第104話 理
第六感についてはトワが説明する。
「第六感って簡単に言うと気の操作、信吾ちゃんが最近始めた気の操作なの」
「は?えっ?」
目を見開いた信吾。
続けるトワ
「その気の操作で超能力ってやつが使えるってワケ」
信吾が頷く。ヨグ・ソトースも頷いている。
更に続けるトワ。
「例えば念視や千里眼ね。あとサイコキネシスとかって言われてるやつ、物を浮かせたり、燃やしたり、あとは〜霊能力とかで前世がわかったり、イタコなんかが例ね、あと予知夢を使った予言とかが有名かな?間違っても気功波なんて出るわけないから」
と、最後に付け加えると信吾は顔を俯かせて目を逸らした。
「ただ、時代と共に廃れていったのが超能力だね。その理由としては、気を扱える者がいなくなったのが原因なんだけど、それには歴史があって、陰陽師が衰退していったのも関係してる所でもある」
信吾は前のめりで頷きながら聞いている。
得意気になったトワが少し間を置いて再び口を開く
「明治時代位かな?もっと前か忘れたけど、実は陰陽師って天皇家とも繋がりが深くて、結構権力があったの、で、その頃はまだ超能力とかあったけど、その両者が有名になってきて気に入らないとか、納得しないやつの代表が科学者、物理学者なんだよね、それから実験とかの被験者になった人も多くて、一部は信憑性もあったりしたんだけど、結局有耶無耶にされちゃったの、、科学者の他にも政治も絡んできて、権力の圧力で潰されたりしたってのが理由かな、、それにはお決まりの利権も絡んでるからね。同時に陰陽師も実は衰退していったんじゃなくて潰されたって説が濃厚らしい、潰した人達の事は敢えて言わないけど」
トワが一旦話しを区切る。
シーンとなった場に、信吾はホラー映画のテレビの画面から霊が出てくるのを思い出した。
「それから現代なんかは、それをネタにした金儲けが流行りだすってのがセオリーで、偽物の霊能力者とか予言者とか占いなんかもその類かな、、そんな風評で超能力が胡散臭い物に変わっていったんだ。実際にあった現象なのにね。現代でも実は本物もいたんだけど、そんな輩のせいで本物も信憑性に欠けるとかって、自粛せざるを得なくなるって悪循環、まんまと術中にハマったってワケね、権力の」
話しをしているとヨグ・ソトースが口を開く
「おい、話しが逸れてるぞ」
その言葉にハッとしたトワ
「えっと、、第六感ね、とにかく第六感は気の操作で、決して気配察知とか気功波を出すとかではないって事ね、ちなみに信吾ちゃんが言ってた霊感も気が関係してるから、霊感があるから第六感ではなく、気の操作が出来るから霊感があり、その気の操作こそが第六感なワケ、おわかりいただけただろうか?」
「なるほどなるほど、うんなるほどね~」
何度も頷いている信吾。
「なんか俺も色々経験して色々知った気になってたけど、まだまだ世界は広いねぇ、知らない事だらけだ」
信吾の言葉にトワが返す
「アタイは長い歴史を見てきてるからね、知識があるのは当然だけど、、そのヨグ・ソトース?は何でも知ってるっぽいね、なんか想像も出来ないほど、、神だから当然なのかもしれないけど、、ってか、ぶっちゃけ良く見たり感じたりすると、次元が違うというかなんというか、、、」
「そうだね~ふふふっ、君もボクの凄さ解った?」
ヨグ・ソトースが腕を組んでふんぞり返る。
「あ、あぁ、何故かはわからないけどね」
トワが疑問を持つ中、信吾が口を挟む。
「それってさっきから第三ステージとかって言ってるのが関係してる?」
信吾の質問にヨグ・ソトースが返す。
「その通りだねぇ、君達は第三ステージだからねぇ、ふふふ、教えて欲しい?」
「あ、ああ、教えてもらいたい」
「どうしよっかなー、なんか面倒臭くなってきたなー」
言いながら斜め上を見る
「そう言わずに、教えてくれたらもっとヨグ・ソトースの事を凄いって尊敬するかもよ?」
言われたヨグ・ソトースは信吾の目を見た。
