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第24話 訓練とヘビ

  信吾は今いる拠点を探している時に、気配感知を那覇市に集中して詳しく調べていた。

 結果、強大な生体反応が2つ。

 そしてその周りには今まで戦って来た昆虫達と同じ位の生体反応が無数にいた。

 無数にいる生体反応、おそらくは昆虫達だが、強大な2つの生体に従っている様子で、集まっているからといって争っている訳ではなさそうだった。

 そして強大な生体反応2つはどうやら知的生命体だろうと信吾は推察した。

 そして何より気になったのが強大な知的生命体の1つが、禍々しくドス黒いオーラを放っていた事だ。

 とてもお友達になりましょうって雰囲気ではなく確実に敵対するであろうと懸念していた。


 そして警戒するようにトレーニングを強化するのであった。


 トレーニングを強化して一週間が経った。この一週間、錬金術を使い武器を新調しながら、砂浜でクモスケと模擬戦をして技や魔法を中心に身体を慣らしてきた。

 徐々に攻撃力を高めて来たが、信吾は実際には攻撃力なんて二の次で大丈夫だと思っている。


 若い頃、まだ20代前半の頃にテレビのニュースを見て思ったことがある。

 どこかの国でデモがあり、抗議している一般人は、ことごとく機動隊や警察に鎮圧されている。

 信吾は怪我をしている人を見て、子供の頃にやっていたゲームを思い出した。

「星をとって無敵になれば勝てるのに」

 とどこか他人事のようにボソッと呟いた。その言葉を切っ掛けにある妄想をし出した。

 もし自分がヒーローだったらどうする?

 とか、もしライフル銃や核兵器が効かない体を手に入れたら、などと突拍子の無いことを妄想し始めた。


 ヒーローになったら、なんて男の子なら誰もが夢見る憧れでもあった。

 が、その時の信吾はハタチを越えていた。


 妄想は妄想を重ね、もし戦争が起きたとしても無敵の防御力があれば全て解決するぞ。

 と、社会の仕組みや情勢など全く無視した子供染みた考えをしたことがある。


 確かにそれも一理あるが、、、


「クモスケ、防御力を強化したいんだけどどうしたらいいかな?」

 クモスケは少し間をおいて首を傾げる。

「うーん、ちょっとここ思いっきり蹴ってみて」

 と、自分の腹筋を指差す。

 わかったとばかりに前足を上げる。

「よしこい!」

 クモスケは足のバネを使い一気に飛び上がり腹筋に蹴りを入れた。

 ドンッと音が鳴り響き信吾は吹っ飛んだ。

 そのまま5メートルは吹っ飛びコンクリートの壁を破壊して停止した。

「おーーいってぇー、腹筋も痛いけど背中も痛いよ。でも1つ解った事がある。それは体重だな、防御力があっても軽かったら吹っ飛ばされる、なんてーのは誰だってわかるっつーの。、、いや、でもそれは魔法でなんとかなるか?いやいや、違ーうそうじゃなくて、俺がやりたいのは」

 そういって腹筋に魔力を込める

 ようは身体強化ではなく部分的に身体を硬質化出来ないかどうか、である。

 これはクモスケの殻の鎧からヒントを得た。

 やってみたところ出来そうではあるが、どの程度ダメージに違いがあるかを検証する為に先程クモスケに蹴ってもらったのだ。


「クモスケもう一回頼む」

 クモスケはまた飛び上がり腹筋に蹴りを入れた。

 今度は吹っ飛ばされないように蹴られる瞬間に後ろから風魔法を行使した。

 ドカッと音がしたが先程と違い吹っ飛ばされない。

「うん、検証出来たような出来ないような?クモスケ大丈夫か?」

 見るとクモスケはひっくり返っている

「あーやっぱりか、物理的に言うと力が一方に加わればさっきみたいに吹っ飛ばしてエネルギーもそっちに行くけど、今みたいに力が殺されて行き場がなければはね返るんだよな、その分ダメージも集中するからこっちも痛いけど硬質化のおかげでなんともないってとこか」

