第102話 全ての終わり
信吾が気功波を出そうとした翌日。
結局出なかった信吾は諦めるに諦められなかった。
どうしても出したかった信吾は今までの常識にとらわれずに、今度はオリジナリティを出して見ようかと画策する。
とりあえず今日はひとまず地球に戻る日。
「さて、準備はオッケー?」
「オッケー」
「大丈夫」
「忘れ物は無い?」
「大丈夫」
「無い」
信吾の確認にトワとクモスケが答える。
信吾は空間転移を使うべく行使しようとする。
だがそこで何かの気配を感じた。
「ん?」
気配を感じた所を見ると何にも無い。
首を傾げながら
「おっかしいな?今なんか」
言いながら歩いて近付いていく。
目を細め、気配感知をフルに使う。
更に警戒しながら気配があった場所に少しずつ近付く。
すると目の前の空間が歪んだ。
「おいっ!お前!何してる」
急に現れた子供が叫ぶ。
歪んだ空間から突如現れた少年は信吾を睨んでいる。
服装は白の布1枚を体に巻き付けた様な、言うなれば昔のギリシャ人が纏ってそうな布で、叫び声からして何やら怒っているらしい。
「えっ?だれ?子供?何でここに?」
思いついた疑問を並べる信吾。
異変を感じたトワとクモスケはすぐさま信吾の所に駆けつける。隣に並んだトワが口を開く
「子供がなんでこんな所にいる?」
「子供子供って言うな!あとこっちの質問が先だ!そこのやたら耳がいいやつ、何してる!」
「は?耳?いや、何って帰ろうかと思ってたとこだけど?」
「違う!ボクの分体が困ってる、怯えてる、怖がってる!」
「は?えっ?分体?」
全くワケが分からず聞き返す信吾。
「しらばっくれるのか、面倒でムカつく地球人だな」
言った瞬間子供の後ろに小さな妖精みたいな小人が浮いていた。
服装は子供と同じ布を巻いてるだけ。
その小人を見て驚きつつも、気配察知に反応したのがその小人だと分かった信吾。
「知らないよ、その子初めて見たから」
「嘘つけ!怯えてたんだぞ!しかもこの子はお前達の事を知ってるらしいぞ、何やら能力を行使するとか、でもバレちゃダメとか?」
全くワケが分からないし、見に覚えがない信吾。
「そんな事言われても、、、なぁ、、」
困った信吾はトワに振る。
「良くわかんないけど、アタイ達は帰るんだ、あんたら子供もお母さんの所に帰りな」
「また言ったな子供って、バカにするなーー!お前なんかボクにかかれば一瞬で消えちゃうんだぞ!」
「ほう」
トワが片眉を上げて見下ろす。
「ま、まあ、ボク?そういうのよくないよ?今日はなんか怒ってるみたいだからお家帰ろうか?じゃないとこのお姉さんに怒られちゃうよ?」
信吾が優しく諭す。
「バカにするな!バカにするな!もう怒ったからな!お前達!そこのトカゲ、かかって来い!一瞬で魂に変えてやる」
いきなりトカゲと言われたトワが憤慨する
「ト、トカゲだと、、貴様、我を侮辱する気かっ!」
お互いの殺気がぶつかり合った瞬間、信吾は嫌な予感がよぎり鳥肌が立つ、同時に震え上がるかのように小刻みに身体を震わせた。
トワが少し動いた瞬間
バスンッ!と鈍い音がした。
見るとトワの頭が吹き飛んで、首の無い身体が地面に倒れ伏した。
その瞬間を見てしまった信吾は、一瞬なにが起きたか分からなかった、倒れ伏して動かないトワを不思議な気持ちで見ていた。
暫く経っても何も起きず、全く動かないトワ。
やっと理解が追いついた信吾。
「えっ?えっ?なっ!お、おい、なんてことを、、」
段々と声にならない声を絞り出す。
信吾がトワの亡骸に近付く。
死亡を確認した。確実に死んでる。
「う、うわあああああああああ!」
トワの亡骸の前で叫ぶ信吾。
そして信吾を守る為に前に出るクモスケ
「まっ待て!クモスケーーー」
バスンッ!
