第19話 八ヶ岳
蜂との戦闘が終わり一段落着いたところで
「さてと、やっぱり空は危ないから地上を行こうではないか、空もいいんだけど襲われた時に魔法が使えないからな、せめて2つじゃなくて3つの魔法展開が出来ればいいんだけどな」
いいながら歩き出そうとした時に、ふいにクモスケが肩からおりた。信吾は、何だ?どうした?といった感じでクモスケをみると、クモスケがブルブルと震えだした、皮を脱いでいく感じで脱皮が始まった。
そういえばそうだった、この世界に残された昆虫や、その他の虫達は敵を倒して補食すると強くなるんだった。信吾は思い出したようにクモスケを見守っている。
しばらくして脱皮が終わると様子を見る感じで、しばらくクモスケは体を動かしていた。
やっぱりレベルアップだよな?しかも補食した奴らの能力も吸収してる感じがあるな、こいつら特有のチート能力か。
信吾はそう思いクモスケに言う。
「クモスケ、お前毒って出せるか?」
一瞬クモスケは首を傾げたが、すぐに信吾の言ってる事を理解して、牧場の近くにあった倒木に向かって毒を吐いた、ジュウ~と音と共に倒れた木は溶けていく。
「やっぱりな、ちなみに今まで補食したのってカマキリと蟻か」
信吾は少し考える、蟻の攻撃方法だが、顎の力で敵を噛み砕く以外の方法だったら、一部の蟻が蟻酸という毒液を針を使って注入する攻撃とか、軍隊蟻について考えていた。すると
クモスケが唐突に倒木に向かって噛みついた。見ると倒木は真っ二つになっていた、切ったというより咬み千切ったといった方が正しい。
クモスケの蟻特有の能力は顎の力らしい。
「次にカマキリだな、カマキリってどんな能力だ?鎌か?スピードか?」
それを聞いたクモスケはしばらく考えて動き出した、ヒュンッと風を切るような音と共に倒木が真っ二つに切れた。
どうやらカマキリの能力両方の様だ、見るとクモスケの前足が鎌のようになっている。自在に変形可能で今は元に戻っている。
そして集中した動きは一瞬だが目にも止まらないスピードだった。
クモスケの能力の確認と検証が終わり、
再び移動を開始した。
空の旅は諦めて今度は車で移動と考えたが、走っていく事に決めた。
クモスケも肩から降りて自身の身体を動かす事に決めた。
信吾が走っていくのを決めた理由は、蜂との戦闘で、身体強化の魔法を使えることがわかって、それの練習がてら、どの程度身体が持つか、はたまた限界はどこら辺なのかを試すことにしたのが、走る理由の1つでもある。
もう1つは、過去の信吾の憧れが大きな影響を及ぼしている。
信吾は子供の頃から格闘技が好きで、ボクシングやK-1はもちろん、アニメや漫画、ゲーム、映画なんかもアクションがほとんどで、よく香港映画のアクションスターを見て育った。
時代背景なのかその頃は規制も厳しくなくて、ある意味何でもありの時代でもあった。そして特にアクロバティックな動きが好きで危険なスタントや、パルクールなんかも大好きであった。
信吾は自分に重力魔法をかけた、60キロの過重だ。今の信吾は特に気になる重さではないが、子供の頃の漫画を思い出して過重をかけた修行をやって見ることにした。走りながら側転やバク転、バク中をしては道にある木々やガードレールなどでパルクールのカッコいい走り方を試しながら走る。
走っているとやはり小さな虫達がいる。
昆虫もいるが特に強いわけではないので襲っては来ない。その為信吾は無益な殺生をしないようにしていた。
だがクモスケは違うようだ。
「お前な~害が無いから殺生しないようにしてるんだぞ、それをなんだ君は、見かける虫達を次から次へと」
アゲハ蝶、トンボ、ムカデ、クモ、ナメクジと、ありとあらゆる虫達を切っては食べ、切っては食べ、時には糸でグルグル巻きにして信吾に「収納に入れておいて」と言わんばかりに投げてくる。信吾も律儀に収納しているが。
