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第103話 答え合わせ

「ねぇ、ボクの事凄いって思った?ねぇ凄い?」


 薄っすらとする意識の中、聞き覚えのある声がした。


 ゆっくりと目を開ける。


「お前さっきから何いってんだ?」

 トワが言った。

 トワの声がした。


 咄嗟に声の方を振り返るとトワがいた。

 そしてその横にはクモスケもいた。


 その瞬間涙が溢れた。

「うわあああ~」


 トワに抱きつく信吾。隣りにいたクモスケも巻き込んで抱きついた。強く強く、目一杯二人を抱きしめた。

 様子がおかしいと思ったトワとクモスケは心配するように声をかける。


「お、おい、信吾ちゃん?どうした?急に?」

「信吾、、大丈夫?」


 トワとクモスケが心配するも、泣き続ける。

 暫く落ち着くまで信吾を撫でているトワとクモスケ。


「分かったかい?ボクの凄さが、信吾君?」


「何だ?気安く信吾を、、、」

 咄嗟に信吾がトワの口を塞いだ。

「ダメだ!トワ!少し、少しだけ静かにしててくれ、頼む、お願いだから」


 また泣きそうな信吾を不思議に思いながら了解するトワ。

 クモスケも信吾の怪しい行動を不思議に思うも、黙っている事にする

「ありがとう、ありがとう、トワ、クモスケ、良かった」


 落ち着いた信吾は振り返り例の子供に向き直る。


「向井信吾って言います。宜しくお願いします。そちらの名前を伺っても?」


「おっ、丁寧になったね、いいね、やっとボクの凄さが分かった様だね、関心関心、、あ、ボクの名前か、ボクは皆からヨグ・ソトースって言われてるかな」


 その瞬間信吾が固まった。

「おっ、どうやら信吾君は知ってるみたいだね」


 その横のトワは首を傾げる。

 クモスケは小声で何やら呟いている。

「ヨーグルト・ソース?ヨーグルトのソースって何だ?」


 そんな二人をよそに信吾が口を開く

「やっぱりな、ヨグ・ソトースとは思わなかったけど、神様的な何か上位の存在だと思ったよ。これで合点が行った、てことはさっきのは夢でも幻でもないって事が分かったな」


「そう、その通り。ちなみに君だけ魂を抜き取ってその後の未来を見せてあげたんだ、あれは本当に起きる未来、凄い?」


「あ、あぁ、凄い。凄すぎる」

「ふふふ」

 ヨグ・ソトースが笑みを見せて喜ぶ。


 会話が一旦途切れた時にトワが間に入る。

「な、なあ、どういう事なんだ?」


 笑っていたヨグ・ソトースが真顔になった。

 焦った信吾は早口でまくし立てる。


「ちょっと待ったちょっと待った、ヨグ・ソトース?」

 信吾の慌ててる顔を見て頷くヨグ・ソトース。


「オッケー、ヨグ・ソトースの凄さを、ここにいるトワとクモスケに分からせるから、絶対に凄いって言わせてみせるからちょっと待って」

 手を前に出して待てと、ストップとジェスチャーしてヨグ・ソトースを落ち着かせる。

「挨拶が終わったとたんにタメ口とかってどうなの?」

 とヨグ・ソトースか言うが信吾はスルー


「よし、オッケー」

 考えがまとまった信吾はトワとクモスケに向き直る。


「まず、ヨグ・ソトースって確か神話に出てくる人物なんだ、ん?神様か?うん、そう神様だ。何の神話かは忘れたけど、それで、ヨグ・ソトースの能力は時間の操作。時間を止めたり、過去や未来を行ったり来たり、改変も出来るんだ。で、今俺だけがこの後の未来を見てきた」


「えっ?どういう、、」

 トワが疑問を口にするが被せ気味に信吾が言う。

「信じられないのは分かるが、これはマジだ」

 真っ直ぐにトワの目を見つめて言う信吾。

 無言で頷くトワ。


「その未来を今から説明する、、まず、トワが死ぬ、それからクモスケ、、手も足も出ない程にあっと言う間に頭が吹き飛ばされたんだ」

 思い出して涙を浮かべる信吾。

 更に涙声で続ける。


「それから俺はもう、お前達が死んでもう、どうでも良くなってヨグ・ソトースに突っ込んでいくんだ。あっと言う間に殺されたよ。で、ヨグ・ソトースが言うには俺の魂だけ抜き取って未来を旅させたんだ。俺達三人の死体の、骨となった三人の最後まで。それから場所が変わって地球に移動したんだ。志保ちゃん達は俺達の帰りをずっと待っていた。最後の最後まで。でもその祈りも届かずに神様達が悪魔達に殺された、消滅させられたって言うのか、、それから地球が怒るんだ、それはもう恐ろしい程に。まず地震から、豪雨と落雷、それから山の噴火、地割れ、全て地球規模で。それでも最終的には悪魔達に消滅させられた、テレビの電源が切れる様に。そして地球の後は、、次の犠牲は太陽系全てだ。全てが消滅したんだ。その後すぐに悪魔達の暗黒の星が生まれる。それからは暫く存在はしてるんだけど、何故か宇宙そのものが消滅した、完全に無に戻った。と」