また同じ音がした。
瞬間的に目を逸らした。
恐る恐る視線をクモスケに向ける。
クモスケが死んでる。
トワと同じ様に、頭を吹き飛ばされ、地面に倒れ伏したクモスケの身体。
見た瞬間取り乱した。我を忘れ、なりふり構わず取り乱す。
「なんてことを!なんてことを!あああああああああ!」
泣き叫ぶ信吾。自然と、無意識に涙が溢れ出てくる。
涙と鼻水でグシャグシャになった顔で叫ぶ
「お、お前があああぁぁ!殺したぁぁーー」
声が枯れるほど叫ぶ。当事者の子供を睨みながら、生まれてきて、これほど恨みを抱いた事はなかった。
「お、お前が!お前が!お前が!許さない!」
「あはは、だから言ったじゃん?凄いでしょ?ボク凄い?でもこんなもんじゃないよ、ボクの力は」
当事者の子供が何か言っているが、信吾は聞いていない。
「もう、終わりだ、何もかも全て、もう、どうでもいい、お前に!お前にせめて!一矢報いてやる!」
「愚かだねぇ、君だけでも転移で逃げればいいのに、ま、ボクには関係無いし、興味がないよ」
子供の言葉を最後まで聞かずに特大の雷魔法をお見舞いする。続けて上空にどデカい火球を生み出す。大きさは三十メートルを超えている。その火球を一気に圧縮して三十センチまで縮めると、思いっきり投げつける。
「吹き飛べえぇぇぇーー!」
その瞬間爆発に巻き込まれないように距離を取る。
爆音がして衝撃波も落ち着いた時に、空間収納から打刀を取り出して鞘から抜き、そのまま走り出した。
爆風が収まる場所に、その子供がいた場所に。
その瞬間後ろから
「ざーんねーんこっちだよー」
明らかにバカにした声が聞こえた。
振り返り、刀を前に構え、また走り出そうとした瞬間
バスンッと音がして信吾が倒れた。首を消失させて。
その場に静寂が訪れた。
「大丈夫かい?」
小さい妖精の様な小人に声を掛けた子供。
小人は頷いた。
「帰ろうか」
また小人は頷いた。
そしてまた静寂が訪れる。
やがて三人の身体は朽ち果て骨に変わる。
更に時が経ち、骨すらも朽ち果て灰に変わる。
それは数十年、数百年、数千年の時を超えたことを意味する。
そして、地球の志保達。
信吾が死んだ事を知らない志保は、戻ってくるのが遅いなぁ、と思い雄也とイズナに聞く。
「大丈夫じゃないですか?きっとまたひょっこり帰ってくると思うよ」
「だな、オイラもそう思うよ」
そう言うのも仕方がなかった。もうかれこれ1年は経つ。
そんな志保は神様に祈った。
「信吾さん達が無事に戻ってきますように」と
そして更に1年が経つ。
まだ戻って来ない信吾達を待つ志保達三人。
ここ最近毎日の様に神様に祈っている志保。
「お願いします、信吾さん無事に戻って来て下さい、お願いします、神様、、」
この時すでに神はいなかった。地下施設のトゥトゥナも全ての上位存在達が消滅していた。
そのことを当然ながら志保は知らない。
更に数日が経ち異変が現れた。
地震である。
「えっ?地震?結構大きいよっ!」
志保が叫び、注意を促す。
全員が集まって無事を確認、安全を確保する。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
収まらない地震に全員が不安になる。
そんな中、更に空がどんよりと雲に覆われる。
分厚い雲から豪雨と雷。
この世の終わりかと思うくらいの落雷と雨の勢いに恐怖する志保。
更にどこかで地面が割れるような音、富士山がマグマを吹き出した。
「お願いっ!誰か助けて!神様!」
志保が泣きながら懇願するも無情にも終わりは近付いてくる。
志保の言葉を最後にーー
そしてプツンと、テレビの電源が落っこちたかの様に真っ暗になった。
地球が音もなく消滅した。
続けて地球の重力から開放された月が宇宙を彷徨う。
そして今度は太陽が大爆破を起こした。
彷徨っていた月は今度は太陽に引っ張られていた為に、その爆発に巻き込まれて一緒に消滅した。
そして更に、立て続けに太陽系全体が消滅した。
その後真っ暗闇の宇宙の中、太陽よりも大きい暗黒の星が生まれた。
更にその後、数百年が経った時、プツンと真っ暗になった。
宇宙が消滅した。