「そうか?もっと尊敬するか?そうかー」
考えてるヨグ・ソトースをよそに信吾は空間収納からテーブルと椅子を出して座る。トワとクモスケも横に座る。更にお茶と簡単なお菓子を出す。
信吾はヨグ・ソトースに椅子に座るように促してから座らせる。
そして納得したヨグ・ソトースはお茶とお菓子を摘みながら話しを始めた。
「どこから話せばいいかな?質問は?」
それにトワが質問する
「ステージってのは?」
「ステージってのは君達が言う次元ってやつ」
「ん?するってー事は、俺達第三ステージは三次元ってこと?」
信吾の質問にヨグ・ソトースが無言で頷く。
「ヨグ・ソトースは第何ステージなの?」
恐る恐るトワが聞くと
「ボクは第七ステージだよ」
その言葉にトワと信吾が目を見開く。
「ごめん、頭が混乱してきた、そもそもの話し、次元って何なの?一般的には点の世界が一次元で、二次元は線の世界、そして三次元ってのが俺達の世界の立体的な、点と線と奥行きを持たせた三次元って事になるけど?」
「その認識であってるよ、で、四次元が精神面の世界かな、例えば地球の神とか妖精、精霊なんかもその世界、で、第五次元が君もあった事があるよね?地下施設にいる地球の存在ってワケ、だから地球に会った時って何か変な感じにならなかった?」
信吾が頷く。
「それが正常なんだ、次元が違うからね、その次元に、その第五ステージの世界に一部でも触れるとそうなるんだ」
「えっ?でもヨグ・ソトースは?」
「ボクは最初っから君達に合わせて第三ステージの存在にしてるからね、じゃないとまともに会話も出来ないよ」
「自由自在なのか?」
「もちろん、上のステージは下のステージの全てを掌握出来るからね」
「あ、ちなみに地球の神はそれほど力を持ってはいないよ、所詮第四ステージだし、地球のオマケみたいなもんだからね」
信吾が納得しながら頷く。
「なんか、話しがぶっ飛び過ぎてて実感が湧かないな」
お茶を啜りながら冷静に頭を整理する信吾。
「難しいかもね、他に質問は?」
「いつから?うーん、次元そのものの移動とか、俺達がそっちの世界に行くことは出来ないのか?」
「それは無理だね、何故なら昔の契約で君達第三ステージの存在は罰を受けてる状態だからね」
「ふふふっ、なんか、わけ分からなすぎて笑えてくるね」
信吾が頭を抱えて笑う
トワも興味はあるがどこかおっかなびっくりな所がある。
クモスケはせめて分かる言語で喋れと心の中で思うのだった。
混乱した頭を落ち着かせるため、こめかみを指圧する信吾。
「四次元ってさ、今まで俺は空間の何かだと思ってたんだ、四次元のポケットとか空間を歪めて収納とか転移とか、神界への道とかさ、それって間違いって事か」
しみじみと呟く信吾。
「信吾君の関心する所は第三ステージのクセに空間を操れる事だね、確かに第四ステージからそれが出来るようになるけど、多分その類まれな想像力と発想力、そして知識からくる思い込みで実現してしまう。空間操作は、それだけじゃ普通行使出来ないんだけど、それを実現させたのは生命力以外の何物でもない。信吾君の生命力はとんでもない量だよ、うん」
「生命力?」
信吾がオウム返しに聞く。
「分かりやすく言うと魔力もそこから、気功もそこから排出される、だから魔力イコール生命力でもあり、気イコール生命力でもある、ちなみにそっちの龍の妖気もイコール生命力となる。その生命力ってのは長い経験から成長するんだけど、、まぁ、それが龍のトワの例ね、信吾君は何度も死にかけた事から生命力が増して行った事が要因ね、特に幼少期の時の死にかけの怪我はかなり上昇させるよ」
心当たりがある信吾は納得した。
「信吾君の知識ってさ、的を得てるっていうか、まぁ、近い感じなんだよね、重力と空間、宇宙の知識とかちょっと説明してみて」
ヨグ・ソトースの言葉に頷いた信吾は話し出す。