「凄いな」

 それが本当ならね、とトワがまだ疑いを持つ。

「凄い」

 クモスケは素直にそう思った。


「やっと分かってくれたんだね、でも、良くわかったね、悪魔達なんか見せて無いのに」

「ああ、それは約2年後にルシファーとアバドンって悪魔が襲ってくるのが分かってたから」


「なるほどねそれに地球の存在も知ってる様だね、第3ステージの地球人くせに」

 首を傾げる信吾。

「まぁいいや、一つ訂正ね、時間の操作は確かに出来るけど、ボクは時間を止めることなんて出来ない。そもそも誰も出来ない事、どんな存在でも」

「えっ?」

「無理だね、仮に時間を止めたとしたらそこで矛盾が発生するんだ。そこにあるのに無いんだよ、だって止めたやつも一緒に止まるから、宇宙そのものも止まる、でも存在する。けど、無い」

「えっ?セオリーだと術者だけが動くことが出来るとか?」

「バカなの?空気の動きも止まるんだよ?事象そのものも止まるんだ、そのものが存在を許されているって言う事象も止まるって事は無なんだ。無、む、むー」


「難しすぎて良くわからんな」


「説明が面倒だ」


「そう言わずに、ヨグ・ソトース様は凄いんだからさ」


 信吾とヨグ・ソトースのやり取りが続く。トワとクモスケは只々聞いている。段々とトワが信じ始めている。


「その前に聞きたいことがある」


「オッケー、何でも聞いて」

 と、軽い感じで言う信吾。


「この子に何をしようとした?ボクの分体に」

 話しが一番最初に戻ったと思った信吾は、ここで失敗したからヨグ・ソトースは怒って行動を起こしたと認識している。だからなるべく怒らせないように慎重に言葉を選ぶ。


「特に何も、、お、俺達は地球に戻ろうとしたんだ、、ここに来てもう半年は経つから、ここで戻ってもこの星の特徴で地球に戻ったら半分の三ヶ月しか経って無いことになるんだ。只その時転移しようとした時に何かの気配がしたから近づいたんだ。そしたらヨグ・ソトースが現れたってワケ」


「ふーむ、、この星にそんな機能無いぞ?地球に戻ったら半分の時間しか経ってないなんてことをありえないからな」


「えっ?えっ?だって、神様が、、特別な星だって」


「うーん、まあ、何となく分かったよ、、多分地球の神がお前達に便宜をはかったんだろうな、、ここで何してるかは知らんが、時間を必要としていたのだろう?だからこのボクの分体の【時の精霊】に頼んで、いや、命令をしたんだろうな。その上、条件が信吾君達にバレない様に能力を行使する様にと、そういうことだね?」


 時の精霊の方を向いたヨグ・ソトースに対して時の精霊はコクコクと頷いた。


「全く、大方信吾君達に介入して、それがバレた時のことを考えたんだろうけど、考えが甘すぎるね地球の神は、いや、バカだ、大バカだ」


「あぁーまぁ、それには反論する気は無い」

 思わず漏れ出す信吾の本音に、クククッと笑ったヨグ・ソトース。


「さっきの説明が面倒って言った答え教えてあげる。時間を止めると全ての粒子が止まるって事はそこから動けなくなる、第三ステージや第四ステージの存在はそれに依存しているから無理。それに光も動きを止めるから何にも見えなくなるし、そうなったら時間を動かそうとしても動かせない。例えば魔力とか何らかの力で行使したとしても、何らかの力も魔力自体も止まるんだよ。だから術者は死ぬ、誰も動かせない、何も進まない、無だね」