 ようは人が壁を蹴って壊れればはね返りは無いが、逆に壊れなければ反動で痛い目を見る事になる。

 もっと解りやすく言えばサッカーボールを蹴ったときとボーリングの玉を蹴ったときの違いと言えば解りやすいだろうか。


 クモスケに治癒魔法をかけてあげる。

 復活したクモスケは怒っている様子。

 案の定、土の弾丸を数発もらった。


 ひとまず休憩することにして飲み物と軽く食べられる物を出して砂浜に座る。


 信吾は考える、防御力強化をするにはどうすればいいのか、部分的な硬質化もいいのだが結局は魔法を使うわけで根本的な解決ではない。それでもいいのだが納得はしていない。


 考えていると気配感知が反応した。

 敵意、殺気が伝わってくる。

 見るとシマシマ模様のヘビが威嚇しながら近づいて来ている。


「毒蛇だな、クモスケ気を付けろ」

 わかっているとばかりに前足を上げる

 段々と近づいてきている。

「やっぱりでかいな」

 太さもさることながら長さも申し分ない、言うなればそこら辺の木、もしくは電柱と同じサイズ位だろうか。


 ちなみに通常サイズは、よくテレビのバラエティーなんかで見る、首に巻いたりしている細いヘビだ。


 ヘビは鎌首を持ち上げて威嚇してきた。

 信吾とクモスケは身構えて相手の出方を見る。

 初手はヘビだ、鎌首を一瞬後ろに反らせて反動をつけ、一気にかぶりついて来る。

 信吾とクモスケは左右反対方向に避け、信吾はいつもの反復横飛びの要領でステップを踏み、躱されてバランスを崩しているヘビに飛び蹴りを放つ。

 少し遅れてクモスケもステップを踏み前足を鎌状にして切りかかる。

 蹴りと鎌の攻撃だがどちらも有効とはならない。

 ヘビの身体は柔軟性があり、かつ硬い鱗で覆われているため打撃も斬撃も通用しない。


「やっぱり効かないか」


 ボヤいているとヘビが尻尾で凪払ってきた。

 信吾は咄嗟に距離をとって避けたが、クモスケはクリーンヒットした。

 しかしクモスケも咄嗟に魔力で殻の鎧を作り出しダメージはゼロだ。

 何度か攻防を繰り返すがお互いにダメージはゼロ。

 消耗戦になるのは必至だった。

 決定打となる一発を信吾が考えていると、クモスケが信吾の右手に糸を巻き付けた。

 鎌状になった前足をグルグルまわした後に引っ張る仕草をした。

 信吾は理解した、ヘビの横から首に糸を巻き付けてお互いに思いっきり引っ張れば首が切れると、、、、


「わかった、行くぞ!」


 信吾の号令と共にクモスケは糸が巻き付いている右手に乗った。すかさずヘビの横に瞬時に移動した信吾はクモスケをヘビに向かって投げる、警戒したヘビは少し距離をおこうと後ろに後退る。

 クモスケは糸の長さを調整しながらクルッとヘビの首に糸を巻き付けて反対側に着地した。

 着地したクモスケを確認すると信吾が叫んだ。

「せーーのっ!」

 お互いに思いっきり引っ張る。


 糸が張ったその時、ブンッとヘビが回転した。首は飛んでいない。

 一瞬沈黙が流れ、ヘビは何が起きたかわからず困惑している。

 クモスケは首を傾げている。

 信吾は「ブフッ」っと吹き出した。


 そう、この作戦には盲点があった。対象を固定していないと力が逃げて行き、糸が外れてしまうのだ。

 解りやすく例えると、鉛筆に糸をを巻き付けて左右に引っ張るとクルッと回転してしまう、おそらくは誰しもが経験したことがある現象だろう。


 信吾もよくよく考えればわかった筈だがクモスケの勢いに流されて考えが及ばなかった。


 噴き出した信吾は咄嗟に口を押さえ、油断なく敵の攻撃にそなえようとするが、笑いをこらえている為に笑ってはいけないシリーズの様になっている。


「クモスケェ、今の作戦はよかったんだけど、あいつを固定していないと意味がないぞ」

 指差しながら信吾が言う。


 それを聞いたヘビは固定されまいと警戒を露にする。

 信吾はヘビを固定しようなんて考えはこれっぽっちもなかった。無理ゲーに近いからだ。


 そして確実な決定打となる一撃を入れるための策は練ってある。ただ少し時間がかかる為クモスケに言う。

「クモスケ、ちょーっと時間稼げるか?5分ぐらいなんだけど」

 クモスケは自分の作戦の甘さに恥ずかしそうにしていたが気持ちを切り替えて前足を上げる。

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