悪かったな、秘密兵器の出来上がりだぜって、もう瀕死状態じゃないか?俺必要なくないか?」
大きな大剣を肩に担いだ信吾が言う。
横目でクモスケを見るとふんぞり返ってドヤ顔を決めている。
「、、でも苦しんでるから、今楽にしてあげるよ」
信吾は少し眉間にシワを寄せながら言った。
当初の予定どおりヘビが臨戦態勢のテイで動いた。今は瀕死だが、臨戦態勢のテイで動いた。
大事な事なので2回。
信吾は全身に青い光を纏った。それは身体強化だ。そしてヘビの周りをグルグルグルグルまわり土煙を立てる。徐々に土煙は上昇気流となり視界を殺す。すると上昇気流に紛れて信吾は飛び上がる。300メートル程飛び上がった信吾は先程錬金術で作ったチタン製の大剣を下に向ける。そして重力に任せて自由落下、更に重力魔法で大剣に100kgの過重をかけて風魔法で速度アップ。最後に大剣に魔力を込めてヘビの頭に突き刺す。ズンッドーン!
ヘビの頭を突き抜けた大剣は地面をも破壊した。
徐々に土煙が晴れて全貌が見える。
地面は抉れて直径10メートル程のクレーターが出来ていた。
もちろんヘビの頭は粉砕されている。
クモスケは呆れながら前足を動かしながら意思を伝える。「ヘビの頭、その大剣、刺す、終わり」
ジェスチャーでそう伝えた。
確かに瀕死のヘビに対してはそれだけで終わっただろう。しかし臨戦態勢だったらどうか、躱されるか、中途半端な攻撃でダメージが与えられないとかの可能性はある。そして信吾は臨戦態勢のテイで動いていた。
信吾は心の中でクモスケに感謝をしていた。
無防備になった時に必死に守ってくれた事を。毒を受けたときに心の底から心配した。そして何よりヤツはクモスケを補食しようとしたのだ。その時の信吾は助けに入ろうと思い全身に力を入れて身体強化魔法を使い助けに入ろうとしていた。だが杞憂だった。安堵したと同時に怒りがこみ上げてきた、必死で感情を抑え込みながらヘビと対峙したのだった。
「クモスケありがとうな」
毒蛇との戦闘が終了した。
その後、拠点に戻り反省会をかねて食事にした。もちろんクモスケはヘビだ。
反省会の内容は、やはり防御力だけじゃダメだなと、信吾反省。
作戦をもっとよく考えて実行に移すと、クモスケ反省。
「でも、驚いたな、クモスケが毒耐性を獲得してるなんて気が付かなかったよ」
クモスケも自分では気づいていなかった様でビックリしたとのこと。
今後の目標としては、やはり攻撃力と防御力を同時にバランスよく上げていく事を目標とする。
ついでに大剣だが、チタン合金で出来ておりちょっとやそっとじゃ壊れないし、攻撃力も抜群である。
先程の攻撃のような無茶な使い方をしても壊れないように作った為、少し時間がかかってしまった。
工程は魔力でチタンを圧縮し、不純物をなくし密度を濃くする鍛造のように作り上げた。魔力がこもっている為に通常の鍛造より遥かに丈夫に作られている。
そしてモデルは某RPGの主人公が自分と同じ位の大剣を持っていたのを参考にした。
そして何より前から気になっていた事がある。
この世界の昆虫達や他の強力な生物に対してだ。
今回の件もそうだが、時間が経てば経つほど強いヤツは補食を繰り返し強力となっていく。
今まで信吾が倒してきた敵は、昆虫の強さランキングで上位をしめている敵がほとんどで、もっともっと強くなる可能性がある。
その懸念があったのと、クモスケの食事(強化)の為だ。
だから害のない小さな虫や、弱い虫達には余り手を出してこなかった。強くなったとしても種族的に脅威足り得なかった。
まぁ、、クモスケは別だが、、容赦なかったが、、。
そしてこちらから探して討伐しようともしてこなかったが、そんなことも言ってられないと、今回の件で身に染みてよくわかった。
クモスケが補食されそうになって、結果的には助かったが、その時の安堵からの怒り、一瞬の事で何故感情的になってしまったかわからなかったが、落ち着いて思い返してみると、早い話がいろんな感情が重なって混乱にもにた衝動だった。
そのいろんな感情を一つ一つ紐解いていくと、助かった安堵、大切な人を失った時の悲しみ、家族と離れた寂しさ、大切な人を失いそうな怖さ、敵への恐怖、自分への叱咤、そして理不尽への怒りだ。そんな感情が一気に脳内を駆け巡ったのだ。
信吾は今回の件に関してクモスケには家族同然の感情があるのを再認識した。よって、今後何があってもクモスケを守ると、害をなす敵が現れるならば自らを犠牲にしても守ると誓った。
信吾は守るために戦う。
戦う理由と意味を見い出した信吾は早速気になっていた場所へ向かう。
近くに水族館らしき建物がある。その中にチラホラ強くなってる個体がいるのが確認できる。
クモスケに話すと乗り気なようだ。
「そう言えばヘビを補食してどうなった?」
水族館に向かう道中、歩きながら信吾がクモスケに聞くとクモスケは首を傾げている。
実はヘビの補食で獲得した能力は破格と言っていいほど有用な能力だ。
だがクモスケはピンときていなかった。
その能力は、炎、熱の耐性。サーモグラフィのような生物の探知能力、そしてウイルス耐性だ。
これを身振り手振りで説明するのも至難の業だが、本人は探知能力ぐらいしかわかっていなかった。
信吾はヘビの特性をある程度知っていたのでおおよそ検討はついていた。
何故知っているかというと、信吾は昔から動物が好きで、動物園などは片っ端から行き、1日に廻れるなら梯子したりもしていた。
生体などわからなければ調べたりもしていたし、動物の動画なんかも好きでよく見ていた。ほぼ趣味のひとつと言っていいほどだ。
ちなみに余談だが好きになった切っ掛けは、まだ学生の頃に数々の裏切りや、人の裏の闇というか嫌な部分を見てしまった為にあまり人を好きになれなくなっていた時期がある。
今でも初対面の人や職場の人間なんかは一つ壁を作って接している。いくら仕事の仲間といっても信頼はするが、心から信用はしていない。
そんな高校を卒業後、夜の仕事で、さらに人の嫌な部分も見つつも、一人の女の子にに言われたことがある。
「子供って先入観が無いから私達でも偏見なしで接してくれる」みたいなことを言っていた。
確かにまだその時代は水商売は偏見があった頃だ。今となってはその仕事に誇りをもったり、メディアでも大きく取り上げていたりと必要不可欠な仕事となっている。
それを聞いた信吾は偏見なしで接してくれる、要は動物だ、一人で動物園に何度も行き動物達の魅力にどんどん引かれていった。
特に好きだったのが猿の親子だ。面白いのは子供が2人いて1人がタイヤでぶら下がって遊んでいるところに兄弟がやってきてちょっかいを出す、そして喧嘩になったところを母親が止めにはいる。
家族の心暖まる一つの光景だ。
ずっと見ていられて時間を忘れるぐらいだった。
陸上での動物は得意だが逆に海水や淡水といった水の中で生きている生物はあまり知識がなかった。
そして今いるのは水族館だ。