 信吾はそれを想像してなんだか宇宙規模の大きい想像をした時の何とも言えない恐怖感に包まれた。

 無意識に信吾は身を震わせた。


「それにしても地球人のくせに耳が良過ぎないか?」

「それ、さっきも言ってた様だけど、耳なんて特に良いなんて思ったこともないけど?」


「は?時の精霊のことは耳で感知したんだろ?」


「いや、気配察知で」


「それが耳だっつってんの」


「????」

 首を傾げて考えるも、良くわからない信吾。


「お前、気配察知って何か知ってるか?いや、どうやって感知してるか教えろ」


「えっと、気配察知をする?だってそれは能力の一つで頭ら辺をこう、強化って言うか魔力を纏ってみたいな?で、感覚を研ぎ澄ませるっていうか、、第六感的な何かで?」


 しどろもどろになりながら説明する信吾。


「お前の言ってる事がわからん、そもそも第六感は気配察知でもなければ感覚を研ぎ澄ませる事でもない」


「えっ?えっ?えぇぇぇー?」


「だから言ってるだろ?耳だって、まぁ無意識に気配察知をするっていって耳を強化してたんだろうな」


 腑に落ちないといった信吾。


「それじゃ、これはどこから聞こえる」

 そう言って指をパチンと鳴らすヨグ・ソトース。


 信吾は振り向いて、真後ろを指さした。

「い、今ここから聞こえた、、どうやって?」


「どうやってはどうでもいい、ただ、何故今後ろから聞こえたか分かるか?」


「えっ?それは、、後ろで鳴ったから」


「アホか、そんな事は聞いてない、何故後ろから聞こえたか、何で後ろからと判断が出来たか、、そもそも音の仕組みと耳の仕組みって知ってるか?」


「さすがにそれは分かる。音は空気を振動させて、耳の中にある鼓膜を響かせて、頭に届けて音を認識することが出来る」


「その通り、じゃあ高音と低音の違いは?特徴は?」


「違いは、、し、振動の大きさ?特徴は高い音は振動が細かくて、壁を反射させる。逆に低い音、振動が大きい方は壁を通って響く、だから車の音漏れは、低い音を出すウーファーの音がドンドンって響いて聞こえてくるけど、高音は聞こえてこない、中で反射してるから、、?」

 自信なさげに答える信吾


「ふむ、正解」


「ん?で?」

「そこまで分かってて何故わからない、全く面倒な」


 そう言ってまた指をパチンと鳴らした。


「今度はどこから聞こえてきたか分かるか?」


「えっ?また後ろから聞こえてきた気がしたけど?」


「違う、ここだ」

 言いながら少し歩いて音がなった場所に行く。そこは信吾から見て左前だった。


「さっきとの違いは、信吾君の耳を生まれた時の耳まで戻しただけ」


「なっ!?」

 驚いて耳を触るが既に元に戻っている。


「これは言葉で説明してもなかなか理解してくれないと思ったから体験させただけ。今から説明するから良く聞いとけ」


 頷く信吾


「生まれてから成長するに従って耳の形が形成されるんだ。そのデコボコした耳の形こそが、音を反射させて、どこから音が聞こえたかを判断する、というか認識するんだ。だからそのデコボコを平らにした場合は認識が出来なくなる、ちなみにこれは一度形が決まると一生そのままの形なんだ」

 人差し指を立てながら説明するヨグ・ソトース。


「えっ?それじゃ怪我とかで耳の形が変わったとしたら?」

 信吾が疑問を口にする。


「ふむ、いい質問だな。答えはいずれ認識出来るようになる、だ。人は経験するんだ。最初は苦戦するけど、この音はあそこから、この音はここからって感じで、それが、その経験こそが無意識に覚えて無意識に認識していくって事だ。ちなみに赤子の時も耳の形が形成していくに従って音の反射を経験して無意識に覚えていくんだ、初めから音の反射が認識出来るやつなんていないからな」


 ヨグ・ソトースの話しに納得した信吾。トワは目からウロコといった感じで、クモスケは耳のデコボコを執拗に触っている。


「な、なるほど」

 と、信吾の一言にヨグ・ソトースが言う。

「これで分かっただろ?気配察知」


「あ、あぁ、耳は音を聞くだけじゃ無いと。そのデコボコの形が音を認識するのと同時に、振動するもの全てを認識していると、音だけじゃなくて空気の流れ、空気の振動、気圧なんかも無意識に認識していると、だから耳がいいと、だから気配察知が出来ると」


「そういう事、ちなみに地球人でそんなに耳がいい奴なんていないからな?精々音の認識ぐらいで、たまに空気の流れに敏感な奴がいるぐらいだ」

 ヨグ・ソトースの言葉にすかさず返す信吾。


「それってたまーに音も何にもしないのに、後ろに誰かいるって思って振り返るとマジでいてビックリするヤツだ。うん、なるほど、それって空気の流れか、微妙な振動を無意識に察知してたって事か、、耳で、、そうだったんだ、俺はてっきり霊感とか第六感の開花とかって思ってたんだけどな」


「第六感とは全く異なるものだ」

 ヨグ・ソトースの言葉に今度はトワが口を開いた。


「第六感についてはアタイが説明するよ」


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