「あんまり変なもの食べるんじゃないよ、お腹壊すよぉー、それにクモまで食べて、全くもぅ、お仲間さんじゃないの?」
クモスケからすれぱ関係ないそうだ。全く気にした様子もなく信吾の言葉も無視してまた作業を開始する。
「もう、作業みたいになっちゃってるじゃん」
などと言いながら先へ進む信吾達であった。
走ることしばらく八ヶ岳にあるとある観光地に来た。
「さすがに冬前だけあって寒いな」
クモスケは寒くて標高が高くなって来たところで走ることを断念、信吾の服の中で暖まって寝ていた。しっかりと糸で固定して落ちないように。
信吾はスマホを取り出して電源を入れる、バッテリーはモバイルバッテリーで満タンになっている。
キレイな山や景色、人がいなくゴーストタウンとなった観光地を次々にカメラで押さえて行く。
「この文化遺産も土に埋まってしまうのか、少し悲しいな」
などといいながら信吾は使えそうな物を片っ端から空間収納に入れていく、ぬかりはないようだ。
そして高い建物の上で富士山の方角を見る。
富士山はクッキリ綺麗にそびえ立っているのがわかるが、その横に見える御神木が桁違いにデカすぎる。
「なんか、アレだな、、、一応撮っとくか」
信吾は色々思うところがあったがグッと飲み込んで割り切った。
景色を堪能していると、遥か東の方がなにやら騒がしそうだ、見るとでっかいバッタ対でっかいコオロギが戦っている。
両者似た攻防で決め手がなく牽制しあっている。
「よしっ!行くか」
気合いを入れて唐突に建物からダイブした。
「アイ・キャン・フラーイ!」
スピードが乗ってきたところで風魔法で方角の微調整をして、戦っている場所の近くに向かう。
上手く重力と風の魔法を使って手前のコオロギに蹴りを放つ
「信吾スーパーキィーック」
ドカッと音と共にコオロギがバッタの方に吹っ飛んでいく。バッタも巻き込まれて揉んどり打って転がっていく。すかさずナイフを2本取り出してから、魔力を込めて投擲する。
ヒュヒュンとバッタとコオロギに向かって飛んでいく、するとバッタの頭を貫通してバッタは崩れ落ちた。
コオロギは足のバネを利用して飛び上がってナイフを回避、50m以上飛び上がってから、羽を広げこちらに滑空してくる。
コオロギやバッタは足のバネによる跳躍が人間サイズになったら世界最強のキック力となる。そのメカニズムは不思議で歯車のようになっていて、生き物の体にしては生き物らしくないというか、都市伝説では実は昆虫は地球以外で生まれた生物なのかと言われたほどだ。
滑空してくるコオロギをギリギリまで引き付ける、引き付けて、引き付けてギリギリで回避アンド
「信吾スーパージャンプ蹴り上げ!」
ネーミングセンスが問われる技だが、クリーンヒットした。
落下の速度プラス蹴り上げの力でコオロギはバラバラになり息絶えた。
するとその戦闘を最初から見ていたバッタやコオロギの取り巻き達が信吾を取り囲んだ。
「あ、ボス同士の対決を俺が邪魔しちゃった感じかな?こりゃおよびでないってヤツかな?」
軽口を叩いていると一斉に飛び掛かってきた。
すかさず収納から剣を取り出して凪払う。
囲まれていた一部が割れたのでそこから包囲を抜ける、振り返りパチンコ玉を投げる。
バスッバスッバスッと頭部分を貫通する。
続いて火魔法を放つ。ボウーと燃え上がる。
続いてウォーターカッター、ウィンドカッター、土の弾丸、最後にカミナリの魔法を行使する。ズバーーンッ!と轟音が鳴り響き戦闘が終了した。
「相変わらずカミナリは凄い音だな、魔力を抑えたんだけどなぁ、でもいい実践訓練が出来たな」
コオロギとバッタのボスの取り巻き達を危なげ無く倒した信吾は少し魔力を使いすぎた感覚があった。
実際には総魔力の半分ちょっと位しか消耗していないが、しばらく休憩することにした。




