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第96話 傘2



 *


 右から海崎、俺、葵の並びで大粒の雨の中を歩く。三人で歩くが、傘は二つだ。

 あー、また両手に花だ。俺、死ぬのかな?


 ただ、海崎の傘と葵の傘の間に俺は入れて貰っているので、傘と傘の隙間からポツポツと地味に頭に水滴が垂れてきていて、ちょびっと冷たい。

 世界には水を頭にゆっくりと垂らし、人間を発狂させる拷問があるとか。

 まあ、別に今それはあまり関係ないけど。


「夜咲君の家、私は初めてね」

「耕平の家スゴいんだよ。庭に綺麗な桜があるんだ」

「あんまり期待させるなよ。一軒家だが、築50年近いボロ家だぞ。庭の桜もこの雨じゃ散ってるだろうし」


 う、つむじに雨水が。傘は一人か二人で入るもんだな。少なくとも三人で二つの傘を左右からさすようには作られていない。そりゃ雨漏りもするわな。まあ、無いよりは比べ物にならないくらいマシだけどな。


「うわ、本当に雨強くなってきた」

「そうね。有Tの話だと夜には止むらしいけど」

「有Tも天気予報みるんだな。何かこう天気を司ってそうなのに。まあ、勝手な妄想だけど」


 『我、太陽神・有坂に取っては天候操作なぞお任せなのだ』と、何となく言って欲しい、まあ、あまり弄り過ぎると人生の大先輩の有坂先生に大変失礼なのでそろそろ自重する。


「有T大人気だもんね。最初みた時は変わった風貌の先生だなって思っちゃったけど」


 変わった風貌とはスキンヘッドにスーツの有Tのことだろう。人の悪口は口が裂けても言わない性格の葵は太陽だの太陽神だの言ってる俺なんかとは違く『変わった風貌』という、この台詞が葵の中での精一杯のからかいだろう。


「有Tは私も好きよ。イイ先生よね。何度も相談乗って貰ったわ。部活でも勉強でも。三年間、有Tが担任で私は良かったと思ってるわ」

「入学式でスーツの有Tを初めて見た時はどこのマフィアかと思ったけどな」

「あー、うん。それ私も思ったわ。スーツにスキンヘッドだもの」

「えー、私はそうは思わなかったな」

「じゃあ、どう思ったんだよ」

「別に珍しい髪型の先生だな? みたいな?」


 葵は相変わらず呑気だな。

 絶対に差別とかしないもんなコイツ。


 太ってる人を見ても、よく食べる人なのかな。とか、髪の無い人を見ても珍しい髪型の人なんだな。って、考える。よく言えば優しい、少し悪く言えばマイペースな奴だと言うことは昔から知ってる。

 後はイジメが大っ嫌いで正義のヒーローが大好きな真っ直ぐな女の子だ。

 葵に気持ち悪いとか言われたら死ねる自信がある。

 

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