「重力ってのはまだ科学的には解明されていないけど、、うーん、どんな物、どんな存在でも物体があるからには重さが生じるんだ、それに重力ってのは発生するんだ。例えば俺もそうだけど微量な重力は発生させている。それで、桁違いな地球はとんでもない重さをしてるんだ、それが引力ってやつで物を引き寄せるんだ。その重力で太陽系は存在してる。要は太陽の重さ、重力ゆえに地球や他の太陽系の星は引っ張られてはいるけど遠心力で均衡を保っている。地球と月の関係のように。更に超重力ってのは空間を歪めるんだ。その歪みは光すらも歪ませてしまう。更に重力を合わせて、それこそ超新星爆発が起こった時に発生する重力はブラックホールを生み出すと考える。だからアバドンのブラックホールを見た時に、出来るかもしれないけど、制御に自信が無かったんだ。その空間、っていうか時空の歪みこそが空間収納とか空間転移の元になった知識かな?」
一通り話し終わった信吾が一息ついてお茶を啜る。
「凄いよね、その知識で実際にやってのけちゃうんだから生命力のおかげだね」
「えっと、あってた?」
「まぁ、大体ね。補足するとその空間ってのが次元が違う場所を示してるんだ。わかってると思うけど、四次元だね。でも実は信吾君も地球人の科学力もまだまだ10%も宇宙の知識に触れてはいないんだよねぇ、殆どが解明されてない事だらけなのは知ってるよね?」
信吾は頷きながら聞く
「それってダークマターってやつ?それとも第三ステージには認識できない何かとか?」
「その通り、いくら頑張っても認識できないんじゃ解明なんて出来ないよね?」
信吾は頷きながら無言で先を促す。
「ふふっ、欲しがるねぇ、まぁついでに教えてあげるよ、実はステージ自体は第十ステージまであってこの世の理ってやつなんだ。そもそも地球も元はと言えば第五ステージにいたんだけど、太陽系の連中と馬が合わなくてね、ある時金星と火星と地球で喧嘩になったんだ、それを見たもっと上の存在が仲裁に入ったんだ、その時のどっちが悪いかとかで、地球が悪いってなって落とされたんだ、第三ステージにね、だから地球人はその罪を償ってるって状態なの。まぁ、それだけですんで良かったと思うよ、今思えばねぇ」
「なるほどね、それだけですまなかったのが俺が見た未来の末路ってワケか、宇宙自体が消滅か」
信吾が言ってて身震いした。
「そうだね~、上の存在なんて宇宙の一つや二つ無くなっても痛くも痒くもないからねぇ」
なんでもないかの様に言うヨグ・ソトース。
「ちょっと待って、いくつか宇宙は存在するのは知ってたけど、そんなにあるの?」
「そうだね、実際には無数に存在するよ、地球の神ですらパラレルワールド作れちゃうんだからそれこそいっぱいあるよ」
「それを一個一個管理してるのか?」
驚きながら信吾が問う。
「えっ?管理?あ、あ~まあ管理って言うか、説明が難しいけど、、ボクより上のステージの存在はそんな事しなくても解っちゃうんだ、例えば、君達にも分かりやすく言えば、それこそゲームでもしてるかの様に小さな小さな宇宙が無数にあってそこに異常があったら対処する見たいな感じ、実際には想像もつかない何かなんだけど、あくまでも分かりやすく例えればゲームってとこだね」
「ふえぇぇー奥深いな」
「それほどまでにステージの違いって大きいんだよ、ホントボクより上、一つ違うだけでボクなんかちっぽけで何の約にも立たない」
シュンとした感じのヨグ・ソトース。
「えっ?ヨグ・ソトースってそれで、ちっぽけだから、自分に自信が無くて、皆から凄いって言われたいって事?」
「は?違うよ、ステージの違いに差があるのは当然だし、信吾君だって別に上のステージの存在に嫉妬したりなんかしないでしょ?」
「ん?まあ、そうだな」
信吾が言うとヨグ・ソトースがポツリと言葉を漏らす。
「ボクは時間の操作しか出来ないから同じステージの存在には役立たずって言われてるんだ」
それを聞いた信吾は首を傾げながら聞く。
「それって凄いんじゃ?」
「ふふふっ、信吾君の言葉は素直に嬉しいけど、、今何の話しをしてたのかな?」
「えっと、ステージ?俺達の話し?」
「まあ、そうだね、ボクは第七ステージ、君達は第三ステージで、時間って概念は第三ステージと第四ステージにしか無いんだ、要するに第七ステージでは何の意味を持たない、時間って概念そのものが存在しないんだ」
「えっ?時間が存在しない?」
「うん、だって時間って地球人みたいな宇宙の星にいる生物が生み出した概念で、元々は無かった事象を生み出したにすぎない、言葉を生み出したと同じ様にね」
「まあ、言ってることは分かるけど、、でもヨグ・ソトースは時間を戻したり進めたりって」
「実際にはその時間って概念なんだけど、君達に分かりやすく言っただけなんだ、時間ではなく、事象を書き置き、書き換え、その存在の末路っていうか、どうなるか、最後を見るんだ、それがボクの能力。時間では無いんだ、でもそれってボクのステージでは意味がないんだよね、だってそれが必要とされる世界ではないからね」
「どんな世界なんだ?第七ステージって」
「はっきり言って理解できるかはわからないけど、ボクはボクの形をしていないんだ、精神の世界でもあるし、何より言葉もない世界、そこには苦しみも無ければ争いも無い、怒りも無ければ喜びすらも無い世界だから、、君達には想像もつかないと思うよ」
「うへぇーそんなんで楽しいのかね?少なくとも俺は行きたくないな、苦しみもなければ喜びすらも無い所なんて」
「ふふふっ、そう言うと思ったよ、それが君達には理解出来ないって言った証拠なんだけどね、、まぁそんなわけでボクは役立たずって言われてるんだ」
寂しそうに言うヨグ・ソトース。
咄嗟に口を次いで出た信吾が叫ぶ。
「いや、そんな事は無い、絶対に!どんな存在でも意味がない存在なんてないんだ、どんな物でも立派な存在理由があるんだよ」
少し強めに信吾が言うと、ヨグ・ソトースは目を見開く。
「ヨグ・ソトース、俺はお前と会えて良かったと心から思うよ、だってこうやって会話して、コミュニケーション取って、お互いの事が分かって、ってことはもう他人じゃない、ただの知り合いでもない、、俺達はもう友達だから、、俺にとってはもう必要と言うか、大切な存在だ」
信吾が熱く語る。
その横でトワが、またくっさいセリフを言ってこっちが恥ずかしくなるからもう止めてっ!と必死に思っている。
「信吾君、ありがとう、嬉しいよ」
ヨグ・ソトースが悲しそうに、寂しそうに続ける。
「でも、君達とはお別れしなきゃいけないんだ」
「えっ?何で急に?まぁ、ヨグ・ソトースも帰らなきゃならないだろうし別れは仕方がないけど、、また会えるよな?」
信吾が何でも無いかの様に言う。
「そうだね、、また会えるといいね、、」
「ど、どうした?もしかしてもう会えないとか?」
トワが残念そうに聞く。
「元々君達とボクではステージが違うし、、この後ボクは、、君達の記憶を消す」
苦い顔をしながらヨグ・ソトースが言う。
これには信吾とトワとクモスケすらも驚いた。
「な、なんで?なんで記憶を?そんな事しなくても問題無いだろ?何かに違反してるとか?」
信吾の言葉にヨグ・ソトースは首を横に振る。
「ボクの存在を知ってるからこそ、信吾君の未来が悪い方向に変わってしまうんだ、、それは甘えとも言うんだけど、大事な場面で失敗しちゃうんだ、、そうなるともう取り返しがつかなくなる。だから記憶を消して甘えを消す」
ヨグ・ソトースは未来を知っている、そしてそれがいい方向に進むには今この場でヨグ・ソトースの存在を知られるワケにはいかない。
この信吾達との会話の中で、最初から信吾の過去や未来を掻い摘んで見に行っては戻ってを繰り返していた。それを話しをしながら行使していたヨグ・ソトースは信吾達を気に入ってしまった。別れが辛くなるほど。
「これ以上いると、別れが辛くなっちゃうから」
独り言の様な小声で呟いたヨグ・ソトースであった。




